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悪趣味だけど上手い!「ジェーン・ドウの解剖」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、検死官の親子が夜中に運び込まれた美しい死体の解剖中に恐ろしい目に遭うという異色のホラー映画『ジェーン・ドウの解剖』ですよー!

僕はこの作品、以前からTSUTAYAでパッケージを見る度気にはなってたんですけど、「女性の解剖シーンは(作り物でも)キツなー」と、ずっとスルーしてたんですね。

でも、最近誰かのレビューを読んで興味が湧いたので、今回アマプラで観ましたよ!

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

身元不明の女性の検死を行うことになった検死官の親子が、解剖を進めるうちに怪奇現象に襲われるホラー。遺体安置所での逃げ場のない恐怖をリアルな解剖シーンと共に描き、トロント国際映画祭など世界各地の映画祭で高い評価を得た。監督は、『トロール・ハンター』などのアンドレ・ウーヴレダル。検死官の親子を『ボーン』シリーズなどのブライアン・コックスと、『イントゥ・ザ・ワイルド』などのエミール・ハーシュが演じる。(シネマトゥディより引用)

感想

深夜に運び込まれた“彼女”の正体を探るミステリーホラー

本作は、一家惨殺事件の現場地下室で発見された身元不明の死体を運び込まれた検死官の親子が、死体を調べるうち次々と不可解で恐ろしい目に遭うというホラー映画で、前半からクライマックスにかけて、運び込まれた”彼女の正体”を検死官の親子が解剖を進めながら読み解いていくというミステリー的要素と、同時進行で起こる不可解で恐ろしい超常現象=オカルト要素が呼応するように物語が進んでいきます。

「ジェーン・ドウ」とは運び込まれた死体の固有名詞ではなく、日本で言えば「名無しの権兵衛」的な身元不明の遺体につけられる呼び名で、男性なら「ジョン・ドウ」女性なら「ジェーン・ドウ」というわけです。

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画像出展元URL:http://eiga.com

まぁ、ぶっちゃけホラー好きな人なら割と序盤で“彼女”の正体は分かっちゃうと思うんですが、その謎解き自体は本作に置いて主題というわけではないし、実はその正体も幾層かのベールに包まれているので、彼女が「加害者」か、それとも「被害者」かが曖昧なままなんですよね。

そしてクライマックス以降は、どうすれば発動した呪いを解けるかが主題になっていくわけですが、そうしてみると、本作の構造は(その怖がらせ方も含め)Jホラーっぽい感じ。もっと言うと「リング」に近い感じがしましたねー。

ちゃんと最後まで怖いホラー

近年のホラー映画は、例えば「IT」や「ドクター・スリープ」日本なら「来る」や「犬鳴村」などなど、全体的にストーリーやテーマありきで、それを語る「ジャンルとしてのホラー」という感じの作品が(特に大作や続編・リメイクものに)増えている印象で、なので謎解きから解決に至る後半部分はまるで作品のジャンルが変わったのかってくらい怖くなくなる事も多いんですが、本作は基本的に最後までちゃんと観客を怖がらせようとしている感じで好感が持てましたねー。

更に、呪いというシステムの理不尽さに裏打ちされた物語の救いのなさは、近年観たホラーの中でも中々グッときたし、観客に宿題を残すラストシーンも「お、この監督分かってるなー」って感じ。

ちょっと露骨すぎるかなと思う部分もあったけど、後半~クライマックスの回収に向けての伏線もしっかり張っていたし、全体的に物語の作り方が丁寧な印象でしたねー。

そんな本作でメガホンをとるのは「トロール・ハンター」や「スケアリーストーリーズ 怖い本」などで知られるノルウェーの監督アンドレ・ウーヴレダだそうで、本作を観ると上記の両作にも俄然興味が湧きましたねー。

ただ作品の性質上、物語の大部分は女性の解剖シーンなので(作り物と分かっていても)苦手な人はちょっと無理かもですねー。

というわけで、ここからはネタバレするので、これから本作を観る予定の人やネタバレは嫌!という人は、本作を観た後にこの後を読んでくださいねー。

 

 

“彼女“の正体

前述したように、彼女の正体が魔女であることはホラー好きな人なら割と序盤の段階で分かるのではないかと思います。

面白いのは、魔女という極めてオカルト的な存在を、遺体安置・火葬・検死官が家業の親子が、司法解剖という極めて科学的(医学的?)なアプローチで解き明かしていくという仕掛けです。

解剖が3段階の手順に沿って進むのに合わせ、彼女が魔女(もしくは魔女として拷問・処刑された人物)である事が少しづつ分かっていくんですね。

もちろんこれまでにも、オカルトと科学を融合させたホラーがないわけではないけど、司法解剖の様子から魔女裁判の拷問の様子を観客に連想させる画作りは、悪趣味だけど上手いなーと思いましたねー。

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画像出展元URL:http://eiga.com

そしていよいよ謎が解き明かされるクライマックスでは、彼女の体内から発見された布に書かれた「レビ記20章27節とローマ数字の1693年」の文字をヒントに、彼女が「セイラム魔女裁判」の関係者だったことを親子は割り出すのです。

セイラム魔女裁判とは

この「セイラム魔女裁判」を僕は知らなかったんですが、Wikipediaによれば「マサチューセッツ州セイラム村(現在のダンバース)で1692年3月1日に始まった一連の裁判」だそう。

事の発端はセイラム村の牧師の娘とその従妹・友人らが親に隠れて降霊会を行い従妹が突然暴れだすなど奇妙な行動を取り、医師が悪魔憑きと診断した事から、牧師はネイティブアメリカンの使用人女性を疑い拷問。ブードゥー教の妖術を使った事を「自白」させるわけです。

ただ、これによって降霊会に参加していた少女たちが次々と異常行動を起こすようになり、村の有力者の娘が立場の弱かった女性3人の名前を挙げたのをキッカケに、200名近い村人が魔女として告発され、19名が刑死、1名が拷問中に圧死、2人の乳児を含む5名が獄死というとんでもない大事件に発展。
事態を知った州知事の命令で1693年5月にようやく事態が収束したのだそう。

本作はこの「セイラム魔女裁判」を下敷きに物語が作られてるんですね。

ただし、”彼女”が魔女裁判に関わった何者なのかは劇中では明らかにされておらず、歴史に名を残している中の「誰か」なのか、もしくは200名の中にいた無名の誰かなのか。

また、彼女自身が「魔女」=加害者なのか、魔女裁判の拷問もしくは儀式によって魔女にされてしまった女性の誰か=被害者なのか、彼女自身の意思で呪いを発動させているのか、それとも彼女の意思とは関係なく近づくだけで呪いが発動してしまう呪術の「装置」としての魔女なのかなどを意図的に描かないことで、物語に余韻を残しているのです。

ラストシーンの男

そうして恐怖の一夜が明け、検死官親子の家には親子と息子の彼女の死体、そして“無傷”のジェーン・ドウの死体が残されていて、不吉なものを感じた保安官は”彼女“を群外の大学病院に運ぶように指示します。

そして運ばれている中で、運転手の黒人警官が振り返り、彼女に「なあベイビー、二度としないって」となれなれしい口調で話しかける。
すると彼女の足に結びつけられた鈴がチリンと音を立てて物語は終わるわけですね。

そこで思い返されるのが物語冒頭の一家惨殺事件。
侵入者(強盗)などの形跡はなく、つまりはこの一家惨殺事件は彼女のせいで起こっていること。
そして、その事件にこの黒人警官が関わっているであろう事が分かります。

つまり彼女が呪術具なのだとしたら、この男は彼女を操る呪術者、もしくは魔女を使役する悪魔ってことですよね。

多分、検死官親子と息子の彼女は呪いの標的ではなく、ただの巻き添えで犬死にだったっていうことだと思うんですよね。

そう考えると、本作は相当な胸糞映画と言えるんじゃないでしょうかw

興味のある方は是非!!

 

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