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前作をアップデート「孤狼の血 LEVEL2」(2021)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2018年に公開され大ヒットとなったシリーズ第2弾、『孤狼の血 LEVEL2』ですよー!

劇場公開時、観よう観ようと思いながら中々タイミングが合わなくて結局見逃してしまったんですが、先日ゲオに行ったらブルーレイのレンタルを見つけて借りてきました。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

柚月裕子による小説を『日本で一番悪い奴ら』などの白石和彌監督が映画化した続編で、前作から3年後の物語をオリジナルストーリーで描く犯罪ドラマ。亡き先輩刑事の跡を継ぎ広島の裏社会を取り仕切るようになった若き刑事が、刑務所を出所してきた暴力団員と火花を散らす。前作で新人刑事を演じた松坂桃李や彼と対峙(たいじ)する暴力団組長役の鈴木亮平のほか、村上虹郎西野七瀬中村梅雀吉田鋼太郎などが出演する。(シネマトゥデイより印象)

感想

ザックリ前作を振り返り

本作は柚月裕子の同名小説を原作に、白石和彌がメガホンを取り役所広司主演で製作。
広島県を舞台に暴力団の抗争、警察の癒着・腐敗などを描き、「仁義なき戦い」や「県警対組織暴力」といった、いわゆる東映実録シリーズを復活させるという趣向で、時代設定を暴力団対策法」施行前夜に据え、昭和から平成へと、変革する時代の最後の数年を描いたシリーズなんですね。

昭和63年(1988年)広島。呉原市の暴力団尾谷組と広島市に拠点を置く五十子(いらこ)会による第三次広島戦争が痛み分けに終わってから14年。

尾谷組の残党と五十子会の下部組織の加古村組の間で新たな抗争の火種がくすぶり続けている。
そんなある日、呉原東署マル暴刑事大上役所広司)のもとに新米刑事の日岡松坂桃李)が部下として配属されます。

二人は行方不明になっている上早稲という男の捜索を開始するが、窃盗、侵入、放火など何でもありの違法捜査やヤクザからの賄賂を平気で受け取る大上に反発。

実は上司である監察官・嵯峨滝藤賢一)から大上の違法捜査を調査するスパイとして送り込まれた日岡は、嵯峨に大上の早期逮捕を訴えるも、嵯峨は内偵を続行しヤクザとの関係を綴った「大上の日記」を入手するよう命令します。

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激化する尾谷組と加古村組の抗争だったが、大上の活躍で加古村組幹部が一斉逮捕。何とか全面抗争は避けられたものの、その日を境に大上は行方不明になり、数日後水死体で発見される。深入りし過ぎた大上は加古村組組員によって殺されてしまったのです。

大上の死後、彼の行きつけのクラブのママから「大上の日記」を渡された日岡は、大上は暴力団から市民を守るため違法捜査も辞さなかったこと。スパイと知りながら大上が自分をマル暴の刑事として育て、自身の死を悟ると嵯峨ら上層部の数々の不正をメモした証拠の日記を日岡に託したことを知り、大上の意思を受け継ぐ。

というストーリーでした。

続く本作は、今や一人前のマル暴刑事として大上流をアップデートし、広島の治安を守っていた日岡が主人公。

暴力団同士の抗争もなく、落ち着いた日常の中、五十子会下部組織、上林組組長の上林成浩(鈴木亮平)が出所したことで、事態は一変する――というストーリー。

暴力団というよりはほぼシリアルキラーみたいな上林と日岡の対決をメインに、嵯峨ら上層部の陰謀や日岡のスパイである在日2世のチンピラ、チンタ村上虹郎)とその姉まお西野七瀬)の悲哀など、いくつものエピソードが重なり合っていくんですね。

松坂桃李の狂気がアップグレード

前作を観た時僕が感じたのは、作品として整い過ぎてるということ。

今や日本有数の名優でもある役所広司が主演。作品の柱になることで、良くも悪くも物語がまとまってしまうというか、もちろん本人が意図的にしてるわけではなく、観ている僕の先入観がそう見せてるんだろうけど、どうしても「劇映画」になってる感じがしたんですね。

それは全然悪い事ではないし、役所広司が名優であることに何の疑問もないんですけど、僕が暴力団映画に求めるのって、物語が歪むくらいの狂気なんですよね。

まぁ、言ったら僕も仁義なき戦い」世代ですからね。
菅原文太松方弘樹千葉真一ら、(当時)若手の役者たちのフィルムから溢れ出んばかりの芝居を超えた狂気やリアリティに痺れた身としては、どうしても前作にはある種の「お行儀の良さ」みたいなものを感じてしまうのです。

あとはまぁ、役所広司と一緒だったからかもですが、この時点での松坂桃李は、まだ若干芝居に頼りなさを感じたりもしたんですよね。

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ところが、本作の松坂桃李は凄く良くて、ほぼ同世代の鈴木亮平との共演ということもあるのかもですが、まずマル暴刑事の役が堂に入ってるし、鈴木亮平演じる上林によって追い詰められたあたりから、鈴木亮平の狂気に引っ張られるように彼自身の演技にもドライブがかかっていくのが感じられたし、そんな二人のクライマックスでの対決はかなり痺れてしまいました。

で、そんな二人の脇を支える管理官役の滝藤賢一と相棒刑事役で元公安の中村梅雀も、タイプの違う怖さを見事に演じてたって思うんですよね。
っていうか、一番怖いのは中村梅雀の奥さん役を演じた宮崎美子さんかもですがw
あんなニコニコ顔で料理やお酒出せるかねw

因果関係はいらなかった

そんな松坂桃李のいわば宿敵として登場した鈴木亮平ですが、個人的には「変態仮面」からのファンでしてね。

多分、彼はどちらかと言えば憑依型の俳優だと思うんですが、本作でも完全にルールの外側にいる男・上林の狂気を体現してみせてましたねー。あまりデフォルメせずに、割と普段の彼のテンションで演じてるのも怖さに拍車をかけてました。

ただ、演技は文句ないんですけど、上林というキャラ造形にはちょっと不満が。

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本作の上林という男は、いわばバットマンに対してのジョーカー的な、「純粋悪」として描かれてると思うんですが、だとしたら親父に虐待され母親は見て見ぬふりで~みたいな、彼がああなってしまった“原因“はいらなかったんじゃないかなと。
まぁ、上林の相手の目ん玉をくりぬくっていう殺害方法のフリとしての設定だと思うけど。

そういえばあの殺害方法も、最初の一回目はインパクトがあっていいけど、何度も何度も見せられちゃうとなーって思ったりしましたねー。

個人的には、今回のほぼジョーカー的キャラで行くなら、下手な因果関係はつけずに完全な純粋悪にした方が良かったと思うし、逆に因果関係をつけるなら、もっとこう「仁義なき戦い 広島死闘篇」の千葉真一演じる大友みたいに、下世話で身もふたもないキャラクターにした方が良かった気がしました。

そもそも本作自体「~広島死闘篇」をモチーフにしてるっぽいですしね。

昭和への鎮魂歌

そんな感じで二人の芝居はかなり良かったし、作品自体も個人的には前作より好きだったりするんですが、それでも(思い出おじさんみたいで嫌だけど)「仁義なき~」に比べると、どこか“漂白“された印象を受けてしまう。
でもそれは別に、役者陣の演技とか監督以下製作者に問題があるのではなく、日本という国が小綺麗に整地されてしまったんですよね。

「仁義なき~」の頃の、まだ色んなルールが整備され切っていない、あの薄暗くて乱暴な時代の空気感を今の日本に臨むのはない物ねだりだし、そういう意味では「弧狼の血」という作品自体が、今やなき「昭和」への鎮魂歌と言えるのかもしれません。

興味のある方は是非!!

 

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