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細部までこだわったサスペンスホラー「ドント・ブリーズ」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは昨年の年末に公開され、映画ファンの話題をさらった作品、
ドント・ブリーズ』ですよー!
低予算映画ながら、細部までこだわった作りが見事なサスペンスホラー映画でした。

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あらすじと概要

盲目の老人宅に強盗に入った若者たちが、反撃に遭う恐怖を描くスリラー。リメイク版『死霊のはらわた』などのフェデ・アルバレス監督がメガホンを取り、オリジナル版のサム・ライミ監督と、ライミ監督とタッグを組んできたロブ・タパートがプロデュースを手掛けた。目は見えなくとも研ぎ澄まされた聴覚を持つ老人に『アバター』などのスティーヴン・ラングがふんし、リメイク版『死霊のはらわた』などのジェーン・レヴィ、『プリズナーズ』などのディラン・ミネットらが共演する。

トーリー街を出るための資金が必要なロッキーは、恋人マニー、友人アレックスと共に、大金を持っているといううわさの目の見えない老人の家に忍び込む。だが、老人(スティーヴン・ラング)は、驚異的な聴覚を武器に彼らを追い詰める。明かりを消され屋敷に閉じ込められた若者たちは、息を殺して脱出を図るが……。(シネマトゥディより引用)

 

感想

沈黙のサスペンスホラー

本作を一言で言うなら「ナメてた相手は殺人マシーン」(ギンティ小林氏命名)系譜の作品です。
近年で言うとデンゼル・ワシントンが主演した「イコライザー」なんかが同じ系譜の作品なんですが、デンゼル・ワシントンは殺人マシーンとして少女を救うヒーローだったのに対し、本作でスティーヴン・ラング演じる盲目の老人は超怖いサイコ爺さんなわけですよ。

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タイトルの「ドント・ブリーズ」を翻訳すると「息もできない」という意味になるらしいんですが、盲目の老人と侮ってうっかり彼の“フィールド”に入ってしまった三人の若者が老人に追われ、まさに「息もできない」緊迫感の中で何とか逃げ出そうとするという内容です。
なので、本作ではホラーにつきものの悲鳴も残酷描写も殆どなく、ワッと驚かされるお化け屋敷的な要素もかなり控えめです。
それよりも、若者たちがどうやって老人の家から逃げ出すかという、サスペンスの方に重きを置いている作品だと思いました。

設定が上手い

この老人、盲目だけどその分聴覚は人並み以上で、しかも退役軍人なので超マッチョ。
さらに、過去の悲しい出来事からすっかり心を病んでしまっていて、人を殺すことに全く躊躇がないんですよね。
でも、あくまで「盲目の老人としては」の強さであって、絶対かなわないほどは強くない。超強そうでそこまで強くないけどやっぱり強いっていう、食べるラー油ぐらいの絶妙な感じが観ている方のハラハラ感を煽っていくんですね。

とはいえ、そもそも悪いのはこの老人の家に強盗に入った三人なので、老人に返り討ちにされても自業自得なわけですが、ここで効いてくるのは三人の素性と老人の異常性です。

母親に家庭内暴力を受けて育ったロッキー(ジェーン・レヴィ)は、幼い妹と街を出て人生をやり直すためにお金が要るんですね。

父親が警備会社に勤めているアレックス(ディラン・ミネット)はそんな彼女に絶賛片思い中なので、彼女の頼みを断れず、防犯セキュリティシステムと父親が預かっているお客の家の鍵を使い盗みに協力します。
ロッキーの恋人マニーは……うーん、まぁバカだけど悪い奴ではないんですよね。

いや、盗みなんかしないで働けよって話ですが、ここで更に効いてくるのは本作の舞台がデトロイトだということ。

デトロイトといえば自動車産業で栄えたものの、今では街自体が財政破綻してしまって、仕事もなく子供の6割が貧困生活を強いられていて、ロッキーの母親が夫と分かれたのも、恐らくこの街の問題が絡んでいるんだと思われる。

そうした背景を、序盤物語の中でサラリと観せる手際の良さが素晴らしい。

そして、最初は「被害者」だった老人が中盤のあるシーンをキッカケに、とんだサイコじじいだということが判明し攻守が逆転するわけですが、前述した通り舞台は老人の家の中、つまり老人のフィールドなんですよね。

ただ、老人には盲目というハンデがあるので、そのパワーバランスをトントンにしないと物語にスリルが出ないしリアルじゃなくなってしまう。
そこで登場するのが、老人の飼い犬なんですね。
口から泡状のヨダレを流しながら襲いかかってくる狂犬で、コイツがまた超怖いんですよねー。コイツに噛まれたら一巻の終わりっていう説得力があります。

こうしたキャラクターの設定が上手く、さらにその設定を上手く活かしてサスペンスを生み出すストーリー作りはどこかゲーム的でもあって、その辺のイマドキ感も目新しい感じがしましたねー。

クライマックスで観せる恐怖

で、なんやかんやあって、ロッキーが老人に捕まるクライマックスシーン。
老人の異常性というか狂気がハッキリするシーンなんですが、もうドン引き。

同時に、今までサスペンス要素の強いゲーム的な怖さだった本作が、はっきりホラーになる瞬間です。

でも、そんな老人の行動の奥に彼の悲哀が見え隠れするあたりは、老人と若者のどちらか一方を完全悪として描かないよう、また観客がどちらか一方に肩入れしないように、バランスを考えているんじゃないかと思いました。

それがあるので、物語の結末や観終わったあともどこかモヤモヤした気持ちが残ってしまうんですよね。

殺人鬼に追い回される系のホラーとしては若干パンチに欠けるものの、その分を設定やストーリーの上手さで補って、さらにディテールの描写で物語に説得力を持たせるセンスは素晴らしいし、これから殺人鬼系ホラーの本場はテキサスからデトロイトになるかもしれないなーと思わせる作品でしたよー!

興味のある方は是非!!

 

ナメてた相手が殺人マシーン系譜の名作

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