ぷらすです。
今回ご紹介するのは、人気作家の森博嗣原作の同名小説シリーズを「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」の押井守監督がアニメ映画化した映画『スカイ・クロラ』ですよー!
僕は原作の方は未読なので、この映画がどの位原作に忠実に作られてるのかは分からないんですが、「あー、押井作品っぽいなー」って思いましたねー。
画像酒店元URL:http://eiga.com
あらすじと概要
“キルドレ”と呼ばれる永遠に歳を取らない子どもたちの戦いと、切ない愛のドラマを描くアニメーション大作。世界中に影響を与え続ける押井守がアニメーション映画としては4年ぶりに監督を務め、森博嗣による全5巻完結の大人気シリーズの第1巻を映画化した。主人公のパイロットたちを菊地凛子と加瀬亮が担当するほか、栗山千明、谷原章介が声優として参加。“真実の希望”をテーマにした押井哲学が、圧倒的な説得力で観る者に迫る。
ストーリー:永遠に生きることを宿命づけられた“キルドレ”と呼ばれる子どもたちが暮らす、もう一つの現代で、彼らは“ショーとしての戦争”で戦闘機に乗って戦っていた。戦うことで生を実感する日々を送る中、元エースパイロットの女性指揮官・草薙水素(菊地凛子)と基地に赴任してきたエースパイロット・函南優一(加瀬亮)が出会う。(シネマトゥディより引用)
感想
押井守監督について
本作の監督を勤める押井守といえば、「パトレイバー」シリーズや、「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」「イノセンス」など、日本を代表するアニメ監督です。
特に「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」は、アメリカではビルボード誌のビデオ週間売上げ1位となるなど、日本のみならずハリウッドの名だたる監督に影響を与えたとも言われています。
アニメだけでなく実写映画も多く手がけていて、オシイストと呼ばれる熱狂的なファンも多い一方、作家性が強く、好き嫌いの分かれる監督でもあると思います。
僕はといえばどちらかというと後者で、これまで押井作品は何作か観ているんですが、どうも相性が悪いんですよねーw
なので、この感想もそういう感じになるので、本作が好きという人には申し訳ない感じになってしまうと思います。m(_ _)m
ゲームの中の戦争
本作の内容をざっくり書くと、平和な世界でショーとしての戦争を企業が代行、キルドレという”永遠に生き続ける事を宿命づけられた『子供たち』”によって行われている。
という物語。(合ってるよね?)
この主人公たちは戦闘機で戦う空軍なんですが、海軍や陸軍のキルドレもいるのかな?
で、一般市民である“大人たち”はそんな「戦争」の様子をバーのテレビで観てるわけです。
つまりこの戦争は、映画やゲーム、スポーツ観戦といった“大人”の娯楽のような戦争で、それ自体に意味はなく、キルドレたちは大人たちのために終わりのない戦争を続けているわけですね。
つまり本作で描かれる“大人たち”とは、テレビやゲームなどフィクションの中でしか戦争を感じられない、日本を始めとした平和な国の人々のことなんでしょう。多分。
対してキルドレというのは、大きな目標もなく生きざるを得ない現代の若者たちを表しているんだと思います。
本作のテーマは大きく分けて2つあって、上記の平和な国の“大人たち”への諦観めいた皮肉と、そんな国で生きざるを得ない若者たちへの押井さんなりの応援歌的メッセージじゃないかなーと思いました。
ルールがあやふや?
本作の物語そのものは、アニメを見慣れた人なら「あーなるほど、こういうヤツねー」と飲み込みやすいんじゃないかなーって思いました。
逆に、アニメのお約束みたいなのに慣れていない人には、設定や世界観が分かりづらいというか、色々「??」ってなっちゃうんじゃないかなと。
いくつか例を上げると、
・キルドレは年を取らない?
・キルドレは死なない? でも物理的ダメージを受けると死ぬ?(その辺の真相は後半で分かるけど)
・みんな普段は日本語なのに戦闘機に乗ると英語。
・基地の外は外国で、住人の“大人”も外国人?
とまぁ、こんな感じ。
本作の舞台はちょっと昔の外国(イギリス?)のようになっていて、劇中で基地に見学にくる人は英語だし、基地のある町の住人も基本英語で話してるんですが、何人か日本語で喋る“大人”もいるんですね。(明らかに西洋人顔なのに)
アニメの場合、外国人キャラが英語を話している体で日本語で話すってのは良くある事なので、それなのかなー? とも思ったんですが、だったら日本語と英語を混在する意味が分からない。
本作の基本構造はミステリー仕立てになっていて、物語が進んでいくと徐々に真相が分かってくる作りになってるわけですが、そこで明かされる「設定」以外の世界観やルールがぼんやりあやふやで、個人的にはそれがノイズになって中々物語に入っていけませんでした。
原作を読んでいれば、分かったのかもですが。
まぁ、「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」だって最初は原作を知らず観たので何が何だか分からなかったし、一見さんお断り的な、観客が原作を知ってる前提の映画作りは押井作品の「仕様」と言えるのかもしれませんが。
頭の中の戦争と若者像
本作を観た僕の感想としては宇多丸師匠の評論とほぼ同じで、「ありもしない問題を作って勝手に悩む話」だったなーと。
もちろんフィクションなんだからそれでもいいんですけど、物語そのものがテーマと上手くリンクしていないというか、そもそも二つのテーマ自体の噛み合早生が悪いと思いました。
代わり映えのしない閉塞した日常を生きる若者と、延々戦争を続ける死ねない“子供”キルドレは、そもそも違う感じがするし、なんていうか例えになってない例え話を延々聞かされてるような感じ。
あと全体的にのっぺりしてて見せ場もなく、肝心の戦闘シーンもイマイチ、主人公が積極的に謎を解いていくわけでもなく、何処を見せたいのか、何を訴えようとしてるのかがイマイチ分からないんですよね。
映画ラストのモノローグは、押井監督から若い人たちへのメッセージなんでしょうし、それ自体が物語の一筋の希望として描かれているわけですが、そこに至る2時間の物語とは本質的にやっぱりズレてる感じがしました。
結局、きっと僕は押井監督とは相性が悪いんでしょうねw
ただ、映像は綺麗だし、好きな人は好きなタイプの映画だと思いますよ。
興味のある方は是非!
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