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まさかの展開に唖然! そして納得! 「クライング・ゲーム」(1993) *ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、前回ご紹介した「モナリザ」も監督した ニール・ジョーダンの作品『クライング・ゲーム』ですよー!

モナリザ」と一緒にTwitterでオススメしてもらった作品で、僕は恥ずかしながら僕は初見だったんですが……衝撃の展開にビックリでした!!

そしてこの作品、感想を書くにあたってネタバレせずに書くのが非常に辛い作品なんですよねw

というわけで、古い作品だし今回も前回に引き続きネタバレありで感想を書きますので、これから観てみようという方は映画を先に観てから、この感想を読んでくださいねー。未見の方は前情報なしで観たほうが絶対に衝撃度は大きいと思いますよ!

いいですね? 注意しましたよ?

http://eiga.k-img.com/images/movie/43996/photo/1cb728bf1b2e0010.jpg?1469168304

画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

アイルランド、川辺りの移動遊園地。そこに出会ったばかりの男女がいた。イギリス軍黒人兵士ジョディと、ブロンドの女ジュード。遊園地を出ると女は男を誘い、2人は抱き合ってキスを交わす。と、その時、男の頭上で拳銃の撃鉄を上げる音がした。慌てて見上げるジョディ。するとそこには、銃口を向けた男が立っている。驚く間もなく彼は、数人の男に押さえつけられると顔に袋を被せられ、いずこかへ連れ去られた……。(allcinema ONLINEより引用)

感想

巧みな脚本が評価され数々の賞に輝いた作品

本作は、物語のベースに「北アイルランド問題」が絡んだイギリス映画です。
北アイルランド問題とは、超ざっくり言うとイギリスからの独立派と残留派による内紛ですね。

アイルランドに派遣されていたイギリス軍兵士のジョディ(フォレスト・ウィテカー)は、ガールフレンドとのデート中に突然、複数の男たちに拉致されます。
彼らとガールフレンドはIRA(独立過激派)メンバーで、イギリス軍に逮捕されたメンバーを解放するための人質にするため、ジョディにハニートラップを仕掛けたわけです。

3日経ってもイギリス軍が取引に応じなければ、ジョディは処刑されることになってしまうんですが、そんなジョディの見張りはお人好しのファーガス(スティーヴン・レイ)で、二人きりで過ごすうち彼らは互いに友情を抱き始めます。

僕は「ははーん、ジョディが言葉巧みにファーガスを騙して逃げ出すか、ファーガスが組織を裏切ってジョディを逃がす物語なんだな」と思って観ていたんですが、全然違いましたねーw

というわけで、ここからネタバレしますよー!

 

 

 

期限が迫る中、ジョディはファーガスに「カエルとサソリ」の話をします。

カナヅチのサソリが、自分を乗せて川を渡って欲しいとカエルに頼む。
カエルは「君は僕の背中を刺すだろう」と断るが、サソリの「君を刺したら僕も溺れてしまう」という言葉を信じて、サソリを乗せて川を渡り始める。
川の真ん中まで来ると、カエルは背中に痛みを感じ、サソリが自分の背中を刺した事に気づく。

「自分も溺れる事が分かっていて何故…」と尋ねるカエルに、サソリは「仕方がないんだ。これが僕の“性”(さが)なんだから」と答え、カエルとサソリは死んでしまう。

という話で、持って生まれた“性”は変えることが出来ないというんですね。

そして、ジョディはファーガスに「自分が死んだらロンドンにいる恋人のディルに、“愛していた”と伝えて欲しい」と頼みます。

で、無常にも時が過ぎ、ついにジョディは処刑されることに。
「最後はせめて自分の手で」と彼の処刑を買って出たファーガスが、ジョディを連れて森の奥に行くと、突然ジョディが逃げ出しますが、ファーガスはジョディの背中を撃つことが出来ずに必死に追いかけます。

クリケットの選手で足の速いジョディは、ついにアスファルトの道路まで逃げ延びるんですが………

そこでアジトを突き止めてやってきたイギリス軍のトラックに轢かれて死んでしまうんですよ! 工エエェェ(´д`)ェェエエ工

さらに、イギリス軍は戦闘ヘリでアジトを襲撃。アジトは壊滅してしまいます。

ここから第二幕

何とか逃げ延びたファーガスは、知り合いのツテでロンドンに逃亡し名前を変えて仕事をしていますが、ジョディとの約束を果たすためにジョディの恋人ディルに会いに行きます。

ディルに絡むチンピラを撃退したりするうちに、ふたりは惹かれあい距離は段々縮まっていくわけですが、いよいよ初めての夜、ファーガス(と僕)は彼女の裸を見て驚愕の事実を知ることに。

 

チ〇コついてるーーー!!Σ(゚д゚lll)

 

いや、股間にモザイクがかかってるので映像だけではハッキリは分かりませんでしたけど、もうね、ビックリですよ!

確かに、ちょっと声が低いなーとか、冴えないジョディの彼女にしては綺麗すぎるなーとか、何となく違和感は感じたものの、ポスター写真でも分かるように、超美人だしスタイルもいいし、もう完全に女性だと思い込んでました!

ディルを完全に女性だと思い込んでいたファーガスもこれにはビックリで、彼女(彼)と離れようとするも、「ビックリして引っぱたいたりしてゴメン」的な手紙をポストに入れたり、なんやかんやあって仲直りしたと思ったら、ジョディにハニートラップを仕掛けたIRAの女性メンバーのジュード(ミランダ・リチャードソン)が現れて、判事殺害計画に参加しないとディルを殺すと脅すんですね。
その様子を、ディルが見てジュードをファーガスの恋人と誤解してしまいます。

で、ここから第三幕

ファーガスは何とかディルを守ろうと、髪を切って「彼女」を「」にしてホテルに匿うんですが、誤解したままのディルは勝手にアパートに戻ってしまい、精神安定剤を大量摂取。そんな傷ついたディルの様子にファーガスはついに真実を話します

翌朝、先に起きたディルは、眠っていたファーガスをベットに縛り付け(ファーガスの)持っていた銃を突きつけて、ふたりの前に現れたジュードやジョディを誘拐したIRAの事などを尋問。
その間にも計画実行の時刻は迫り、いつまで待っても約束の場所に来ないファーガスに痺れを切らしたリーダーが機関銃で突入し判事を撃ち殺すものの護衛に撃たれて死亡。

裏切り者を始末しようとアパートに乗り込んだジュードに、ディルは容赦なく復讐の銃弾を撃ち込み殺害し、止めようとしたファーガスにも銃口を向けますが、愛する男を撃つことは出来ず……。

で、ディルを逃がしたファーガスは彼女の身代わりで逮捕され、刑務所に足繁く通うディルとアクリル板越しの会話をするところで物語は終わるんですねー。

ジェイ・デヴィッドソン

本作でディルを演じたのは、ファッションデザイナーだったジェイ・デヴィッドソン。
彼は自身もバイセクシャルであることを公言しています。
ぶっちゃけこの作品が成功したのも、奇跡的な美しさを持つジェイ・デヴィッドソンのキャスティングあればこそで、当時僕と同じように多くの観客がビックリした事は想像に難くありません。

しかし、彼自身はあまり俳優に執着はなく、また本作の大ヒットで名前を知られたことで、心ない誹謗中傷や好奇の目に晒されて傷つき、現在はファッション業界に戻っているようです。

フォレスト・ウィテカースティーヴン・レイ

本作でイギリス軍の兵士ジョディを演じているのは、「ラストキング・オブ・スコットランド」のアミン大統領役や、「大統領の執事の涙」の主演で名を知られる個性派俳優のフォレスト・ウィテカー
印象的な風貌と存在感で、数多くの作品に引っ張りだこですが、この作品でもまだ若い彼の名演が、映画前半部分を引っ張っている感じでした。

ファーガス役のスティーヴン・レイは本作以降、ニール・ジョーダン作品の常連となったそうですが、決して華のある二枚目という感じではなく、味のある脇役という感じの役者。ただ、本作ではそんな彼の飄々としつつも、どこか厭世観をたたえた表情が役柄にピッタリハマっているように感じましたねー。

カエルとサソリの話

作中、ジョディがファーガスに話すカエルとサソリの話
僕は最初、自分たち末端の兵士の悲哀や、ファーガスがテロリストや犯罪者に向いていない優しい男だと事を物語に例えて言っているのかなーと思っていたんですが、実は自分の事を話していた事がディルが男性だったことで明らかになるんですね。

ディルを深く愛しながらも、ハニートラップにまんまとハマってしまった彼は、バイセクシャル、または元々はストレートだったって事だと思うんですね。
カエルと~の話は、ディルへの愛は決して揺るいでいないけれど、女性にも欲情してしまう自分を自嘲していたのかなーと。

で、その話をファーガスに聞かせてディルに会いに行って欲しいと頼んだのは、自分と同じ“性”をファーガスから感じとった彼が、万一自分が死んでも、こいつになら愛するディルを任せていいと思っていて、同時にディルと“友人”を孤独から救う意味もあったのかもしれません。

で、物語のラストでは、まさにそんなジョディの予感(とうか計画)が的中したんですね。

巧妙なトリック

そんな事を踏まえて思い返してみると、実はディルの勤めている美容室や行きつけのパブ「メトロ」は、いわゆるゲイコミニティーである事が分かります。

しかし、初見では(カエルと~の話も含めて)ハッキリそれとは分からないように、映像や語り口で真実を巧妙に隠しているんですね。

そして、主人公のファーガスが所属するIRAは、北アイルランドでは差別されているカトリック教徒の派閥であることと、ディルやジョディが黒人であり人種的にも性的にもマイノリティーであることと掛かっているんだなーと思いました。

そこが分かったあとで、もう一度見返せば、この物語の見え方は所見とはまったく違う見え方の作品になるんだろうと思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

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