今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

“王と父”がタッグを組んだ伝説の奇作「クリープショー」(1986)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、モダンホラーの王スティーブン・キングとモダンゾンビの父ジョージ・A・ロメロがタッグを組んだ伝説の奇作『クリープショー』ですよー!

僕は学生時代に1度観て以来なので、ずいぶん久しぶりに本作を観たんですが、今観ると色んな発見がある作品でしたねー。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/81NLC5G%2BJpL._SL1500_.jpg

画像出典元URL:http://amazon.co.jp

概要

スティーヴン・キングの原案を基に、コミックマガジン形式で繰り広げられるオムニバス・ホラー。父の日に墓から甦る死者、不貞を働いた妻と愛人を干潮の砂浜に顔だけ出して埋めた男に訪れる恐怖、大学の片隅に眠る木箱に潜む謎の怪物、隕石に触れたため身体中が奇怪な植物に覆われてしまう男の悲劇、潔癖症の老人を襲うゴキブリの群れの5つのエピソードが、文字通りのコミック・タッチで描かれる。(allcinema ONLINEより引用)

感想

王と父が「グリッター・ジャンル」を蘇らせる

本国アメリカで1982年に公開された本作は、強権的な父親が息子が隠し持っていたホラー漫画を発見、本を取り上げてゴミ箱に捨てるプロローグからスタートするオムニバス形式のホラー映画です。

脚本を務めるのはデビュー作「キャリー」を始め数多くの小説作品を生み出した「モダンホラーの王」スティーブン・キング

監督は「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「ゾンビ」などを生み出した、「モダンゾンビの父」ジョージ・A・ロメロ

盟友でもあった二人がタッグを組んで、グリッター・ジャンルコミックを蘇らせたのが本作なんですね。

グリッター・ジャンルとは

「アメコミ」と聞くと、多くの人はマーベルコミックやDCコミックなど、スーパーヒーローが活躍するコミックを連想するんじゃないでしょうか。

しかし、1960年代以前には、大小取り混ぜた無数の出版社からファニーアニマル(動物の擬人化)・西部劇・恋愛・恐怖・戦記・犯罪などなど、多種多様なグリッター・ジャンル(ヒーローコミック以外の漫画)コミックが出版されていたんですね。

ところが、「コミックに描かれた暴力やホラー描写が青少年を非行に走らせる」という研究書をドイツ人心理学者のフレデリック・ワーサム博士が発表したのをキッカケに、アメリカコミック界で「コミックス・コード」という自主規制に発展。
グリッター・ジャンルを扱うコミック出版社は壊滅状態に追い込まれるんですね。

その代表格が主にホラーや犯罪漫画を扱っていた「ECコミック」で、本作で登場するコミック誌の絵はECコミックのアーティスト、 ジャック・ケーメンが担当していて、本作のアバンでは、見る人が見ればコミックコード前後の家庭の様子を描いている事が分かるんですね。

キングはホラー作家であり、ロメロはゾンビ映画やホラー映画の監督として有名。
そんな二人がホラーコミックを実写映画で復活させるアイデアには、当時の(そして恐らく彼ら自身への)偏見や規制という時代の流れに対する皮肉が込められているのだと思うんですよね。

5本の短編からなるオムニバス形式

そんな本作は父子のプロローグとエピローグの他に、5本の短編からなるオムニバス作品になっています。

第1話『父の日

毎年“父の日“に会する富豪の親戚一同。
彼らは、横暴な家長だった父親(ジョン・ローマー)を殺害した大叔母ベドリアヴィヴェカ・リンドフォース)の到着を待っています。
彼女は親戚達の元へ向かう前に父親の墓を訪れるのだが――というストーリー。

この横暴な父親は猟でベドリアの恋人を事故に見せかけて撃ち殺したという過去があり、年老いてからはベドリアに介護を強要してるわけです。
今風に言うなら老々介護ってやつですね。しかし、もとより横暴な男なので父の日のケーキを強要し、しまいには娘のベドリアをビッチ呼ばわりする始末。
ついに堪忍袋の尾が切れたベドリアは大理石の灰皿で父親を撲殺。
メイドと共謀して事故死に見せかけるのです。

キングやロメロが意識したかは分かりませんが、1982年の段階で毒親問題や老々介護を扱っている先見性に驚かされましたねー。

第2話『ジョディ・ベリルの孤独な死

農夫ジョディ・ベリルの家先に隕石が落下。
まだ熱いそれに触れたジョディは、指先に火傷を負ってしまいます。
彼は隕石が金になると期待するんですが、触れた指先から体に異常が現れ始め――というストーリー。

ちなみに本作の主人公ジョディ・ベリルをユーモアたっぷりに演じたのは、若き日のキングなんですよねw
(父親にホラー漫画を取り上げられる少年はキングの長男ジョー・ヒル

第3話『押し寄せる波

ある朝ハリー(テッド・ダンソン)を初老の男が訪れます。男はハリーの不倫相手ベッキーゲイラン・ロス)の元夫リチャードレスリー・ニールセン)。
リチャードに「ベッキーに”想像を絶する一大事”が起った」から脅されたハリーは、リチャードに従い砂浜へと向かうのだが――というストーリー。

リチャードを演じるのは「裸の銃を持つ男」などで知られるレスリー・ニールセンで、コメディ俳優のイメージが強い彼ですが、本作では間男と不倫妻への復讐に燃える恐ろしい男を演じています。

そして、最初はスリラーかと思って観ていると、後半に驚きの展開が待っているんですね。

第4話『

大学の守衛が落としたコインを暗い階段下の網付きの物入れに転がしてしまい、そこで古い木箱を発見します。

一方、パーティの席で英文学教授ヘンリーハル・ホルブルック)の妻ウィルマエイドリアン・バーボー)は酒に酔って若い数学教授夫妻に絡んだり、公衆の面前でヘンリーを怒鳴り嘲ったり。そんな彼女にヘンリーは殺意を抱くも、気が弱い彼はウィルマを殺す妄想をするだけで何も言えません。

そんなパーティーの最中、守衛から電話を受けたヘンリーの友人デクスター(フリッツ・ウィーヴァー)は大学へ向かいます。
守衛が見つけた木箱には「1834年6月19日北極」のラベリングが。

デクスターは守衛と二人、研究室に運び出した木箱を開けるのだが――というストーリー。

これも、147年前の木箱を開けるデクスターと、鬼嫁に殺意を抱きつつ逆らえないヘンリーの物語がクロスしていくんですね。

第5話『奴らは群がり寄ってくる

短気で傲慢な会社社長アプソン・プラット(E・G・マーシャル)。
潔癖症の彼は無菌のペントハウスに暮らしていますが、何故か部屋にGが出てくる。
見つけては退治する彼でしたが、Gは減るどころかどんどん増え続け――というストーリー。

要は潔癖症の男が大量のGに襲われるだけの物語なんですが、劇中の電話を通して彼の無慈悲で傲慢な性格を描き、Gと彼が見下す人々をリンクさせているんですね。
また、潔癖症でGを憎むに至る背景が分かる構成で、短い物語に厚みを持たせているのです。
ただ、それはそれとして、大量のG(本物)が動き回る絵面は生理的に来るものがあり、苦手な人は絶対ムリって感じでしょうか。(((((( ;゚Д゚)))))ガクガクブルブル

そしてエピローグでは、ホラー漫画を取り上げられた息子が父親にある復讐をして物語は終了するんですね。

意外と社会派?

ジョージ・A・ロメロ監督は、ゾンビ映画ばっかり撮ってるのでゲテモノ映画専門の監督と思われがちですが、「ゾンビ」の大ヒット後にはホラー監督という肩書からの脱却を目指し社会派ドラマやラブ・ストーリーなども監督しているし、そもそも彼のゾンビ映画には、公民権運動や大量消費社会への警告など、その時代の社会問題が必ず織り込まれていたりするんですよね。

本作でも民主主義の権化のような男だったり、毒親、鬼嫁、時代錯誤な強権的な父親などが登場していて、その辺は脚本のキングのアイデアかもですが、いわゆるB級ホラーではあるものの、今観ると意外と社会派なテーマや、現代に通じる先見性があったりして驚きましたねー。

もちろん40年近く前の作品なので、恐怖描写はわりと牧歌的というか、いかにも作り物っぽさがあるのは確かなんですが、実はこの映画が公開された1962年当時でも特殊メイクや造形、撮影技法など「ゆるいなー」と思ってた記憶があります。

その辺は、前述したように「ホラーコミック」オマージュということで、わざとポップでキッチュな映像にしているんでしょうね。

興味のある方は是非!!

 

▼良かったらポチッとお願いします▼


映画レビューランキング