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今も色褪せないゾンビコメディーの傑作「バタリアン」(1986)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「エイリアン」(79)で脚本を担当したダン・オバノンの長編デビュー作『バタリアン』ですよー!

ゾンビ映画の父ジョージ・A・ロメロの長編デビュー作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のパロディーとして、ホラーながら思いっきりコメディーに振り切ったゾンビ映画初期の傑作です!

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

ゾンビ映画の元祖「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生」で描かれた事が実際にあったという前提で作られた間接的な続編。ロスにある科学資料庫の地下で発見された謎のタンク。そこから吹き出した特殊なガスには死者を蘇らせる作用があった……。(allcinema ONLINE より引用)

感想

バタリアン制作の経緯

バタリアン」の原題は「リターン・オブ・ザ・リビングデッド

実は本作はロメロの長編デビュー作であり、元祖ゾンビ映画ナイト・オブ・ザ・リビングデッド“正式な続編”だったりします。

その経緯を箇条書きで説明するとこんな感じ。

ロメロが故郷ピッツバーグで制作した16ミリフィルムの長編デビュー作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」が大ヒット。→

しかし、ピッツバーグのインディー監督だったロメロは、新作を作るお金がない。→

「そうだ! 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の続編を作る権利をメジャー映画会社に売ろう!」→

メジャーの映画会社MGMが大金でその権利を購入→

大金を手に入れたロメロは「ナイトライダーズ」、「クレイジーズ」、「マーティン」などのインディー映画を作り、その後ハリウッドに進出して制作した「ゾンビ」(79)が大ヒット→

権利上「ゾンビ」は「ナイト・オブ~」の続編ではないが、誰が見ても「ナイト・オブ~」の続編→

MGM「ι(`ロ´)ノムキー」

・MGMは「エイリアン」「スペースバンパイア」の脚本家、ダン・オバノンを監督に招き、「ゾンビ」とは別に「ナイト・オブ~」の続編として「バタリアン(原題:リターン・オブ・ザ・リビングデッド)」を作ることに。

というわけです。

なので、本作は契約上は「ナイト・オブ~」の正式な続編というわけなんですねー。

で、ダン・オバマンが「ナイトオブ~」の脚本家ジョン・ルッソ、ルディ・リッチ、ラッセル・スタイナーの“原案”を大胆に脚色し、ホラーコメディーとなった本作は世界的大ヒットとなるのです。

日本では「オバタリアン」というマンガタイトルのネタ元で、その後「オバタリアン」という言葉は流行語になったりもしました。

ざっくりストーリー紹介

映画冒頭、「この映画は実話である」「従って登場する固有名詞は全て実名である」というテロップからスタート。

本作では、「ナイト・オブ~」は現実にあった事を映画にしたという前提になっているんですね。

アメリカ合衆国ケンタッキー州ルイビルにあるユニーダ医療会社で、倉庫係として働くこととなったフレディ(トム・マシューズ)は先輩の社員のフランク(ジェームズ・カレン)から仕事を教わっています。

この会社、白骨標本(本物)やら、犬の縦割り標本やら、冷凍庫に保存した“新鮮な死体”などを軍や医療機関に研究・実験や解剖用に卸す会社なのです。

一息ついたところでフランクがフレディに、会社の地下室にある死体の話をし始めます。

曰く、軍と製薬会社が、死体を蘇らせるガスを開発。
そのガスが漏れ出して、大事になったが軍は秘密裏に事態を収束し、研究用としてタンクに入れた「ゾンビ」を製薬会社に送るも、なんの手違いかこの会社に送られてから14年放置されている。のだと。

フランクは「見せてやる」とフレディを連れて地下室に。
二人がタンクの中のゾンビを見ていると、突然ガスが吹き出し二人に直撃。
気を失った二人が目を覚ますと、会社中にはダクトを通してガスが充満し、会社中の死体が蘇っている状態。困り果てた二人は社長を呼び出します。
そして3人は、蘇った冷凍庫の新鮮な遺体をバラバラにして、近所の葬儀屋アーニー(ドン・カルファ)に頼んで火葬。

一方そのころ、フレディの友人たちが車で迎えにくるも、仕事終わりの10時まで時間を潰す為に、会社向かいの墓地で大騒ぎしてるんですね。

その時、葬儀屋の煙突から火葬した死体の煙がモウモウと上がっている最中に、突然大雨が降り出し、雨に溶けた灰が墓地に降り注ぎ……。という物語。

最強のゾンビ

で、本作に登場するゾンビ、実は最強な上に超タチが悪い

まず、ロメロが提唱したゾンビの基本「頭を破壊or頭を落とされると死ぬ」というルールが通じず、首を切られようが頭を破壊されようがゾンビは動きまくります。

これにフレディは「映画は嘘だったのかよー!」とメタ的なセリフを叫んでひと笑い取ったり。
で、3人は蘇った冷凍庫の新鮮な死体をバラバラにして火葬しようとするわけですね。

しかし火葬しても、雨が降ると灰が地面に染み込んで墓地の死体が次々に蘇るので、“殺せないゾンビ”は延々増え続けるわけです。

そして、本作のゾンビは知能があって会話も出来ます
ガスを浴びて具合が悪くなったフレディとフランクを搬送するために読んだ救急車の救命退院を美味しく頂いたゾンビたちは、救急車の無線で「もう一台呼んでくれ」と要請。到着した救急隊員も美味しく頂き、送っても送っても連絡が途絶える救急隊員を不審に思い駆けつけた警察官も美味しく頂き、今度はパトカーの無線で応援を要請し……。ってな具合で、次々おかわりを要請しては美味しく頂いてしまうんですねーw

ちなみに、“彼ら”は脳みそしか食べません。
社長とアーニーが上半身だけのゾンビ、“オバンバ”を捕まえて尋問したところ、「死の痛みを癒せるのは生きた人間の脳みそだけ」と言うんですね。

つまり脳みそ以外(肉体)は残っているので、ゾンビに食べられた人間は100%ゾンビになるわけです。

さらに、本作のゾンビは走ります。

走るゾンビといえばダニー・ボイル監督の「28日後」(02)が最初だと思われがちですが、実は元祖走るゾンビは本作なんですね。
100%の確率で増え続け、何をしても死なず(焼いても灰で仲間を増やし)、知能があって走るゾンビって、これもう最強でしょ。

これは多分、ダン・オバノン監督のアイデアだと思うんですが、「リビング・オブ~」の続編(パロディ)をコメディーにするにあたり、ゾンビの弱点(人間の勝機)を片っ端から潰したんだと思うんですよねー。

一方、同時進行で、死体復活ガスを浴びてしまったフレディとフランクはどんどん具合が悪くなり、救急隊が到着して様態を見ると、心拍数0、血圧0、体温21度(室温)で、完全に死んでるわけですが、でも本人たちは会話も出来てるわけです。
この件はコメディ演出にはなってますが、実は彼らもまた刻一刻とゾンビに近づいているんですね。

そして、ゾンビ化したフレディは彼女に襲いかかり、フランクは“人間として死ぬために”自ら火葬炉に入って火をつけます。
外した結婚指輪にキスをしてフックに掛けてから、自ら焼却炉に入っていくシーンは思わずグッときてしまうんですが……よくよく考えたら全てはこのオッサンが原因なんですよねーw

また、何とかゾンビ化したフレディから逃げた彼女と葬儀屋のアーニーは天井裏に逃げ込むんですが、フレディが迫る中怯える彼女を抱きしめるアーニーの手に拳銃が握られているアップになるわけです。
これは、フレディに脳を食べられてゾンビにされるくらいなら、彼女と自分を銃で撃って死のうという、アーニーの考えが観客には分かるようになってるわけですね。

一見、ふざけ倒してる本作ですが、こういった細かい描写でダン・オバノンはしっかりロメロの「ナイト・オブ~」にリスペクトを捧げているし、脚本家出身の彼だけにストーリーはしっかり作りこんでいるのです。

あと、この映画はある衝撃的なラストを迎えるんですが、このラストは、キューブリック監督「博士の異常な愛情~」のオマージュですよね。多分。

SFXの到達点

本作が公開された1986年は、まだ映画にCGは使われておらず、上半身だけの「オバンバ」も、コールタール?をダラダラ流しながら迫り来る「タールマン」も、全部SFX(特撮)で撮影されています。(CGなど、撮影後のフィルムや映像データーを加工するのはVFX)
スピルバーグの「ジュラシック・パーク」以降、ハリウッドの特殊撮影はSFXからVFXへと舵を切っていくんですが、本作を含めた80年代~90年代のホラー映画は、アニマトロニクス(動物や生き物型のラジコン)などの技術がある種頂点に達した時代でもあり、(映画全体的には古臭さを感じるものの)本作のこうした特殊技術のシーンは、今見ても十分見ごたえがあるんですよねー。

特にタールマンのシーンは素晴らしいので、ゾンビ好きな人は必見ですよー!

興味のある方は是非!!

 

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