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ジェームズ・ガン版、美女と野獣?「スリザー」(2007)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のジェームズ・ガン2006年の作品『スリザー』ですよー!

前々から観たかった作品ですが、レンタル店には絶対ないだろうと高を括っていたらTSUTAYAで見つけたので、慌ててレンタルしてきましたよ!

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

グロテスクな宇宙生命体に寄生された人間たちが町中を襲うSFホラー。『ゾンビ』を現代的にリメークした『ドーン・オブ・ザ・デッド』で脚本を務めたジェームズ・ガンの初監督作。ある目的を秘めて地球を襲来した未知のエイリアンに立ち向かう警察署長に、『ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた』のネイサン・フィリオンがふんする。おぞましいエイリアンとの緊迫感あふれるサバイバルの中に、時折り入り交じるユーモアが笑いを誘う。(シネマトゥディより引用)

感想

ジェームズ・ガンという男

本作で監督・脚本を務めるジェームズ・ガンと言えば、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)シリーズの「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の大ヒットで一躍名を知られたわけですが、そんな彼のキャリアはB級映画専門の製作会社トロマ・エンターテインメントからスタートします。

大学在学中、アルバイトで入ったトロマで「ロミオとジュリエット」を現代版?にアレンジした「トロメオ&ジュリエット」の脚本(実質ノークレジットながら監督も兼任)を担当。
これで映画作りのノウハウを学んだ彼は、2002年公開で米アニメの実写化作品「スクービー・ドゥー」、2004年公開ジョージ・A・ロメロの同名映画のリメイク版「ドーン・オブ・ザ・デッド」で脚本を担当し、この2作が大ヒット。(スクービー・ドゥーでは続編の脚本も担当)

ついに本作で正式に監督デビューするわけです……が、これが米国でコケてしまい、ガンは、しばらくの間ハリウッドから干されてしまったらしいんですね。

といっても、本作の出来が悪いわけでは決してなく、単純に当時のホラー界のトレンドから本作が外れていた(「SAW」や「ホステル」がヒットしていた)事が、本作がヒットしなかった要因だったようです。

その後、2010年にほぼ自主制作体制で制作した監督作「スーパー!」で復活。
2014年公開の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」で一気に時の人になり、続く「~リミックス」も大ヒットし、人気監督の仲間入りをします。

ところが、2018年7月ディズニーの会長アラン・ホルンは、ガンのTwitterの投稿に不適切な内容があったとして、「ガーディアンズ~」シリーズ3作目の監督から解雇を発表。

どういうことかと言うと、左派として知られるガンは、日頃からドナルド・トランプ批判を繰り広げていて、その報復(というか嫌がらせ)で右派のコメンテーター・ジャック・ポソビエックらによって2008年〜2012年ごろにTwitterに投稿された小児性愛、レイプ、人種差別、ホロコーストエイズなどあらゆる不謹慎なジョークを掘り返され、これが問題になったわけです。

彼の名誉のために言っておくと、ガンは「ガーディアンズ~」の監督に就任する以前に、一連のツイートに対して既に謝罪済みでした。

しかし、2018年はハリウッド界隈にミートゥー運動やポリティカリーコレクトネスの風が吹き荒れていたこともあり、批判を恐れたディズニーがガンを解雇という決断をしたわけです。

しかし、これに「ガーディアンズ~」シリーズの出演者が復帰を求める公開書簡にサイン、ガンの再雇用を求めるオンライン請願サイトには、約35万人の署名が集まり、また解雇後もガンとホルンは話し合いを続けていて、最終的にホルン自身が彼の再雇用を決断したんですね。仕事を愛し、仲間を大事にするガンの姿勢と人柄が彼自身の窮地を救ったわけです。(まぁ、もちろんそれだけが理由ではないでしょうけども)

って、前置きが長いよ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

ということでここから本編ですよ。

寄生型エイリアン映画

本作を一言で言うなら、いわゆる「寄生型エイリアン映画」です。
体内に寄生して人間を支配・増殖していくタイプの地球外生命体ですね。

有名どころで言えば「エイリアン」「遊星からの物体X」「寄生獣」「ヴェノム」などなど。

映画評論家の町山智弘さんによれば、ガン監督はロバート・A. ハインラインの「人形遣い」という小説と「クリープス」(86)という映画に発想を得て本作のストーリーを作ったみたいです。

ざっくりストーリー紹介

アメリカ合衆国南西部のとある田舎町にある日隕石が落下するところから物語はスタート。
鹿狩り前夜祭に盛り上がるこの町の有力者グラントマイケル・ルーカー)は、ある晩妻のスターラエリザベス・バンクス)にHを拒否られ、ふてくされて飲みに出かけます。
酒場で出会った女友達の人妻ブレンダ(ブレンダ・ジェームズ)と盛り上がった二人で森に行くと、卵のような不思議な物体を発見。
近づくとそれが発射した針のような物がグラントの胸に突き刺さり、彼は地球外生命体に脳を乗っ取られてしまうんですね。

その日からグラントは生肉を買い漁って家の地下に密かに貯蔵し、妻にわからぬよう鍵をかけます。
更にはブレンダの体内に地球外生命の種を植え付け、人知れず侵略を始める――というストーリー。

その後、膨れ上がったブレンダの体を突き破って出てきた大量のナメクジのような生物が、次々に町民を乗っ取っていき、地球を征服しようとするのを町の警察署長ビル(ネイサン・フィリオン)、スターラ、牧場の娘カイリー(タニア・ソルニア)が阻止しようとするわけです。

80年代ホラーをオマージュ

そんな本作、2006年の作品なので、おそらく随所でCGを使用していると思うんですが、映画のルックは特殊メイクや特撮技術を駆使した80年代ホラーのようですし、そのまま「遊星からの~」や「エルム街の悪夢」など80年代ホラーをオマージュしたシーンもあったりします。

ガン監督は1966年生まれですからね。
特殊メイクや特撮技術の進歩によって、隆盛を極めた80年代ホラーの手触りを意図的に再現しようとしたのかもしれませんね。

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画像出展元URL:http://eiga.com

個人的にお気に入りのシーンは、ブレンダの旦那が寄生されたグラントの触手攻撃で「開き」にされちゃうシーンです。

他にも、ヒッチコックを思わせるシーンや、ジョージ・A・ロメロオマージュと思われるシーンなどもあって、映画好きの人ならニヤリとするんじゃないでしょうか。

ゾンビもの?

個人的に本作で面白いと思ったのは、このナメクジ状の生物はそれぞれが別個体ではなくて、これに寄生されるとグラントに寄生した本体に操られる。
電話で言えば親機ではなく子機が増える感じなんですよね。

なので、もし仮に地球上の生物全てが寄生された場合、地球上の生物は「全部俺」状態になるわけです。

寄生された人間は、まるでゾンビのようにスターラたちに襲い掛かるんですが、そういう意味で彼ら・彼女らはゾンビというより吸血鬼に血を吸われたグールに近いかもしれません。

そしてこのモンスターの「全部俺」設定を、グラントのキャラやストーリーに深く絡めていく構成は、さすが脚本家出身のガン監督だなーと思いましたねー。

侵略した生物全てが「俺」になるということは、ぼっちと同義ですからね。
本作では寄生された翌朝、前日Hの誘いを拒否ったことを反省したスターラが朝Hに誘うことでグラント(モンスター)は初めて愛を知り、それが弱点になるという設定になってるわけです。

序盤、町の連中の「貧乏だったスターラは生活のため裕福なグラントと結婚した」というセリフがあるんですが、それが本当、もしくはグラント自身がそう思っていたとしたら、グラント自身も孤独を感じていた?ということで、そんなグラントが最初の犠牲者になるのは(物語的)必然でもあるんですよね。

そう考えると、本作の骨格は「美女と野獣」をモチーフにしているのかも?なんて思ったりしました。

まぁ、だとしたら相当悪趣味ですけどもw

なんせこっちの怪物はヌルヌルグチョグチョの触手野郎ですからねー。

キャスト

で、そんな本作のキャストは、ジェームズ・ガン作品ではおなじみのメンバーが揃っています。
グラント役には、ガンの盟友で「ガーディアンズ~」ヨンドゥ―役でおなじみの怪優マイケル・ルーカー

警察署長ビル役に「スーパー!」のホーリー・アベンジャーや「ガーディアンズ~」の囚人役で出演したネイサン・フィリオン。

スターラ役に「ムービー43」の中でガンが監督したエピソード「Ned ネッド(Beezel)」「ブライトバーン/恐怖の拡散者」でお母さんのトリを演じたエリザベス・バンクス

などなど。

このキャスティングにも、ガン監督の仕事仲間を大切にする姿勢が見て取れますね。

まぁ、グロシーンや生理的にアレなシーンも多いので苦手な人にはお勧め出来ませんが、ストーリーや構成、テンポのいい編集や音楽など、今のジェームズ・ガンにも通じるセンスが光る面白い作品でしたよ。

興味のある方は是非!!

 

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