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「海街diary」(2015) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、吉田秋生さん原作の同名マンガを『そして父になる』の是枝裕和監督が実写映画化した作品『海街diary』ですよー!

是枝監督の新作ということで、公開前から映画ファンの間で話題の作品だったので、僕も密かに観るのを楽しみにしていましたー!

 

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画像出典元URL:http://eiga.com/

概要

『月間フラワーズ』で2006年より不定期連載されている吉田秋生の同名マンガの実写映画化作品。
父親に捨てられた三人姉妹と、その父が不倫相手の女性との間に残した娘 すずとの同居生活を描く。
監督は『そして父になる』などの作品で注目の是枝裕和

 

あらすじ

鎌倉に暮らす香田幸(綾瀬はるか)・佳乃(長澤まさみ)・千佳(夏帆)の三人姉妹にある日、母と離婚し自分たちを残して家を出て行った父の訃報が届いた。
父の葬儀に出席の為に山形に出向いた三人は、中学一年生の異母姉妹、浅野すず(広瀬すず)と出会う。

既に実母を亡くし、父と、父の再婚相手と暮らしていたすず。
すずと血の繋がりのない父の再婚相手は頼りなく、幸はすずに鎌倉で一緒に暮らすことを提案。
こうして、鎌倉に越してきたすずと、幸・佳乃・千佳。4人姉妹の一年が始まる。

 

感想

是枝監督が描く「家族」になる映画

劇映画だけでなく、TVドラマ、CM、ドキュメンタリーと幅広く活躍している是枝監督ですが、僕は恥ずかしながら前作『そして父になる』しか観ていないんですね。
ただ、『そして父になる』が個人的に凄く良かったので、本作にも期待していたんです。

物語は前作『そして父になる』同様、日常や小さなエピソードを淡々と積み重ねていく是枝スタイル。
ただ、前作ではキャラクターのセリフや行動から登場人物の小さな悪意や対立を際立たせていたのに対し、本作はそうしたマイナス面を心の中に止める事で日常を守ろうとする物語になっています。

一見何も起こらない映画だけれど…。

一見、本作は何も起こらない映画に見えます。
4人の姉妹の日常を淡々と綴る物語。

しかし4人姉妹の日常は、ほんの小さなきっかけで崩れてしまう危ういバランスの上で成り立っているんですね。

長女 幸と異母兄弟である末っ子のすずは、正反対のようでよく似ています。
父と母に捨てられ、『家』を守るために生きてきた幸。
父と母に死なれ、『居場所』を失ったすず。

幸は自分が弱みを見せないことで、すずは本音を隠し周りに合わせることで『自分の居場所』を守ろうと戦っています。

映画冒頭、亡き父の葬儀のあとに幸が自分たちと暮らさないかとすずを誘うのは、いささか唐突な印象を受けるかもしれませんが、幸は自分によく似ているすずを放っておけなかったんじゃないかと思います。

そんな姉の気持ちを汲んでか、佳乃と千佳の二人は、すずが家に溶け込みやすいようにそれとなく気を使ってやり、すずもそんな二人や幸、街の人々に見守られながら少しづつ家に馴染んでいくわけです。
古都鎌倉に建つ古い家での姉妹の穏やかな時間。

「もう、ずっとこの光景を見ていたい」と思わせる小さな幸せの世界です。

そんな世界にさざ波を立てるのが、樹木希林さん演じる姉妹の大叔母と大竹しのぶさん演じる幸・佳乃・千佳の母親。
樹木さん演じる大叔母は、決して悪い人ではないけど少々無神経な物言いをする人で、多分観客全てが「あー、こういうおばさんいるわー」と思う人。
『家』が居場所と思えなかった大竹さん演じる母親は、祖母?の法要に現れて突然家を売ってマンションを買ったらどうかと提案し、幸と大喧嘩になります。

失った人たちの物語

本作に登場するキャラクターはみんな、『何か』を持っていなかったり失ったりしています。

幸とすずは、無邪気でいられる子供時代を。
佳乃は恋人に振られ。
千佳は、両親の離婚の時は幼かったので父の記憶が殆どありません。
そうした、痛みを胸の奥にそっと抱えながら日常を送っているんですね。

役者陣が素晴らしい。

本作では、登場する役者陣がとても素晴らしいです。
特に驚いたのが、幸を演じる綾瀬はるかさん。
なんとなく天然で、どちらかといえばコメディアンヌ的な役どころの多かった印象があったんですが、本作ではしっかり者ゆえに甘え下手な長女を見事に演じ切っています。

末っ子すず役の広瀬すずさんも、難しい役どころをフレッシュに演じているし、次女佳乃役の長澤まさみさんも素晴らしかったです。
そんな中、特に個人的に良かったと思ったのが、三女千佳役の夏帆さん。
幸が表立って家族をまとめる家長だとすれば、千佳は何気ない一言で、幸やすずが背負っていまう余計な荷物をそっと下ろしてあげる、そんなキャラクターです。

のんびり屋で男の趣味がおかしいと佳乃にからかわれてもどこ吹く風で飄々としているけれど、そんな彼女も父親との思い出がない痛みを抱えている。
そんな千佳というキャラクターと夏帆さんの持つ空気感が絶妙にマッチしていて、個人的に一番好きなキャラクターになりました。

姉妹に寄り添うように物語を紡ぐ。

そんな3姉妹とすずが家族になっていくまでの物語を、是枝監督は4人に寄り添うように紡いでいきます。
そんな日常の中で起こる波紋の一つ一つは小さなものですし、本作自体が小さな物語といえます。

しかし、是枝監督は『家族』という一番小さなコミュニティーの物語を丁寧に描くことで、その向こうに広がる人と人の普遍的な繋がりや営みのあり方を、観客に示したんじゃないかと思うんですよね。

出来れば前作『そして父になる』とセットで観てもらえれば、よりグッとくるんじゃないかなーなんて思いますよ。

興味のある方は是非!!