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普遍的な家族の物語「フェイブルマンズ」(2023)

ぷらすです。

スティーブン・スピルバーグ最新作『フェイブルマンズ』を、公開初日、初回に行ってきました。

スピルバーグの半自伝的作品と聞いて「あの作品やあの作品の裏側とか描かれるのかしらん」とワクワクしながら観に行きましたが、結論から言うと本作は、もっと普遍的な家族の物語でしたねー。

というわけで今回は、まだ公開したばかりということで、出来るだけ内容に触れないよう気を付けてこの感想を書きますが、まだ本作を未見と言う人、ネタバレ許すまじと言う人はお気を付けください。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

E.T.』など数多くの傑作を生み出したスティーヴン・スピルバーグ監督の自伝的作品。映画に心を奪われた少年がさまざまな人々との出会いを通じて成長し、映画監督になる夢を追い求める。『デッド・シャック ~僕たちゾンビ・バスターズ!~』などのガブリエル・ラベル、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』などのミシェル・ウィリアムズ、『ルビー・スパークス』などのポール・ダノのほか、セス・ローゲン、ジャド・ハーシュらが出演。第47回トロント国際映画祭で最高賞に当たる観客賞を受賞した。(シネマトゥディより引用)

感想

スピルバーグの半自伝的物語

おそらく、映画をほとんど観ない人でもその名前は知っているであろう映画監督、スティーブン・スピルバーグ

ジョーズ」「ET」「インディー・ジョーンズ」「シンドラーのリスト」「ジュラシック・パーク」「プライベート・ライアン」などなど、どの世代の人でも彼の作品を1作は観ているのではないかと思います。

かく言う僕は、まさにスピルバーグドンピシャ世代で、スピルバーグの映画で育ったと言っても過言ではありません。

そんなスティーブン・スピルバーグ監督39作目となる本作『フェイブルマンズ』は半自伝的映画だと聞き、「一体どんな映画になるのか、もしかしてあの作品やこの作品の裏話が見られるんだろうか」と楽しみに観に行ったんですが、結論から言えば本作は、映画人スピルバーグではなく、スピルバーグ少年が映画人になるまでを描いた物語でした。

物語はスピルバーグの分身、サミー・フェイブルマンが幼少時代両親と映画を観るところから始まります。

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暗いのが嫌だゴネるサミーに、映画の理屈(1秒間24コマの写真がスクリーンに映写されることで写真が動いて見える云々)を説明するエンジニアの父親、映画の面白さを感覚的に話す母親。この冒頭数分のシーンで、両親のそれぞれの性格や、今のスピルバーグ監督の基礎が両親にあることを端的に説明していて、もう、どんだけ映画上手いんだよスピルバーグ!って思いましたよ。

そんな彼が始めて観た映画が「史上最大のショウ」(52)。

自動車と列車がクラッシュし、大脱線事故を起こすシーンに衝撃を受けたサミーは、父に買ってもらった鉄道模型とミニカーをクラッシュ。鉄道模型は壊れ父親に怒られるも、サミーがやろうとしたことを察した母親は、もう一度クラッシュさせて、それを父親の8㎜カメラでフィルムに残す事を提案。

こうして映画製作に夢中になったサミーは、最初は姉妹や家族を、やがて友人とともに8㎜映画を作り続けながら、映画の娯楽性を学ぶ一方で、その卓越した感性と観察眼ゆえにフィルムが映し出す真実に傷つき、愛する家族をも傷つけてしまうことで映画の残酷さを知っていくんですね。

ラブストーリー

映画ファンには、彼が映画作品に自身の経験を投影し続けている事を知る人も少なくないと思います。

特に彼が幼少のころから母とのケンカが絶えなかった父親が、離婚後子供たちを捨てて家を出た経験はスピルバーグの心に深い傷を残し、主人公が家族を捨ててUFOに乗って行ってしまう「未知との遭遇」を始め、数々の映画で父親の不在、もしくは子供たちとコミュニケーションの取れない父親が描かれています。

しかし、1989年以降、2度の結婚と7人の子供に恵まれ、また両親が長い別離を経て再び寄り添い始めたこともあってか、スピルバーグ自身も父親との関係を修復。そうした父親との関係性の変化は、以降の作品にも反映しています。

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それらの経験を経て、本作は半自伝的作品でありながら、実質、主人公はサミーの両親と言っても過言ではありません。

自由奔放で芸術家肌の母親と、真面目でもろに理系の父親。

そんな両親に愛されながらも、時にはぶつかり反発してしまうサミー。

御年76歳のスピルバーグは、そんな両親、そして”あの時の自分“を慈しむように本作を描いているんですね。

それはある意味、あの時もっとこうしていれば――という少年時代のやり直しにも見えるし、年齢と経験を重ねた今の自分だから分かる両親の気持ちに寄り添って描いた作品とも言えるのでしょう。

本作は、そういう意味でスピルバーグが両親に送るラブレターであり、愛し合いながらも離れざるを得なかった両親のラブストーリーでもあるのです。

だからこそ、映画や映画作りにさほど興味のない人にも、本作はきっと心に刺さる物語になるのではないでしょうか。

映画作りの楽しさと怖さ

それはそれとして、そこはスピルバーグ映画なので、彼が作る8㎜映画の制作風景などと完成したフィルムの上映会は観ていて心躍るし、逆に、父親に頼まれて撮った家族キャンプのフィルムや、高校時代に引っ越した先で受けるユダヤ差別に対し、(自身の意図ではないにせよ)撮影した映画の暴力性に怯えながら、それでも映画から離れられないスピルバーグの業など盛りだくさんの内容で、ほぼ3時間と長尺な作品ながら、観ている体感としてはあっという間に終わってしまったという感じ。

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観ながら何度も涙したし、めっちゃ楽しんだし、結論としては、やっぱスピルバーグはホント映画神男だな!って思いました。

興味のある方は是非!!

 

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