今日観た映画の感想

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100年周年を迎えディズニーの魔法が解ける「ウィッシュ」(2023)

ぷらすです。

今回ご紹介するのはDisney100周年記念作品の『ウィッシュ』ですよ。

うん、まぁ、うん。

僕にとって本作は、やりたい事、言いたい事は分かるんだけど「これが本当に、“あの”ディズニー作品なのか!?」って思ってしまう内容でした。なので、本作をメッチャ楽しめた。面白かったという人は、この感想は読まないでください。多分、最初から最後までけなす事になると思うので。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

ウォルト・ディズニー・カンパニーの創立100周年記念作品で、願いの力をテーマにしたミュージカルアニメ。最も大切な願いを王様にささげることで願いがかなうとされる国を舞台に、王国の秘密を知った17歳の少女アーシャが悪に立ち向かう。『アナと雪の女王』シリーズなどのクリス・バックがファウン・ヴィーラスンソーンと共に監督を務め、『アナと雪の女王』シリーズなどの共同監督であるジェニファー・リーが脚本を担当。ヒロインの声を『ウエスト・サイド・ストーリー』などのアリアナ・デボーズが担当する。(シネマトゥディより引用)

感想

ディズニーとポリコレ

僕は本作をDisney+で観たんですが、それは個人的に、昨今のディズニー作品に対して映画館で観ようと思うほどの魅力を感じなかったからです。

その大きな理由が今西洋を中心に問題になっているポリコレ。

ポリコレはポリティカルコレクトネスの略称で、 社会制度やあらゆる表現を差別・偏見のないものに変え、人種や性別、年齢、障害の有無などによるマイノリティ・社会的弱者を守るための運動のこと。

個人的にこの理念自体が悪いとは思わないし、まだまだ世界中に差別や偏見が蔓延っているのも事実。とはいえ、行き過ぎたポリコレ思想の押し付けは、逆に反発と分断を呼ぶだけではないかとも思うんです。まぁ、一方でマイノリティーが主人公のエンタメ作品というわけで過剰反応し叩きたがる層もいるので、どっちもどっちという感じではあるんですが。

で、現状エンタメ業界でそんなポリコレ最前線にいるのがディズニー。

僕は、ディズニー作品とのつきあいは決して長くはないけれど、それでも昨今のディズニー作品を観ていると「うーん……」となってしまうんですよね。

また、Disney+の登場とコロナ騒動によって、ディズニー関連作品は劇場公開から1・2か月もしないうちにDisney+で観られるため、わざわざお金を払って劇場で観なくても——という人も増えているんじゃないでしょうか。僕も正直そうだったりします。

まぁ、そんなアレコレもあって、中々本作に手が出せなかったんですが、先日やっと重い腰を上げてDisney+で視聴したわけです。

これがディズニー100周年作品…だと

で、そんな「ウィッシュ」を観た感想なんですが、内容の好き嫌いは抜きにして個人的には今まで観たディズニー作品の中でもかなりヤバいって思いましたねー。もちろん悪い意味で。

本作はディズニー作品「ピノキオ」の主題歌でもある名曲「星に願いを」が本作のモチーフになっていて、どんな“願い”も叶うと言われている “ロサス王国”を舞台に、17歳の少女アーシャが、ある出来事によって王国に隠された秘密を知り、ディズニー史上最恐のヴィラン(悪役)マグニフィコ王に立ち向かうというあらすじなんですけど、実際に観るとその印象はかなり変わると思います。

まずは映像なんですが、こちらはディズニー100周年ということもあって、現在の3DCGアニメに、古き良き手書きアニメのデザインや雰囲気を反映させようという試みがされているんですね。

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ところが、これがどうも上手くいってないからか、人物も背景もなんだか書き割りのように薄っぺらく感じてしまうんですよね。手書きと3DCDがケンカして互いの良さを消し合ってるというか。

でもそれは多分、単純に技術の問題ではなく、むしろ問題なのは演出や作劇。

例えば冒頭。主人公アーシャが国外から来た親子に、本作の舞台であるロサス王国を歌とダンスに乗せて案内するというシーンがあるんですが、このシーンでのロサスの風景がちっとも魅力的に見えないのです。

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これまでのディズニー、「アナと雪の女王」の戴冠式のミュージカルシーンや「ズートピア」の街の様子は見ているだけでワクワクするし、「塔の上のラプンツェル」のランタンのシーンは観ているこっちが震えるくらい美しかったじゃないですか。

本作のこのシーンもそうあるべきで、まずは観ている観客に「この国に住みたい」と思わせるくらい魅力的に町を描くことで、後にアーシャがこの国の真実を知った時とのギャップが活きるハズだし、この冒頭とラストの町の描写と上手く描き分ければ、特に説明はなくても観客は納得できたはず。

ところが本作では終始、この町の描写が平坦で何の魅力も感じないんですよね。

それは人物描写も同じで、主人公アーシャは優しすぎるのが“欠点”に思えるくらい優しい女の子という設定らしいんですけど、それを親友のダリアに言わせるんですよね。

これまでのディズニー作品なら、そこまでにアーシャが優しい女の子である事を映像で見せる描写が入ってたハズだけど、そういう描写は一切なし。
なのでこの設定にもまったく説得力がなくて、その後の彼女の行動にまったく感情移入が出来ず、ただ浅慮で身勝手な小娘に見えてしまうのです。

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今回のヴィランであるマグニフィコ王の王妃アマヤは、長年マグニフィコと寄り添ってきたハズで、彼の人生の苦難も思いも知っているハズなのに、マグニフィコが道を踏み外した瞬間に手のひらを返し、夫をあっさり見捨ててあまつさえ地下牢に閉じ込める薄情な妻に見えてしまうし、アーシャの親友の一人サイモンは作劇の不味さとその後の物語的なフォローがないからただ友人を裏切ったヤツのまま終わってしまう。

アーシャの親友ダリアは見た目アジア人で聡明で足(というか脳)に障害がある女の子。

でも、この足の障害については作中一切触れらる事はなくて、物語にも何の貢献もしないんですね。だったら別に障害の設定とかいらなくね?っていう。

ディズニーの前作「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」でも主人公の男の子がゲイだったり、飼い犬の足が一本無かったりしたけど、その設定も、物語に一切関係がなかったんですよね。

前にも書いたけど、アニメの場合、映像に映る物や人には必ず製作者の意思・意図が反映されるわけで、その設定に物語的な関係がない場合、それはただ、ポリコレの為と思われても仕方ない……っていうか、確実に彼女はポリコレ要員で、僕はそこにとてつもなく嫌な何かを感じてしまうんですよね。

そんな本作で唯一、僕が感情移入出来たのがヴィランであるマグニフィコ王でした。

彼は幼い頃、家族を盗賊の凶行によって失い、その悔しさから鍛錬を重ねて魔法使いになったという過去があり、ロサスの王になり、様々な理由で踏みにじられてきた弱き人々を受け入れて平和に暮らせる国を作った、いわば名君なわけですよ。

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そんな彼を信じて国民は「願い」を預けているわけで、彼自身(少なくとも中盤までは)、国民の願いを大事に保管しているし、最初から全員の願いを叶える約束はしてないわけです。年に1人?願いを叶えますよという約束に、国民も納得していたはず。

なのに、弟子募集に応募した小娘が、自分の祖父(100歳)の願いを叶えないのはおかしいとテロ活動を始めて、今まで散々世話してやった国民もそれに同調しはじめたら、それは「この恩知らずどもが!」ってブチ切れて当たり前でしょ。

お前ら今まで散々よくしてやった俺より、そのヘンテコマスコットを信じるのかよ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッって。

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もちろ、「願いは人に適えてもらうものじゃなく、自分で叶えるもの」っていう本作のテーマは分かっているし、本作でやろうとしていたことも分かるけれど、それらを上手く物語に落とし込めていない——っていうか、そもそも作劇が破綻し、演出が杜撰すぎるから、ディズニーの主張ばかりが悪目立ちしてしまっているし、本作唯一の美点であるミュージカルシーンの魅力も半減しちゃってるんですよね。

全体的に作ろうとしているモノに対して、クリエイターのレベルが達していないという印象でした。

現実と物語がリンクしている

っていうか、さすがに意図はしてないと思うけど、本作のマグニフィコ王と国民の関係が、今のディズニーとユーザー(ファン)の関係とまるっと被っているように見えるのは何とも皮肉で、もしもディズニークリエイターが、昨今のディズニー作品に反発するファンたちを揶揄するつもりで本作を作ったのなら、逆に凄い!と思いますけど……まさかね?

来年は、何かと話題なレイチェル・ゼグラー主演の実写版「白雪姫」の公開も控えていているディズニーですけど、この感じが続くなら僕はもういいかな…って正直思ってしまいましたねー。

興味のある方は是非。