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フランケンシュタインを現代にアップデート「哀れなるものたち」(2024)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ヨルゴス・ランティモス監督、エマ・ストーン主演。第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門での金獅子賞を始め数々の賞を受賞した『哀れなるものたち』ですよ。

先日、Disney+で公開されたので早速観てみました。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

女王陛下のお気に入り』などのヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンが再び組み、スコットランドの作家アラスター・グレイによる小説を映画化。天才外科医の手により不幸な死からよみがえった若い女性が、世界を知るための冒険の旅を通じて成長していく。エマふんするヒロインと共に旅する弁護士を『スポットライト 世紀のスクープ』などのマーク・ラファロ、外科医を『永遠の門 ゴッホの見た未来』などのウィレム・デフォーが演じる。第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で金獅子賞を受賞。(シネマトゥディより引用)

感想

始めましてのヨルゴス・ランティモス作品

本作「哀れなるものたち」と言えば、日本では 2024年1月26日に劇場公開されたばかりなのにもうDisney+で配信が始まっていてビックリしたんですが、都合が合わなくて劇場では観る事が出来なかったので、さっそく視聴しました。

本作の監督ヨルゴス・ランティモスといえば、子孫を残せない人間は動物に変えられてしまう「ロブスター」や、エウリピデスの「アウリスのイピゲネイア」を基にしたというサイコホラー「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」などを手掛けた鬼才。
好き嫌いはあれど映画好きの間では知られた映画監督なんですが、僕はヨルゴス・ランティモス作品は本作が初めましてなんですね。

別に意識して避けていたわけではないけど、ちょっと難しい印象がある作品の評判に観る前はちょっと身構えてしまいましたが、実際に本作を観てみるとポップで観やすい作品でした。まぁ、この作品だけかもしれませんけども。

主演は「ラ・ラ・ランド」と本作で2度のアカデミー賞主演女優賞を受賞したエマ・ストーン。ランティモス監督とは「女王陛下のお気に入り」で1度タッグを組んでいて、本作では自らプロデュースにも名を連ね監督の次回作「憐れみの3章」にも出演しています。

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本作は1992年に発表されたアラスター・グレイの同名小説を原作にしていて、僕が観た印象としてはメアリー・シェリーの小説「フランケンシュタイン」の女性版という印象を受けたんですが、映画評論家の町山智浩氏によれば、アラスター・グレイが本作の主人公ベラのモデルにしたのはメアリー・シェリー自身だったそう。そこに彼女の代表作である「フランケンシュタイン」の設定を絡めたということらしいんですね。

本作ではそんな原作を、より現代的に再構築・アップデートしていると思いました。

ざっくりストーリー紹介

そんな本作のストーリーをざっくりご紹介すると、超天才外科医のゴッドは橋から飛び降り自殺をしたヴィクトリアという妊婦のお腹にいた胎児の脳を彼女の肉体に移植。ベラと名付けて自宅で成長の過程を記録しています。

そんなゴッドを慕う医学生マックスは、ゴッドからベラの観察記録を依頼され引き受けますが、驚くべきスピードで成長するベラに心惹かれるようになり、やがてゴッドの励ましを受けベラに結婚を申し込み、ベラもそれを受け入れるんですね。

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しかし、知性が急速に発達したベラは外の世界に興味を持ち、結婚の契約のために家に上がり込んだ弁護士でプレイボーイのダンカン・ウェダバーンに誘惑されて駆け落ちをしてしまうのだが——という物語。

(主に)様々な男たちとのセックスを通してベラが“セカイ”を知り、やがて自己を確立していくというのが物語の主軸になるんだけど、そこに悲壮感がないのは、それらの展開が常にベラ自身の選択だからなんだと思います。

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逆に、父親から実験動物的虐待を受けて育ったゴッドはそれ以外の愛し方を知らないし、無知なベラを自分の思い通り弄び、飽きたら捨てるつもりだったのに成長するベラに執着するようになるダンカン。そして娼館で働くようになるベラが相手をする様々な性癖の客たちや、ベラの生前であるヴィクトリアの元夫など、彼らは総じてベラ(=女性)を物扱いして、または自分の所有物にしようとするんですが、本作はベラの視点でそんな男たちの様子を時に醜く、時に滑稽に描いています。
そしてそんな男たちは、ベラの視点で見ると狭い視界に囚われた酷く不自由な「哀れなるものたち」なんですよね。

文脈的には、無知な主人公がさまざまな体験を通して内面的に成長していくビルディングスロマン的作品であり、上記の描写からフェミニズム的な内容とも言えるんだけど、映像的にはかなりカラフルでポップ。絵本やマンガのようなデフォルメされた世界で、物語的にも寓話的なので観ていて小難しい感じはしないんですよね。
だけど、しっかり現代社会への風刺や皮肉。批判や批評も入れ込んでいて、観終わった後も色々考えさせられる内容でした。

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ただ、本作ではかなり過激?なセックスシーンが描かれる(Disney+で見る限りぼかしなども入っていない)ので、その辺に抵抗のある人はちょっと受け付けないかもしれませんが、個人的には面白い映画でしたよ。

興味のある方は是非!!