ぷらすです。
今回ご紹介するのは、交通事故で胸から下が麻痺するも、風刺漫画家として活躍したジョン・キャラハンの自伝を基にした映画『ドント・ウォーリー』ですよー!
みんな大好きホアキン・フェニックスがジョン・キャラハンを演じ、ジョナ・ヒル、ルーニー・マーラ、ジャック・ブラックなど個性派俳優が脇を固めたヒューマンドラマです。
画像出典元URL:http://eiga.com
概要
交通事故で胸から下がまひしながらも、再起した風刺漫画家ジョン・キャラハンの自伝を基にしたドラマ。ロビン・ウィリアムズが『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』公開時から映画化を構想し、当時から相談を受けていたガス・ヴァン・サント監督がウィリアムズの遺志を継いで作り上げた。キャラハンをホアキン・フェニックスが演じるほか、ジョナ・ヒル、ルーニー・マーラ、ジャック・ブラックらが共演する。(シネマトゥディより引用)
感想
ジョン・キャラハンの自伝を映画化
本作の主人公ジョン・キャラハンは、オレゴン州ポートランド出身の風刺漫画家。
日本ではほとんど知られてませんが(僕も知らなかった)本国アメリカでは割と有名な人らしいんですね。
元々アルコール依存性だった彼は、パーティーで出会った男の運転する車で交通事故に遭って四肢麻痺の障害を負ってしまいます。
車椅子と介護に頼らなければ何も出来ないどん底生活のイライラと孤独から、彼はますます酒に溺れて周りに当り散らす日々。
そんなある日、断酒を決意したキャラハンは、ある富豪の男性が主催するグループセラピーに通うようになります。
そこには、彼と同じようにアルコール依存性に苦しむ人々が集まっているのですが、そこに至る理由は様々。そんな彼ら彼女らとの交流を通してキャラハンの心情に少しずつ変っていくのです。
やがて大学に入った彼は、風刺や皮肉を込めた1コマ漫画を大学の新聞に連載。
これがキッカケで彼の漫画は評判になり、やがて有名雑誌などに掲載されるまでになるんですね。
今は亡きロビン・ウィリアムズの意思を継いだ作品
本作は、そんなジョン・キャラハンの自伝『Don't Worry,He Won't Get Far on Foot』を基にガス・ヴァン・サント監督で今回映画化したんですが、実はこの作品、あのロビン・ウィリアムズが『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』公開時から自らが主演で映画化を熱望し、「グッド~」でタッグを組んでいたガス・ヴァン・サント監督に相談していたそうなんですね。
しかし、中々映画化が実現しないまま、残念ながら2014年にロビン・ウィリアムズは帰らぬ人に。
結局、ガス・ヴァン・サント監督が意志を継ぐ形で、ホアキン・フェニックスを主演に迎えて映画化したのだそうです。
もちろんホアキン・フェニックス演じるキャラハンは素晴らしいですが、この話を知るとロビン・ウィリアムズが演じるキャラハンも観てみたかった気がしますねー。
ざっくりストーリー紹介
といっても、前述のジョン・キャラハンの説明でほぼ書いちゃってますがw
ジョン・キャラハン(ホアキン・フェニックス)は幼少期の経験が原因で、13歳からアルコールを飲むようになり成人を迎えるころにはすっかり立派なアル中になってしまいます。
画像出典元URL:http://eiga.com / 泥酔したまま車に乗るキャラハンとデクスター。このあと二人は大事故に
そんなある日、あるパーティーで出会ったデクスター(ジャック・ブラック)という男に誘われて車で街中のバーをハシゴ。泥酔したデクスターの居眠り運転が原因で交通事故に遭い、胸から下が麻痺してしまう重症を負ってしまうのです。
そんな状況全てを呪い、悪魔に魂を売ってでも元の身体に戻りたいと願うキャラハンの元に、ある日、セラピストの美女アヌー(ルーニー・マーラ)がやってきます。
画像出典元URL:http://eiga.com / アヌーとキャラハンはその後恋人に
彼女はジョンに寄り添い、リハビリが進んだジョンは電動車椅子で移動できるまでに回復。やがて退院し、カリフォルニアからポートランドの安アパートに移った彼は、やる気のない介助人マイクに身の回りのすべての世話をしてもらう生活をスタートするんですね。
しかしジョンは不自由な自分の身体に苛立ちが隠せず、周囲に当たり散らし再び酒に溺れるようになります。
彼は、かつて産まれたばかりの自分を捨てた母親を憎んでいて、彼女を探し続けていたんですね。キャラハンがアルコール依存症になったのも、赤ん坊の頃に母に捨てられた体験からくる自己否定に起因しているわけです。
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そんなある晩、母への思いと(自業自得とはいえ)どん底に落ちてしまった自分への情けなさでジョンが号泣していると、背後になにかの存在を感じます。
振り向くとそこに母親の幻影がいて、彼に微笑みかけていたんですね。
それをキッカケに、ジョンは生まれ変わろうと、富豪の青年ドニー(ジョナ・ヒル)がスポンサーとなり主催する禁酒セラピーの集会に参加。そこから少しづつ人生が変わっていく――というストーリー。
こうやって書けば分かりやすいけど、劇中では立ち直ったキャラハンの講演会からスタートし、過去と現在の時系列がシャッフルされているので、序盤はかなり混乱するのではないかと思います。
でも、最後まで観れば全てのエピソードがちゃんと繋がるように作られているし、もし、時系列通りに観せられていたらラストでの感動は生まれなかったかもしれないとも思うんですよね。
弱者に寄り添う視点で描かれる物語
まぁ、昨今のSNSなどを眺めていると、本作に対しても「事故も怪我も全部、キャラハンの自業自得、自己責任じゃないか」とか「飲酒運転で事故に遭った男を美化するなんて!」とか言う人が出てきそうだなーなんて思ったりするんですけどね。
でも、ガス・ヴァン・サント監督はそんなキャラハンの行動を美化したり、やたら同情的に描くことはしていなくて、むしろ序盤はちょっと突き放すようにキャラハンを身勝手で嫌な奴として描いています。
しかし、そんな彼が自らを変えようと行動を起こすところから、彼や同じセラピーに通う人々に寄り添う優しい視点で物語を進めていくんですね。
グループセラピーに通う人々はモラハラに苦しんだ女性や、自らが性的マイノリティーであることに苦しむ男性などなど、アルコール依存症に至った理由は様々。
そんな彼ら彼女らに、最初は上手く馴染めないキャラハンでしたが、彼を障害者=社会的弱者として特別扱いするのではなく、1人の人間(友人)として受け入れてくれるその場所は、キャラハンにとって次第に大切なものになっていくんですね。
そんな中で、キャラハンは主催者のドニーが課したステップを1つづつクリアしながら、自らを守るために被っていた心の鎧を一枚ずつ剥いでいくわけです。
自己肯定と自己憐憫は違う
本作でガス・ヴァン・サント監督が言っている語っている事をざっくり要約するなら、自己肯定と自己憐憫は別物で、自己憐憫で人は救われないという事ではないかと。
なぜなら自己憐憫は、自分で自分を貶めるだけの自傷行為でしかないから。
そうではなくて、自分の弱いところもダメなところもひっくるめて、嫌いな自分を認めて許すことで、人は初めて前に進める。的な?
本作はジョン・キャラハンとその周囲の人々を通して、そのことを描いているのだと思うし、逆にそれは彼らを弱者・異物として扱う今の社会に向けて突きつけられた痛烈な批判でもあるのかなと思ったりしましたねー。
キャスト陣の好演。そしてジョナ・ヒル
そんな本作で主人公キャラハン役を務めるのは、みんな大好きホアキン・フェニックス。本作でもジョン・キャラハンというぶっ飛んでてトリッキーだけど、実は人一倍繊細な男を見事に演じきっていました。
でも、それ以上に驚いたのは、何と言ってもドニー役のジョナ・ヒルですよ……って、
画像出典元URL:http://eiga.com / 画面右がドニー(ジョナ・ヒル)
お前は誰だぁぁぁぁああ!!
あまりの変化にビックリしすぎて、ホアキンの熱演も物語も全部吹っ飛ぶわ。
「キレイなジャイアン」ならぬ「キレイなジョナ・ヒル」ですよ。
“あの頃”のジョナ・ヒルとはまるで別人のような姿で、ドニーという複雑な内面を持つ繊細な青年を見事に演じていましたよ。
画像出典元URL:http://eiga.com / あの頃のジョナ・ヒル
このキレイなジョナ・ヒルだけでも、本作を観る価値はあるんじゃないかと思いましたねー。(え、そんなオチ?)
興味のある方は是非!!
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