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三島由紀夫に“出会う“映画「三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、1969年に東京大学駒場キャンパス900番教室で行われた、三島由紀夫と東大全共闘の討論会の様子を、当時の関係者、ジャーナリストや文学者のインタビューを交えて追ったドキュメンタリー映画三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜』ですよー!

劇場公開時、かなり気になっていたんですが上手く時間が合わず、今回アマプラで配信されてたのでやっと観ることができました。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

作家の三島由紀夫が自決する1年半前に行った東大全共闘との討論会に迫ったドキュメンタリー。2019年に発見されたフィルムの原盤を修復したことにより、多くの学生が集まった討論会の様子が鮮明に映し出され、当時の関係者や現代の文学者、ジャーナリストなどの証言を交えて全貌が明らかになる。監督はドラマシリーズ「マジすか学園」などの豊島圭介。(シネマトゥディより引用)

感想

三島由紀夫と東大全共闘、伝説の討論会を追ったドキュメント映画

本作は、作家の三島由紀夫自衛隊市ヶ谷駐屯地でのクーデターに失敗し割腹自殺する1年前の1969年5月13日、東大全共闘の学生からの要望に三島が応える形で東京大学駒場キャンパス900番教室で行われた伝説の討論会を、(テレビ局としては)唯一取材していたTBSが撮影していた当時のフィルムを高精細映像で復元。

そこに当時の関係者や作家の平野啓一郎氏などのインタビューを追加して構成されたドキュメンタリー映画です。

1968年の東大紛争で安田講堂を占拠するも、翌年(1969)年1月に機動隊によって強制排除され事実上の敗北を喫した全学共闘会議

そのままではいかんと思った彼らは士気向上のため、当時本業の作家活動のみならず、戯曲、俳優、映画監督や舞台演出など幅広く活躍し、右翼思想の政治的発言でも知られるスーパースター、三島由紀夫との討論会を計画。

三島を論破して立ち往生させ、舞台上で切腹させる」と900番教室に集まった学生は1000人を超え会場は異常な熱気を帯び、そこに警察が申し出た護衛を断って単身やってきた三島が登壇。

ついに左翼学生と右翼作家三島の討論会の火ぶたが切って落とされる――。

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という内容。

恥ずかしながら僕は三島の小説は一本も読んだことがなくて、ぶっちゃけて言うと彼に対してマッチョ、ゲイ、右翼、割腹自殺という通り一遍のイメージしかなかったんですよ。

しかし、この作品の中で大勢の学生を前に話す三島は、確かに当時の大人ならではの(今から見れば)豪快な雰囲気はありつつも、その語り口はユーモアに富んでいるし、しっかり学生たちの意見に耳を傾け、学生が仕掛けてくる問答にも即答して逆に閉口させる頭の回転の速さなど、僕が今まで抱いていた三島由紀夫のイメージとはずいぶんかけ離れた印象だったんですね。

最初に壇上に上がった三島は、約10分ほど学生たちに向けて語るんですけど、この時点で全共闘の学生たちは毒気を抜かれてたというか、三島由紀夫の魅力に惹かれちゃってる感じで、討論前のピリついたムードが三島の独演会みたいになっちゃうんですよね。

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文字通り「役者が違う」という感じ。

これはもう三島の独壇場か?と思って観ていると、子連れで現れる一人の男によって空気が変わります。
その男とは現在「ホモフィクタス」主宰で劇作・詩・演出・舞踊・俳優・アートパフォーマーと幅広く活躍する芥正彦。

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彼は三島と互角の論戦を繰り広げ、時には三島を追い詰める場面もあるように見えました。

定期的に「解説」が入る親切設計

「~ように見えました」というのは、ぶっちゃけこの二人が何を話しているのかさっぱり分からなかったからです。(〃ω〃)>

何せ東大生とノーベル賞候補作家というガチのインテリ同士の会話で、話してる内容も、こう、非常に観念的っていうか。
なので、集中して聞いているつもりでも、いつの間にか振り落とされてしまうわけですよ。

ただ、ここが本作の素晴らしいところなんですが、この討論会に至るまでの歴史的背景や全共闘の経緯、当時の三島の活躍や右翼的思想に傾倒していく成り立ちなどは冒頭部分でしっかり説明してくれるし、こちらが討論から振り落とされそうになる丁度いいタイミングでインタビューシーンに切り替わり、「ここで彼らが話しているのは~」と、平野敬一郎、内田樹小熊英二有識者が親切丁寧に解説してくれるのです。

なので、三島や全共闘の学生たちが何について語っているのかが分からないという事は全くないし、当時の時代背景などを予習する必要もないんですよね。

正反対だと思ったら

この討論、全共闘の学生は共産主義を目指す左翼だし、対する三島は自分と同じ思想の若者たちを率いて「楯の会」なる自警団的右翼組織?を結成するゴリゴリの右翼で、両者は正反対のように見えます。
しかし、中盤の解説で、形は違えど三島の思想と根底は一緒だということがだんだん分かってきます。
全共闘と三島が目指しているのは、安保反対、憲法改正をして米国の属国から脱却、独立国家を果たすべきという「反米愛国」なんですよね。

そして、両者がそうした政治的スタンスに至ったのは、国や大人ら体制に裏切られたという失望からなのです。

終戦時三島は大学生で、同世代の仲間や友人を戦争で亡くしているし、自身も戦地で殉職する覚悟を決めていたのが、終戦した途端、政治家や大人たちの掌返しを体験してるわけです。

そうした経験が三島を右翼的思想へと駆り立てたのだろうし、その経験があったからこそ全共闘の学生たちに共感し、討論会への参加を決めたのかな?なんて思ったりしました。

 また、この駒場キャンパス以外の大学でも学生と対話をしていることや翌年の彼の行動から考えると、小説家として、自身の思いを乗せた「言葉」がどこまで若者たちに届くのかの実験のようにも思ったりしました。

興味のある方は是非!!

 

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