ぷらすです。
今回ご紹介するのは、「うーんマンダム」である世代にお馴染みのチャールズ・ブロンソン主演作『狼よさらば』ですよー!
現在ブルース・ウィリス主演で公開中の「デス・ウィッシュ」の元ネタだと聞いたので、久しぶりに観返してみました。
画像出典元URL:http://amazon.co.jp
あらすじ
ニューヨークの会社員ポール。ある日、彼のもとに1本の電話が入る。それは、妻と娘が病院に運び込まれたという信じられない知らせだった。そしてポールが病院へ駆けつけた時には、妻は死亡していた。そこで、妻が何者かに襲われた挙げ句に殺され、娘も暴行されたことを聞かされたポールは憤り、悲しみに打ちひしがれる。そんな時、ひょんなことから銃を手に入れたポール。彼はその銃を密かに携え、公園で襲いかかってきたチンピラを射殺。これをきっかけに沈鬱な状態が吹っ切れ、以来、次々とチンピラたちを仕留めていくポールだが…。(allcinema ONLINE より引用)
感想
「狼よさらば」は多分、小学生の時にテレビ洋画劇場で観たっきりで、てっきり奥さんを殺された男が犯人に復讐するストーリーだと思い込んでいたんですが、久しぶりに観返してみたら全然違って、チャールズ・ブロンソン、まったく復讐してなかったです。
本作をざっくり一言で説明するなら、平和主義者だった男が拳銃を手に入れて殺人鬼になるという物語なんですね。
時代背景
本作の原作「デス・ウィッシュ」(死の願望)は、1972年にブライアン・ガーフィールドが発表した小説です。
その当時のニューヨークは非常に治安が悪く、特に貧困層が多かったハーレム地区は世界一危険な街みたいな感じで言われていたんですね。
この当時、僕はまだ子供でしたがテレビなんかでも、いかにニューヨークが危険か みたいな特集をよくやってたのを覚えています。
というのも、富裕層が危険で住みにくいニューヨークから、郊外の町に移り住んだことでニューヨークの税収が落ち、警官の給料は下がり、また予算削減のため人員削減までされたせいで、警察が機能しなくなっていたんだそうです。
その後、1990年代にルドルフ・ジュリアーニ市長の改革によって、治安が回復し徐々に安全な街になったらしいんですね。
本作は、そんな最も危険だった1970年代のニューヨークが舞台になっています。
ビジランテ
ビジランテは日本語で「自警団」という意味です。
つまり、警察などの公的機関とは別に、自分たちの安全を自分たちの手で守るための組織で、西部劇を観れば分かるように、アメリカでは開拓時代からずっと、このビジランテ精神が根付いているんですよね。(アメリカが銃社会なのもそのため)
マーベルやDCのスーパーヒーローたちも、基本、全員ビジランテです。
で、本作でチャールズ・ブロンソン演じるポール・カージーは、字幕では「アマチュア刑事」と書かれてますが、英語ではハッキリ「ビジランテ」と呼ばれているんですね。
ビジランテ? いえいえマン・ハンターです
暴漢どもに奥さんを殺され、娘を嬲りもの(彼女はそのショックで精神病に)にされてしまった平和主義者のポール・カージーですが、この時点ではまだ復讐などは考えていなくて、自分の身を守るために靴下に25セント硬貨を沢山入れた武器を携帯。
金目当てに近づいてきた強盗をこれでぶん殴ります。
この時、強盗相手とはいえ暴力をふるってしまった自分に強いショックを受けたカージーですが、同時に、この時に彼の中に “ある衝動” が目覚めるんですね。
その後、出張先のアリゾナで取引先の社長から銃を貰ったカージーは、衝動が抑えられずに銃を隠し持ち、夜の街をうろうろします。
そして、人目のない場所で現れた強盗を射殺したことで、彼の中のタガが外れるんですねー。
カージーの父親はハンターで、彼自身小さな頃から銃の扱いを仕込まれていたんですが、狩猟中に父親が鹿と間違えられて射殺されてから銃を憎むようになり、朝鮮戦争でも良心的兵役拒否として医療班に従事していた平和主義者。
しかし、愛する奥さんを殺され娘を嬲りものにされた事、自警・自衛という建前と、拳銃というチカラを行使する快感によって、彼は「人を狩るマン・ハンター」として狂気に目覚めてしまうのです。
そこからカージーは、夜な夜な危険な場所に出かけては、チンピラどもを処刑して周り、彼の行為は結果的にニューヨークの犯罪率を引き下げ、市民の中には「アマチュア刑事」に習って強盗に立ち向かう者まで出る始末。
英雄のように祭り上げられた彼は、すっかり気持ちよくなって、西部劇のヒーロー気取りでマン・ハントを繰り返すようになるのです。
メッセージを180度取り違えられる
少なくとも原作者は作品を通して、チカラに取り憑かれた男=銃社会の危険性をテーマに書いていて、本作を見る限り、そのテーマや社会へのエクスキューズは踏襲しているように見えます。
しかし公開時アメリカでは「銃や私刑を賞賛する映画」として批判も多かったのだとか。
まぁ、そう言われればそう見えなくもない……っていうか主演が「荒野の七人」のチャールズ・ブロンソンですからね。そう思われても仕方ない……のかなー?
ブロンソン自身、オファーを受けて「カージーはダスティン・ホフマンみたいな(優男の)俳優が演じるべき役なのでは?」とかなり悩んだそうですしね。
皮肉なことにブロンソンが危惧したとおり、彼が演じたポール・カージーは、世界中の(僕みたいな)ボンクラどもからヒーロー扱いされて大ヒット。
全5作にも及ぶ人気シリーズになってしまったんですねー。
いやー、だって最後の “カージーポーズ” を決めるブロンソンは、今見てもカッコイイもんなーww
その後に公開された「タクシードライバー」のトラビスもカージーと同じ運命を辿るんですよねー。
作品のテーマが、キャラクターの魅力に食われちゃうんですよね。
途中から死んだ奥さんや娘のことはそっちのけで、チンピラ処刑にどハマりするカージーに、復讐しないんかーい!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ というモヤモヤは残るし、全体的に歪でヘンテコな映画ですけど目が離せない魅力のある映画でしたねー。
興味のある方は是非!!
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