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伝説のアウトロー最後の花道「さらば愛しきアウトロー」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、1970年代ハリウッドのトップに君臨していた大スター、ロバート・レッドフォードの俳優引退作『さらば愛しきアウトロー』ですよー!

レッドフォードって、僕の一世代前の大スターといった印象で、作品の方も正直「明日に向って撃て!」と「スティング」
あとは「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」くらいしか印象がないんですけど、俳優・監督・プロデューサーとして数々の名作を送り出してきたレッドフォードが「俳優引退作」と宣言した本作なので、やっぱり観ておくことにしました。

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概要

監督、プロデューサーとしても活動している俳優ロバート・レッドフォードが主演を務めたクライムドラマ。異色の犯行スタイルで銀行強盗を重ねた実在の犯罪者フォレスト・タッカーをレッドフォードが演じる。タッカーを追う刑事に『マンチェスター・バイ・ザ・シー』などのケイシー・アフレックがふんするほか、『歌え!ロレッタ愛のために』などのシシー・スペイセクらが共演。『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』などのデヴィッド・ロウリーがメガホンを取った。(シネマトゥディより引用)

感想

長きに渡り映画界に貢献してきた男ロバート・レッドフォード

僕が初めてロバート・レッドフォードを知ったのは、テレビ洋画劇場で観た「明日に向って撃て!」だったと思います。
この作品はアメリカンニューシネマ初期の傑作で、ロバート・レッドフォードポール・ニューマンがW主演でアウトローブッチ・キャシディサンダンス・キッドを描いた物語。

アウトローを描いた映画ながらどこか青春映画のような爽やかさもある作品で、当時まだ無名だったレッドフォードはこの作品で一気にブレイク。
ハリウッド屈指の美男俳優としてスターダムを駆け上ります。

そしてもう一本が、同じくレッドフォードとポール・ニューマンのコンビ演じる詐欺師が、イカサマでギャング組織を追い詰めていく物語で、これが映画としても最高で子供心にも超面白かったんですよねー!
僕が映画好きになったのは、この作品のおかげと言っても過言ではありません。

ただ、この二作の印象が強烈すぎて、彼の他の作品は(多分観てはいるんだけど)ほとんど覚えてないし、70年後半~80年代に入るとスタローン、シュワちゃん、ジャッキーなどなど、能天気ボンクラ映画時代が始まって、僕もそっちを夢中で追いかけるようになり、ロバート・レッドフォードの事はすっかり忘れてしまうのです。

しかし、僕が観ていない間も俳優として着実にキャリアを積んだ彼は、1980年には初監督した映画『普通の人々』でアカデミー監督賞を受賞。
以降は、俳優・監督・プロデューサーとして数々の名作を世に送り出す一方、ユタ州のパークシティに若手映画人の育成を目的として「サンダンス・インスティテュート」を設立したり、インディペンデント映画とその製作者を世に送り出す目的で「サンダンス映画祭」を開催するなど後進の育成にも力を入れ、長きに渡り映画界に貢献してきたのです。

そして80歳を超えた彼が、自らの俳優引退作に選んだのが本作「さらば愛しきアウトロー」だったんですねー。

ざっくりストーリー紹介

本作は「この映画はほとんど実話である」という字幕からスタート。
映画評論家の町山智浩さんによれば、この字幕「明日に向って撃て!」の最初に出る字幕と同じなのだそうです。

本作の主人公はフォレスト・タッカーというお爺ちゃん。
ただ、このお爺ちゃん、74歳にして現役の銀行強盗なんですね。

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物語は1981年のテキサス州からスタート。
銀行から出て来たスーツ姿の老紳士が白のセダンに乗りイヤホンで警察無線を聞きながらその場を去ります。
バックでは彼が聞いている「武装した容疑者は白いセダンで逃走中」警察無線が流れ、紳士は道の角を曲がってガレージ?に入ると、出てきたときには青の車に乗り換えているんですね。

実は彼こそが“武装した容疑者”フォレスト・タッカーなのです。

その後、「容疑者は高速道路に~」という警察無線を聞きながら車を走らせるタッカーは、道端で故障しているトラックを発見。車を道路脇に止めてトラックを覗き込む老婦人に声を掛け、その脇をサイレンを鳴らしたパトカーが通り過ぎていく。という、最高のスタート。

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その後、タッカーは仲間の老人二人とアメリカ各地で銀行強盗を繰り返しながら、トラックの老未亡人ジュエルシシー・スペイセク)とデートを重ねるんですが、やがて彼を追う刑事ジョン・ハントケイシー・アフレック)がじわじわ彼を追い詰めていき――というストーリー。

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実話をもとにタッカーとレッドフォードを重ねた作品

この主人公フォレスト・タッカーは実在の人物で、16歳で自動車を盗んで逮捕されて少年院を脱走してから2004年に83歳で亡くなるまで、90件以上の銀行強盗と16回の脱獄に成功したというとんでもないお爺ちゃん。

銀行強盗の手口も独特で、スーツをビシッと決めて銀行に入り、支店長や窓口の行員に対しても礼儀正しく接しながら懐の拳銃をチラ見せ。
カバンにお金を詰めさせると、笑顔を残してその場を去っていくというね。

なので強盗被害に遭った支店長や行員は、警察の聞き取り調査に対して「紳士だった」と口を揃えるのです。

で、警察に逮捕される時も彼は笑顔だったそうで、何故ならその時には刑務所から脱獄する気満々だから。
実際、様々な手口で刑務所から脱走してみせたタッカーですが、中でも伝説になっているのが1970年代のサン・クエンティン刑務所からの脱獄。

彼は、刑務所の中にある材料を加工してボートを作り、それで海に漕ぎ出して脱獄を成功させたというんですね。

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劇中でも、逮捕され面会に訪れたジュエルに脱獄を仄めかすシーンがありますし、たまたま同じ店にいた刑事のジョン・ハントに自分から接触してみたり、まるでゲームでも楽しむかのように犯罪を犯している
銀行強盗と脱獄は、彼にとって生活のためではなくて、ある種の趣味であり生き甲斐でもあるわけです。

だから銀行強盗中も逃走中も逮捕されても、彼は笑顔を絶やさないんですよね。楽しくて仕方ないのです。

対するレッドフォードは、イケメン俳優としてブレイクした後、監督やプロデューサーとしても評価され、後進も育てるという根っからの映画人。
その意欲は80歳を超えても衰えることがありません。

何故なら、彼にとって映画は趣味であり生き甲斐だから。

本作は、そんな二人の人生を重ねて描くことで、レッドフォードの映画人としての歴史をメタ的に語っているわけですね。
ちなみに本作の原題は「The Old Man & the Gun」(老人と銃)
これはもちろん、ヘミングウェイの「老人と海」をオマージュしたタイトルだし、タッカー、レッドフォードを老漁師サンチャゴとも重ね合わせているわけです。

明日に向って撃て!」で一躍スターになったレッドフォードの俳優人生の幕引きの作品を、まったく同じ字幕からスタートさせるのは、本作が“そういう”映画なのだというファンへのメッセージでもあるし、最後に老境のアウトローを主人公に据えたニューシネマ的物語を選んだ事も、最初と最後が同じカットで終わる「ブックエンド」を狙っているんだと思うんですね。アウトローで始まりアウトローで終わる的な。

そしてそれは、ある時から巨大資本で動くハリウッドのメインストリームに背を向けて、インディペンデントに向かうレッドフォード自身の人生とも重なるわけです。

そんな本作では「明日に向って撃て!」意外にも、「出逢い(The Electric Horseman)」や「逃亡地帯」、「スティング」などなど、彼の過去作のオマージュは散りばめられているし、映画のルックやテンポなども意識的に70年代を意識した作りになっていて、俳優ロバート・レッドフォードの最後を飾るに相応しい、花道のような作品なのです。

なので本作単体で観れば、正直微妙な部分もあるかと思うんですが、レッドフォードの歴史を知っている人にとっては、最高の作品と言えるのではないでしょうか。

興味のある方は是非!!

 

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