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芸人監督とナメてはいけない「洗骨」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、お笑いコンビ「ガレッジセール」のゴリさんが、本名の照屋年之名義で監督した長編映画洗骨』ですよー!

かなり評判が良かったのでずっと気になっていた作品ですが、今回やっとレンタルDVDを見つけたので早速借りてきました!

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概要

お笑いコンビ「ガレッジセール」のゴリこと照屋年之監督が手掛けたコメディードラマ。土葬または風葬した遺体の骨を洗い再度埋葬する風習「洗骨」を通じ、バラバラだった家族が再生していく。妻の死を受け入れられない父親を監督としても活動している奥田瑛二、息子を『Breath Less ブレス・レス』などの筒井道隆、娘を河瀬直美監督作『光』などの水崎綾女が演じるほか、筒井真理子、お笑いコンビ「ハイキングウォーキング」の鈴木Q太郎らが共演。(シネマトゥディより引用)

感想

監督はガレッジセールのゴリさん

本作はガレッジセールのゴリさんが、監督主演で製作した2016年の自主制作短編映画「born、bone、墓音。」を原案に、本名の照屋年之名義で脚本・監督した長編映画です。

ちなみに“ゴリ”名義では、2009年に「南の島のフリムン」という長編作品を監督されてるようですが、僕はゴリ&照屋年之監督作品を観るのは本作が初めて。

お笑い芸人が監督した映画ということで、正直、観る前は若干ナメていたんですけど、ほんと「ナメててスイマセンでした!」って思うくらい、イイ映画でしたねー。

「洗骨」とは

本作のタイトルでもある「洗骨」とは何かというと、「一度土葬あるいは風葬などを行った後に、死者の骨を海水や酒などで洗い、再度埋葬する葬制」(Wikipediaより引用)で、現在も日本では沖縄県や鹿児島県奄美群島の一部に残る風習なのだそうです。

本作では沖縄県粟国島を舞台に、母親の死後バラバラになってしまった家族が「洗骨」の儀式を通して再生していく様子を描いているんですね。

ざっくりストーリー紹介

本作は、粟国島で行われた葬儀の様子からスタート。
亡くなったのは、新城家の母・恵美子(筒井真理子)で、残された父・信綱(奥田瑛二)、長女・優子(水崎綾女)は悲しみに打ちひしがれ、長男・剛(筒井道隆)は弔問客の対応に追われているんですね。

で、この島では一旦ご遺体を墓地で風葬した4年後に、遺骨を洗って埋葬する「洗骨」の風習が残っていて、その儀式のために剛と優子は島に戻ってくるんですが、この4年間、信綱は妻の死を受け入れられず酒に溺れ、母の死を巡って剛は信綱に対するわだかまりがある模様。さらに優子は妊娠していて「シングルマザーになる」と言い出したので親族一同大騒ぎに――というストーリー。

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この映画、基本は母の「洗骨」を中心においたコメディなんですね。
で、コメディで芸人さんが監督する映画にありがちなのが、いわゆるボケとツッコミの「お笑いメソッド」ってやつで、これを映画でやられてしまうと映画ではなくコントになってしまうので、観ているコッチは一気に冷めてしまうのです。

本作も、このお笑いメソッドがゼロではないんですが、それでも“コメディ映画”の枠に収まるようちゃんとバランスを取っていたし、監督自身、(中退したとはいえ)日本大学藝術学部映画学科に入学した経歴を持ち、自主制作の短編映画も製作している事から、ちゃんと映画を分かってる人なんだろうなって思いました。

目新しさはないが丁寧な描写

本作で描かれる、家族の再生というテーマ自体はありがちといえばありがちだし、ストーリー的にも特に目新しさはありません。

 ただ昨今、血縁の呪いや、血の繋がりに頼らない擬似家族を題材にした作品が多い中、本作はそんな時代の流れに逆行するように、血縁、家族、伝統を繋いでいくことの大切さを真正面から丁寧に描いているんですね。

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その感性は本州とは違う独自の文化を持つ、沖縄という土地に生まれ育った照屋監督ならではだと思うのです。

今はほとんどの土地で途絶えてしまった「洗骨」は、そんな本作のテーマを象徴する儀式なんですよね。

そんな「洗骨」の手順をストーリーに絡めながらしっかり描いているところも、文化・風習対して敬意を持って描く照屋監督の真摯な姿勢が見えて好感が持てたし、儀式に優子のお腹の子の父親で、島の人間ではない神山(鈴木Q太郎)を立ち会わせることで、島の人間と僕ら観客を繋ぐブリッジを作っているのも上手いって思いました。

キャスト陣の名演

そんな本作で、お人好しだけど心の弱い父親・信綱を演じるのは奥田瑛二で、信綱とは真逆で気の強い姉の信子を演じるのが、バラエティーなどでもお馴染みの女優・大島蓉子です。

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いやー、この二人が本当に素晴らしくてですね。
特にコメディーリリーフでもあり、物語を引っ張る牽引役としても活躍する信子を演じた大島蓉子さんの演技はほんとうに素晴らしかったです。

この二人の熱演が、本作の作品としての完成度をグッと引き上げたと言っても過言じゃないと思いますねー。

もちろん他のキャスト陣も素晴らしかったですが、あえて言えば神山役の鈴木Q太郎鈴木Q太郎にしか見えなくて、全体のトーンからは若干浮いてる感じがしましたかね。

でも、その浮いてて上滑りしてる感じが、島とは文化の違う本州からやってきた神山というキャラクターに上手くハマっていたし、Q太郎さん自身の人の良さとも相まって魅力的な人物になっていました。

まぁ、あの顔の濃さは、むしろ一番沖縄感があった気もしますけどw

もちろん百点満点の名作というわけではなく、優子のお腹の造形はもうちょっと何とかならないかなと思ったし、登場キャラクターにテーマを語らせちゃう演出は垢抜けてないと思ったし、あのラストショットはいくらなんでもやり過ぎじゃないかとも思いました。

ただ、低予算の小作品ながらとても見応えがあったし、何より照屋監督の映画に対する真摯な姿勢が垣間見えて「この人の次回作を観たい!」と思わせてくれる秀作でしたねー。

興味のある方は是非!!

 

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