ぷらすです。
今回ご紹介するのは、「グランド・ブダペスト・ホテル」などで知られるウェス・アンダーソンが、「ファンタスティック Mr.FOX」以来2作目となる、ストップモーションアニメ『犬ヶ島』ですよー!
何ていうか、面白いんだけどヘンテコな映画でしたねーw
画像出典元:http://eiga.com
概要
世界的にヒットした『グランド・ブダペスト・ホテル』などのウェス・アンダーソン監督によるストップモーションアニメ。日本を舞台に、行方がわからなくなった飼い犬を捜す少年と犬たちが繰り広げる冒険を映す。声優陣に、ビル・マーレイ、エドワード・ノートン、ティルダ・スウィントンをはじめ、スカーレット・ヨハンソン、グレタ・ガーウィグ、ブライアン・クランストン、ヨーコ・オノ、RADWIMPSの野田洋次郎ら、多彩な顔ぶれが集結している。(シネマトゥデイより引用)
感想
ウェス・アンダーソンとは
ウェス・アンダーソンはテキサス・ヒューストン出身の映画監督。
いわゆるヒットメーカーって訳ではないんですが、知る人ぞ知るっていうか、コアな映画好きやサブカル系女子といった層に熱狂的なファンを持つカルト監督って感じだった彼ですが、2014年公開の「グランド・ブダペスト・ホテル」で広く一般の人達にも知られたのではないかと思います。
その作風を一言で言うと、とにかくポップでオシャレ。
個人的にはストーリーよりも映像の方に強いこだわりを持つ監督っていう印象があって、その強すぎる作家性から、好きな人はめっちゃ好きだけど、合わない人はとことん合わない、観客を選ぶタイプの監督かもしれません。
そんなウェス・アンダーソンの新作である本作の舞台は20年後の日本。
しかも、実写映画ではなく人形を少しづつ動かしてコマ撮りしていくストップモーションアニメなんですねー。
ざっくりストーリー紹介
20年後の日本メガ崎市。
ネコ派でメガ崎市の市長小林は、犬インフルエンザを理由にメガ崎にいる全ての犬をゴミ処理場の廃墟がある「犬ヶ島」に隔離する法案を議決・施行します。
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それから半年後、両親を事故で失い小林市長の養子となったアタリは、追放された愛犬スポッツを捜すため小型飛行機で犬ヶ島にやってきて、島で出会った5匹の犬とともにスポッツを探すのだが……。という物語。
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海外の映画で日本を舞台にすると結構な確率でヘンテコ日本になってしまいますが、本作でも描かれる日本も超ヘンテコですw
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ただ、それは監督が日本に無知なのではなく、演出として意図的にやっていることなんですね。
黒澤映画の影響
実は、ウェス・アンダーソンは黒澤映画の大ファンらしく、本作では随所に黒澤映画オマージュが入っているんだそうです。
僕は劇中で「七人の侍」の音楽が使われていた事くらいしか分からなかったんですが、映画評論家の町山さんによれば、
・小林市長の顔が三船敏郎。
・劇中に登場する「ゴンドー(Gondo)」という犬は「天国と地獄」で三船敏郎が演じた権藤金吾から取っている。
・犬ヶ島がゴミの島なのは「どですかでん」のオマージュになってる。
・本作のストーリーは「悪い奴ほどよく眠る」に強い影響を受けている。
・「酔いどれ天使」の音楽が使われているなど。
あと、黒澤は関係ないけど、犬を探しにやってくる少年の名前アタリは、有名なゲームメーカーの名前から取っているらしいです。
つまり、本作で描かれる「日本」は、ウェス・アンダーソンが黒澤映画や日本カルチャーに影響を受けて頭の中に作り出した「架空の日本」なのです。
ちなみに、この映画の日本描写には野村訓市という人が監修で入っていて、なので全体的にはインチキ日本なんだけど細かいディテールは意外とリアルっていう、そのアンバランスさが一層違和感のある、ウェス・アンダーソンワールドになっているんですねー。
声優陣
そんな本作で声を当てているのは、
「スリー・ビルボード」のフランシス・マクドーマンド。
みんな大好きスカーレット・ヨハンソン。
「ブレイキング・バッド」のブライアン・クランストン。
ビル・マーレイ、ハーベイ・カイテル、ジェフ・ゴールドブラム。
そしてジョン・レノンの奥さんオノ・ヨーコと、日本でも知られた有名人ばかり。
あと日本からは、渡辺謙や夏木マリもチョイ役で出演してますよ。
ストップモーションアニメ
ウエス・アンダーソンがストップモーションアニメで劇場作品を作るのは2009年公開の「ファンタスティック Mr.FOX」以来2度目。
本作では、メインの人形は動きだけでなく、顔のパーツをいくつも作って表情の変化をつけてたりするそうで、その技法は「KUBO」のスタジオライカでメジャーになりましたよね。
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しかし、スタジオライカは人形の表情は3Dプリンターで作り、シーンによっては背景や特殊効果にCGも使ってより自然な映像を目指すのに対し、本作では人形の顔パーツは全て手作りしているというとんでもない手間をかけた謎のこだわりを見せ、動きや効果などもあまりスムーズにはせずに、意図的にストップモーションのカクカク感を出したり、例えば乱闘シーンなどは砂埃が舞い上がる中から手や足が見えるっていう昔のギャグマンガみたいな演出をしてたりするんですよね。
情報量が多い
多分、本作を字幕で観た人はその情報量の多さに面食らってしまったのではないかと思います。
この作品、日本人は日本語で、犬やアメリカ人は英語で話すんですね。
劇中では日本語のセリフはすぐにフェードアウトして、ニュースキャスターの女性によって「彼(彼女は)はこう言っています」的に英語に翻訳するという具合なんですが、これ日本語が分からない海外の人なら聞き流せる部分も、日本人が観るとなまじセリフが聞き取れるから無駄に情報量が増えるし、セットの落書きなんかも一応意味が通った事が書いてあり、場所や時間経過の説明書きも日本語で書かれたその下に英語の字幕が入っているといった具合でして、そこにセリフの日本語字幕が入るので、とにかく耳も目も忙しくて仕方がないんですよねーww
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なので、この映画を隅々まで味わい尽くそうと思ったら、2回3回と繰り返し観なけれなならないかもしれません。
映像の面白さで持っていかれる映画
この映画、ストーリーの骨格は単純な構造なんですが、上記のようなウェス・アンダーソンの日本映画的に見せようというこだわりや、場面転換の多さとテンポの速さなどから、(少なくとも日本人にとっては)若干観づらい感じがあるかもしれません。
しかし、映像に強いこだわりを持つ監督だけに、一つ一つのシーンの映像の面白さや美しさに持っていかれるというか、画面の配色やディテールへのこだわりだったり、キッチュでポップなザ・ウェス・アンダーソン印の映像に(最初は違和感を感じるかもですが)どんどん引き込まれいく感じなんですよね。
その有無を言わせない映像センスこそが、彼と作品の最大の魅力でもあるのです。
上記の通り、好き嫌いはハッキリ別れるタイプの監督ですが、まだウェス・アンダーソン作品未見の方は、この機会に一度観ておいて損はないと思いますよー!
興味のある方は是非!!!
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