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「ヒューゴの不思議な発明」(2012) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ブライアン・セルズニックの児童向け小説『ユゴーの不思議な発明』を実写映画化した『ヒューゴの不思議な発明』ですよー!

スコセッシがファンタジー? とずっと食わず嫌いをして観ていなかったんですが、そんな自分を殴ってやりたいくらい良い映画でしたー!

http://ecx.images-amazon.com/images/I/91jF5tWbe4L._SL1500_.jpg画像出典元URL:http://www.amazon.co.jp/

概要

ブライアン・セルズニックの児童向け小説『ユゴーの不思議な発明』を実写映画化した2011年の米映画。
監督のマーティン・スコセッシ初の3D作品であり、また、これまでの作風とは違い1930年代のパリを舞台に、大
人も子供も楽しめるファンタジくな物語になっている。

第84回アカデミー賞では同年最多の11部門にノミネートされ、5部門で受賞を果たした。

主人公ヒューゴ役に『エンダーのゲーム』はエイサ・バターフィールド、ヒロイン?のイザベル役は『モールス』『キックアス』『キャリー』(リメイク版)のクロエ・グレース・モレッツがそれぞれ演じている。

 

あらすじ

1930年代のパリが舞台。
モンパルナス駅の時計台に隠れて暮らす孤児ヒューゴ・カブレ(エイサ・バターフィールド)は、亡き父親が遺した壊れた機械人形とその修復の手がかりとなる手帳を心の支えとしていた孤独な少年だった。

駅の構内を縦横無尽に行き来して、大時計のねじを巻き、時にはカフェからパンや牛乳を失敬し、駅にある時計の文字盤から、人間模様を観察する毎日を送っていたヒューゴが駅構内の片隅にある玩具屋に置かれたゼンマイ仕掛けのおもちゃををくすねようとした時、店の主人ジョルジュ(ベン・キングズレー)に捕まってしまい、大切な手帳も取り上げられてしまう。

手帳に描かれた機械人形のスケッチを見たジョルジュは絶句。
手帳を返して欲しいと懇願するヒューゴに、目の前から消えなければ鉄道公安官につきだして施設送りにすると脅すジョルジュ。
諦めきれないヒューゴは、ジョルジュの後を尾行し、彼のアパルトマンにたどり着く。
そこでヒューゴは、ジョルジュ夫妻の養女であるイザベル(クロエ・グレース・モレッツ)という少女と知り合う。

感想

スコセッシが送るジュブナイル映画

最初、この映画についてよく知らなかった僕は、タイトルとパッケージから魔法的な何かが登場するファンタジーだろうと思い込んでいて、元々ファンタジーがあまり得意でないのと、『タクシードライバー』『グッドフェローズ』など、どちらかといえば殺伐とした世界を得意としているマーティン・スコセッシ監督とファンタジーという組み合わせがどうにもピンとこなかったので、ずっと食わず嫌いで観ていませんでした。
メイキングによると、スコセッシ監督の11歳の娘が観られる映画を作りたかったんだとか……って、え? 娘? 孫じゃなくて?
ちなみにスコセッシ監督1942年生まれの73歳。
やるなースコセッシ!

それで今回が初鑑賞だったんですが、

なんだよスコセッシ! 超面白いじゃん!!!

と。

主人公ヒューゴは、時計職人で博物館職員だった父と二人暮らしで、ある日博物館に打ち捨てられていた文字を書くゼンマイ式のからくり人形を、父と一緒に直すのが楽しみにしてましたが、ある日博物館の火事で父が他界。
ヒューゴの叔父に引き取られ、モンパルナス駅の時計台のねじ巻きや修理を叩き込まれたヒューゴは、いなくなった叔父の代わりに内緒で(孤児とバレると捕まって孤児院に送られるから)仕事をこなしつつ、父の形見である機械人形をコツコツと直しています。

3Dを意識したカメラワーク

そんな物語のアバン(タイトル前のエピソード)では、時計の歯車とエッフェル塔を中心にしたパリの街並みがオーバラップし、カメラはそのままモンパルナス駅構内をグイグイ進んで時計の文字盤から構内を覗く主人公ヒューゴの顔へ。
そこでヒューゴの身の上を示すような映像のあと、駅の壁裏を移動するヒューゴを追って、グイグイ進んでいきます。

多分3Dを意識したカメラワークだと思うんですが、大小の歯車が動く時計台の中や、無駄のないカメラワークにハート鷲掴まれました! 3Dで観てみたかった!

あと、上手いなーと思うのは、ヒューゴが壁の裏側から時計を通して覗き見る駅構内の描写。
観客はヒューゴの目を通して、駅に集う人たちの情報を知っていくわけですが、特に説明的なセリフなどは一切なく、とても自然に駅構内に集う各キャラクターや人間関係がわかるようになっています。

子役二人がいい!

で、いろいろあってヒューゴはジョルジュ夫妻の養女イザベルと出会い、二人は協力し合いながら機械人形の秘密とジョルジュ夫妻の過去に迫っていくという物語です。
ヒューゴ役のエイサ・バターフィールド、イゼベル役のクロエ・グレース・モレッツ共に当時13歳のはずですが、クロエの方が少し背が高くて、本作以前にヒット作に出演もしているので、なんというか風格が漂っている感じがしましたw

イザベルは本が好きで好奇心旺盛で活発な女の子なんですが、なんか演技じゃなくてクロエの地なんじゃないかと思うくらい自然です。
ただ、そんな彼女と大人しいヒューゴの対比にもなってて、自然と二人に感情移入しちゃう感じなんですよね。

あと、『ブルーノ』や『ボラッド』でお馴染みの問題児、サシャ・バロン・コーエンが鉄道公安官役で登場してるんですが、彼の演技もとても素晴らしかったですよー。

『映画の父』ジョルジュ・メリエスの物語

本作で重要な役割を持つのが、ヒューゴの父の形見である機械人形と映画です。
本作はリュミエール兄弟と並んで『映画の父』と言われているフランス人映画作家ジョルジュ・メリエスの人生を追う物語でもあります。

ジョルジュ・メリエスの名前や「月世界旅行」という作品名は知らなくても、月の顔に弾丸型のロケットが突き刺さっている画像を一度は目にしたことがあるんじゃないでしょうか?

サーカス興行で世界初の映画を観た彼はすっかり虜になり、ロンドンから買ったカメラと映写機を分解して改良を加え、世界初の映画スタジオを作り、500本にも及ぶサイレント映画を製作・配給。今の映画ビジネスの基礎を作った人です。

元々手品師だった彼は、手品の技術を元に今に通じる撮影方法を次々に編み出し、ファンタジックな映画をたくさん作っていきました。

しかし、第一次世界大戦という時勢や彼の商売下手も相まって、やがてジョルジュ・メリエスの作る映画の人気は落ちていき、スタジオは倒産。彼は全てを失ってしまいます。

本作では、そんなジョルジュのガラス張りのスタジオや映画作りの様子が再現されていたり、他にもヒューゴとイザベルが忍び込んだ映画館で観るのが、ハロルド・ロイドの『要心無用』(高層ビルの上で時計の針にぶら下がるシーンが有名)だったり(この映画自体が後半への伏線になってます)と、フィクション映画ではありますがジョルジュ・メリエスの半生を正確に描いたドキュメント的側面もあるわけですね。
映画に造詣の深いマーティン・スコセッシが監督したのも思わず納得です。

そして、再現とはいえジョルジュ・メリエスの映画作りの舞台裏が観られるんですから、映画好きな人にとってはたまらないんじゃないでしょうか。

映画の歴史を知れるという意味でも、もちろん内容も、お子さんからお年寄りまで楽しめる素晴らしいエンターテイメントでしたよー!!

興味のある方は是非!!