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あのホラー映画の金字塔 『エクソシスト』の前日譚! 『エクソシスト ビギニング』(2004) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、あのホラー映画の金字塔にして不朽の名作『エクソシスト』の前日譚、『エクソシスト ビギニング』ですよー!
エクソシスト』そして、誰もが呆然としたあの問題作『エクソシスト2』に繋がるエピソードゼロですよー!

 

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あらすじと概要

ホラー映画の金字塔『エクソシスト』の物語がはじまる25年前を描いたスリラー・ホラー。監督は『クリフハンガー』や『ディープ・ブルー』のレニー・ハーリンがスピーディなストーリー展開でひっぱる。
主演のメリン神父役に『キング・アーサー』のステラン・スカルスガルドと『マスター&コマンダ−』のジェイムズ・ダーシー。メリン神父が初めて悪魔パズズに向き合う緊張感を見事な演出で見せる。

ストーリー:アフリカで、歴史的にあるはずがない教会が発掘されてから、街には怪事件が多発する。特にある少年の周囲では不可解な出来事が連続していた……。(シネマトゥディより引用)

 

 

感想

キリスト教の神父が少女リーガンに取り憑いた悪魔と対決する、いわば“お祓い映画“の元祖『エクソシスト』(1974)は、当時多くの子供たちを震え上がらせ、トラウマを植え付けたホラー映画の金字塔的作品です。
それから三年後の77年、その続編『エクソシスト2』が公開。
誰もが、再び相まみえる悪魔とエクソシストの対決に期待して観に行ったと思うし、まだ子供だった僕はテレビの洋画劇場でワクワクドキドキしながら観たわけですが、多分僕を含め「~2」を観た人はみんな、

(゚д゚)ポカーン ←こんな顔だったと思います。

なんかこう、イナゴがいっぱい出てた。(うろ覚え)

それ以来、僕は「エクソシストシリーズ」は観てなくて本作も、今回が初見なんですが、ちゃんと1・2の話を踏まえて作られてました。
本作は、『エクソシスト』からの宿敵、パズズという悪魔のルーツを解き明かす物語になってるんですねー。 

ざっくりストーリー解説

物語は、ローマ帝国の兵士とアフリカの人々の屍の山を呆然と歩く一人の若い神父の映像からスタートします。

場面変わって、第二次大戦末期の1949年、メリン元神父は、オランダでナチスによる虐殺に(強制的に)関わってしまったトラウマから、神父をやめてエジプトに流れ着いていました。
そんな彼の元に、古美術収集家の秘書を名乗る男が現れます。
イギリス軍がケニアトゥルカナ地方のデラーティという場所を発掘中、まだキリスト教が伝わっていないはずに5世紀頃の教会が発掘されたというんですね。
そこで男は、イギリス軍に同行して彼らより先に、聖遺物や悪魔の彫像を入手して欲しいと依頼されるんですね。

最初は渋るものの、考古学者でもあったメリンはその話に興味を持ち、結局依頼を受けます。
ところがその現場では不吉な事件が相次ぎ、地元の作業員たちは悪霊の呪いだと恐れ、メリン自身も数々の不可思議な現象を目にします。
発掘中の教会に原因があると思ったメリンは、その謎を解き明かすべく調査を開始するのだが……。という内容です。

 

登場人物

本作の主な登場人物は以下の通り。

ブランカスター・メリン神父(ステラン・スカルスガルド
エクソシスト」でパズズと対決し、力及ばずこの世を去る。
本作では第二次対戦、ナチスによって心に大きな傷を負わされ、神父を辞めてエジプト在住。

ドクター・サラ・ノヴァック(イザベラ・スコルプコ
幼少期、ナチスに捕まり収容所でひどい目にあう。
アフリカに来て、教会の発掘に関わった最愛の夫が、精神に異常をきたして自殺。
物語後半、実は悪魔憑きは彼女だった事が判明し、メリンが悪魔祓いをするも、結局死んでしまう。

フランシス神父(ジェイムズ・ダーシー
バチカンから、教会の調査のため派遣された神父。
カトリックの重大な秘密を知っている。

ジョセフ(レミー・スウィーニー)
アフリカ人の子供。父親カトリックに改宗してる。
彼の周囲で恐ろしい事が起こり、悪霊が憑いているのではと疑われている。

侵略と支配の物語?

本作では、三つの侵略と支配が描かれています。

一つは冒頭のローマ帝国による進行。

これが、多分本作冒頭のシーンなんだと思います。
現地人との対立によって、多くの死者を出したカトリックは、土着神パズズを封印するため神殿? の上に教会を立てて土に埋め、現地人は疫病で死んだという噂をながしていたらしいんですね。
この事実を隠蔽するため証拠書類も隠されてましたが1893年に発見され、遺跡発掘はその事実調査のためだったわけです。

もう一つはナチスによるオランダ侵略

これが、主人公メリン神父のトラウマになっていて、劇中ではハッキリ描かれてないんですが、どうやらオランダでナチスの将校が殺されたらしいんですね。
で、その上官は「犯人はユダヤ人に違いない」と広場にユダヤ人を集め、イキナリ幼い少女を撃ち殺し、メリン神父に処刑する人間を10人選べ。さもないとここにいる全員を殺すと脅すんですね。
それで、大勢の命を救うため、仕方なく彼は10人を指差します。(こうして書くのも嫌な話)
それがトラウマになり、神を信じられなくなったメリンは神父を辞めるわけです。
そして、アフリカで出会う女医のサラはユダヤ人? であり、ナチスの収容所で酷い拷問を受けた過去があることが後に分かるんですね。

最後はイギリス(白人)による侵略と支配。
これが本作のクライマックスに繋がっていくんですが、採掘場に近く、当時のケニアナイロビはイギリスの植民地です。
つまり、白人によって侵略、土地を支配されているんですねー。

そして、物語のスタートとなるローマ帝国は、元々は土着神だったパズズカトリックが悪魔として封印しちゃってるわけです。

パズズは元々、アッカドに伝わる風と熱風の魔人で、現地の民間信仰では蠅を殺す土着神として崇められてたらしいです。
本作では、蝿の王ベルゼブブのイメージで描かれていますが、ベルゼブブも元々はペリシテ人(フィリスティア人)の町であるエクロンのバアル・ゼブブという豊穣の神らしいですからね。
まぁどちらにせよ土地神には変わりないんですが、偶像崇拝を禁じるキリスト教が土地神をお悪魔に貶め封印、キリスト教に改宗させること=白人による土地の支配とも重なってくるわけです。
結果的にパズズの封印を解いちゃうのは白人であり、メリンであるってのが、何とも皮肉な展開なんですが、そう考えると本作はある意味内省的というか、侵略という行為への批判が根底に見えるような気がします。

で、“一応“本作では、信仰を取り戻したメリンが神の力を借りてパズズを撃退→神父に復帰というオチになってます。

メリン神父は本当に信仰を取り戻していたのか?

劇中ずっとメリンを苦しめるのが、オランダの事件の時にナチスの将校が言った「神はいない」というワード。
ラストでは神の力を借りてパズズを撃退するメリンですが、代償に最愛の女性サラを失ってしまいます。
その後、神職に復帰するものの、「エクソシスト」で冒頭でメリン神父はイラクで発掘調査を続けているわけで、つまり彼は、いつか再びパズズと相まみえることを予感していたんでしょうね。

 「エクソシスト」での悪魔(パズズ)対決は宿命的でもあり、意図せず“悪魔“を世に解き放ってしまった落とし前をつける戦いでもあり、リーガンを救うことはオランダで救えなかった少女への贖罪でもあり、最愛の女性を奪ったパズズへの復讐でもあるのかなと。

穿った見方をすれば、彼は信仰を完全に取り戻したわけじゃなく、神に対して懐疑的なカラス神父への彼の言葉は、そのまま自分に向けた言葉だったのかもしれません。

なんちゃって。

本作は、血や肉片、土埃、ウジにまみれた死産した赤ん坊など、非常に不快な描写は多々ありますが、レニー・ハーリン監督の腕がアレなのか『怖い』と思うようなシーンはほぼ皆無です。
なので、グロが苦手でない人なら、ホラーが苦手でも多分大丈夫じゃないかなと思います。ただ、面白いかどうかは保証できませんw(僕は“お祓い映画“大好物なので楽しめましたが)

興味のある方は是非!