ぷらすです。
今回ご紹介するのは、「攻殻機動隊」TVシリーズや「東のエデン」などの監督として有名な神山健治のオリジナル長編劇場アニメ『ひるね姫』ですよー!
この作品、公開時の評判があまり芳しくなかったので、スルーしようかとも思ったんですが、攻殻機動隊のTVシリーズは好きだったので、一応、観てみる事にしましたよー!
今回は後半部分でネタバレする予定なので、これから観る予定の方は後半部分は映画を見た後に、読んでくださいねー。
いいですね? 注意しましたよ?
画像出典元URL:http://eiga.com
あらすじと概要
『攻殻機動隊』『東のエデン』シリーズなどの神山健治監督が手掛けたアニメーション。岡山県倉敷市児島を舞台に、瀬戸大橋のたもとののどかな町で暮らす親子の絆を、夢と現実を結び付けつつ描写する。NHKの連続テレビ小説「とと姉ちゃん」などの高畑充希が、主人公の森川ココネの声を担当。そのほか、満島真之介、古田新太、前野朋哉、高橋英樹、江口洋介といった面々がキャスト陣に名を連ねる。
ストーリー:高校生の森川ココネは家でも学校でも常に眠気に襲われ、ついウトウトと居眠りばかりしていた。2020年、東京オリンピックが間近に迫った夏の日、彼女の家族は事件に見舞われる。実は両親にはココネも知らない秘密があり、その謎を解く鍵は彼女の夢の中にあった。(シネマトゥディより引用)
感想
神山健治とは
アニメーション監督、脚本家、演出家であり、現在は「株式会社クラフター」代表取締役共同CEOでもある、日本を代表するアニメ作家の一人です。
PRODUCTION I . Gの精鋭を集めて行われた押井守主催の「押井塾」では「級長のような存在」だったという彼の作風は、個人的に「ストーリーテラー」という印象。
事実、TV版 攻殻機動隊「 STAND ALONE COMPLEX」「 S.A.C. 2nd GIG」では、スタッフと共に徹底してストーリーのアイデアを煮詰める姿を特集番組などで見ています。
そんな彼が監督・脚本を担当した初の劇場用オリジナル長編作品ということで、本作の公開前はかなり期待値が上がってたわけですが、いざ公開されると、どうにも評判が芳しくなかったんですよねー。
で、今回自分の目で本作を観てみた結果、うーん…確かに微妙な作品でした。
いや、面白いんですよ?
ただ、神山健治作品にしては、随分とストーリー運びが乱暴な印象だったんですよね。
ざっくりストーリー
本作の主人公、森川ココネ(高畑充希)は、岡山に住む高校三年生。
そんな彼女は、家でも学校でもいつも眠気に襲われ居眠りばかりしてるんですね。
画像出典元URL:http://eiga.com / 主人公のココネ(高畑充希)
で、そんな彼女の夢に登場するのは「ハートランド」という、国民全員が自動車を作る国営会社に勤めている国で、彼女はそこの王女らしい。
画像出典元URL:http://eiga.com
そんなある日、地元で小さな自動車修理工場を営む父親のモモタロー(江口洋介)が、ある容疑をかけられ警察に捕まってしまい、ココネの夢と現実も徐々にリンクして……というストーリー。
設定自体は面白いと思うし、この作品で神山監督が言いたいこと、やりたい事も分かるんです。が、登場するキャラクターの行動がおかしいので、本来サスペンスフルになるであろうシーンも、緊張感のない間抜けなだけのコメディー風味になってて、ストーリー作りに定評のある神山健治作品にしては(´ε`;)ウーン…って感じなのです。
それで、観終わったあとにネットで作品解説のサイトを読んでいたら、こんなレビューを発見しましたよ。
こちらのブログによれば、本編で削られた? 大事なエピソードが、『エンシェンと魔法のタブレット ~もうひとつのひるね姫~』という30分ほどの短編として、hulu限定で公開されているらしいんですねー。(僕は未見)
何故、そんな事になったのかは分かりません。
単純に、本編に入れるには長すぎるという判断かもしれないし、最初からそういう(本編補足としての短編をネット公開する)計画だったのかもしれないし、もっと他の、何か大人の事情が関わっていたのかもしれませんね。
というわけで、ここからネタバレですよー!
ただの夢あふれるファンタジー映画ではない
本作を見た人なら、この作品が単なる夢があふれるファンタジーではないと分かると思います。
ココネの夢に登場するハートランド王国は、日本最大の自動車製造会社であるシジマ自動車であり、それてって、そのまんまTOY〇TAを始めとする日本の自動車業界なんですよね。
そして、日本は、自動車の輸出でのし上がってきた国でもあるので、この王国はそのまま日本のメタファーでもあるわけですね。ハートランド→シジマ自動車→自動車業界→日本っていう連想ゲームみたいなメタファーになっているわけです。
そこの王女であるエンシェンはタブレットで魔法を使える魔女という設定で、そんな彼女のせいで王国には定期的に巨大な鬼が攻めて来るのを、相棒となるピーチという「海賊」と共に撃退しようとしているんですね。
場面変わって、ココネが目を覚ますと、そこは岡山県のある小さな町。
父親のモモタロウは、居住空間までエンジンのパーツが転がっているような小さな自動車整備工場を営んでいて、ココネのお母さんはココネが赤ん坊の頃に亡くなっていることが分かります。
画像出典元URL:http://eiga.com / ココメの父親モモタロウ(江口洋介)
で、このモモタロウは町の老人たちの車を(ほぼ無料で)自動運転車に改造してるんですね。
テレビでは2020年東京オリンピック開幕間近のニュースが流れ、そこでシジマ自動車開発の自動運転自動車のデモンストレーションが行われる予定にも関わらず、開発が難航している事も分かり、父親には「タブレットを渡さないと訴える」っていう謎の電話が掛かってくるわけですよ。
つまり、ココネの夢に出てくる王国は日本最大の「シジマ自動車」で、魔法のタブレットは自動運転のコードデータが入ったタブレット。王国を攻めて来る鬼は、(恐らく)自動運転に先進的な海外企業なのでしょう。
画像出典元URL:http://eiga.com / ココネと共に東京に向かう幼馴染のモリオ(満島真之介)
さらに物語が進むと、自動運転など必要ないという考えの社長と、未来のために自動運転自動車の開発をするべきという娘(ココネの母親)の対立があり、結局、父の反対を押し切って娘は系列の子会社? で開発を続け、(映画のEDロールの中で)志半ばにしてテスト走行に事故で亡くなってしまう事も分かります。(ハッキリとは描かれてませんが)
残されたモモタロウ(子会社のテストドライバーで娘と駆け落ち)は、以降シジマ自動車とは縁を切って娘の意志を継ぎ、ついに自動運転のシステムを完成させたわけですね。
で、タブレットを欲しているのは、反社長派閥の渡辺という男で、彼は自分(もしくは自分の派閥の長)が手柄を立てることで支持を集め、現社長を引退させるために、独断でモモタロウが持つタブレットをあの手この手で奪い取ろうとしているのです。
つまり、この作品はシジマ自動車のお家騒動に、モモタロウとココネが巻き込まれるという物語なんですね。
神山監督はそんな生臭い話を、夢(ファンタジー)描写を交え寓話的に描くことで、誰もが楽しめるような作品にしようと頑張ってはいるんですが、それが上手くいっているかといえば、上記のとおり正直、微妙な出来なのです。
画像出典元URL:http://eiga.com / 夢でも現実でも重要な役割を果たすぬいぐるみのジョイ(釘宮理恵)
それは随所に見られるご都合主義な展開だったり、キャラクターの行動に統合性はないのが主な理由で、「ファンタジーコメディーなので」と言われても、色々飲み込みづらいんのです。
っていうか、神山監督が作るんだから、もっとゴリゴリの硬派なアニメにする手もあったと思うし、その方が監督の資質も活かせたんじゃないか? なんて思ったりもするんですが、まぁ、それだとファミリー向けアニメにはならないし、ポスト駿を探してる日テレ絡みの作品だからって事もあるのかも? ですね。
この作品で神山監督が言いたかったこと
では、この作品を通して神山監督が言いたかった事は何かといえば、「老害がいつまでものさばってると日本は壊滅する!」……ではなく(いや、それも多少はあるだろうけどw)、「今までの成功体験にすがるのではなく、新しい発想や技術を受け入れる柔軟な姿勢が未来の日本を救う」的なことじゃないかと。
とすれば、鬼の正体は、海外企業でもあると同時に、また新しい事に挑戦する人たちを(無知ゆえに)邪魔する、世間の風評やマスコミだったりするのかもしれません。
そういう意味では、庵野監督の「シン・ゴジラ」に通じる部分もあると思うし、ある意味で、3・11以降の日本を批評的に描いた作品といえるかもしれませんね。
いや、全然読み違えてるかもですがw
同時にこの作品は、コミュニティーの絆の大切さを描いていて、その象徴が、ココネの家族や彼らのクラス町の人々で、それは大企業のシジマ電気や東京との対比になっているんですねー。
そういう意味でも3・11以降の物語として考えられていると思うし、(色々文句はあるけど)少なくとも観ている間は楽しめる作品でしたよー。
それと、ココネ役の高畑充希を始め、キャスト陣はみんな良かったし、高畑充希の歌う「デイ・ドリーム・ビリーバー」も良かったですねー。(´∀`)
興味のある方は是非!
▼よかったらポチッとお願いします▼