ぷらすです。
今回ご紹介するのは、昨年公開された特撮リブート映画『BRAVE STORM ブレイブストーム』ですよー!
1970年代に放映された特撮ドラマ「シルバー仮面」「スーパーロボット レッドバロン」をクロスオーバーさせるというオッサンホイホイな作品でしたが、正直、色々文句を言いたくなる作品でした。
というわけで、今回かなり文句多めになると思いますので、この映画が好きという人はスルーして下さい。
あと、今回は多分これから観る人はほぼいないと思うのでネタバレします。なので(以下略)
いいですね? 注意しましたよ?
画像出典元URL:http://eiga.com
概要
1970年代に放映された特撮ドラマ「シルバー仮面」「スーパーロボット レッドバロン」のクロスオーバーが実現したアクション。人類滅亡の危機に瀕する中、生き残ったきょうだいが時間移動し、地球への侵略をもくろむキルギス星人と壮絶な戦いを繰り広げる。大東駿介と渡部秀が主演を務め、山本千尋、タモト清嵐、春日光一、壇蜜、吉沢悠らが共演。最新の技術を使った迫力の戦闘シーンが見どころ。(シネマトゥデイより引用)
感想
制作の経緯
本作の元ネタ は70年代に宣弘社制作でテレビ放映された特撮ヒーローもの「シルバー仮面」と、巨大ロボットもの「スーパーロボット レッドバロン」です。
最初はこれに「アイアンキング」も参加させる企画としてフィギュアメーカー・アルバトロスが持ち込んだらしいんですけど、さすがに収拾がつかないということで監督の岡部淳也は上記の2作品に絞り、自らがプロデューサー・脚本・監督の3役を担当して本作を作り上げたんですね。
キャラクターデザインは、バンコクのデザイナーに依頼してシルバー仮面とレッドバロン(敵側のブラックバロンも)のデザインを今風にリブートし、巨大ロボのシーンはミニチュアなどは使わずにCG&合成で制作した意欲作です。
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キャラ設定や造形デザイン、内容の改変には賛否あるようですが、個人的には(シルバー仮面もレットバロンも子供の頃に観てたけど)内容もキャラクターも覚えてないので全然OKでしたねーw
褒めたい部分
この作品、かなり低予算な割には特撮部分は相当頑張っていたしクオリティーも邦画としてはかなり高いと思います。
もちろんビックバジェットのパシフィック・リムやMCU作品とは比べるべくもないけど、真昼間に市街地で行われるロボットバトルは巨大感に見合った重量感があって「おぉ!」と興奮したし、同時進行で行われたシルバー仮面と強化人源との格闘も中々見ごたえがあったと思いますねー。
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あと、一番良かったのは戦闘中に写りこんでいる一般の人がいないってことですね。
あれがあると一気に冷めちゃいますから。
その辺は戦闘シーンでの街の全景をCGにした監督の英断だなーと。
(実写版「ガッチャマン」の監督は岡部監督の爪の垢を煎じて飲んだらいいと思いましたよw)
さすがは元円谷プロにいた監督だけあって、アングルやバトルに巻き込まれてビルや自動車が壊れるシーンとかが効果的に挿入されることで、ロボの巨大感や戦闘の迫力を上手く演出できていたと思うし、個人的にはかなり満足のいく映像でした。
文句を言いたい部分
はい、ここからは文句です。
VFXをメインにした特撮シーンは個人的に十分満足できたんですけど、それ以外の脚本や演出はあまりにも酷いって思いました。
本作のストーリーをざっくり説明すると、
1・西暦2050年、地球はキルギス星人の侵略により滅亡の危機に瀕していた。
2・人類を救うため春日光二・はるか・光三の兄妹3人はキルギス星人からブラックバロンの設計図を奪いキルギス星人が襲来する以前の2013年にタイムスリップ。
3・キルギス星人の巨大兵器ブラックバロンを倒すため、ロボット工学者の紅健一郎に巨大ロボットの建造を依頼。
4・紅健一郎は巨大ロボットレッドバロンを作る交換条件として、パイロットに弟で天才ボクサーの紅健を指名。
5・2018年、それに気づいたキルギス星人は健がレッドバロンに乗る前にを殺害を企て…みたいな感じ。
まぁ、ベタと言えばベタだけど物語自体は面白そうじゃないですか。
ただ、侵略者キルギス星人は地球の大気では生きていけないので彼らが生きていける大気にするためにブラックバロンを使って毒ガスを巻き、そのせいで未来で人類の大半が死滅しているという(宇宙戦艦ヤマト的な)設定があるんですね。
でも、キルギス星人は小笠原諸島の無人島に基地を作っていてるし、そこに乗り込んだはるかと健も、捕まっていた健一郎も平気なんですよ。
さらにクライマックスで、キルギス星人は誘拐した紅健一郎に化けてブラックバロンに乗り込んでいて、負けそうになると健の動揺を誘うためカバーを外して姿を見せるんですが…最初の大気云々設定はどこに行ったの? と。
あと、レッドバロンの制作費は(未来からきた)春日三兄弟が株やら宝くじやら競馬で儲けた資金を使ったらしい。まぁ、それはいいとして、巨大ロボをたった4人で作ったの? とか。
秘密基地が見つかって春日三兄弟とレッドバロンが逃げ出すシーンで、ハッチを開けるために健一郎博士はその場に残るんですよ。
レッドバロンは手足のジェットで空を飛んで逃げるわけですけど、普通、ロケット発射台のそばに人がいたら焼け死にますよね? なのに、レッドバロンのすぐ近くにいた健一郎は何で普通に生きてるの? とか。
もうね、ツッコミ出したらキリがないし、そういう脚本上のアラや雑さがノイズになって物語に集中出来ないんですよ。
…まぁでも、そういう細かいアレコレは百歩譲るとして、何で健がレッドバロンのパイロットなのかって言うと、健一郎が巨大ロボットを作って自分がパイロットになるっていう健との子供の時の約束を健一郎が守ったから――っていうね。
いや、いい話風に言ってるけど、春日三兄弟をパイロットにしてたら健はキルギス星人に命を狙われてないし、そのせいで健の友達死んじゃってますけどー! っていう。
しかも、またそこで健がレッドバロンに乗るの乗らないのウダウダウダウダやってて、「あーそれガッチャマンでも見たわー。たるいわー」って思ったりね。
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まぁでも、これも100歩(計200歩)譲るとして、一番気になったのがキャスト陣の演技が子供向け特撮やアニメっぽい。
これ、ちょっと説明が難しいんですけど。
例えば兄の健一郎は(多分)飄々とした、なんなら少し浮世離れした男みたいな設定だと思うんですけど、なんか演技がアニメや子供向け特撮のキャラっぽいわけです。
アニメとかなら成立するけど実写でやると嘘っぽい台詞回しや演技ってあるじゃないですか。
「進撃の巨人」とか「パトレイバー」とか「ガッチャマン」とか。
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それも子供向け特撮だったら、こっちも「そういうもの」として受け入れられるけど、この映画観る観客なんて9割オッサンですよ!
大人が見て違和感を感じない実在感のあるキャラクターの演技観せてくれよ! と。
ただ、これは(多分)別に役者が悪いわけじゃなくて、岡部監督が役者の演出がつけられないか、子供向け特撮やアニメと同じプランで演出してるのが原因だと思うんですね。
それはこの作品に限った事じゃなく、元ネタに寄せすぎてキャラクターに現実味がなくなるっていう、アニメや漫画原作の実写化ではよく見かける症例です。
MCUシリーズがあれだけウケているのは、単純にお金をかけたVFXの見た目だけじゃなくて、大人が観ても面白い物語だからです。
で、実は、日本の特撮ものや漫画・アニメ原作の実写化作品で一番出来てないのがそこだと思うんですね。
特撮畑の人が監督や脚本も担当するから、特撮シーンはいいけどストーリーやドラマパートが弱いっていう。
結論
本作の岡部監督は、こと特撮に関しては日本でも有数のクリエイターなんだと思うし、ロボットバトルもヒーローバトルのシーンはちゃんと考えられてて志の高さも伝わってきます。
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ただ、(予算や人材的に難しいのを承知で言えば)大人がストレスなく楽しめるストーリーを書ける脚本家 と、人間ドラマの演出が出来る監督、そして岡部さんの特撮が加わればもっと面白い映画になるんじゃないかと思ったりしました。
まぁ、それは特撮を使った実写映画だけでなく、(一部を除いて)監督の作家性に頼りすぎてる今の邦画界全体的に言えることだと思いますけどね。
興味のある方は是非。
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