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ジャン=リュック・ゴダールの代表作「気狂いピエロ」(1967) *ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ヌーヴェルヴァーグを牽引したジャン=リュック・ゴダール監督の『気狂いピエロ』(きちがいピエロ)ですよー!

一度20代で観たときは正直サッパリだったんですが、僕もいい歳のオッサンになったし「そろそろゴダールもイケるんじゃね?」と再チャレンジしてみましたー。

で、多分この作品は、ネタバレとか関係ない映画だと思うので、今回はネタバレありの感想になります。
なので「ネタバレは嫌」って人は、先に映画を観てからこの感想を読んでください。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

ジャン=リュック・ゴダールの描く、「勝手にしやがれ」と並ぶヌーヴェル・ヴァーグの代表的作品。映画的文法に基づいたストーリーというものはなく、既成の様々な映画の要素を混ぜ合わせ、光・色・音等を交差させて、引用で組み立てられた作品。「勝手にしやがれ」のジャン=ポール・ベルモンドを主演にして、ただただ破滅へと向かってゆく主人公の姿を描く。(allcinema ONLINEより引用)

感想

ゴダールと言えば、うっかり「映画好き」なんて言おうものなら、
「へー、キミ映画が好きなんだー。じゃあ当然ゴダールは見てるよね。え、ゴダールも見てないのに映画好きとか言っちゃうんだ。へー(笑)」
と、大学の映研でくだを巻いてるようなサブカルクソ野郎が即座にマウントを取りに来るでお馴染みの、難解映画の代表選手みたいな映画監督じゃないですか。

いや、僕自身は(年代的にも)そういうの食らったことないですけど、マンガやドラマでそういうシーンで結構観たし、僕自身オタク畑の人間だったのでアニメや特撮作品で似たような仕打ちを何度か喰らいましたねー。

まあ、どの世界でもこういう嫌なタイプのオタクってのはいて、そういう輩がマウントを取るために利用したせいで、何も悪いことしてないのに変な先入観や苦手意識を持たれてしまう映画監督もある意味で被害者だし気の毒だと思うんですが、(多分)ゴダールは自身がこの嫌なタイプのオタク上がりの監督だと思うので、あまり同情できない感じもあったりなかったり?

で、そんなゴダールの代表作の一本が本作「気狂いピエロ」なのです。

 

ざっくりストーリー紹介

主人公フェルディナンは、いつも本を読んでる活字中毒で、会話でも本の文章を引用しまくって悦に入ってるような無職のサブカルクソ野郎です。

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画像出典元URL:http://eiga.com / サブカルクソ野郎のフェルデナン(ジャン=ポール・ベルモンド

そんな彼が、金持ちの奥さん言われて就活がてらパーテイーに行くと、アメリカ人の映画監督サミュエル・フラーと出会い、「映画ってなんですかね?」って聞くと、フラーは「映画とは、戦場のようなものだ。愛、憎しみ、アクション、暴力、そして死。要するに、エモーション(感動)だ」と言うんですね。

本物の映画監督と話をしてすっかり感化されたフェルディナン。
パーティーでどうでもいい会話をしてる人たちを見て、「どいつもこいつもバカばっかだー!」なんてとんだ勘違い発言をして、女性陣にケーキを投げつけて途中退場。

家では友人の姪っこマリアンヌが娘の子守をしてるんですが、実は彼女は姪っ子じゃなくて友人の愛人。しかもフェルディナンの元カノだったのです。

今の生活を退屈に感じていた二人は、そのまま友人の車で愛の逃避行と洒落込むんですが、マリアンヌの今カレだった男は武器密輸ブローカーで、車には大量のドル札が入っていたからさあ大変。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 最初は盛り上がっていた二人だが…

二人は追われる身となりながら、ボニー&クライド気取りで逃避行を続けます。

最初のうちは燃え上がっていた二人ですが、サブカルクソ野郎で中二病気味のフェルディナンが女心が全くわかってないので、徐々に二人の心は離れていき、そんな時に組織に追い詰められ離れ離れに。

それからしばらくして、亡命した王家の妃に使えていたフェルディナンの元に、死んだと思っていたマリアンヌが再び現れ、兄貴の計画に乗ったフリをして組織の金を持ち逃げして二人でマイアミで暮らそうと持ちかけます。

しかし、それは嘘で兄貴と呼んでいた男はマリアンヌの彼氏でした。
フェルディナンは自分が利用されただけだと気づき、マリアンヌと恋人の男を撃ち殺して自分も(頭に巻きつけた)ダイナマイトの束で爆死する。という物語なんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 最後は頭にダイナマイトを巻いて爆死

 分かり合えない男と女

恐らく、このサブカルクソ野郎のフェルディナンは、ゴダール自身を投影したキャラクターなんだろうということが何となく分かります。
で、マリアンヌ役を演じたアンナ・カリーナゴダールのリアル奥さんでして、なのでこの映画は(アンナ・カリーナの浮気が元で)破綻した自身の結婚生活とゴダールの気持ちを映画にしたのではないかという説があるとかないとか?

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画像出典元URL:http://eiga.com / マリアンヌを演じるアンナ・カリーナゴダールのリアル嫁

で、最初こそ盛り上がっていたフェルディナンとマリアンヌの関係ですが、実は最初から最後まで二人は噛み合っていないんですよね。
本を愛するフェルディナンと音楽やダンスを愛するマリアンヌ。

本はアーカイブ=過去と死の象徴、音楽やダンスは未来と生を表す象徴として描かれていて、つまり二人は最初から見ている方向が真逆なんですね。

それでも劇中、マリアンヌは何とかフェルディナンに歩み寄ろうとするんですが、サブカルクソ野郎のフェルディナンは、それに気づくことが出来ないのです。

それはそのまま男と女の関係を表していて、つまり男と女はそもそも分かり合えないのだということを、ゴダールはこの映画で言っているんだと思います。多分。

サミュエル・フラーとの会話

あらすじでも書いた、冒頭のパーティーシーンでの、フェルディナンと映画監督サミュエル・フラーとの会話。

元々、映画評論家から監督になった経歴を持つゴダール
そんな彼の分身フェルディナンが、映画監督のフラーに「映画とは何か」と問いかけ、フラーは「戦場のようなもの。愛、憎しみ、アクション、暴力、そして死。要するにエモーションだ」と答え、このシーンをキッカケにフェルデナンはその言葉を実践して「映画」を始めます。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 銃を持つギャングにハサミで対抗するマリアンヌ

つまり本作は、シネフィルから映画評論家→映画監督になったゴダール自身の「映画ってこういうことだろ」というある種の回答で、「ただし俺ならこう作るけどな」っていう「映画を語る映画」なのかなと。

パーティーに集う人たちはシネフィルや映画評論家のメタファーで、そういう人たちが映画の表層だけを捉えてあれこれ愚にもつかない事を話していて、最初はフェルディナン=ゴダールも自分もその中の一人だったけど「こいつら映画を何も分かってない バカばっかりだ!」とパーティーを飛び出して、「映画」(監督)を始める…みたいな事なのかなと。

やっぱり分からん

この作品は、20代の頃に観てさっぱり分からなかった映画なんですが、そんな僕も今やいい歳のオッサンですからね。
歳を取ると味覚が変わるようにゴダールもそろそろイケんじゃね?」と今回再度チャレンジしたわけですが……うん、なるほど分からん。とw

いやいや、ストーリーが分からないとかじゃないんですよ。
小難しい事ばっか言ってるサブカルクソ野郎が、悪い女に騙された腹いせに女を殺して自分も死ぬという至極単純なストーリーですから。

そんな単純なストーリーに、絵画、文学や詩、映画や戯曲などから大量に引用しまくったセリフや映像をまぶして、いわゆる映画のストーリー文法を無視して撮った映像を繋ぎ合わせることで、映画を解体・再構築してみせた斬新な手法が(当時の)若い映画人やサブカル系の若者たちに大きな衝撃を与えたという功績も(色々な解説を見聞きしたので)理屈としては分かるんです。

ただ、本作が面白いかと聞かれたら正直つまらないし、どうやって面白がればいいのかが分からないんですよねー。

何ていうかこう、ラソンの実況中継を延々最後まで見てる時の気持ちに似てるかも。

一応ルールは分かる。レース上の駆け引きも解説者に教えてもらった。でも、選手がただ走ってるのを2時以上見てるのはシンドイ。
スポーツニュースで最初と最後だけ見れば十分だなー…みたいな感じ。

 110分しかないのに、体感だと3時間くらいに感じるし、ずっと「俺は何を見せられているんだ…」(いや、自分から好き好んで観ているわけですが)とw
あと、小難しいセリフがやたら多いので字幕を追うのに忙しくて映像に集中出来ない上に、セリフも頭に入ってこない。

っていうか、こちとらスピルバーグやルーカス、スタローンにジャッキーを観て育ったボンクラ帝国の住人なので、ゴダールとは完全に住んでる国が違うんだろうなーと。
つまりゴダールとの共通言語を、僕は持ってないって事なんだろうと思いましたねー。

前述の食べ物例えで言うと、大人になってチャレンジしてみたけど、やっぱりクセの強いホヤは食べられなくて、結局ハンバーグが最高だよね。みたいな感じ。

それが分かっただけでも、この映画を観た価値はあったのかもw

逆に言うと、今の時代だってゴダールと同じ言語を持ってる人はきっといるわけで、そういう人にとってこの映画は大傑作なのかもしれませんね。

興味のある方は是非!

 

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