ぷらすです。
今回ご紹介するのは、ポーランド発、アンデルセンの「人魚姫」をアレンジした異色ホラー『ゆれる人魚』ですよー!
基本「人魚姫」に沿ったベーシックなストーリーなんですが、キッチュでグロテスクな絵面とか、80年代東欧の耳馴染みのない音楽、物語をぶつ切りにするような編集が相まって「俺は今、何を観せられているんだ」という気持ちになる映画でしたねー。
画像出典元UL:http://eiga.com
概要
ポーランドのアグニェシュカ・スモチンスカ監督がメガホンを取り、アンデルセンの「人魚姫」をアレンジした異色ホラー。共産主義時代のポーランドを舞台に、海から上がった肉食人魚姉妹が成長する過程をパワフルに映し出す。『アンナと過ごした4日間』『ソハの地下水道』などのキンガ・プレイスや、『愛の原罪』などのヤクブ・ギェルシャウ、テレビドラマなどで活躍するマルタ・マズレクらが共演。(シネマトゥディより引用)
感想
人魚姫+セイレーン
本作のストーリーをざっくり紹介すると、
共産主義下にあった1980年代のポーランド。
人魚の仲良し姉妹、ゴールデン(以降、金さん)、シルバー(以降、銀さん)が興味本位で陸にあがり、ダンスとストリップが売りのナイトクラブに出演。
一夜で人気者になるも、妹の銀さんがバンド仲間の色男ミェテクに恋したことで、姉妹仲が悪くなっていき…。という物語。
本作に登場する人魚、金さん銀さんの造形は下半身の魚部分はくすんだ色でニョロニョロしてるし、主食は人間のオスだったり、あと、その歌声で人間の男を惑わせる能力があるっぽいので、「人魚姫」というよりも歌声で誘惑して船を難破させ、船乗りを食べるセイレーンをベースにしている感じで結構グロめ。
画像出典元UL:http://eiga.com / 向かって左が金さん、右が銀さん
あと、二人は尾びれを人間の足に変化させられるという設定(水を掛けると元に戻る)なんですが、元々は尻尾なので、性器がなくて「バービー人形」みたいにツルツルだったりします。(ちなみに人魚姿の時は尻尾に性器というか排卵口?があるのが説明される)
最初、ボカシが掛かってるのかと思いながら観てたら、セリフで「バービー人形みたい~」ってあって「あぁ、そういう事なのね」って思いましたよ。
え、ミュージカル?
元々、アグニェシュカ・スモチンスカ監督は、ポーランドのインディ音楽シーンで有名なヴロンスキ姉妹(本作で音楽を担当)の伝記映画を考えていたそうですが、脚本家のアイディアで人魚の物語になったんだそう。
なので、劇中、監督が子供の頃に聴いていた80年代のテクノっぽい東欧音楽満載。
っていうか、この映画ミュージカルなのです。
画像出典元UL:http://eiga.com
冒頭、海辺で歌っているバンドメンバーの3人につられるように、金さん銀さんも歌に入ってくるんですが、その歌詞が「私たちはあなたたちを食べたりしない~。だから怖がらないで~」みたいな感じだったり。
以降も重要なシーンや、二人の心情は歌で語られていくんですが、曲調は80年代の電子音バリバリの東欧ポップス(?)
www.youtube.com 劇中で歌われる「You Were The Beat Of My Heart 」
独特で耳馴染みのないメロディーラインと「リザとキツネと恋する死者たち」を思い出すキッチュな背景美術、ストーリーの流れをぶつ切りにするような編集も相まって、アート映画っぽいというか「俺は今、何を観せられているんだ…」っていう不安定な気持ちにさせられるんですよね。
多分、監督は意図的にやってるんだと思いますが。
画像出典元UL:http://eiga.com
そんな感じで、出だしは上々だった二人ですが、姉の金さんがナンパした男を食べてしまったことと、妹の銀さんが二枚目ベーシストのミェテクに恋したことで、事態は悲劇へと傾いていくんですねー。
ミェテクに告白すると、やんわり「魚類と恋とか無理」と断られた銀さんは、人間になる事を決意。「尻尾を失うと声が出なくなる」という金さんの忠告も無視して人間になるんですが、その方法が魔術師の婆さん人魚の薬とかじゃなく闇医者の外科手術。尻尾の代わりに人間の下半身を移植するというもの。
っていうか、移植なんて可愛いもんじゃなくて、電ノコで真っ二つにされて人間の下半身を乱暴に縫い付けられるっていう、中々のゴアシーンがミュージカル調に繰り広げられます。 一体何を観せられてんだホントw
で、めでたく人間になった銀さんとミェテクは初Hに望むわけですが、つなぎ目からドボドボ出血してる銀さんにミェテクはドン引き。他の女の子と結婚するんですねー。
そんな彼をやさしげな瞳で見つめる銀さんに「海の泡になるから、夜明けまでにミェテクを食べろ」と言う金さん。そして銀さんは――。って感じ。
少女から女性になる物語
まぁ、言うまでもなく金さん銀さんは、思春期の少女のメタファーでして。
要は一人の女性を、少女のままでいたい金さんと、愛を知って大人の女性になる事を選んだ銀さんという二人のキャラに分けて描くことで、思春期のゆれる乙女心を表現してるわけです。
「人魚姫」の物語は大抵の人が知っているだろうし、物語自体はシンプルなので観ていて混乱するような事はなく、あとはアグニェシュカ・スモチンスカ監督の描き方や世界観が好きか嫌いかで、この映画の評価は別れるんじゃないかと思いましたねー。
興味のある方は是非!
▼よかったらポチっとお願いします▼
▼関連作品感想リンク▼