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タイトルに偽りなし「ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アマプラで配信中のアメリカ映画『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』ですよー!

もうね、こんなタイトルの映画、観ないわけにはいかないでしょ!
って観たら、何か思ったのと全然違うストーリーでしたよ。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

『アリー/スター誕生』などのサム・エリオットらが出演したアクション。隠居生活を送る元兵士の男が、ビッグフットとの戦いに挑む。ロバート・D・チコフスキがメガホンを取り、ドラマシリーズ「風の勇士 ポルダーク」などのエイダン・ターナーらが出演する。『ブレードランナー』などに携ったダグラス・トランブルリチャード・ユリシックが、VFXに参加している。(シネマトゥディより引用)

感想

ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男」の物語

正直、本作のタイトルを最初に見た時は「また日本の配給会社が適当な邦題をつけてる」って思ったんですが、実はこのタイトル原題の直訳でしたw

アメリカには、「トール・テール」というホラ話を西部の開拓者たちの間で語る文化があり、これは日本で言えば桃太郎や金太郎などと同じく、ヒーロー譚の原型でもあり、神話を持たないアメリカ文学の発展にも大きな影響をもたらしているんですね。

そして、本作の一見突拍子もない物語とタイトルには、このトールテールの文脈が背景にあるのだそうです。

本作は冒頭、馴染みのバーで一人酒を飲む老人カルヴィンサム・エリオット)の顔面のアップから物語は始まります。その表情に楽しそうな様子はなく、苦虫を嚙みつぶしたような表情のカルディンのアップから回想パートへ。
若き日のカルディン(エイダン・ターナー)はナチスSSの制服を着て、SSの隊員たちが厳重に警備する邸宅にやってきます。

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画像出展元URL:http://eiga.com

そこで持ち物チェックのためポケットから、スキットルやライター、ペンなどを取り出し危険物を持っていない事を確認された彼は、再びその持ち物をポケットに仕舞って建物の中に。

そして2階の廊下を早足で歩きながら先ほどのライターやペン、スキットルなどを次々組み立てるんですね。なんとそれらは組み立て式の銃の部品であり、彼はヒトラー暗殺のためナチスに潜入したアメリカ兵だったのです。

そしてその部屋の奥にはヒトラーの姿が――、ここで店主に肩を叩かれて現実に引き戻されるカルディン。

ってな感じで本作は、年老いたカルディンの若き日のロマンスやヒトラー暗殺に至るまでの回想パートをメインにした前半部分と、老カルディンが政府の依頼を受けカナダの山奥にビックフットを殺しに行く後半部分で構成されているんですね。

で、先にネタバレするとカルディンは前半部分でヒトラーを殺し、後半でビックフットを殺してました。って、タイトルそのまんまの内容でしたねーw

こう書くと、アサイラム的な露悪的悪ふざけB級映画的をイメージするかもしれません。

だって、ヒトラーの方はまぁ100歩譲るとして、ビックフットて!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

しかも普通に出てくるし、そんなに大きくもない。多分180㎝くらいしかない。そして今どきCGでもない着ぐるみのルックもめっちゃショボい。
っていうかそもそもなんで70過ぎのおじいちゃんに依頼を!?――って思うでしょ?

実はこのビックフット、放っておくと世界が滅亡するくらい凶悪なウイルスの保菌者で、半径800㎞だかの(鳥以外の)生物は全滅してしまうらしい。
で、ビックフットがこのままアメリカに近づいてパンデミックが起こる前に、大統領はカナダに核爆弾を落としビックフットを抹殺する計画らしい。

しかし、このビックフットのウィルスにも抗体を持つ人間が世界に数人いて、カルディンはそのうちの一人だったのです。(他は子供と老人しかいない)

そして、ビックフット暗殺の依頼にきたFBIの男は、子供の頃に祖父からナチスハンター・カルディンの伝説を何度も何度も聞かされてきたと。
で、ここで英雄であるハズのカルディンがなぜこんなに寂しい老後を送っているのか、彼に影を落としているのが何なのかがカルディンの口から明かされるんですね。

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最初は政府からの依頼を断るカルディンですが、なんやかんやあってその後カナダの山奥でビックフットとの対決に向かうわけですが、正直映像的な驚きもアクションの面白さも一切ありません。

ただ、それは監督の意図的な演出なんですよね。

ヒトラーとビックフットとカルディン

どういうことかというと、この後半のビックフット殺害は前半のヒトラー暗殺と呼応する形になっているんですね。
ナチス党総統として今も世界に悪名を轟かせているヒトラーですが、彼自体は別に魔王でも悪魔でもない、何処にでもいるただのひ弱な中年男で、それは前半でカルディンと相対するシーンでヒトラーの手が震えている描写で分かるようになっています。

しかし、ホロコーストなどの歴史的悪行と(恐らく)事実を脚色することで膨らんでいったある種の都市伝説(ホラ話)が、ヒトラーを実物以上に恐ろしい男に仕立て上げた部分があるんだと思います。

それは、ビックフットも一緒で、実際には人間とさほど変わらない……っていうか、ちょっと厳つい人間なら素手で倒せそうなショボくて無害な生物なのに、発見談に尾ひれがついて、謎のモンスターにされてしまっている。

まぁ、本作ではカルディンと戦わせるため、かなり無理矢理なウィルス保菌設定がついちゃってますけどねw

そしてカルディン自身も、ヒトラーを殺した男として伝説の存在になっていて、FBIの男の祖父などに語られるうち、どんどん本人とはかけ離れた人物像になっていたのだと思われます。

つまり形は違えど、ヒトラーとビックフットとカルディンはある種の同類なんですね。
前半、ヒトラー暗殺で大きな挫折を味わい、大切な人を失ったカルディンは過去に縛られたままずっと立ち止まっていたわけですが、老人になりビックフットとの対決で生まれ変わったこで、前に一歩を踏み出せるようになったというのが、本作の本質的なテーマなんだと思います。

うん。まぁ、言いたい事は分かる。

分かるんだけど……まぁ、それと面白さはまた別の話でしてw

そうは言っても、別にビックフットみたいなUMAじゃなくても物語は成立すると思うし、ビックフットがウイルスを云々や、カナダに核攻撃云々みたいな設定と、本作で語られる本質の部分は、食い合わせが悪いと思いましたねー。

また、思った以上に静かな作品だし名優サム・エリオットの重厚な演技も相まって、特に回想シーンが多いはかなり退屈に感じてしまいました。

いや、前述した隠し拳銃を組み立てるシーンや、ビックフットを倒すため、沢山並んだ武器の中から古いライフルとナイフを選ぶシーンなんかはグッときましたけどね。

興味のある方は是非!!

 

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