今日観た映画の感想

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あの不条理ホラー「パラドクス」監督の新作!「ダークレイン」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、以前このブログでもご紹介したメキシコの不条理ホラー「パラドクス」の鬼才 イサーク・エスバン監督の新作、『ダークレイン』ですよー!!

なんていうかこう……とにかくスゴイ映画でした!!

何がどうスゴイを書くとネタバレになっちゃうので書けないし、それ以外でも出来る限りネタバレしないよう気をつけますが、出来れば事前情報なしで観て頂きたい作品なので、もし近々本作を観る予定の方は、先に映画を観て、それからこの感想を読んでください。

いいですね? 注意しましたよ?

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あらすじと概要

雨により感染する伝染病の恐怖を描き、シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭などで話題となったメキシコ発のパニックホラー。世界中を襲う豪雨によって外見も内面も変貌する伝染病が発生、雨の中に潜む何かを恐れ、理性を失っていく人々の姿を映し出す。監督は、『パラドクス』などのイサーク・エスバン。ルイス・アルベルティ、『キック・オーバー』などのフェルナンド・ベセリルなどが出演。レトロな雰囲気や狂気じみた映像が恐怖をあおる。

トーリー:世界各地を豪雨が襲ったある夜。人里離れた場所にあるバス停に、8人の男女が居合わせていた。その中にいたローザが体調に異常をきたし、さらに見た目が恐ろしく変化してしまう。この雨によって感染する原因不明の伝染病は、ほかの場所でもまん延しており……。(シネマトゥデイ より引用)

感想

OPとEDがスゴイ!

本作でまずグッときたのは、殆ど白黒映画のような色彩の抜けた豪雨の中、オーケストラのおどろおどろしい音楽+白黒時代の怪奇映画を思わせるフォントで始まるオープニング。
もう、このシーンだけでイサーク分かってんなー! と期待度が上がります。

そして、映画が終わってエンディングの方は、ヒッチコック映画で数々の名オープニングを手がけたグラフィックデザイナーのソール・バスを思わせる映像とヒッチコック映画感漂う音楽。

映画好きな人は、このOPとEDで思わずニヤリとしちゃうんじゃないでしょうか。
劇中、(多分)ヒッチコックのサイコオマージュなんかもあったし、全体的に本作は50~60年代(よりもっと前かも?)の「怪奇映画」や「パニックSF」のテイストで作られています。

舞台は1968年のメキシコ

本作の舞台は、1968年のメキシコの田舎町にあるバスステーション。
なぜ時代がわかるかというと、劇中「トラテロルコ・学生運動」の話が出てくるからです。
これは、1968年オリンピックの誘致のために1.5億ドルの大規模な投資を行い、労働組合、農民を抑圧し、反乱鎮圧政策を行っていた当時のメキシコ政府に不信を募らせた学生たちが民主化デモを行い、軍や警察によって鎮圧され多くの死者が出たという、実際に起こった事件です。

この事件は、後の物語やテーマに深く関わっているんですねー。

バスステーションの中だけで物語が進む、ワンシチュエーションスリラー

本作のストーリーをザックリ言うと、大きな嵐がメキシコ全土を襲う中、バスステーションに偶然居合わせた8人の男女が謎の「ウィルス」によって一人、また一人と異常をきたしていくという密室劇。

妻の出産のため一刻も早く病院に行きたい男、DV夫から逃げてきた妊婦、シャーマンのお婆さん、トラテロルコに行きたい医学生、もうすぐ定年の職員と住み込みで働く若い女、病気の息子とその母親。

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そんな彼ら、彼女らがバスステーションで中々こないバスに苛立ち、対立し、「感染」し……そして”驚愕の状況”に陥るという不条理スリラーで、ある場所に閉じ込められ、その中だけで物語が進むワンシチュエーションスリラーという点では、前作『パラドックス』に近いかもしれません。

が、

本作は前作『パラドックス』をはるかに超える驚きが待ち構えているのです!!

先の読めない嫌な展開から中盤で起こる「あること」を目撃した観客は、目を見張ること請け合いです!

そして、そこからの怒涛の展開に、僕は思わずひっくり返りましたよ!
イサーク・エスバン監督は天才か!

作品テーマ

本作を一言で言うと「アイデンティティ」についての物語だと思います。
劇中で起こる驚愕の展開や、ナレーションで語られる「アリの話」
トラテロルコ事件の話などを通して寓話的に語られた物語は、ラストシーンでアイデンティティの崩壊が招く未来を暗示している、ある意味非常にイマドキなテーマの作品なんじゃないかと思います。

でも、そんなのは本作を観たあとに考えればいいことで、とにかくまずは本作を観て欲しいし、驚いて欲しいんですよ!

僕は、本作を観てイサーク・エスバン監督の次回作も絶対観たいって思いましたよー!

興味のある方は是非!!!

 

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モダンホラーの王キングとゾンビ映画の父ロメロがタッグを組んだサスペンスホラー「ダーク・ハーフ」(1993/日本未公開)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、モダンホラーの王様スティーブン・キングの同名原作を、ゾンビ映画の父ジョージ・A・ロメロが監督し実写映画化したサスペンスホラー『ダーク・ハーフ』ですよー!

どうやら日本未公開作品らしく僕は本作を知らなかったんですが、ネットのお友達に教えて貰ったので早速、TSUTAYAでレンタルしてきましたー!

 

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あらすじと概要

バイオレンス小説用のペンネームを葬り去った作家の周囲で次々と起こる猟奇殺人。犯人はもともと存在するはずの無い別名義の自分なのか……。自身もリチャード・バックマン名義で作品を発表していた事があるスティーヴン・キングのホラー小説をG・A・ロメロが映画化。“ペンネームの復讐”という非常に観念的な物語を、細かいディティールと印象的な画面でうまくビジュアル化しており、キング=ロメロの蜜月関係を再確認できる。

トーリー:売れない純文学作家のポーモント。彼は一方で、バイオレンス小説用にジョージ・スタークというペンネームを持っていた。しかし、ある時、そのペンネームを葬ってしまう。するとやがて、ポーモントの周囲で猟奇殺人事件が次々と発生。犯人はなんと、もともと存在するはずのないスタークだった。彼は自分を葬った人間たちに復讐していた。そして、ポーモントに再びスターク名義の作品を執筆するように迫ってくるのだが…。(allcinema ONLINEより引用)

 

感想

古典的ホラーをキングが再解釈

本作の内容は、ざっくりいえば「ジキル博士とハイド氏」の小説家版的な作品です。

主人公のポーモントは、子供の頃に小説を書く面白さに目覚めるも様態が悪化して緊急手術。慰謝が頭蓋骨を外して中身を見ると、そこにはまるで生きているような目玉や鼻、数本の歯が。
どうやらポーモントは元々双子だったのが、彼に吸収されたものの、吸収しきれずに腫瘍として彼を苦しめたのだと、医者は冷静に対処します。

それから25年。
大学の教授と純文学作家として二足のわらじを履いていたポーモンドは、愛する妻と双子の子供に恵まれ幸せで平穏な日々を送っていますが、ある日ファンを名乗る男が合わられ、別のペンネームでバイオレンス小説を書いている事を暴露すると脅されます。
実はポーモンドは純文学小説だけでは食べていけず、ジョージ・スターク名義でバイオレンス小説を執筆、その作品がベストセラーとなっていたわけですね。

結局、ポーモンドは全てを明かし、ジョージ・スタークの名義を封印するんですが、その後、彼の周りで猟奇的な連続殺人が起こり状況証拠からポーモンドが疑われてしまいます。

ここまでが本作の序盤で、観ているこっちは「ははーん。これは二重人格のポーモンドがスタークとして殺人事件を犯しているんだな」と思うわけです。

そういう二重人格ものは前述した「ジキルとハイド」から始まって、星の数ほどありますからね。本作もその中の一本なんだろうと。

ところが、さすがはキング。そんな僕の想像のはるか斜め上を行ってましたw

ここからはネタバレになるので、読む人は注意して欲しいんですが

 

 

なんとジョージ・スタークは実在したんですねー。
どういう事かというと、心の奥底でジョージ・スタークを葬りたくないと思っていたポーモンドの念? がジョージを実体化させちゃった? っていう事らしいんです。
ちなみに、このスタークとポーモンドはティモシー・ハットン一人二役で演じています。

つまりジョージ・スタークは、ポーモンドの半身であり、彼のダークサイド。
「ダーク・ハーフ」なんですね。
ジョージ・スタークは自分を葬るキッカケになった全ての人間を、ポーモンドが書いていた小説のように葬り、ポーモンドに再びスターク名義で小説を書かせようとします。
そうしないと自分が存在出来なくなってしまうらしい。
しかし、スタークに言われるままに小説を書くと、ポーモンドは弱って死んでしまうらしい。
こうして、二人の対決が始めるんですねー。

スズメの存在

本作で重要なモチーフとなるのが、スズメの大群です。

ポーモンドが脳の“腫瘍“を摘出される時に大量のスズメが病院を襲い、またポーモンドとジョージが関わるシーンでは、いつもポーモンドの頭の中にスズメの鳴き声が聞こえます。そしてラストのクライマックスにもスズメの大群が登場するんですね。

劇中で、ポーモンドの大学の同僚の説明によると、スズメは死者を霊界? に案内するという役割があるとされているらしいんですが、これが本当にある何かの伝承なのか、それともキングの創作なのかは、ネットで調べてみたけど分かりませんでした。

ただ、この事と劇中でのいくつかのエポソードから、ジョージ・スタークと幼い頃のポーモンドの脳から取り出された“腫瘍“に深い関係があることが分かります。

多重人格というある意味現代的なモチーフと、伝承や呪いなどの古典的なオカルトをミックスしていくのは、まさにスティーブン・キング印だなーと思いましたねー。

キング自身を投影?

キング作品では度々、小説家が主人公になります。

その中で映画化された有名な作品といえば「シャイニング」「ミザリー」の2本でしょうか。

ミザリー」は狂信的な女性ファンに監禁されてしまう小説家の話で、『物語が読者の与える影響』を描いた作品ですが、本作は『物語が作家本人に与える影響』を描いた作品です。
またキング自身、過去に別名義で作品を発表したことは有名らしく、本作のアイデアはそんなキング自身の経験から生まれたのかもしれませんね。

ジョージ・スタークが、自分名義で作品が発表されないとせっかく実態を得たにも関わらずこの世に存在できないという設定は、どことなく日本的な設定にも感じますが、小説家であるキング自身の恐怖とも言えるかもなんて思ったりもしました。

と、ストーリーやキャラクターの設定は面白いし、最後までドキドキハラハラしながら観ていたんですが、観終わってみればスタークとポーモンドの関係性が多少分かりづらいような気がしましたねー。
その辺のロジックがもう少しハッキリ伝われば、劇中のサスペンスが盛り上がったんじゃないかなと。
あと、スタークの行動原理もイマイチ分からないというか、あんなにガンガン殺人を犯してポーモンドが捕まったら、どうする気だったんだろう? とか。

あと、割と普通にスタークがポーモンドの前に現れるので、若干拍子抜け感もあったりしました。

ただ、冒頭の手術のシーンで脳の中で目が動くところなんかはギョッとしたし、クライマックスで大量のスズメが襲いかかってくるシーンも迫力と怖さがあり、正直”ホラー映画”としては地味ですが、細々した表現も含めて、個人的にはかなり楽しめましたよー!

 

興味のある方は是非!

 

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早世した天才棋士の生涯を描いた伝記作品「聖の青春」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、29歳の若さでこの世を去った天才棋士村山聖の生涯を描いた伝記映画『聖の青春』ですよー!
体重の増量や外見だけでなく、徹底した役づくりで鬼気迫る演技の松山ケンイチと、羽生名人の細かいクセまでほぼ完コピした東出昌大の徹底した役づくりは本当に素晴らしかったですよー!

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あらすじと概要

29歳の若さでこの世を去った天才棋士村山聖の生涯をつづる大崎善生のノンフィクションを、松山ケンイチ主演で映画化。幼いころより患う難病と闘いながら将棋の道を突き進んだ村山の壮絶な人生を、羽生善治をはじめとする同世代の棋士との死闘や、彼を支える師匠や両親たちの愛を通して描く。『宇宙兄弟』などの森義隆がメガホンを取り、『マイ・バック・ページ』などの向井康介が脚本を担当。大幅な体重増量など徹底した役作りに挑んだ松山の熱演が光る。

トーリー幼少期から難病を患う村山聖は、入退院を繰り返す中で将棋と出会い、15歳で森信雄に師事する。10年後、名人になる夢をかなえるべく上京した聖(松山ケンイチ)は周囲に支えられながら将棋に全力を注ぎ、七段に昇段したころ、同世代で名人のタイトルを獲得した羽生善治に激しいライバル心を抱く。さらに将棋に没頭する聖だったが、がんが彼の体をむしばんでおり……。(シネマトゥディより引用)

 

感想

難病を患いながらも29年の生涯を駆け抜けた天才棋士の物語。

本作の主人公、村山聖(むらやま さとし)は、幼少時に「ネフローゼ」という腎臓の難病を患い、無理のきかない自らの重い身体と闘いながら、将棋界最高峰のタイトル「名人」を目指して快進撃を続け「東の羽生、西の村山」と言われた若き天才棋士でしたが、膀胱がんのため29歳という若さで亡くなったそうです。
「三月のライオン」の二階堂のモデルも確かこの人だったと思います。

本作は生前の村山聖と交流のあった作家・大崎善生の渾身のデビュー作となったノンフィクション小説を原作に、村山の最後四年間にフォーカスを当てた“フィクション”になっています。

松山ケンイチ東出昌大の徹底した役作りと鬼気迫る演技

まず、本作で驚くのは何といっても主役の村山聖を演じた松山ケンイチの見た目じゃないかと思います。

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もう、ぷっくぷくですよ。

というのも、村山聖がそもそもそういう体型だからなんですが、松ケンは役づくりのために体重を大幅に増量。
さらに、村山氏の対局中の細かいクセなどを研究して役に望んだようです。
それは羽生善治名人を演じた東出昌大も同じで、対局中の細かい仕草や相手を刺すように睨みつける視線など、ほぼ完コピに近い見事な役づくりをしているんだそうですよ。(僕は将棋を見ないので分かりませんけど、ネットで調べたところ将棋ファンの人が褒めてました)

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もちろん、ただの物マネではなくて、クライマックスになる両者の対局では表情や視線、一手一手の緊張感など、将棋を全く知らない僕でも息を呑むような演技を見せていました。

両者の対局シーンでは(例えば両者の思考をビジュアルで見せるような)派手な演出はなく、あくまで松ケンと東出昌大の演技だけで淡々と見せていくんですが、その分、二人の鬼気迫る演技のぶつかり合いが際立っていましたねー!

また、脇を固める役者陣も実力派揃いで、非常に見ごたえがありました。

原作からの改変

本作の原作はノンフィクション小説なので、あくまで事実に忠実に書かれているようなのですが、本作では村山聖羽生善治の二人に物語を絞っています。
例えば村山が生涯で唯一タイトル戦に挑戦することが出来たのは、1992年の谷川浩司との王将戦だけらしいんですが、劇中では羽生名人とのタイトル戦に変えられていたりするようで、個人的は約2時間の物語に収めることや、将棋を知らない一般の人の分かりやすさを考えれば致し方ないのかなーと思うんですが、その辺は将棋ファンや原作ファンにとっては不満に感じてしまう点かもです。

将棋が分からない人でも楽しめる

将棋に限りませんが、特殊な世界を題材にした作品だと「その世界を知らない人は面白さが分からないのでは?」 と不安になったりしますよね。
僕も将棋はコマの並べ方も知らないので、観る前は少し不安だったんですが、実際観てみたらまったく問題ありませんでした。

どちらが優勢か劣勢みたいな状況はサブキャラクターが説明してくれるし、本作の本題は将棋ではなく、あくまで村山聖という人の生き様と、彼と周囲の人との関わりを描いた人間ドラマがメインですからね。

なので、本作でも将棋の内容について観客が理解させるような説明は一切ありません。
控え室などで、他の棋士の人たちが将棋の内容について語るシーンも、将棋を知らない人にはまったく理解出来ないですが、それでいいという作り方なんです。
シンゴジラ」で言えば、会議室での会話シーンみたいなものですねw

気になったところ

ただ気になるところもあって、多分、本作は時系列を入れ替えてるシーンがいくつかあると思うんですが、その演出は正直あまり意味がないし、そのせいでストーリー(というか状況?)が分かりずらくなってるように思いました。

特に冒頭のシーンは、村山聖という人物を説明したいという意図は分かるけど、その後のストーリー展開に繋がってるわけではないですしね。
むしろ幼少期から順を追って見せていった方が、観客もすんなり物語に入れるし感情移入もしやすかったのではないかなって思いました。

逆に、前述したように対局シーンで過剰な演出をせず、役者の演技に任せて淡々と描いたのは個人的にはとても好印象でした。
例えばマンガ原作みたいな完全フィクションなら、派手さのある映像で盛り上げたほうがいいかもですが、実在の人物が主人公のいわば伝記映画ですからね。

ともあれ、全体的は地味で静かな映画ですし傑作とまでは言いませんが、見れば面白いし、人によっては心に刺さる秀作だったと思います。
それに、しつこいようですが松ケン&東出昌大の演技だけでも、本作を観る価値アリだと思いますよー!

興味のある方は是非!

 

 

イギリスの古典文学とゾンビがまさかの合体!?「高慢と偏見とゾンビ」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、イギリス古典文学名作「高慢と偏見」とゾンビを合体させた異色作『高慢と偏見とゾンビ』ですよー!

中世イギリスにゾンビがいるという設定の出オチ映画かと思ったら、意外とちゃんとしたストーリーでビックリしましたww

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あらすじと概要

イギリスを舞台にした恋愛小説の名作「高慢と偏見」とゾンビを融合させ、ベストセラーになった原作を実写化したアクション。ゾンビと戦う日々を送るヒロインが大富豪の騎士と出会い、高慢な彼と嫌々ながらも共闘し、心を開いていく姿を描く。監督は『きみがくれた未来』などのバー・スティアーズ。出演は、『シンデレラ』などのリリー・ジェームズと『コントロール』などのサム・ライリーら。古典とゾンビの調和と、スタイリッシュなアクションにくぎ付け。

トーリー:18世紀のイギリスで、謎のウイルスが原因で大量のゾンビが出現し、人々を襲撃するという事件が発生。田舎で生活しているベネット家の、エリザベス(リリー・ジェームズ)ら5人姉妹はカンフーを駆使してゾンビと戦う毎日を過ごしていた。ある日、エリザベスは大富豪の騎士であるダーシー(サム・ライリー)に出会うも、高慢な振る舞いに嫌気が差す。やがて、二人は共に戦うことになるが……。(シネマトゥディより引用)

 

感想

高慢と偏見」について

本作は、1813年に刊行されたイギリスの小説家、ジェーン・オースティンの長編小説「高慢と偏見」をベースにアメリカの作家セス・グレアム=スミスが書いた同名小説の実写映画化作品。

僕はどちらも未読なんですが、「高慢と偏見」は世界20カ国語以上に翻訳されている、超有名な恋愛小説らしいですね。

内容をざっくり説明すると、18世紀イギリス貴族の男女が主人公で、高慢な態度の男ダーシーと、そんなダーシーに反感を持つ主人公の女性エリザベスが、誤解と偏見からすれ違いながらも、互いに惹かれあい結婚するまでを描いたラブコメの原型みたいな物語。
そんな古典文学の名作にゾンビを足しちゃったのが本作なんですねー。

意外とちゃんとしてた

こう書くと、単なる古典のパロディー作品のように思われるかもですが、実はこの作品、意外にも(失礼)原作の中にしっかりゾンビを織り込んでしっかりしたストーリーを作り上げています。

設定としては原作そのままに18世紀のイギリスの貴族社会が舞台になっていて、そこに謎のウィルスが発生、人類とゾンビが争っている世界で、ゾンビから身を守るために、貴族の女の子たちは武術を会得するのが帰属の嗜みなんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com /貴族の子女らしくオシャレして

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画像出典元URL:http://eiga.com /ドレスの下には護身用のナイフ

ここで面白いのはお金がある貴族は日本で、お金がない貴族は中国で武術を習うという設定。多分原作でも描かれている階級や家柄による貴族階級の格差をこういう形で活かす設定は上手いなーと思いましたねーw

本作の主人公エリザベスの家族ベネット家の五人姉妹は、中流帰属なので中国で少林拳を学んだという設定で、恋のおしゃべりに花を咲かせながらカンフーの組手に励んだり、銃や剣、ナイフの手入れをしたりしています。

また、ダーシーは軍人で、日々ゾンビと戦っているという設定。
噛まれたてのゾンビは人間のフリをして生者と見分けがつかないので、人間とゾンビを見分けるためにいつも懐に死肉を嗅ぎ分けるハエを小瓶に入れていたりするディテールも中々気が利いてるなーと。

そんな感じでストーリーやキャラクター自体は原作に沿っていながら、その中にゾンビが違和感なく存在するように要所要所に映像的なディテールや設定を入れ込んでストーリーが破綻しないように作りこんでいるんですね。

ゾンビ設定

そんな本作では、ゾンビの設定も他の作品とは一味違います。

話もするし、生者を襲うため罠を仕掛けたりもします。あと、食べるのは人間の脳みそという、いわゆる「バタリアン系譜のゾンビ」なんですねー。
また、人間の脳みそを食べるまでは完全にゾンビ化はしなくて、劇中では人間の代わりに豚の脳みそを食べることで人間を襲わないゾンビも登場したりします。

この辺は原作の「偏見」にかかってるのかもしれないですねー。

女性陣が美人でカッコイイ

本作の主役エリザベスを演じるのは2015年の「シンデレラ」実写版でシンデレラを演じたリリー・ジェームズ
彼女の姉ジェインを演じるのは、ベラ・ヒースコート

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画像出典元URL:http://eiga.com /ゾンビ相手に大立ち回り

ダーシーの叔母の大富豪で最強のゾンビハンター キャサリン婦人を演じるのは、2012年版「ジャッジ・ドレッド」でママ役を演じたレナ・ヘディと美人揃いですが、個人邸にはレナ・ヘディ演じる眼帯美女のキャサリン婦人ロバート・ロドリゲスの映画に出てくるセクシーで超強いヒロインっぽくて良かったですねーw

また、プロデューサーの一人にナタリー・ポートマンが参加していて、彼女は原作(「高慢と偏見とゾンビ」の方)の大ファンで、映画化のきっかけを作った重要な人物なんだそうですよ。

もちろん元となった「高慢と偏見」を知っていればより楽しめるかもですが、全く知らなくても十分楽しめる作品でしたよー!

興味のある方は是非!!!

 

 

皮肉と悪意たっぷりに描かれたディストピアSF「未来世紀ブラジル」(1986)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、今から30年前に作られたディストピアSF『未来世紀ブラジル』ですよー!

今まで何度もタイトルは耳にしていたものの、中々観る機会がなくて今回が初見でしたが、何とも言えない独特の世界観や、皮肉と悪意たっぷりな内容にクラクラしてしまう映画でしたー!

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画像出典元URL:https://www.amazon.co.jp

あらすじと概要

コンピュータによる国民管理が徹底した仮想国ブラジル。その情報管理局で、ある役人が叩き落としたハエによって、コンピュータ情報の一部が壊れてしまう。そしてその影響は、善良な靴職人をテロリストと誤認逮捕させる結果を生み出すが……。「12モンキーズ」のテリー・ギリアム監督による管理社会を痛烈に皮肉った、ファンタジックなSF近未来映画。(allcinema ONLINEより引用)

 

感想

『未来』じゃなくて『現代』を描いた作品

テリー・ギリアム監督は本作を『バンデットQ』(1981年)に始まり『バロン』(1989年)で終わる「3部作」の2作目と位置づけていて、3作に共通するテーマは

「ぶざまなほど統制された(awkwardly ordered)人間社会の狂気と、手段を選ばずそこから逃げ出したいという欲求

なんだそうです。

劇中で描かれる政府の全体主義的な官僚政治は、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』にインスパイアされたらしくって、監督自身本作を「1984年版『1984年』」と言っているんだとか。

邦題が『未来世紀 ブラジル』(原題はそのまま「Brazil」)なので、近未来SFをだと思ってたんですが、舞台は“20世紀のどこかの国”になっていて、描かれる世界も(当時から見ても)レトロフューチャーな未来感というか、現代社会を寓話的にデフォルメした「どこか世界の物語」という感じでしたねー。

トーリーも凌駕する圧倒的なビジュアル力とダクト

本作のストーリーは至って単純で、政府が個人を徹底管理する架空世界で夢想癖のある男の初恋を描いています。
ただ、その中に監督は目いっぱいの皮肉と悪意を込めたシーンを散りばめているんですね。

徹底した個人認証(管理)システム、美容整形中毒の母親、「情報剥奪局」に捕まった人たちの悲鳴とそこで普通に働く役人の対比、レストランで爆弾テロが起こり阿鼻叫喚に中でも無関心に食事を続ける上流階級などなど。

そのビジュアルはとても強烈で、観ているこっちが思わず圧倒されてしまうほど。

特に本作で象徴的に使われているのがダクトです。

例えば、一般庶民の家では張り巡らされたダクトを避けるように生活しているのに対し、役人のサムのアパートではダクトは全て壁の裏に隠されていて、しかし、空調の故障修理で金属パネルの壁をめくると、そこには夥しいダクトが張り巡らされているんですね。

また、高級レストランではダクトの巨大オブジェが飾られていたり、同じ役所でも部署によってダクトが顕になっている部署とそうでない部署があります。

つまり本作では、ダクトは独裁的な政府やそこに勤める役人、個人を支配するシステムの象徴であり、国民の階級を表すイメージとして使われているんですね。

なぜ『ブラジル』なのか

タイトルから本作の舞台は未来のブラジルだと思っていたんですが、この映画、ブラジルの「ブ」の字も出てきません

というのも本作のタイトルは、テリー・ギリアム監督の第一作目『ジャバーウォーキー』のロケで行った南ウェールズで見た工場から噴出す黒煙と、海に沈む夕陽のコントラストが美しさが心に残り、この砂浜で日光浴をする男のイメージが頭に浮かんだ時、そのラジオからはラテン音楽がかかっていたんだそうです。

なので、本作では1939年のアリ・バホーゾのヒット曲『ブラジルの水彩画』という曲が全編に渡って使用されてるんですね。

じゃぁ、本作の舞台のモチーフはといえば、アメリカなんだと思います。
というのも、ベトナム戦争が泥沼する中、当時のジョンソン大統領がL.A.を訪れた時に戦争反対の座り込みデモがあったんだそうで、たまたまその場に居合わせたテリー・ギリアム監督は、警官達がその場に居た人達を暴力で制圧する様子を見て(さらに自身も巻き込まれた)、アメリカという国に不信を抱き、母国であるアメリカを捨ててイギリスに渡り、モンティ・パイソンの一員としてアニメーションを作るようになったという経歴の持ち主らしいんですね。

もちろんデモに対する武力制圧はアメリカだけの話ではないんでしょうけど、その時の経験が、国家の建前と実態=整理された部屋と壁の奥のダクトという形で本作に投影されているんだと思います。

また、本作の絶望的なラストシーン(このラストシーンを巡って監督とユニバーサル・スタジオとの間でひと悶着あった)も、個人と国家や組織の関係を悪意たっぷりに皮肉っているんですよね。

じゃぁ本作は重苦しいだけのディストピア映画かと言えば、そんなことはありません。
そこはさすがモンティー・パイソン印というか、本作は基本ブラックコメディーです。
前述したようなシーンも滑稽に描くことで、思いっきり皮肉っているんですよね。
そして滑稽な描写で軽やかに皮肉っている前半~中盤の前フリが効いているからこそ、後半の展開は観ていてゾッとするような怖さがあるんだと思います。

もう30年前の作品で、映像や特撮など今の視点で観ると、ぶっちゃけしょぼさや古臭さも感じてしまいますが、カルト的人気を誇る作品だけあって見ごたえは十分だったし、現代にも通じる普遍的な物語だったと思いますよー!

興味のある方は是非!!

 

スタンドバイミーの続編!? “大人”のホラー映画「ドリームキャッチャー」(2003)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、米国モダンホラーの帝王 スティーブンキング原作の実写映画化作品『ドリームキャッチャー』ですよー!

今回僕は特別版で観たんですが、通常盤と劇中の内容が違うのかどうかはちょっと確認出来ませんでした。

原作者のキングは「今までの実写化で最高傑作」と絶賛でしたが、ネットで見る限り評価はかなり分かれている作品だったので、僕もかなり覚悟を決めて観たんですが、

え、面白いじゃん。って思いましたねー。

そんなわけで、今回はあちこちで仕入れた情報を入れつつ、ネタバレまではいかないけど、わりと踏み込んだ感想になると思います。

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あらすじと概要

メイン州の小さな町に住む4人の少年、ジョンジー、ヘンリー、ピート、ビーバーはある日、風変わりな少年ダディッツを助ける。4人はその時、ダディッツから彼の持っている不思議な力を分け与えられ、以後その秘密を共有することで強い絆が結ばれる。20年後、大人になった4人にとってそのパワーは今では重荷として彼らにのしかかっていた。そんなある時、ジョンジーが交通事故で重症を負うが、奇跡的に一命を取り留める。やがて4人は北方の森にある狩猟小屋で再会を果たす。それは彼らにとって毎年恒例の楽しいイベントのはずだったが…。(allcinema ONLINEより引用)

 

感想

ざっくりスティーブン・キング解説

本作の原作者、スティーブン・キングはアメリカモダンホラーの帝王と呼ばれる小説家で、「キャリー」「シャイニング」「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」など映画化された作品も多い、多作で知られる作家です。

アメリカのごく平凡な町を舞台に、具体的な固有名詞をはじめとした詳細な日常描写を執拗に行うのが特徴で、そのことから「怪奇小説」とは違う「モダン・ホラー」の開拓者として多くのファンに愛されています。

またアメリカの実在の街、風俗、カルチャーなどを作品に反映させることも多く、なので米国人以外の読者にはピンと来ない部分もあったりするようなんですが、本作でもそういうシーンが登場します。

ちなみに本作は、キングが散歩中に自動車事故で重傷を負った直後に書かれた作品で、劇中に登場する事故のシーンは、まさにキング自身のリアルな恐怖体験でもあったみたいですねー。

知っておいたほうがいい3つのワード

本作では物語上、非常に重要なポイントとなるワードが3つあるんですが、このワード、日本人には分かりづらいので、ざっくりと解説しようと思います。

1・スクービー・ドゥー

少年時代、主人公の4人は、いじめられていた知的障害を持つ少年ダディッツと友達になります。
そのダディッツがいつも持ち歩いていた黄色いランチボックスに描かれていたのが「スクービー・ドゥー」のイラストで、ダディッツはこのアニメが大好きなのです。

スクービー・ドゥー」とは、ミステリー社という少年少女4人組と弱虫な飼い犬のスクービー・ドゥーの探偵社が事件を解決するカートゥーンアニメで、日本では『弱虫クルッパー』というタイトルで放送されたらしいです。
で、この弱虫な大型犬スクービードゥーが事件解決の糸口を掴み、それをキッカケに4人が事件を解決していくというお話。

本作では、主人公4人組とダディッツの関係をミステリー社とスクービー・ドゥーに準えていて、だからあるシーンでダディッツはアニメの中の「スクービー・ドゥー、仕事だよ」というセリフで自分を奮い立たせるんですね。

2・ブルー・バイユー

本作の中で、主人公の一人ビーヴァー(ジェイソン・リー)が、あるシーンで口ずさむ曲のタイトル「ブルー・バイユー」
ブルー・バイユーとは、ミシシッピー河の入江のことで、非常に美しい景色として有名なんだそうです。
で、この曲は都市生活者の郷愁を歌った曲で、「とても寂しい、ブルーバイユーに私のあの子を残してきてから」「5セント硬貨を節約しして、10セント硬貨を節約して、暗くなるまで働く」という歌詞が出てきます。
アメリカで一番使われるのが25セント硬貨なので、5セント、10セント硬貨を節約してっていうのは、歌の主人公が貧乏だということを示していて、それを口ずさむビーヴァーも裕福ではないという事を表してるんですね。

3・「SSDD」「Nobound,Noplay」

この二つの単語も、本作で重要な意味が有る言葉です。
SSDD]とは「Same Shit Different Day」の略で、直訳すると「日は変わっても同じクソ」となります。もっと端的に言うと「クソのような毎日」って感じですかね。ちなみに「SSDD」はこの作品でキングが作った略称で、この作品から「SSDD」は有名になったらしいですw

「Nobound,Noplay」は、「ここはボールが跳ねないから遊べない」という意味ですが転じて「ここで遊ぶな」という意味。そこから更に転じて「どうしようもない」というスラングとして、劇中でも登場します。

大人版「スタンドバイミー」

ハッキリ言及はされてないし登場人物の名前も違いますが、本作は同じキング原作の「スタンドバイミー」の続編的な作品です。
「スタンドバイミー」は4人の少年の冒険を描いた作品ですが、本作は4人の中年が主人公なんですね。

ヘンリー(トーマス・ジェーン)、ジョンジー(ダミアン・ルイス)、ピート( ティモシー・オリファント)、ビーヴァー(ジェイソン・リー)は、幼なじみの中年四人組で、年一回? 山小屋で一緒に休暇を楽しむ仲間ですが、ヘンリーは自殺志願者、ピートはアル中、ビーヴァーは貧乏。
そして、ある事情からジョンジーは交通事故で死にかけた経験から世の中が信じられなくなっている。ってな感じでそれぞれ問題を抱えているんですね。(大人になるとみんな何かしらあるものですw)

ジョンジーの事故で時期がずれたものの、冬の山小屋で休暇を楽しんでいた4人ですが、ある事件をキッカケに恐ろしい目にあうというのが本作のあらすじ。

って書くと、なんか面白そうに思うかもですが、実はこの作品、評価が分かれていて酷評も非常に多い作品なんですね。

なぜ、酷評が多いのか

その理由は、本作がとってもヘンテコな映画だからだと思います。

冒頭、いかにもホラーっぽい不穏な雰囲気で始まるんですが、山小屋のあるシーンから急にSF(というかコメディー?)になり、中盤以降、政府の陰謀?が明らかになり、最終的に怪獣映画? になりますw

なので観ているこっちも、どういう気持ちで観ればいいのか分からないってのがあると思うんですね。
「ホラーじゃないのかいっ!!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ」
みたいな。

ただ、そういう先入観をとっぱらって流れに身を任せてしまえば、中々面白い映画じゃないかと思うんですよね。

アメリカ人にとっての“恐怖”が詰め込まれた作品

本作は、平均的アメリカ人が抱える潜在的な“恐怖”の詰め合わせのような作品です。

例えば、自殺志願者のヘンリーは映画冒頭でいきなり自殺しようとしますが、彼はミドルエイジ・クライシス(中高年が陥る鬱病や不安障害)なんですね。

折り返しに近づき、人生の終盤が見えてくると「こんなはずじゃなかったのに…」とか「自分はこのまま朽ち果てていくのか」的な不安に襲われて欝状態になっていき、悪化すると自殺を考えるようになるみたいな感じ。

映画の分岐点となる「あるシーン」や、冒頭のジョンジーの交通事故は突然の病気や事故への恐怖だし、何故か彼らの股間を狙う恐ろしいモンスターは、中年男性になって次第に性欲が衰えていく→男でなくなっていく恐怖のメタファーです。

中盤で登場するモーガン・フリーマン演じるカーティス大佐は、いつ軍や政府の陰謀によって自分たちが不利益だったり理不尽な目に遭うか分からないというアメリカ人が抱える潜在的な恐怖の象徴だったりします。(アメリカで武器の携帯が認められているのはここに起因している)

なので、一見すると訳の分からないヘンテコ映画ですが、実は意外としっかり「恐怖映画」なのです。

「スタンドバイミー」は「子供の恐怖」を克服して大人になる物語ですが、本作は成長した彼らが直面する「大人の恐怖」に対峙する作品で、「スタンドバイミー」の“その後”でもあり、アンサー的な作品でもあるんだと思います。

という事を押さえたうえで、ある年齢以上の人が本作を観ると、一部の人達には不評なあのラストシーンも中々感慨深いんじゃないかなーって思ったりしますねーw

興味のある方は是非!!

 

▼こっちの動画でより面白く解説されていますよー!▼

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バカで不真面目で不謹慎……でも大好きw 「ソーセージ・パーティー」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、昨年日本でも公開された米国の3DCGアニメーション
『ソーセージパーティー』ですよー!

ディズニー、ピクサーなど、エンタメとしても超楽しめるけど「考えさせられる」深いテーマも盛り込むCGアニメが主流の米国アニメ業界において、本作はバカバカしさのみに振り切ったコメディー作品です。

で、まだレンタル開始から間がないので、出来る限りネタバレしないように気をつけますが、これから本作を観る予定の方は、映画を先に見てからこの感想を読んでくださいね。

あと、この作品は「R-15」指定なので、間違ってもお子さんに観せないようにご注意くださいねー!

いいですね? 注意しましたよ?

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あらすじと概要

人間に買われることを夢見るスーパーマーケットの食材たちが、自分たちを待ち受ける運命を知ったことで決死の逃走劇を繰り広げるコメディーアニメ。監督を、『劇場版 きかんしゃトーマス』シリーズのグレッグ・ティアナンと『マダガスカル3』などのコンラッド・ヴァーノン、音楽を数々のディズニー作品で知られるアラン・メンケンが担当。製作陣にも名を連ねるセス・ローゲンをはじめ、ジョナ・ヒルジェームズ・フランコエドワード・ノートンらが声優として参加している。

トーリー:スーパーマーケット「ショップウェル」で、ソーセージのフランクは恋人であるパンのブレンダと結ばれホットドッグになることを夢見るなど、食材たちは人間に買われることを望んでいた。ある日、ついに一緒にカートに入れられ喜ぶフランクとブレンダだったが、アクシデントが発生し店に取り残されてしまう。一方、夢がかない購入された食材たちは……。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

バカバカしさに振り切った“大人の”コメディーアニメ

本作は「マダガスカル3」のコンラッド・ヴァーノンと、『劇場版 きかんしゃトーマス』シリーズのグレッグ・ティアナンという子供に大人気シリーズの二人が監督しているんですが、それなのにどうしてこうなったっていう作品ですw

下ネタ、残酷描写?、麻薬、人種ネタなどなど、不謹慎で不真面目なネタがこれでもかとぶち込まれているんですねー。

その元凶はといえばやはり、本作で原案・プロデュース・脚本を担当している米国コメディー映画界のヒットメーカーにして、心に小六男子を飼う男セス・ローゲンでしょう。

俳優・プロデューサー・監督として、「40歳の童貞男」「スーパーバッド 童貞ウォーズ」「スモーキング・ハイ」「ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日」など数多くのコメディー作品を手がけてきた彼が、3Dアニメで悪ふざけの限りを尽くしたのが本作なんですね。

豪華な声優陣

本作ではハリウッドを代表する豪華キャストが声優として名を連ねています。

主役のソーセージ・フランク役のセス・ローゲンを始め、クリステン・ウィグジョナ・ヒルエドワード・ノートンなどなど。

そんなハリウッドスターたちが、ソーセージや、パン、携帯用ビデになって大暴れ。
多分、セス・ローゲンの友達ネットワークなんでしょうねー。

ざっくりストーリー解説

本作のストーリーをザックリ書くと、「ショップウェル」というスーパーにいる”食材”たちの物語。

彼らは何者かによって、スーパーの外は何でも願いが叶う楽園と教え込まれていて、神=人間に選ばれてスーパーから出ることを願っているわけです。
しかし、現実は全く違っていて「食材」である彼らが買われいてった先では……。といういわゆる擬人化もの。

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これが子供向けアニメなら、真実を知った食材たちが逃げ出して本当の楽園へ……みたいなストーリーになりそうなものですが、本作のキャラクターたちは神=人間と戦う事を選ぶわけですねー。

で、そんな本作の主人公はソーセージで、ヒロインはホットドック用のパン。
上のポスターを見てもらえば想像がつくかと思いますが、これはいわゆる、アレのメタファー…ってうか、アレそのものです。

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そこからめくるめくバカで不謹慎で下ネタだらけな物語が展開されていくし、買われていった食材たちが“真実”を知るキッチンのシーンなんかは、食材目線で超残酷描写的に描かれてるんですねー。

ただ、この映画が上手いのは、そうした食材目線の合間にチョイチョイ人間目線を挟みこむ事で、それ自体がギャグにもなっているし、観ているこっちが嫌な気持ちにならないギリギリのバランスを保ってることだと思いますねー。

映像と世界感、脚本の上手さが光る

そんなハチャメチャで超バカバカしい内容ながら、映像も素晴らしいし、食材たちがそれぞれ作っているコミュニティーや、主人公たちの視点から見たスーパーの世界感も面白く、何より脚本の構成が上手くて全体的にいわゆるダレ場はほとんどないんですよね。

トータルでアニメーションとしてのクオリティーが高いので、不謹慎でバカバカしいネタの数々に呆れながらも、最後まで見入ってしまうし、映画史上類を見ないくらいバカバカしいクライマックスのシーンでは、ちょっと感動しちゃったりするんですよねーw

あと、バカバカしさの奥の方に隠されているのが、このスーパーそのものが多民族国家であるアメリカの縮図になっているということ。
スーパーなので各国の食材や加工品、お酒などはジャンルごとの棚に分けられ、それぞれのコミュニティーを形成し、最初は棚同士で反目しいがみ合う彼らが、自分たちの危機に一致団結してクライマックスの戦いへとなだれ込んでいく展開は、まさに「インデペンデンス・デイ」の様。(しっかり演説シーンのパロディーも入ってたりします)

で、本作は7月3日から4日にかけての物語。つまり「アメリカ独立記念日」なんです。
主人公とヒロインがソーセージとパンなのも、独立記念日にはアメリカの人たちは庭でBBQを楽しむ風習があるっていうところからの発想みたいですね。

そんな感じで、舞台、キャラクター、ストーリーが、それぞれアメリカや独立記念日にかかっているのも上手いなーって思ったし、個人的にはとても面白かったです!

とは言え内容が下品すぎて、人様にはあまり積極的にオススメはし辛いんですが、思った以上にちゃんとした作品でしたよ。

興味のある方は是非!!

 

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