今日観た映画の感想

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スタローン版ダーティーハリー? 「コブラ」(1986)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「ロッキー」「ランボー」に続き、シルベスタ・スタローンの当たり役にしようとして失敗した『コブラ』ですよー!

今観るとツッコミどころ満載の作品ですが、アクションシーンは力が入ってるしTHE・80年代アクション映画って感じで楽しめましたー!

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あらすじと概要

殺人事件を目撃した美女の抹殺を企てる殺人鬼集団と闘うはみだし刑事を描いた、S・スタローン主演のバイオレンス・アクション。“ナイトスラッシャー”と呼ばれる狂信的なグループによる連続殺人事件が発生。事件の捜査にあたるロス市警のマリオン・コブレッティ刑事、通称“コブラ”は、ある殺人現場を目撃したモデルのイングリッドと出会う。目撃者であるイングリッドは“ナイトスラッシャー”に狙われることになり、コブラは彼女の警護にあたるが……。(allcinema ONLINEより引用)

 

感想

スタローン版ダーティーハリー?

本作は、「ロッキー」シリーズと「ランボー」シリーズで一躍スターダムにのし上がったシルベスタ・スタローンが、ロス市警の凶悪犯罪専門刑事として活躍するポリスアクション映画です。

ウィキペディアによると、実はこの映画の脚本は「ビバリーヒルズ~」の主人公アクセル刑事役の候補になったスタローンが、コメディ色を排除し名前をフォーリーからコブレッティ(通称コブラ)へ変更、アクション大作にしようと書いたものの、結局アクセル役はエディ・マーフィに決定。
スタローンは却下された脚本を元に本作を制作したという事らしいです。

実際観てみると、ビバリーヒルズコップ」がスタローン脚本じゃなくて本当に良かったって思いましたねーww

あと、本作はかなりダーティーハリーの影響を受けているというか、スタローンはこの作品で自分なりのダーティーハリーを目指して作ったらしいんですよね。
なので、嫌味な警部補モンテ役には『ダーティハリー』で悪役の“スコルピオ”を演じたアンドリュー・ロビンソンを、相棒のゴンザレスは、ダーティーハリーでハリーの相棒を演じたレニ・サントーニがそれぞれ演じています。

僕はダーティーハリーってボンヤリとしか覚えてないんですけど、もう少し社会派だったような気がしたんですけどねーw

キャラ盛りすぎ

本作のストーリーをざっくり書くと、ロス市警のはみ出しもの、コブラッティーとゴンザレスの通称「ゾンビ班」が、目撃者のヒロインを警護しながらカルト宗教の敵を皆殺しにするっていう映画です。
そんな彼のカッコイイところを箇条書きにすると、

・ティアドロップのグラサンと黒の革手袋。

・いつも楊枝を咥えてる。

・スーパーに立てこもった犯人を追い詰め、「店を爆破するぞ!」と脅されると、「やれよ俺の店じゃねえ」と返答。(原語では「俺はココでは買い物はしない」)→射殺

・冷えた食べかけのピザをナイフで切って先っちょだけ食べる。

・添加物やジャンクな食べ物は嫌い。健康に気を使っている。

・パソコンに強い。

・「警護するヒロイン」を乗せたまま敵の車を追跡→すごいカーアクションの末、ヒロインを乗せたまま車は横転。

・マリオンというファーストネームにコンプレックスを持っている。(女の子みたいだから)

・拳銃のグリップにはコブラのマーク。

・市警のヒラ刑事なのに手榴弾自動小銃を持っている。

・なのに敵を「軍隊並みの装備」とか言っちゃう。(お前が言うな感)

・敵は皆殺し。

ざっと思いつくだけ上げましたが、どうですかこの中二感!
そしてキャラ盛りすぎ感!
スタローンじゃなかったら(というかスタローンをもってしても)、もう完全にコントですよww
多分、最初に「ビバリーヒルズコップ」の台本として書いた影響が出てるんでしょうね。

80年代感

さらに、今見ると笑っちゃうような80年代感満載な映像。
ヒロインはモデルなんですが化粧や髪型はもちろん、ピカピカのヘンテコロボットに囲まれながら写真を撮られてるシーンは、音楽も相まって中々キツいものがありましたねー。

あと、全体の構成や撮り方なんかもTHE・80年代って感じでバブリーなお洒落感(ビバリーヒルズコップの残り香?)にクラクラします。

この時代を取り入れちゃった感が、本作が「ロッキー」や「ランボー」みたいに人気が出なかった要因の一つなんじゃないかなーと思ったりしました。
明らかにスタローンに向いてないキャラでしたしねー。

っていうか、物語自体、「ロッキー」「ランボー」とは比べ物にならないくらい雑ではあるんですけども。

脳筋&無能vsバカ

というわけで、コブラ脳筋っぽりは上記の通りなんですが、本作の敵「カルト宗教」“ナイトスラッシャー”もバカばっかりなんですね。

集会? ではみんなで両手に持った斧をカンカン打ち鳴らし、夜な夜なバンで街に繰り出しては無差別に殺人を繰り返すという何がしたいのかよく分からない団体で、しかも手口がかなり雑。

で、殺人現場を目撃したヒロインを口封じのために襲うんですが、その時もカメラマンと通りすがりのサラリーマンと守衛の3人を殺してます。
さらに、ヒロインが入院した病院でも、掃除係と看護婦と入院患者を殺し、街中でカーチェイス&銃を撃ちまくり、コブラを襲って返り討ちに合い、それでも集団でコブラとヒロインを追いかけるっていうね。

こんだけ目立ちまくりの集団をコブラ任せにして全然捕まえない無能なロス市警(っていうか捜査すらしてない)と、敵は全員皆殺しのコブラ。バカと脳筋と無能のせいで、無駄に被害が増えるっていう。

もうね「このバカどもがー!」(´・ω・)つ)3゚)∵と、全員殴ってやりたくなりますw

で、散々被害を拡大した末に、敵を皆殺しにして、コブラはヒロインと盗んだ(敵の)バイクで走り出してめでたしめでたしっていう。

流石にこれは、いくらファンでも擁護しきれないよスタローン。

 

ただ、今見ると一周回って逆に面白かったりしますけどねw
いや、決してオススメはしませんが、映画自体88分しかないですし、多分、一人で観るんじゃなくて友達数人とポテチでも食べながらワイワイツッコミを入れながら観るには、丁度いいと思います。

興味のある方は是非。

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クドカンが描くポップで楽しい地獄絵図「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、宮藤官九郎監督、長瀬智也神木隆之介W主演の『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』ですよー!

役者、ミュージシャン、サブカルなど、多彩なジャンルから豪華キャストが出演する作品でした。
ただ、(´ε`;)ウーン…つまらないわけではないけど個人的にはあまり乗れなかったかなーと。

なので、今回は感想も文句多めになると思いますので、本作が好きな人には先に謝っておきますね。ほんとスイマセン。

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あらすじと感想

『ピンポン』『舞妓 Haaaan!!!』などの脚本を担当してきた宮藤官九郎が、監督と脚本を務めて放つ異色のコメディー。事故が原因で地獄に来てしまった男子高校生が、ロックバンドを率いる鬼と共に奇想天外な冒険と抱腹絶倒の騒動を巻き起こす。主演を務めるのは、『ヘブンズ・ドア』などの長瀬智也と『るろうに剣心』シリーズなどの神木隆之介。ユニークな設定とギャグ満載の物語もさることながら、特殊メイクを施して鬼にふんした長瀬の怪演や、猛特訓したという神木のギタープレイにも注目。

ストーリー:修学旅行で乗っていたバスが事故に遭ってしまった男子高校生・大助(神木隆之介)。ふと目を覚ますと、炎が渦を巻く中で人々が苦しめられている光景が目に飛び込んでくる。地獄に落ちたと理解するも、同級生のひろ美に思いを告げずに死んでしまったことに混乱する大助。そんな彼の前に、地獄農業高校軽音楽部顧問にしてロックバンドの地獄図(ヘルズ)のリーダーである赤鬼のキラーK(長瀬智也)が現れる。彼の指導と特訓のもと、地獄から現世に戻ろうと悪戦苦闘する大助だが……。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

監督・脚本は宮藤官九郎

本作の監督は、脚本家として数多くのドラマや映画を担当した宮藤官九郎
ドラマ「木更津キャッツアイ」や「池袋ウエストゲートパーク」、それにNHK朝のテレビ小説「あまちゃん」では社会現象とも言える大ヒットを飛ばしました天才脚本家です。

その一方で監督作品としては「真夜中の弥次さん喜多さん」(2005)「少年メリケンサック」(2009)「中学生円山」(2013)に続き、本作が4作目。

ちなみに僕がクドカン監督作品で観たのは「少年メリケンサック」だけで、本作が二本目の鑑賞になります。

超豪華キャスト陣

そんな本作で主役を務めるのが、若手No1と言っても過言ではない実力派、神木隆之介TOKIO長瀬智也
他にも、尾野真千子古田新太宮沢りえなど実力派キャストが勢ぞろい。
さらにカメオ出演で、Char、野村義男、ゴンゾー、マーティ・フリードマン、「憂歌団」の木村充揮など豪華ミュージシャンや、監修兼チョイ役でみうらじゅん御大、中村獅童と、出演者は無駄に豪華でしたねー。
色々な作品を通してクドカンと付き合いのある人たちなのかな?

メインの舞台は地獄

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本作は、高校生の神木隆之介が修学旅行中にバスの事故で死亡。
地獄に落ちるものの、初恋の相手に会いたい一心で輪廻転生を繰り返すという物語。
なので、基本作品の舞台は地獄になります。

ただ、この地獄や輪廻転生のルールが割と複雑というか、都合がいいというか。

ざっくりまとめると、

・7回輪廻転生を繰り返しても地獄に落ちると鬼になる。
・輪廻転生で人間になれるとは限らない。
・一週間に一度、閻魔による裁きが行われて生き返る。
・何故か学生は地獄でも学校に通う。
・地獄の一週間は現世での10年。

というもので、物語はこのルールに沿って進んでいくんですね。
それはいいんですけど、地獄に落とされた亡者の神木君や、同じ亡者のはずなのに長瀬智也の鬼とバンドを組んでる桐谷健太や清野奈々は割と自由にしてるし、そうかと思うと思い出したように拘束具をつけられたり、地獄の責め苦を味わったりと、ルールが曖昧で観ていてちょっと混乱しました。

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いや、そこが本題じゃないんだからいいんでしょうけど、それぞれの立場や関係性が曖昧すぎて、物語が途中でどうでも良くなってくるんですよね。

舞台劇のメソット

クドカン脚本と言えば、軽妙なセリフのやり取りの面白さが魅力ですが、その作り方自体は多分、舞台劇の手法だと思うんですね。

なので、同じセリフ劇で時間の長い(1時間x10本とか)テレビドラマでは上手くハマるんですけど、基本、動きや表情で物語を語る映画では、クドカンの手法だとセリフ過多になりがちな印象を受けました。

特に、ボケツッコミで笑いを取るやりかたは、映像で分かってる事をさらにセリフで説明する事になるので、映画でやるとクドくなっちゃうし、ストーリーと関係ない小ネタをれるのも、冗長になるだけで物語自体のテンポが悪くなってる感じ。

そこがクドカンの味ではあるんですが、時間が限られている映画では、神木君&長瀬君のストーリーに絞ってテンポよく観せたほうが良かったんじゃないかなーって思ったし、女子高生役に皆川猿時さんは、舞台ならいいけど映画でやるとコントになっちゃうのでやめたほうが良かったんじゃないかなって思いました。

まぁ、これクドカンに限らず日本のコメディー映画全体に言える事なんですけども。

あと、チョイ役の人たちが無駄に豪華すぎるのはお祭り感があるしルックは豪華に見えるけど、目が散って物語に集中出来ないんですよねーw

純愛を描いた作品

本作の主軸は神木君&長瀬智也の純愛で、その二つのラブストーリーが絡み合う形で進んでいくんですね。
ここで、地獄と現世で流れる時間が違うという設定が活きていて、神木君にとっての一週間は現世での10年なので、彼が一週間ごとに生き返る度に現世は10年後の世界なわけです。
つまり、本作は変形のタイムリープものでもあるんですよね。

時間を超えてすれ違いながらも一途に恋人を想い続けるってのはとてもロマンチックだし、大人になった女の子を演じる宮沢りえの演技も手伝っていい感じ。
一方、人間だった頃の長瀬君と恋人役の尾野真千子のパートも、地獄のシーンとはトーンが変わって良かったですねー。

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ただ、そこでイチイチ外しの演出を入れちゃうのは、クドカンの照れなのかなー?
地獄のパートがテンション高くてハチャメチャな分、現世パートは割とシリアスに描いたほうが物語にメリハリがついて良かったように思うんですけどね。

 

なんて、文句ばっかり書いてますけど決してつまらなくはないし、他の邦画コメディーにはもっとつまらない作品が山ほどあります。
実際、他の監督で撮ったクドカン脚本の作品には名作も多いですし、それだけに本作が「何かもったいないなー」って思っちゃうんですよねー。

この作品でクドカンがやりたかった事も何となく分かるし、諸々の無駄を省いて全体的にコンパクトにまとめたら面白くなったと思うんですよね。

あと、神木君を始めとしたメインのキャスト陣はとても良かったと思いましたよ。

興味のある方は是非!

 

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自転車レースを題材にした青春映画「疾風 スプリンター」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、自転車のロードレースに青春をかけた若者たちの物語『疾風 スプリンター』ですよー!

この作品は香港映画なんですが、劇映画で、実写で、ここまで自転車レースの迫力をガッチリ描いた、まるで、スポコン少年漫画そのまま実写化したような作品でしたー!

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あらすじと概要

自転車ロードレースの世界を舞台にしたドラマ。固い絆と友情を育みながらも激しく競い合う、プロロードレーサーたちの姿を追う。メガホンを取るのは、『ブラッド・ウェポン』『クリミナル・アフェア 魔警』などのダンテ・ラム。『激戦 ハート・オブ・ファイト』などのエディ・ポン、『ドラゴン・ブレイド』などのチェ・シウォン、『神なるオオカミ』などのショーン・ドウらが共演する。出演陣がノースタントで挑んだ迫力満点のレースシーンの数々に魅せられる。

ストーリー:チョン・ジウォン(チェ・シウォン)をエースとする、自転車ロードレースの強豪チーム「チーム・ラディアント」に、アシストメンバーとしてチウ・ミン(エディ・ポン)とティエン(ショーン・ドウ)が加入する。誰よりも速く走ることを目指して、血のにじむような努力を重ね絆を育み、力を合わせてチームをけん引していく三人。だが、ライバルの「チーム・ファントム」と激しい攻防を繰り広げる中、チームが資金難に陥ってしまう。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

まるでスポコン漫画の実写版のような青春劇

本作を観終わって最初に思ったのは「弱ペダ(弱虫ペダル)の実写版みたい」でした。
弱虫ペダル渡辺航さんが週間少年シャンピオンに連載中のロードレース漫画で、高校の自転車ロードレースチームがインターハイで日本一を目指すという物語。

2013年から、テレビアニメも放映されている大人気漫画です。

で、本作「疾風 スプリンター」は、プロのロードレースの世界で戦う若者たちの栄光と挫折、そして復活を描いた作品ですが、ストーリー展開がマンガっぽいというか、悪い意味ではなくてスポコン漫画の熱い展開をそのまま実写にしたような熱量の高い作品だったんですね。

主演は台湾出身のエディ・ポン、中国出身のショーン・ドウ、K-POPグループ「SUPER JUNIOR」のチェ・シウォン。
そして、ヒロイン役に中国出身のワン・ルオダンがほぼノースタントで体当たりの演技を見せています。

監督は香港映画の重鎮ダンテ・ラム。
近年は「激戦 ハート・オブ・ファイト」「クリミナル・アフェア 魔警」など、香港ノワール作品で高い評価を得ている監督らしいです。

ちなみに僕は本作がダンテ・ラム作品初鑑賞でしたよ。(多分)

ざっくりストーリー紹介

台湾?の自転車ロードレースの強豪チーム「チーム・ラディアント」の入団テストに、二人の青年が合格します。
一人は、戦略に長けているもののスタミナに問題があるティエン(ショーン・ドウ)と、もう一人は入団テストでエースのチョン・ジウォン(チェ・シウォン)にバトルを仕掛ける自信家で才能も十分のチウ・ミン(エディ・ポン)。

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二人はそれぞれの才能を生かし、エース・ジウォンのアシストとして、チームの勝利に貢献するものの、ある日「チーム・ラディアント」は経営難に陥り解散。
エースのチョン・ジウォンを含む三人はそれぞれ別のチームに移籍し、敵同士となり……。という物語。

そして、ミンとティエンがヒロインでアマチュアロードレーサーのシーヤオ(ワン・ルオダン)を取り合うラブコメ展開なんかもあったりするんですねー。

ぶっちゃけドラマパートは……

二人が「チーム・ラディアント」に合格し、次第にチームの要になっていく序盤。
ガキ大将みたいなミンが、早く帰ろうと適当に自転車の手入れを終わらせると、副監督(実質マネージャー的な女の子)が腕組みをして立ってるところとか、ミンとティエンがシーヤオの気を引こうとなんやかんや張り合うところとか、一昔前のドラマで使われてるようなコメディーチックなBGMも相まって、観ているコッチが照れちゃうような演出。

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もうね、ラブコメ学園漫画かー!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

とw

そのほかにも、全体的に物語的に鈍重に感じる部分もあったりして、ぶっちゃけドラマパートはスマートとは言えないんですよね。
ただ、例えばミンとシーヤオが初めて心を通わせるシーンとか、基本ドラマパートも自転車が絡む作りになってるのは好感がもてました。

あと、自転車レースの戦略自体が、キャラ描写やストーリー自体に深く繋がっているのも良かったですよ。

宇多丸師匠も評論の中で語ってましたが、ラストシーンでは主要キャラだけでなく、選手全員にそれぞれのドラマがあるんだっていう事が分かるエンディングなんですが、それはスポーツだけに限らずで、ロードレースっていう題材を通して若者たちの普遍的な成長の物語を描いているんだと思います。

圧巻のレースシーン

で、本作の白眉は何と言っても、自転車のロードレースシーン。

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何百台という自転車が、猛スピードで街中や山、砂漠を疾走する様子はそれだけで大迫力だし、クラッシュのシーンは本当に痛そうでΣ(||゚Д゚)ヒィ~!! ってなります。

劇中で登場するレーサーの人たちは、基本薄いジャージしか着てないので、サポーターとか身を守るものが仕込めないんですよねー。
なので、主要キャラだけじゃなくて、他の出演者の人たちも怪我をしたり、中には重症を負った人もいたようです。

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エンドロールではそんな出演者たちの様子を、ジャッキー映画さながらにNGシーンで出してるんですけど、救急車で運ばれたりジャージが破れて傷だらけだったりと、ホント痛そうでしたねー。

またレース中のギアチェンジとか、細かいカットを差し込んだり、(チーム戦なので)エースとアシストが交互に入れ替わって風よけになったり、フォーメーションを組んだりする様子は、「これ弱ペダでやってたヤツ!」って思ってテンションが上がりましたねー。

あと、ただのど根性パワーだけじゃなく、勝敗にロジックがちゃんとあるのも良かったです。

「でも、自転車レースのルールが分からないとつまらないんじゃ」という心配も無用。
レースのシーンでは、ちゃんと中継のアナウンサーと解説者が、大事なところは教えてくれる親切設計になってます。

もちろん、本当のロードレースを知ってる人が観れば「そんなアホな」ってシーンも沢山あるみたいなんですけど、少なくとも「物語内でのリアリティー」は担保されてるので、素人目にデタラメ過ぎて物語に乗れないってことはないんじゃないかな。

メインはあくまでキャラクターの成長なので、自転車ロードレースに興味のある人もない人も楽しめる、青春映画だと思いました。

興味のある方は是非!!

 

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世界を震撼させた実話を元にした作品「スポットライト 世紀のスクープ」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、カトリック教会神父の児童への性的虐待の実態を暴き、世界中を震撼させたボストンの地方紙『ボストングローブ』の記者たちの戦いを描いた映画『スポットライト 世紀のスクープ』ですよー!

正直、観終わったあとは胃の中に重い鉛が入ったような気分になる作品で、その位、この映画が描く「事実」は非常に重く観る人にのしかかってくる気がしました。

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あらすじと概要

アメリカの新聞「The Boston Globe」の記者たちが、カトリック教会の醜聞を暴いた実話を基に描くスリリングな社会派ドラマ。カトリック系住民が多いボストンで、神父による児童への性的虐待事件を暴露した新聞記者らの困惑と共に、次々と明らかになる衝撃の真実を描き出す。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』などのマイケル・キートンが記者を好演。複雑に絡み合う事件の根の深さに慄然(りつぜん)とする。

トーリー:2002年、ウォルター(マイケル・キートン)やマイク(マーク・ラファロ)たちのチームは、「The Boston Globe」で連載コーナーを担当していた。ある日、彼らはこれまでうやむやにされてきた、神父による児童への性的虐待の真相について調査を開始する。カトリック教徒が多いボストンでは彼らの行為はタブーだったが……。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

カトリック教会の性的虐待事件とは

2002年、アメリカボストンの地方新聞「ボストングローブ」が大々的にとりあげたことをきっかけに、全世界に波及した、ローマンカトリック教神父による児童への性的虐待事件です。

ウィキペディアによれば、2002年1月、同紙はボストン司教区の教区司祭ジョン・ゲーガン神父が六つの小教区に携わった30年にわたる司祭生活の中で、延べ130人もの児童に対する性的虐待を行って訴訟を起こされたことを報道。

それが引き金になり、大手マスコミも次々にこの事件を取り上げ、2003年1月11日のニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は過去60年間で米国カトリック教会の1200人を超える聖職者が4000人以上の子供に性的虐待を加えたと報じ、2004年2月16日には米CNNテレビは1950年から2002年にかけての52年間で神父4450人が疑いがあると報道。
件数は約11000件に上るそうです。

約11000件中立証できたのは6700件、立証できなかったのは1000件、神父が死亡したなどの原因で調査不可能になってしまったものが3300件。
もう、桁が大きすぎてよく分からない数字になってますが、被害者団体によれば「司祭らは長年にわたり(性的虐待を)隠そうとしてきた。すべての真実を示すものではない」んだそうです。

ちなみにこれ、アメリカだけの話で、その後この問題は世界中に波及しているようですね。

この事件を受け、ボストン大司教バーナード・フランシス・ロー枢機卿は、多くの報告があったにも関わらず問題の神父に効果的な対処をしなかった上に、事件をもみ消したとして世論の厳しい批判を受け、2002年12月13日に辞任に追い込まれますが、何故かその後ローマの大教会に栄転してます。

詳しい事が知りたい方はこちら↓

カトリック教会の性的虐待事件 - Wikipedia

カトリックプロテスタントの違い

ものすごく乱暴に分けると、キリスト教にはカトリックプロテスタントという二大派閥があって、その大きな違いは聖職者の呼び方でしょうか。

「神父」と「牧師」って聞いたことがあるかと思いますが、カトリックが神父、プロテスタントが牧師。
牧師は結婚できますが、神父は結婚はもちろん異性との性的交渉も禁じられています。

もちろん他にも違いはたくさんあるんですが、本作で描かれる児童への性的虐待事件の背景にはこの神父のあり方が関係しているのではないかとの見方もあるようです。

事件の背景

では何故、ボストンでこのような事件が起こり、それが長年に渡って表沙汰にならなかったのかというと、ボストンの住人はアイルランド系アメリカ人が多く、380万人のうち200万人以上がカトリック信者という、アメリカ最大のカトリック都市だった事が大きいようです。

つまり、コミュニティーの中にカトリック信仰が深く根付き、権力と結びついていたことで、表沙汰にはなりにくい状況だったという背景があるようなんですね。
また被害者は、貧困層父親のいない子供が多く、事件の多くは示談で済まされたという背景もあったようです。

つまり、この事件は信仰が地域に深く根づいていたこと、被害者の多くが貧困層だったこと、また権力と宗教が結びついて事件がもみ消されていた事が絡み合っていたという事のようです。

ざっくりストーリー

本作では、グローブ紙に赴任してきた新編集長マーティ・バロン( リーヴ・シュレイバー)が、グローブ紙に載ったゲーガン神父の小さな記事に目を付け、同紙のコーナー「スポットライト」の担当チームに追加取材を命じたことから、物語はスタートします。

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そして、ウォルター・ロビンソンマイケル・キートン)、マイク・レゼンデスマーク・ラファロ)、サーシャ・ファイファーレイチェル・マクアダムス)、ベン・ブラッドリー・Jr(ジョン・スラッテリ)、マット・キャロル(ブライアン・ダーシー・ジェームズ)の五人が取材を始めると、ゲーガンだけでなく多くの驚くべき事実が浮き彫りになっていくというストーリー。

また、この事件は教会だけでなく、警察・判事・弁護士・有力者なども巻き込み、事件を取材するチームへの圧力や妨害も行われます。

つまり、この作品は単に教会の不祥事を告発する物語ではなく、コミュニティーや(宗教を含めた)権力そのものの構造に横たわる問題点を描いた作品なんですね。

キリスト教というと、僕を含む多くの日本人にとって“他人事”のように感じてしまいますが、形を変えてみれば、この映画で描かれていることは世界中のあらゆるコミュニティーに共通するシステムやそこに所属する人々全ての問題点を描き出している作品と言えるんじゃないでしょうか。

地味だけど骨太な作品

とはいえ、本作にドラマチックな展開はありません。
劇中、「スポットライト」のメンバーが被害者や加害者、関係者にひたすら取材する姿を追う非常に地味な作品です。

しかし、被害者への取材のシーンで大人になった被害者の腕に覚せい剤の注射痕があったり、「神の代弁者たる神父に逆らえるわけがない」というセリフ、彼らの弁護士を務めるミッチェル(スタンリー・トゥッチ)の「それでも彼は幸せな方だ。生きているのだから」というセリフの重み。

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また自分がゲイであることをひた隠しにしていた別の被害者は、「神父様だけが本当の自分を受け入れてくれたんだ」という喜びから、どんなに辛いことでも従ってしまったと涙ながらに告白します。
これは肉体的虐待じゃなく、精神への虐待なんだ」とも。

また同じ教区で児童虐待をしていた神父は、自分のしてきた事をあくまで“いたずら”であると証言。(恐らくは少年時代神父に)自らもレイプされた経験があることを仄めかしています。

そして、このおぞましい現実に薄々気づきながらも、見て見ぬふりをし、時には隠蔽に加担してきたコミュニティーの司法や警察、有力者や信者たち。

それはボストングローブ紙も同じで、実は過去に告発があったにも関わらず取り合わなかった事が後に明らかになっていくんですね。

こうして次々に明らかになっていく真実を前に、「スポットライト」のメンバーは感情を顕にはせずに、淡々と地道な取材と調査を重ねていきます。
が、そうした抑えた演技の中にも、教会への怒りと被害者たちを救いたいという強い思いが次第に強くなっていくのが、観客にも伝わるんですね。

この辺はさすが、実力派のキャスト勢の確かな演技力と、監督の確かな演出の成せる技だし、だからこそ観客も彼ら「スポットライト」のメンバーに共感していくのだと思います。

一方で、この作品を観て単純にカトリック教会や宗教を批判するというのは、僕の中で少し違和感があって、(もちろん神父や教会のしてきた事は決して許せるものではないですが)僕ら日本人が宗教に対して持っているスタンスと、カトリックがコミュニティーに深く根ざしている海外では、この事件や映画から受ける衝撃度は重みが違うだろうし、カトリック信者ではない僕が、この映画を観て知った気になって、カトリック関係者やコミュニティーの人たちを簡単に断罪するような事は出来ないなと。

前述したように、本作は「カトリック性的虐待事件」を通して、世界中のあらゆるコミュニティーに所属する人々全ての普遍的な構造を突きつけているわけで、決して“他人事”ではなく、我が身に置き換えて一人一人が受け止めていかなくてはいけないんじゃないかなと、そんな風に思いました。

正直かなり重い映画ですが、観ごたえはあるし観終わったあと色々な事を考えさせられる映画でしたよ。

興味のある方は是非!!

 

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メルギブが描く弱肉強食アクション「アポカリプト」(2007) *ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ハリウッドスター・メル・ギブソン監督のアクションスリラー映画『アポカリプト』ですよー!

メルギブ作品はエゲツないショッキング描写があるという噂を聞いて、中々観る勇気が出なかったんですが、今回思い切って観てみたら、マッドマックスとランボーを足して2で割ったようなアクション映画でしたー!

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あらすじと概要

マヤ文明後期の中央アメリカのジャングルを舞台に、妻子や仲間とともに平和に暮らしていた青年の過酷な運命を描くアドベンチャー・スリラー。監督は『パッション』で世界中に衝撃を与えたメル・ギブソン。映画経験のない若者たちをキャスティングし、全編マヤ語で前人未踏の映像世界を作り上げる。ジャングルの生活をワイルドに描いた前半から一転、敵から逃れようと、ひたすら走り続ける主人公の青年の、手に汗握る奮闘に注目。

トーリー:誇り高き狩猟民族の血を受け継ぐジャガー・パウ(ルディ・ヤングブラッド)は、妻や仲間とともに平和な暮らしを送っていた。ところが、ある日、マヤ帝国の傭兵による襲撃を受け、仲間とともに都会に連れ去られてしまう。そこで彼らを待ち受けていたのは、干ばつを鎮めるためにいけにえを捧げる儀式だった。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

弱肉強食の世界を生き抜く若者の物語

本作のストーリーは非常に単純明快。

マヤ帝国の軍隊に捕まった主人公が逃げる。それだけの映画です。

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中央アメリカのジャングルの中にある小さな集落で、仲間や妻子と平和に暮らす主人公ジャガー・パウ(ルディ・ヤングブラッド)。
しかし、ある朝、彼の村をマヤ帝国の軍隊が襲撃、多くの仲間が殺され、生き残った男と女たちは捕虜(奴隷?)として捕まり、マヤ帝国に連れ去られてしまいます。
そこから色々あってジャガーは逃亡。マヤ軍の追っ手との生き残りをかけた戦いが始まるという物語。

この映画は三部構成になっていて、序盤はジャガーたちの生活の様子を、中盤はジャガーたちの目から見た(自壊しかけている)マヤ帝国の様子を、終盤はジャガーの逃亡と追っ手との戦いを描いているんですね。

映画冒頭、ジャガーたち村の戦士が森の中でバクを狩るシーンから物語はスタートします。
そして中盤の彼らはマヤ帝国の獲物になり、終盤ジャガーは冒頭のバクと同じように、追っ手から逃げ回るんですね。
本作については色々解釈があるんですが、僕はこの映画は『弱肉強食』の世界を描いているのかなって思いました。

圧倒的な映像力

メル・ギブソンと言えば、ハリウッドの中でも何かとお騒がせスターとして有名で、性格的にもかなりアレな人らしいんですが、こと映画監督としては天才的だとハリウッド関係者も口を揃えているんですね。

僕は本作がメルギブ監督作初鑑賞なんですが、確かに冒頭から物語にグイグイ引き込まれていきました。
アクションシーンのスピード感や迫力、容赦ない残酷描写、ストーリー構成などなど、本当に凄くて、文字通り最後まで、手に汗を握って観ましたよ!

細かいディテールの描き込みや、非常に整理されたカットやアクションの見せ方で、観客を飽きさせない演出が成されていて、そこにメルギブ監督の特徴でもある痛みを感じさせる容赦ないバイオレンス描写がプラスされることで、シンプルな物語が重層的に肉付けされているんですね。

その手法は、どことなく俳優メルギブの出世作でもある「マッドマックス2」を思い出しましたねー。

時代考証

ただ、本作はマヤ文明を描いてはいるものの、時代考証的は歴史的事実に対しては、あまり正確ではないようです。
映画評論家の町山智浩さんによれば、主人公たちがユカタン半島で狩猟生活を送っていたのが紀元前300年くらい。
マヤ文明が栄えていたのが8~9世紀くらい。
スペイン人がユカタン半島にやってきたのが15世紀以降と言われていて、この3つが交わっているのはおかしいのではないかと。

その事はメルギブ自身も承知の上らしいんですけどね。
史実云々より、エンタメとしての面白さを取ったんでしょうね。多分。

また、劇中で出てくる生贄の儀式についても劇中のようなことはなく、そもそも生贄になることは神に近づくとして非常に名誉なことだったんだそうですね。

とはいえ、マヤ文明がなぜ滅んだのかは未だに謎で、メルギブは本作の中で、マヤ帝国に疫病が蔓延しているという描写を入れたりしています。

 

ここからネタバレになるので、これから本作を観る予定のある人やネタバレイヤンな人は、先に映画を見てくださいね。

 

ラストの解釈

本作のラスト、マヤ帝国の追っ手と戦っていた主人公ジャガーの体はボロボロ。
海岸に出たところで追っ手に追い詰められ、もうダメかと思ったら、海にはスペインの軍艦があり、小舟でスペイン軍とキリスト教の宣教師が近づいてきているわけです。
で、呆気にとられる追っ手の目を盗んで何とか逃げ出したジャガーは、妻子と共に森の奥に消えていくというオチなんですね。

前述の町山智浩さんは、このオチに対して「スペイン人によるカトリック伝来によって、マヤ文明の残酷な風習は終をつげ主人公はカトリックに救われた」というふうに描いていると解釈。

対してライムスターの宇多丸師匠は、「スペイン人の侵略によって、劇中で描かれた以上の虐殺が起こる事を暗示している」と解釈しているんですね。

確かにどちらとも取れる感じですが、僕は宇多丸師匠の解釈を支持します。
というのも、前述した『弱肉強食』、つまりバク狩りからスタートし、ジャガーがマヤ帝国軍に狩られ、追い詰められ、という文脈(と、中盤の少女の予言)から考えると、今度は大国スペイン軍の先進的な武力によって、マヤ帝国が狩られる(蹂躙される)「終わりの始まり」というラストだと凄く収まりがいいし、物語的のオチとして綺麗だと思うんですよね。

つまりメルギブは、世界は常に強者が弱者を喰らいながら回っている。みたいな事を、この映画で描いていて、マヤ帝国は現代アメリカ(を含む大国)のメタファーとして描かれているんじゃないかと思うんですよね。

まぁ、ただの妄想だし、あのラストの真意はメルギブのみぞ知るってところですがw

ラストの解釈とメルギブの思想はともかく、単純に物語として面白いし、アクション映画としてもすごく良く出来ていて、メルギブの映画監督としてのスキルの高さを知れた作品でしたよ!

興味のある方は是非!!(ただしR-15)

 

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アジアを代表するロマンチック面白おじさんの最新作「人魚姫」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アジアを代表するロマンチック面白おじさんチャウ・シンチーの最新作『人魚姫』ですよー!

タイトル通り、人間の男と人魚の女の子の恋愛ストーリーなんですが、そこはチャウ・シンチー。一筋縄ではいかない過剰でベタな笑いと、観ているコッチがドン引きするぐらいのバイオレンスを織り交ぜた、まさしくチャウ・シンチー印の一作でした!

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あらすじと概要

少林サッカー』などのチャウ・シンチーがメガホンを取り、若き実業家と美しい人魚の恋愛をコミカルに描くファンタジー。開発プロジェクトのトップである実業家と人魚族のかれんな女刺客によるロマンスが繰り広げられる。『ドラゴン・フォー』シリーズなどのダン・チャオ、チャウ・シンチー監督作『ミラクル7号』にも出演したキティ・チャンらが共演。笑いの中にも社会問題を盛り込んだ内容にくぎ付け。

トーリー:青年実業家のリウ(ダン・チャオ)はリゾート開発のため、香港郊外の海辺にある美しい自然保護区を買収。しかし、そこには絶滅の危機にひんする人魚族が住んでいた。人魚族は、刺客として美しい人魚のシャンシャン(リン・ユン)を人間の女性に変装させて送り込む。ところがリウとシャンシャンは惹(ひ)かれ合い、やがて人魚族の存在が人間に知られてしまう。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

チャウ・シンチーについて

多くの人がチャウ・シンチーと聞いて思い出すのは『少林サッカー』(2001)と『カンフーハッスル』(2004)の2本くらいじゃないかと思います。
というのも、日本では中国・香港映画の公開館数って少ないんですよね。
ただ、チャウ・シンチー映画は中国をはじめ(日本を除く)アジア圏では、『ミラクル7号』や『西遊記~はじまりのはじまり』など、発表した作品全てで大ヒットを飛ばし、今やアジアの喜劇王と呼ばれる大監督なのです。

そんなチャウ・シンチー監督待望の最新作が、本作『人魚姫』なんですね。

過剰なギャグ・ロマンス・そしてバイオレンス

そんなチャウ・シンチー監督の特徴はといえば、劇中のギャグ・ロマンス・そしてバイオレンスなど、とにかく全てが過剰ってところじゃないかと思います。
特に劇中のギャグシーンは、「え、今時それをやるの!?」というようなベタでバカバカしい、小学生男子がゲラゲラ笑っちゃうような事をてらいなくやって見せるんですね。(ジャッキー・チェンもそうでしたけど)

チャウ・シンチー映画常連の、「良い顔」のおばちゃんやおじさん、太った女性やいかにもアホっぽい子供たちのオフビートな笑いや、主役の人魚シャンシャン(リン・ユン)や、上半身は人間で下半身がタコのその名もタコ兄(ショウ・ルオ)のドリフ的なドタバタなどを全力で見せられるので、何ていうかもう、バカ負けしちゃって思わず笑っちゃうっていう。

しかも後半のかなりシリアスなシーンにも、気の抜ける効果音を入れてみたり、下らないギャグを差し込んでみたり。
もう、一体どんな気持ちで見ればいいのかとw

そうかと思うと、見ているコッチが恥ずかしくなるようなロマンスをぶっ込んできたり、ギョッとする(シャレじゃないよ!)ような痛々しい描写や、ドン引きするくらい過剰なバイオレンス描写を入れ込んだりする感覚が、まさにチャウ・シンチー印って感じで、ホント油断できません。

じゃぁ、ただ無茶苦茶やってるのかというとそうではなく、作品の根底に監督自身が持っている問題意識や観客へのメッセージがドスンと一本あって、その両者の絶妙なバランス感覚が他の監督とは違う、チャウ・シンチー監督独特の作家性なんだろうなーって思うんですね。

CGとセット

映画、特に洋画を見慣れた人にはチャウ・シンチー映画のCGは、“ちゃち”に観えてしまうかもしれません。
実際、本作のCG自体のクオリティーは前作「西遊記~」と比べても、かなり見劣りしてしまうんですね。

ただ、それすらも彼の計算なんじゃないかと、僕は思うんですよね。
洋画の「リアルに見せる」CGとは対極の「デフォルメのため」のCGというか、(ちゃちさも含めて)物語や世界感の味付けや、それ自体を笑いの材料に使ってしまう東洋的CGの使い方の最先端というか。

「嘘を隠す」ためじゃなく、むしろ嘘を誇張していくことで「物語の嘘」を目立たなくしている感じがするんですよね。

でも、全てがCG頼りというわけではなく、人魚族の隠れ家である難破船の中は巨大セットを作ったりすることで、作品やキャラクターに一定の実在感を持たせているのは、ハリウッドのビッグバジェット映画と共通しています。

音楽

もう一つのチャウ・シンチーの特徴は音楽の使い方で、他の映画やアニメ、ドラマなど全然関係ないジャンルの音楽をBGMに使うタランティーノ的なやりかたなんですね。ただ、その音楽のチョイスはやっぱりチャウ・シンチーならではというか、本作でも「ドラゴン怒りの鉄拳」や「ゲッターロボ」のテーマ、エンディングテーマでは『射雕英雄伝』という香港の武侠ドラマのテーマ曲を使ったりしています。

その辺も油断できないところで、気を抜いて見ていると、突然シチュエーションの違う場面で耳馴染みのある曲がかかってビックリしちゃったりするし、それがなぜか違和感なく物語にマッチしてるんですよねー。

トーリー

で、本作の大枠のストーリーはまさしく『人魚姫』そのものなんですが、シチュエーションはしっかりアレンジされていて、金の亡者である成り上がりの社長リウ( ダン・チャオ)によって住処を奪われ傷つけられた人魚族は、この男を暗殺するためシャンシャンを送り込むのだが……っていう設定なんですね。

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そこには、環境問題だったり、中国バブル以降の拝金主義、少数民族(マイノリティー)への迫害(宇多丸師匠の受け売り)といった問題提起が割とストレートに入っていて、もっと言うとチャウ・シンチー自身の仏教的・アジア的な道徳に基づくメッセージが込められているんですね。

じゃぁ、説教臭い映画なのかといえばそんな事はなくて、ギャグやロマンスやアクションなどなど、これまたアジア的な面白さをふんだんに盛り込んだエンターテイメントにすることで、誰もが楽しめる作りにしているんです。

なので見ているコッチは笑ったり怒ったり泣いたりと、喜怒哀楽の感情全部を揺さぶられて、最後に「あー、いい映画見たなー」って満足できるんですよね。

残念ポイント

ただ、本作は前半が割と冗長というか、いきなり冒頭で本筋とあまり関係ないシーンが入ってたり(一応後の伏線にはなってるんですけどね)、登場キャラに感情移入するのに時間がかかるので、映画全体のライド感は前作「西遊記~」に比べると落ちてしまう感じは否めないかなーと。
それもチャウ・シンチー作品にしてはって話で、もちろん一定の面白さの基準はクリアしている前提ですけどねー。

 

ジャッキー・チェン以降、日本ではあまりフューチャーされない香港映画ですが、チャウ・シンチー作品はどれをとってもハズレがないというか、コメディーだけどしっかり作家性やメッセージを入れ込みつつ、観客を楽しませるアジアでも稀有な監督でもあるので、本作に限らず機会があれば多くの方に観て欲しいって思います。

興味のある方は是非!!!

 

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我らがケビン・ベーコンが透明人間になって大暴れ「インビジブル」(2000)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2000年公開のSFホラー『インビジブル』ですよー!
我らがケビン・ベーコンが、透明人間になってエロいことしたり暴れたりする作品でしたー!

 

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あらすじ概要

H.G.ウェルズ原作の「透明人間」を下敷きにしたSFホラー。自らの身体を実験台に、DNA操作による人体の透明化に成功した科学者・セバスチャン。だが研究は未完成で、彼は元の姿に戻れなくなってしまう。一生自分の姿を鏡で見る事ができないという彼の絶望は、やがて研究仲間への憎悪に変わって行く。SFXを駆使したハードな設定ながら、透明人間による女体への悪戯や覗きといった“お約束”もちゃっかり描いているところが微笑ましい。(allcinema ONLINEより引用)

 

感想

透明人間の怖さ

本作は当ブログでも度々登場する、みんな大好きポール・バーホーベン監督&ケビン・ベーコン主演のSFホラー作品です。

ミイラ男や吸血鬼ドラキュラ、狼男、フランケンシュタインの怪物などと並び、モンスターとしてはクラッシク化している「透明人間」ですが、僕は今まで透明人間の怖さってイマイチピンときてなかったんですよね。

というのも、男子の場合「透明人間に襲われたらどうしよう」っていうより、「透明人間になったらどうする?」っていう、透明人間目線で見てしまうのと、ある年齢以上の人なら中西やすひろ先生の名作マンガ「Oh!透明人間」を始めとした、「ちょっとHなコメディー」マンガやアニメの印象が強いってのがあるんじゃないかと思うんですよね。

そして本作は、ポール・バーホーベン監督&ケビン・ベーコン主演で描かれるOh!透明人間」の実写化作品です。

いや、もちろん嘘なんですけど、でも当たらずとも遠からずっていうか、透明人間になった男子の考えることは、結局みんな一緒なんだなーって思いましたねー。
ベーコンは劇中「透明人間のパワーで自由になったのだー」みたいなことを高らかに宣言するんですが、結局やってることはエロかよ(。・д・)ノ)´Д`)ビシッっていうねw

その上で、バーホーベン監督は透明人間に襲われる側の恐怖もしっかり描いていて、僕は初めて、透明人間の怖さってこういう事なんだなーって理解しましたよ。

面白さだけを抽出

本作でケビン・ベーコンを始めとした研究スタッフは、国防総省の依頼で生物の透明化の研究をしています。
DNA操作や量子論的なアレコレの理屈を研究し、実験動物で透明化→元に戻すを成功させた彼らですが、野心家のベーコンは自分が透明人間第一号になって名を残したいと、政府に内緒で自らの体で人体実験を行うわけですね。

この背景には、当然透明人間を軍事的に利用したい国家の思惑だったり、生物を透明化するための難しい理屈があるわけですが、バーホーベン監督はその手の小難しいアレコレは匂わす程度にして、ベーコンが透明化する過程だったり、透明人間になったベーコンの行動など、「透明人間」の映像やストーリー的な面白さだけを抽出して、テンポよく観せているんですよね。

そうすることで、逆に人間の愚かしさみたいなものを浮き彫りにしていく手腕はさすが、バーホーベン監督だなーって思いました。

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画像出典元URL:http://eiga.com /イケナイお薬で徐々に透明化するベーコン

我らがケビン・ベーコン大暴れ

で、実験が成功し見事人類初の透明人間になったベーコン。
最初のうちはスタッフにイタズラを仕掛けたり覗きをしたりと、透明人間ライフを満喫しているわけですが、所定の実験期間が過ぎて元に戻ろうとするも失敗。
映画冒頭で、彼自身が実験動物に与えていた苦しみを、今度は自分が味わうことになってしまいます。

その一方で、透明人間の力に溺れて暴走を始めるベーコン。
お向かいの美人を襲ったり、元カノ(研究チームの一員でヒロイン)の部屋を覗いたりと行動はどんどんエスカレートしていくわけですね。

そして、最終的に研究スタッフvs透明ベーコンの対決となっていくわけですが、ここでの描写も、透明人間ならではの描写や設定を上手く使いながら、新鮮な映像で見せてくれてます。

顔に包帯ぐるぐる巻きじゃなくて、型どりしてラバー製のマスクを作ったりするのも現代的だし、それがよりスケキヨ的不気味さを醸し出してるのも良かったですねー。

何より、ベーコンを主役に据えたのはバーホーベン監督の慧眼というか、分かってんなー! と。
ちょっと爬虫類っぽい彼の顔が、天才を鼻にかける若くて自己中心的な嫌な科学者にピッタリなんですよねー(褒め言葉)

で、透明人間のシーンは彼は声だけで出演なのかと思ったんですが、メイキングを観ると実は出ずっぱりでした。合成用の全身タイツを身につけながら、本編の透明人間のシーンでは、見えないけどベーコンがちゃんと演じていたんですねー。

バーホーベン作品としては、多分それほどビックバジェットではなくて、全体的にこじんまりとした映画ですが、ベーコンが「皮膚→筋肉→骨格→透明人間」と次第に透き通っていく過程なんかは今観ても新鮮だし、物語も面白かったですよー!

興味のある方は是非!!

 

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