今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

モンスター「が」トラックに!?「モンスタートラック」(2016/日本未公開)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2016年に全米で公開された『モンスタートラック』ですよー!
ぱっと見は低予算のB級映画っぽいルックなんですが、実はスタッフ・キャストともに実力派揃いで、なんと120億円の予算をかけた超大作らしいです。

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あらすじと概要

トラックに棲みついた謎のモンスターと男子高校生の友情を、「X-MEN:アポカリプス」のルーカス・ティル主演で描いたコメディ。高校生のトリップは、壊れたトラックを改造して故郷の町から脱出することを夢見ている。ある日、彼の住む町で正体不明のモンスターが車を破壊する事件が発生。トリップは自分のトラックにそのモンスターが潜り込んでいるのを見つけ、モンスターと奇妙な友情を育んでいく。ところが、モンスターを捕獲しようとするハンターたちに狙われる羽目になり……。共演に「ドント・ブリーズ」のジェーン・レビ、「アウトサイダー」のロブ・ロウ、「リーサル・ウェポン」シリーズのダニー・グローバー。「ジュラシック・ワールド」のデレク・コノリーが脚本を手掛け、「アイス・エイジ」のクリス・ウェッジがメガホンをとった。(映画.comより引用)

 

感想

モンスタートラックとは

モンスタートラックとは、ざっくり言うとパワーのあるトラックに超でっかいタイヤがついてて、オフロードはもちろん、クラッシュカーレース(廃車を踏み潰しながら走るレース)などで使われるトラックのことで、モンスター“のような”トラックだから、モンスタートラックって呼ばれるんですね。

ところが本作では、そのままモンスター“”トラックになっちゃったっていう映画です。

ってダジャレかよ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

ただ、実はこの映画、一見低予算B級作品のようでいて、実は1億2500万ドル(約120億円)の予算をかけた超大作で、監督は劇場3Dアニメ「アイス・エイジ」のクリス・ウェッジ、脚本は「ジュラシック・ワールド」のデレク・コノリー、原案は『カンフー・パンダ』の脚本を担当したジョナサン・エイベルと、何気に超豪華スタッフで固められています。

キャストの方も、主人公トリップ役は『X-MEN:アポカリプス』のルーカス・ティル。
悪役に『アウトサイダー』のロヴ・ロウ。
主人公を助ける廃車工場のオーナー役に『リーサル・ウェポン』のダニー・グローヴァー。と、地味に豪華な布陣で制作されてるんですねー。

トーリーをざっくりと

本作のストーリーをざっくり書くと、両親の離婚で心を閉ざした高校生トリップが、偶然出会ったモンスターを故郷に返すという「ET」的な物語です。

このモンスターは原油を食料にしていて、深い地層にある地下水脈で暮らしていた、イルカとタコが合体したような古代生物 。
元々が水生生物なので地上では自由に動けないんですね。

で、トリップの住む街にある石油発掘会社がこの水脈まで掘り返しちゃったので、このモンスターが地上に吸い出されてしまうわけですよ。
発掘現場で希少生物が見つかると、環境を守るため石油の発掘が出来なくなってしまうので、社長はこのモンスターたちを闇に葬ろうとするんですが、廃車工場に偶然逃げ込んできたモンスターと出会ったトリップは、モンスターをクリーチと名づけ組立中のトラックをクリーチの足がわりに改造。

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クリーチとの友情を育みつつ、何とか生息地に返してやろうとするという、非常に単純で分かりやすいストーリーなのです。

“モンスタートラック”の自由すぎるカーチェイス

そんなこんなで、クリーチからすると足がわり、トリップからすればクリーチに乗る為の鞍がわりのトラックを作り上げ、敵や保安官とのカーチェイスが始まるわけですが、ビルの上を走ったり、壁を飛び越えたり、ビルの間の壁をよじ登って隠れたりと、普通では考えられない、クリーチの特徴を活かした自由すぎるカーアクションはとても新鮮だったし見ごたえがありましたねー。
欲を言えば、もう少しハチャメチャでも良かった気がしますが、それでも十分に楽しかったですよ。

また、サイドストーリーとして、偶然巻き込まれたクラスの優等生で学級委員長的女の子のメレディス(ジェーン・レヴィ)と主人公トリップの淡いラブロマンス、トリップと実の父親とのがっかりな再会、母親のボーイフレンドの保安官との関わり、石油会社に捕まったクリーチの両親の救出劇など盛りだくさんの内容。

逆に盛りだくさんすぎて、若干内容がとっ散らかっちゃった感じがしたのは残念だったかも。やりたいことは分かるんですけどね。

家族と成長の物語

基本的に本作は、トリップの成長と家族の再生を描いた物語です。
両親の離婚と、母親のボーイフレンドの保安官への反感から、大人を信じられず、周囲に心を閉ざしているトリップ。

そんな彼が、偶然出会ったクリーチを故郷に返すために様々な経験をする中で成長し、周囲との関係を再び築くというのが本作のメインテーマだと思うんですね。

でも、個人的には正直あまり上手く行ってないなーと。

主人公が高校生っていう設定が、このテーマを描くにはちょっと大きすぎなんじゃないかなって思うんですよ。
まぁ、車いじりが得意で運転ができるとなると、小中学生ってわけにはいかないってのもあるんでしょうけども。(アニメなら出来たかもですが実写ですしね)
結果、主人公トリップが、高校生の割に幼い感じになっちゃって、少々無理が出てる感じなんですよね。

ただ、色々ツッコミどころはあるけど、クリーチは見慣れると超絶カワイイし、カーアクションは面白いし、物語も変にリアル方向に偏りすぎてないので、大人から子供まで安心して楽しめるエンターテイメントだと思いますよ!

興味のある方は是非!!

 

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米国を舞台に日本人空手家が大暴れ!「KARATE KILL/カラテ・キル」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、本ブログでもご紹介した「女体銃 ガン・ウーマン」の光武蔵人監督最新作、『KARATE KILL/カラテ・キル』ですよー!

海外をターゲットにした日本B級映画、通称『ジャパニーズエクストリーム』の流れの作品です。

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

『女体銃 ガン・ウーマン』などの光武蔵人監督によるアクション。殺人や拷問の映像をネット中継する違法サイトを運営する組織にさらわれた、妹の救出に挑む男の姿を追う。俳優兼アクションパフォーマーのハヤテが主演を務め、その脇を『エターナル・マリア』などの紗倉まな、『女体銃 ガン・ウーマン』などの亜紗美、『リザとキツネと恋する死者たち』などのデヴィッド・サクライらが固める。ハヤテが繰り出す空手技に注目。

トーリー:女優を目指してロサンゼルスに留学したものの、連絡が途絶えてしまった妹・マユミ(紗倉まな)の身を案じるケンジ(ハヤテ)。マユミを捜そうとアメリカへ向かった彼は、バンデンスキー(カーク・ガイガー)という男が率いる謎の組織キャピタル・メサイアにマユミが捕まったことを知る。さらにキャピタル・メサイアが、拷問、強姦、殺人をネット中継する会員制の違法サイトを運営し、捕らえた者たちを生けにえにしているのを知ったケンジは、テキサス州エルパソ郊外の辺境にある組織の本拠地へ乗り込む。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

米国を舞台に“日本映画”を撮り続ける光武蔵人最新作

本作で監督を務める光武蔵人は米国在住の映画監督で、2004年に『モンスターズ(原題:Monsters Don’t Get to Cry)を皮切りに、2008年『サムライアベンジャー/復讐剣 盲狼』2014年『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』と、どちらかというと海外市場に目を向けたジャンル(アクション)映画、通称『ジャパニーズエクストリーム』を製作している監督です。

そんな光武監督が、日本のテレビ・映画などの制作会社「マメゾウピクチャーズ」と組んで撮影したのが本作『KARATE KILL/カラテ・キル』です。

主演は、空手家でパルクール・コーディネーターのハヤテ。
本作は、彼を映画俳優デビューさせるために企画された作品なんだそうで、全体の雰囲気としては、千葉真一さんの殺人拳シリーズ的なテイストなのかもしれません。

また、本作では「女体銃~」でも出演していた、米国在住の俳優・鎌田規昭や、同作で主演を務め井口昇作品にも出演している亜紗美、「ムカデ人間」の北村 昭博。
また、セクシー女優の紗倉まな、本ブログでも紹介した「リザとキツネと恋する死者たち」でトミー谷を好演したデヴィッド・サクライも出演しています。

「手(ティー)」の使い手

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画像出典元URL:http://eiga.com / 「手(ティー)」お使い手ハヤト

で、本作の主演を務めるハヤテという人は、「手(ティー)」という沖縄空手の師範代だそうで、「手(ティー)」とは中国から沖縄に渡ってきたカンフーが沖縄風になったものなんだそうで、金的や目潰しなど、禁じ手無しの古武術的な空手なんだそうです。

なので構えや打撃などは、空手というよりカンフーに近い感じがしましたねー。
本作では、そんな「手(ティー)」に実際ある技を活かすよう、逆算的に格闘シーンを考えていったそうです。

また劇中では、空手技とパルクールを組み合わせた、新鮮なアクション描写もふんだんに盛り込まれていましたよ。

近年の格闘アクション物で言うと、古式ムエタイを使った「マッハ!!!!!!!!」や、インドネシアの格闘技シラットを世に知らしめた傑作「ザ・レイド」、キーシ・ファイティング・メソッドというスペイン生まれの護身術を使ったトムクルーズの「アウトロー」などがあり、人に知られていない格闘技を使うことで、新鮮な格闘アクションを見せるのは一つの潮流になってるのかもしれません。

本作で特に新鮮だったのは、敵に捉えられた主人公が走るトレーラーの荷台の中で、剣豪(デヴィッド・サクライ)と戦うシーン。
トレーラーの荷台の中が闘技場という狭い空間で二人が戦うというシチュエーションはそれだけで燃えるし、走るトレーラーを道具立ての一部として使うアクションもとても考えられていて良かったですねー!
しかも序盤のバーコードハゲ(鎌田規昭)との対決がその伏線になってる構成は、「おっ!」っと思いました。

まぁ、序盤で主人公vs敵の戦いの最中に、カメラを回転させる(部屋が回って見える)という謎演出はどうかと思いましたけどねw
このカット、最初は何かの作品のオマージュかな? って思ったらそうではなくて、観客が飽きないようにというサービスだったらしいですよ。

あと、米国が舞台ですからね。
当然銃を持った相手とどう戦うか問題があるわけですがご心配なく。劇中ちゃんと主人公が銃弾を避ける訓練をすることで解消されてたりしますので。(そしてそのヒントはバーコードとの対決で得る)

とはいえ

こんな風に書くと、まるで超面白い映画みたいですが、ぶっちゃけストーリー部分はわりと鈍重だったりするし、役者の演技は素人目に見てもコントギリギリの明らかなオーバーアクトだし、全体のルックもいかにも低予算映画だなーって思わせる作りで、誰もが楽しめる作品とはお世辞にも言えないんですよね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 文字通り体を張って頑張る佐倉まな。

僕は格闘映画が好きだからその辺はあまり気にならなかったし、紗倉まなさんのオッパイもイッパイ出てくるので大満足でしたが、それらはあくまで「偏愛」の部分ですからねー。

格闘とゴアシーンとオッパイが好きな人は、楽しめるんじゃないかと思いますが、それ以外の人にはあまり積極的にはオススメ出来ないかもー。(〃ω〃)>

興味のある方は是非!

 

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コーエン兄弟のブラックコメディー「バーン・アフター・リーディング 」(2009)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、コーエン兄弟が2008年に製作したクライムコメディー『バーン・アフター・リーディング 』ですよー!

豪華キャストが共演する、コーエン兄弟節全開のブラックなコメディーでしたよー!

 

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画像出典元URL:https://www.amazon.co.jp

あらすじと概要

ノーカントリー』でアカデミー賞作品賞ほか主要3部門などを受賞したジョエル、イーサン・コーエン兄弟が放つクライム・コメディー。CIAの機密情報が書き込まれた一枚のCD-ROMをめぐり、さまざまな人々が衝撃の結末へと突き進んでいく。出演は『オーシャンズ』シリーズのジョージ・クルーニー、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のブラッド・ピットら。演じる俳優をそれぞれ想定して書かれたという個性豊かなキャラクターたちと、彼らがたどる運命の行方に注目だ。

トーリー:CIAの機密情報が書き込まれた1枚のCD-ROMを、勤務先のフィットネスセンターで拾ったチャド(ブラッド・ピット)とリンダ(フランシス・マクドーマンド)。そのころ、元CIA諜報員のオズボーン(ジョン・マルコヴィッチ)は、機密情報の紛失にうろたえていた。一方、オズボーンの妻ケイティ(ティルダ・スウィントン)は、財務省連邦保安官ハリー(ジョージ・クルーニー)と不倫中で……。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

勘違いコメディー?

本作は、元CIA職員が執筆中の暴露本のデータが入ったCDロムを拾ったバカが、国家機密だと思って恐喝しようとしたら大変なことになったっていう物語で、いわゆる「勘違いコメディー」ってやつです。

物語自体は非常にシンプルですが、登場するキャラはとにかくアレなヤツばかり。
そんな主要キャラをざっくり紹介すると、

アル中が原因で左遷されそうになり、それに怒って辞職する元CIA職員のオズボーン

オズボーンの妻で女医。ヒステリックな性格でハリーと不倫中のケイティ

財務省連邦保安官で出会い系サイトにはまり、ケイティを含む複数の女性と不倫中のハリー

美容整形しないと人生真っ暗と思い込んでいるスポーツジムの従業員リンダ

リンダの同僚で身体を鍛えることばかり考えている筋肉バカのチャド

ハリーの妻で絵本作家のサンディ

スポーツジムの支配人でリンダに思いを寄せるテッド

事件自体はシンプルなのに、この7人それぞれの思惑が絡まりあって、事態がどんどん悪い方向に進んでいくという、いつものコーエン兄弟作品でした。

無駄に豪華なキャスト陣

そんな本作、規模の割にキャストが無駄に豪華です。

オズボーン役にジョン・マルコヴィッチ
ケイティ役にティルダ・スウィントン
ハリー役にジョージ・クルーニー
リンダ役にフランシス・マクドーマンド
チャド役にブラッド・ピット
サンディ役にエリザベス・マーヴェル
テッド役にリチャード・ジェンキンス

そして、そんな彼らの動向を見張るCIAの偉い人役にJ・K・シモンズ

アカデミー賞を始めとした様々な賞にノミネートまたは受賞した実力者ぞろい。
そんな実力派俳優陣で、コーエン兄弟はほとんど悪ふざけとも言える映画を作っちゃったんですねー。

特にブラピは、情けない筋肉バカをノリノリで熱演してましたよw

神視点から見た悲喜劇

で、この人間関係が非常にややこしくて、オズボーンの妻ケイティは、オズボーンに愛想を尽かしていて不倫相手のハリーに結婚を迫り、そのハリーはケイティだけでなく出会い系サイトを使って複数の相手と不倫中。

リンダの方も同じ出会い系サイトに登録していて、ハリーとセフレになるんですね。

で、このリンダは(年齢による)容姿の変化にコンプレックスを持っていて、整形手術を受けようとするも、お金が足りずにいます。

そんな時、スポーツジムに落ちていた一枚のCDロムを従業員が発見。
チャドが中身を見てみると、そこにはCIAの機密情報らしき文章が入っているんですが、これ、CIAを辞めたオズボーンの自伝の原稿で、それを持ち出したのはオズボーンと離婚しようとしているケイティで……って、ややこしいわ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

で、チャドとリンダはこのCDロムがCIAの機密情報だと思い込んでるので、オズボーンを脅して金を取ろうとするのだが……。

という顛末を、CIAはしっかり見張ってて、上司のJK・シモンズに報告してるんですけど、報告する方も報告を受けるJK・シモンズも、状況がまったく理解できなくて、どういうこと?? ってなるんですよね。

劇中のCIAとJK・シモンズの立ち位置は、物語のツッコミ役であり、観客の代表であり、物語を俯瞰で眺めている神の視点でもあるわけで、つまり、本作は猥雑な人間関係を観察する神の物語でもあるんですね。

この作劇法は、まさにコーエン兄弟の十八番で、「ノーカントリー」や「ファーゴ」のようなサスペンスホラーも同じで、コーエン兄弟作品って基本全部コメディーの作劇法で作られてるんですよね。

そういう意味では、日本で言えば北野武監督に近いのかもしれません。

ただ、それがハマる時もあればスべる時もあり、本作はどちらかといえばスべってるんじゃないかなと思ったりもします。
つまらないわけじゃないし、少なくとも観ている間は面白いんですが、終わってみると特に何も残らないというか、こんなに豪華キャストなのに登場キャラクターが薄いっていうか。

ちなみに本作のタイトル「バーン・アフター・リーディング 」は「読み終わったら燃やせ」=極秘文書としての意味合いという意味ですが、バーン(焼く)には焼き増し=コピーの意味もあり、「読んだ後に焼き捨てたくなるほど下らない内容」的な意味もあるらしく、コーエン兄弟はタイトルの時点で「この映画は超下らないですよー」って警告済みってことなのかなーなんて思ったり。

そう考えると、この無駄に豪華なキャスト陣も「これだけ豪華なキャストでコーエン兄弟が作るんだから、何かあるんだろう」と観客に思わせるミスリード的な“フリ”なのかもしれませんねw

興味のある方は是非!

 

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京アニの覚悟を感じた傑作「聲の形」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、昨年公開された京都アニメーション製作の劇場アニメーション作品『聲の形』ですよー!

正直「障害者」「いじめ」というヘビーそうなキーワードに腰が引けてしまって、結局劇場には行かなかったんですが、レンタルが始まったので今回思い切って観てみました。

 

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あらすじと概要

元ガキ大将の主人公と聴覚障害があるヒロインの切ない青春を描いた大今良時のコミックを基に、『けいおん』シリーズなどの山田尚子監督が手掛けたアニメーション。主人公の少年が転校生の少女とのある出来事を機に孤立していく小学生時代、そして高校生になった彼らの再会を映し出す。アニメーション制作を京都アニメーション、脚本を『ガールズ&パンツァー』シリーズなどの吉田玲子が担当。ボイスキャストには入野自由早見沙織らが名を連ねる。

トーリー:西宮硝子が転校してきたことで、小学生の石田将也は大嫌いな退屈から逃れる。しかし、硝子とのある出来事のために将也は孤立し、心を閉ざす。5年後、高校生になった将也は、硝子のもとを訪れることにし……。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

原作の話をざっくりと

本作は、漫画家の大今良時さんの原作を元に『けいおん!』の京都アニメーションが製作した劇場版アニメです。

原作の方は、2008年にオリジナル版を『週刊少年マガジン』編集部に投稿、第80回週刊少年マガジン新人漫画賞で入選します。
しかし、聴覚障害者に対するいじめをテーマにしていることなど内容の際どさから掲載は見送られ、以降どこにも掲載されることなく一時「幻の作品」となってしまいます。

その後、大今氏は2010年に創刊されたばかりの別冊少年マガジンにて冲方丁原作のSF小説マルドゥック・スクランブル』の連載を開始しヒット。これを期に別冊少年マガジンの班長・朴鐘顕氏が「どうしても(大今の)受賞作を読者に読んでほしい」と、講談社の法務部および弁護士、さらに全日本ろうあ連盟とも協議を重ねた結果「聲の形」は別冊少年マガジン2011年2月号に掲載することに。(ちなみに、ろうあ連盟からは「何も変えずそのまま載せてください」と言われたそうです

このオリジナル版が人気連載マンガを抜いて読者アンケートで1位を獲得。
週刊少年マガジンへの連載が内定するも、大今が連載版『聲の形』第1話の原稿をマガジン編集部の連載会議に提出した結果「まずは読み切り掲載」でとなります。

こうして発表されたリメイク版は、賛否両論あったものの、その反響の大きさから、発売翌週には正式に連載が決定。2013年8月7日発売の36・37合併号より連載が開始されたんですね。

 そんな原作を、「けいおん!」「たまこラブストーリー」の山田 尚子が監督し、京都アニメーションが製作したのが本作です。

タブーを描くことの覚悟

本作は聴覚障害&いじめ問題っていう二つのデリケートな題材を扱う作品です。

主人公 石田将也はガキ大将的な子供で、クラスもそれなりに和気あいあいとやっているわけですが、そこに聴覚に障害を持つ女の子、西宮硝子が転校してきます。

耳が聞こえない彼女は子供達にとってはいわば異分子で、しかも彼女に対して一切フォローを入れないダメ担任や、フォローの方向性がズレている副担任? だった事も災いし、クラスで浮いてしまった硝子はいじめの対象となってしまい、そんな彼女を率先していじめるのが将也なわけです。

で、「ある事件」をキッカケにいじめの対象は将也へと移り硝子は転校、そして彼は心を閉ざしたまま高校生になって身辺整理のあと自殺をと考えています。

この小学生パートは僕から見てもかなりエグいし、子供独特の残酷さみたいなものをギリギリまで描いているショックも大きくて、正直、批判的な意見が出ちゃうのも分かるなーという感じでしたねー。

そんな将也が、人生の精算として硝子と再開することから物語は始まっていくというのが大まかなストーリーです。

本作では将也と硝子の他に、小学生の時女子グループのリーダーで硝子を無視していた植野 直花
八方美人でいじめの傍観者だった、川井 みき
将也の友達でしたが「ある事件」以降、将也をいじめる側になる島田 一旗
硝子と仲良くしようとしたことで直花にいやがらせされ不登校になる佐原 みよこ

加害者・被害者・傍観者など、いじめの構造に象徴されるキャラクターがそれぞれ登場し、時を経て将也と硝子に出会うことで、“小学生の頃に負った傷”と再び向き合い、関係を再構築していくという物語です。

そんなストーリーの流れから「加害者擁護」的な批判も出ている本作ですが、僕はそうは思いませんでした。

もちろん、いじめが許されないのは当然ですが、加害者、被害者、傍観者といじめに関わった(もしくは巻き込まれた)キャラクターたちは、己の未熟さ故に引き起こしてしまった自分たちの行動に対して、それぞれが心に傷を負っていて、再開をきっかけに自分の罪を再び突きつけられ、向き合うことで、彼らなりの折り合いをつけて前進していくんですよね。

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今の時代に、それを描くのはとてもリスキーで、それだけに関わった人たちは相当な覚悟を決めて本作に取り組んだんだろうなーって思ったし、最後まで観れば決して「加害者擁護」的な物語ではない事も分かるんじゃないかと思います。

特に最後の方で将也が硝子に言う“あるセリフ”は、間違えた者は徹底的に叩いて良しという昨今の風潮に対する、ひとつの答えであり、問いかけなんじゃないかなって思いました。

そしてあのラストは、紆余曲折を経て生まれ変わった、将也の産声だって思いましたねー。

女性監督ならではの視点

僕は原作未読なので、これはあくまで想像なんですが、本作での女子特有の嫌な感じをあれだけ生々しく描けたのは、女性監督である山田さんだからなんじゃないかって思ったんですよね。

女子グループリーダーだった植野 直花や、傍観者・川井 みきの、“あの感じ”って、男性監督だと中々出せないんじゃないかなーとw

で、その辺のリアリティーが、本作に実在感を出してるなーって思いました。

特に川井みきのアレとかね。もう、おーまーえー!! ってなりましたよw

 

確かに、本作のストーリーや描写はかなりエグい部分もあるし、高校生パート展開やオチに拒否反応を示してしまう人の気持ちもよく分かるんですが、少なくとも僕は、いじめと障害、そしてコミュニケーションという題材に対して、関わった人たちが覚悟を持って誠実に描いたと思うし、コミュニケーションの難しさと大切さを描いた傑作だと思います。

興味のある方は是非!!

ただし、あの担任だけは許さん。

 

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これはパニック映画じゃない。キャラ萌え映画だ!「インデペンデンス・デイ: リサージェンス」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ローランド・エメリッヒ監督の「インデペンデンス・デイ: リサージェンス」ですよー!

超でっかいUFOが地球を襲うパニック映画「インデペンデンス・デイ」から20年。
まさかの続編です!

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あらすじと概要

地球に攻めてきた侵略者と人類の激突を描いたSF大作『インデペンデンス・デイ』の続編。前作での闘いから20年後を舞台に、地球防衛システムを完備した人類が再び侵略者と対峙(たいじ)する。『ホワイトハウス・ダウン』などのローランド・エメリッヒ監督、『ロスト・ハイウェイ』などのビル・プルマン、『ディープ・カバー』などのジェフ・ゴールドブラムと第1作のメンバーが再結集。新たに『ハンガー・ゲーム』シリーズなどのリアム・ヘムズワースらが加わる。壮大な物語と圧倒的な映像技術に息をのむ。
トーリー:エイリアンによる地球侵略に人類が立ち向かい、およそ30億人もの命を失いながらも勝利を収めてから約20年が経過した。人類はさらなる襲来に備えようと、エイリアンが残した宇宙船の技術を転用した地球防衛システムを作り上げる。2016年7月、そんな人類を試すようにアメリカ全土を覆うほどの大きさを誇るエイリアンの宇宙船が出現。彼らは重力を自在に操る圧倒的な科学力で、ニューヨーク、ロンドン、パリといった都市を次々と襲撃する。猛攻撃は止むことなく続き、人類存続の要であった防衛システムも無力化してしまう。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

ざっくり前作のおさらい

前作「インデペンデンス・デイ」(ID4)は、アメリカ独立記念日を2日後に控えた7月2日、突如、超巨大なUFOに乗って攻めてきたエイリアンを独立記念日の7月4日にやっつけるという物語。

率直に言うならバカみたいな設定にツッコミどころ満載のストーリー展開で、どう考えても逆転不可能な状況を無理やりひっくり返すという、これまで映画で何度となく地球を滅ぼしかけたエメリッヒの真骨頂とも言うべき作品です。

謎の信号音からエイリアンの目的を見抜いて、父親の何気ない一言からあっという間にエイリアン撃退法を考案する超万能なインテリや、自ら戦闘機に乗って宇宙人をやっつける大統領、凶暴なエイリアンをワンパンでやっつける軍人の大活躍で地球の危機を救うというハッキリ言ってトンデモ映画ですが、でも何故か憎めないんですよねーw

それから20年。
まさに「誰得!? 」と世界が首をひねった続編が本作「インデペンデンス・デイ: リサージェンス」です。

ワンアイデアで突き進むエメリッヒの漢気!

で、ぶっちゃけ前作の一番の売りは、アホみたいにでっかいUFOが地球の主要都市を破壊しまくるっていうアイデアなんですよね。

しかも、敵のUFOにはバリアが張り巡らされていて、地球の武器では太刀打ちできないっていう、日本のマンガ・アニメファンにはお馴染みの設定で、「こんなもんどうやって倒すんだ!?」っていうところが見所だったわけですよ。

そんな絶望的な状況を力技でねじ伏せて、敵を殲滅してから20年。

敵エイリアンが「リベンジマッチじゃゴラァー! 」やってくるわけですが、超でっかいUFOっていうアイデアは前回使っちゃって、しかも撃退しちゃってるわけで、本作ではエイリアンがどう来るのかと思ったらですね……。

前回以上よりもでっかいUFOで攻めてきましたよ!

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画像出典元URL:http://eiga.com

その大きさ、実に地球表面の3分の1を覆うほどの大きさ。…って、

アホかーーーーい!!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ  っていうねww

確かに前作では超でっかいUFOが攻めてくるっていうのが新しかったし、売りだったわけですけど、まさか続編で更にでっかいUFOで攻めてくるとは。
まさに予想の斜め下、ワンアイデアで突き進むエメリッヒの漢気を観ましたよ!

キャラクター萌え映画

前作では約30億人、人類の半分が亡くなるという大惨事が描かれ、本作では(恐らく)相当な大被害が出ているわけで、この数字だけ見ればとんでもない悲惨な状況なんですが、それでも「ID4」にはあまり悲壮感が感じられません。

もちろん数字が大きすぎて実感出来ないってこともあるんですが、それ以上に登場キャラクターに寄るところが大きいような気がするんですね。

前作で地球を救った立役者、万能インテリのデイヴィッド( ジェフ・ゴールドブラム)、大統領のトーマス(ビル・プルマン)、エイリアンをワンパンKOしたヒラー大尉(ウィル・スミス)の三人は、何ていうか起こっている事態に対して以上にポジティブっていうか、すぐ近くでとんでもない被害が出てるのに、猪突猛進で前進あるのみっていう感じだったし、デイヴィッドとパパのジュリアス(ジャド・ハーシュ)のやり取りや、密かに宇宙人を研究していたオーキン博士(ブレント・スパイナー)は空気読めなさなど、全体的に無神経なくらいポジティブなキャラや、横道に逸れまくりのやりとりが、起こってる事態の深刻さを緩和してる感じなわけです。

で、本作でもウィル・スミスを除く前作のキャストが多数出演していて、なんか同窓会的な感じが見ていて楽しいし、むしろそっちこそが本作のメインみたいな感じなんですよね。

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しかも全員リアルに20年分歳をとってるわけで、そのキャリア分だけ余計な力が抜けているというか、絶妙な味わいの演技を見せてくれるわけですよ。

さらに本作では、前作で小さな子供だった大統領の娘パトリシア(マイカ・モンロー)やヒラー大尉の義理の息子ディラン(ジェシー・T・ユーシャー)を始めとした次世代と前作活躍したキャストの共演が、親戚一同が本家に大集合的な感じで、なんか微笑ましいっていう。

あと、前作で宇宙人に精神を乗っ取られて植物状態だったオーキン博士をずっと看病し続けていた助手のアイザックス博士の関係とかもグッときてしまいますし、前作に引き続きジュリアスパパが超いい味出してました。

 

何かと評判の悪い本作ですが、個人的にはパニックムービーっていうより、キャラ萌え映画として観ると意外と楽しめるんじゃないかなーって思いました。

あと、もし本作を観るときは前作を一度観ておいたほうがいいと思いました。
前作をうろ覚えのままだと、キャラクターの関係性が分からなくて魅力半減って事になっちゃうと思うんですよね。

ともあれ、前作以上にバカっぽい設定だし、ツッコミどころも満載で、UFOがでかくなった割に前作よりも規模は小さくなった感が否めない本作ですが、個人的にはやっぱり憎めない作品でしたねー。
もしかしたら、僕は案外ローランド・エメリッヒが好きなのかもしれませんねw

興味のある方は是非!

 

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ファンタジーとSFが融合。ティム・バートン濃度が高い秀作「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、巨匠ティム・バートン最新作「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」ですよー!

個人的に、ティム・バートンって当たり外れの大きな監督というイメージなんですが、本作は「大当たり」でしたよー!

 

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あらすじと概要

ランサム・リグズの小説「ハヤブサが守る家」を実写化したファンタジー。奇妙な子供たちが暮らす屋敷を訪れた少年が、彼らに迫りつつある危険と自身の秘めた宿命を知る。監督は、『アリス・イン・ワンダーランド』などのティム・バートン。『悪党に粛清を』などのエヴァ・グリーン、『エンダーのゲーム』などのエイサ・バターフィールド、『アベンジャーズ』シリーズなどのサミュエル・L・ジャクソンらが顔をそろえる。

トーリー:少年ジェイクは、現実と幻想が交錯する中で、奇妙な子供たちが暮らす“ミス・ペレグリンの家”を見つけ出す。子供たちが不思議な能力を持ち、ひたすら同じ一日を繰り返す理由を知る一方で、彼らに忍び寄ろうとしている危険に気付くジェイク。さらに、ミス・ペレグリンの家へと導かれた理由と自身の役割を知る。やがて、真実が明らかになるとともに、子供たちに思わぬ変化が起こるが……。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

原作について

本作は2011年に出版された、アメリカ人作家ランサム・リグズのデビュー作「ハヤブサが守る家」を原作にしています。
この原作小説はちょっと変わった作りになっていて、元々古い写真の収集家だったリグズの所蔵写真を集めたフォトブックになる予定だったのが、編集者のアドバイスで人物写真からキャラクターや物語の発想を膨らませた小説になったらしいんですね。

で、このリグズは1979年生まれの38歳。
だからかもしれませんが、物語の設定が今っぽいというか、いわゆるファンタジーとは少し毛色が違う感じ。
たとえば、孤島の孤児院に集まる子供達は全員、いわゆる異能者=ミュータントだし、エヴァ・グリーン演じるミス・ペレグリン自身も「時間を操る」能力を持っていて、ある一日を「ループ」させることで、子供達の安全圏を作っています。
また、ある場所をゲートにしてタイムリープしたり、敵は不老不死を望む異能者で、そのために世界に散らばる異能の子供たちを狙っているとか、日本だとアニメやラノベなんかでも割と馴染みのある設定ですよね。

そんなダークファンタジー的な世界感とSF的ロジックが混じったような、「ハリー・ポッター」シリーズにも通じる現代的感覚を持った作品で、そんな作品の持つ世界感はティム・バートン監督の持つ資質とガッチリ噛み合っていると思いましたねー。

ティム・バートン版「X-MEN」!?

アリス・イン・ワンダーランド」「 チャーリーとチョコレート工場」「ビッグ・フィッシュ」「 ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」など、 ティム・バートン=(ゴシック)ファンタジー映画というイメージを持つ人も多いんじゃないでしょうか。

実際彼はそういう世界が大好きですが、一方でSFや特撮にも深くて、「バットマン」や「猿の惑星」、「フランケン・ウィニー」や「マーズ・アタック!」なども手がけています。つまり生粋のオタクなんですねw

そして、彼の特徴の一つに「箱庭的な世界」が得意というのもあります。
室内セットで世界を作りこんで、その中で物語が進む、ある意味「演劇的」手法というか。その特徴が顕著なのは「フランケン・ウィニー」や「 ナイトメアー~」 「 スリーピー・ホロウ 」などですかね。
「アリス~」や「チャーリーの~」も、そうした箱庭世界の拡大版ですしね。

もう一つは、異能・異形・異界の者、もしくはそうした者の世界に紛れ込んだ人間=マイリティーが主人公の作品が多いってことですね。
それは、そうしたキャラクターに彼自身を投影しているんだと思います。

そんなティム・バートンにとって、本作はまさにうってつけの題材。
異能・異形の子供たちが、ミス・ペレグリンに守られた箱庭で暮らし、紆余曲折あって自分たちの居場所を見つける物語ですからね。

で、アメコミ映画好きな人なら、本作を観て「X-MEN」を連想した人も多いんじゃないでしょうか。
X-MENのリーダー・プロフェッサーXも、ミュータントの子供たちを差別から守るために彼らの学園=居場所を作ってあげますしね。
ちなみに本作の脚本は「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」のジェーン・ゴールドマンだそうですw(もちろん、だから似てるというわけではないですが)

奇妙でカワイイ子供たち

本作の魅力は、何と言っても子供たちの魅力的なキャラクターです。

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放っておくと宙に浮いてしまうので、重い鉛の靴を履いている女の子。
降霊術で無機物に命を吹き込める男の子。
触れたものを燃やせる女の子。
透明人間の男の子。
幼いけど怪力の女の子、植物を操る女の子。
体に蜂を飼っている男の子、後頭部に大きな口のある女の子。
片目からプロジェクターのように自分の夢や未来予知を投影出来る男の子。
いつも覆面を被っている双子。

特に超怪力のちびっ子、ブロンウィン( ピクシー・デイヴィーズ)は可愛かったですねー(´∀`)

そんな彼らを厳しくも優しく養う女主人ミス・ペレグリンは、時間を操りハヤブサに変身できます。

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本作は、謎の死を遂げた祖父の遺言に従って「平凡な」いじめられっ子の少年が彼らの孤児院に行き、色々あって彼らと協力しながら自分の居場所を見つけるというボーイミーツガールな作品なんですね。

ちなみにそんな彼らを狙う悪役は、「またお前か!」でお馴染みサミュエル・L・ジャクソンですよーw

ティム・バートンの宝箱やー

映像的も、本作は実にティム・バートンらしいというか、非常に楽しんでいるのが伝わって来るオマージュが散りばめられてました。

屋敷の内装やミス・ペレグリンや子供たちの服装なんかは、彼が愛するゴシック調で統一されているし、屋敷で不気味な人形が動いて戦うシーンをストップモーションアニメでの撮影や、クライマックスの骸骨戦士なんかは、完全にハリーハウゼンオマージュで、久しぶりに彼の「好き」が詰まった宝箱をひっくり返したような、ティム・バートンらしい作品だなーって思ったりしました。

適材適所で個性は活きる

奇妙な子供たちは、その「個性」ゆえに社会に居場所がなく、ミス・ペレグリンの庇護の元、箱庭のような屋敷で共同生活をしています。
主人公ジェイク( エイサ・バターフィールド)もまた、ある事情から社会に溶け込めずにいるんですね。

しかし、ある事件をきっかけに居場所を失った彼らは協力して、初めて自分たちの手で居場所を取り戻そうとします。
それまでは、コンプレックスや恐れの対象でしかなかった彼らの能力=個性が、行動の中で初めて「長所」として活きるのです。
そして、その事が彼らに自信を与えて、守られるだけの存在から、コミュニティーの一員としての成長物語になっているんですね。

これ、個性を短所にするか長所にするかは自分次第ということで、別の視点で観れば、適材適所で個性は活きるという組織論にも通じるのかななんて思いましたねー。

以前観たフロリストのドキュメントで、「日向を好む植物、日陰を好む植物、それぞれが快適な場所に植えてやれば、綺麗な花が咲く」(意訳)みたいな事を言ってたのを思い出しましたし、多分、この物語の主題もそういう事なのかなーなんて思いました。

 

「アリス~」や「チャーリーと~」に比べれば、多分低予算な作品なんじゃないかと思うんですが、その分制約も少なく、割とティム・バートンの好きなように撮る事ができた作品なんじゃないかと思うし、個人的にティム・バートンはこの位のスケールの作品が一番本領を発揮出来るんじゃないかなーなんて思ったりしましたねー。

興味のある方は是非!!!

 

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“世界のクロサワ”が描くフランス映画「ダゲレオタイプの女」(2016) *ちょいネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、“世界のクロサワ”こと黒沢清監督によるフランス映画。

ダゲレオタイプの女」ですよー!

監督がフランス人スタッフ、キャストともに作り上げたホラーロマンスです!

で、今回は軽くネタバレしているので、これからこの映画を観る予定の方は、映画を観た後に、この感想を読んでくださいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

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あらすじと概要

『回路』『アカルイミライ』など国内外から高く評価されている黒沢清監督が、外国人キャストを迎えてフランス語で撮り上げたホラーロマンス。ダゲレオタイプという撮影手法で肖像写真を撮影するカメラマンの屋敷に隠された秘密を、不穏なタッチで描く。主演は『預言者』などのタハール・ラヒム。彼が思いを寄せるヒロインを『女っ気なし』などのコンスタンス・ルソーが演じるほか、名優オリヴィエ・グルメ、監督としても活躍するマチュー・アマルリックが共演。

トーリー:ダゲレオタイプで写真を撮影している写真家ステファン(オリヴィエ・グルメ)のもとで働くことになったジャン(タハール・ラヒム)は、ステファンの娘で、拘束器具に長い時間固定され被写体をしているマリー(コンスタンス・ルソー)が気になり始める。かつて被写体だったステファンの妻ドゥニーズが屋敷で自殺していたことを知ったジャンは、母親のようにさせないために、マリーを外に連れていこうと試みる。(シネマトゥデイより引用)

 

 

感想

ダゲレオタイプって何?

ダゲレオタイプというのは世界初の実用的写真撮影法で、銀板に直接映像を焼き付ける撮影法です。
ただ、露光時間が長くて撮影にはとても時間がかかる。そしてその間にモデルが動くと写真は失敗する。
というわけで、モデルが途中で動いてしまわないように専用の拘束具に固定されて、撮影が終わるまで身動きがとれない(らしい)んですねー。

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本作では、このダゲレオタイプにこだわる気難しい写真家、ステファン(オリヴィエ・グルメ)が、亡き妻と娘のマリー(コンスタンス・ルソー )をモデルにダゲレオタイプの作品を撮り続けていて、その助手として青年ジャン(タハール・ラヒム)がステファンに雇われる所から物語がスタートします。

ざっくりストーリー紹介

物語はフリーターのジャンが、アルバイト募集で写真家の助手としてステファンの家にやってくるところからスタート。

彼の雇い主はダゲレオタイプという特殊な写真撮影で名を挙げた、ステファンという気難しい写真家で、自分の娘マリーがモデルの等身大の作品を何枚も撮影しているという、エスパー魔美のお父さんみたいな人。

仕事の覚えが早かったジャンはステファンの助手として重宝され、やがてマリーと恋に落ちるが、この家には恐ろしい秘密があった。

という物語です。

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そしてこの映画は一応ホラーなんですが、個人的には「ホラー」というよりも「怪談」って感じがしました。
恐らく、黒澤監督は意識的に、フランスを舞台にした「怪談」をやろうとしたんじゃないかと思うんですが、どうですかねー?

フランスでも黒沢清黒沢清だった

映画冒頭、ジャンがステファンの家にやってくるシーン。

一瞬、「え、ここ本当にフランスなの?
と思うくらいいつも通り(と言えるほど本数を見てるわけではないんですがw)の黒沢清の画作りでしたねー。

最近の作品で言うと「クリーピー 偽りの隣人」的っていうか、パリ感ゼロの何処にでもありそうな特徴のない街並みが映し出されるわけです。
そして屋敷につくんですが、そこは外門と緑の内側の門の二重構造になっていて、日常と非日常の境目って感じなんですよね。この辺も「クリーピー~」感があるというか、黒沢清節全開って感じです。

そして屋敷の中では、メインの被写体の後ろに「何か」がそれとなく映る不穏な感じが満載。
不自然な暗闇だったり、風になびくレースのカーテンだったり、地下のスタジオやマリーが大事にしている温室だったり、黒沢清作品的な符号がそこかしこにあって、フランス映画じゃなくてフランスを舞台にした黒沢清作品なのだと、強く印象づけられます。

また、劇中不意に撮される、都市再開発のクレーンは、どこかダゲレオタイプで使われる拘束具を連想させたりして、映像的な韻を踏んでる感じがしましたねー。

母親の死の謎(ちょいネタバレ)

妄執に囚われる父親に恐れを抱く娘マリーは、家を出ようと仕事を探しています。
そんなマリーとジャンが親しくなっていく場面で、彼女の母親もダゲレオタイプのモデルだったこと、病にかかり温室で自殺したことが分かります。

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さらに後半では、この父親のステファンが妻(と娘)に行っていた、ある非道な行為が明らかになるんですね。
そして、それは妻の幽霊という形でステファン自身を苦しめます。

ここで恐ろしいのは、妻の幽霊にステファンは苦しめられているけれど、彼自身は妻をしに追いやった事を悔いてはいないってところで、妻がなぜ自殺したのかすら理解出来てないし、作品にすることで妻や娘を“永遠”に生かしてやったのだ的な恩着せがましい事まで言い出す始末。

ハッキリとは描かれてないんですが、多分ステファンはダゲレオタイプによる写真撮影で一時期名声を得たのだと思うんですよ。
で、以来、ダゲレオタイプにとり憑かれ狂ってしまった男ってことなんだと思います。

そして、そんなステファンの妄執に触れるうち、ジャンもそれとは気づかずに生と死、あの世とこの世の境界が曖昧になっていくわけです。

蛇足

そんな本作は131分あります。
この規模のこの内容の作品としては、正直長すぎるなーってのが正直な感想。

じっくりじわじわ描きたいという気持ちはわかりますが、全体的にダレ場や不必要(と個人的に思う)シーンが多くて長く感じてしまうんですよね。

特に後半の約15分は、まるっと蛇足だった気がします。
多分、最後のネタばらしは観た人全員が「うん、知ってた」って思っただろうし、その手前のアパートのシークエンスでバッサリ終わった方が良かったんじゃないかなーと。

そこも含めて冗長なシーンやカットを削って、90~100分くらいのタイトな作品に収めたら、もっと面白かったんじゃないかなって思いました。

ただ、黒沢清監督の作風は元々ヨーロッパ映画と相性がいいと思うし、また今後も海外のスタッフ・キャストと作る黒沢清監督の「洋画」は観てみたいと思いましたよ。

興味のある方は是非!

 

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