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モダンホラーの王キングとゾンビ映画の父ロメロがタッグを組んだサスペンスホラー「ダーク・ハーフ」(1993/日本未公開)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、モダンホラーの王様スティーブン・キングの同名原作を、ゾンビ映画の父ジョージ・A・ロメロが監督し実写映画化したサスペンスホラー『ダーク・ハーフ』ですよー!

どうやら日本未公開作品らしく僕は本作を知らなかったんですが、ネットのお友達に教えて貰ったので早速、TSUTAYAでレンタルしてきましたー!

 

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画像出典元:https://www.amazon.co.jp

あらすじと概要

バイオレンス小説用のペンネームを葬り去った作家の周囲で次々と起こる猟奇殺人。犯人はもともと存在するはずの無い別名義の自分なのか……。自身もリチャード・バックマン名義で作品を発表していた事があるスティーヴン・キングのホラー小説をG・A・ロメロが映画化。“ペンネームの復讐”という非常に観念的な物語を、細かいディティールと印象的な画面でうまくビジュアル化しており、キング=ロメロの蜜月関係を再確認できる。

トーリー:売れない純文学作家のポーモント。彼は一方で、バイオレンス小説用にジョージ・スタークというペンネームを持っていた。しかし、ある時、そのペンネームを葬ってしまう。するとやがて、ポーモントの周囲で猟奇殺人事件が次々と発生。犯人はなんと、もともと存在するはずのないスタークだった。彼は自分を葬った人間たちに復讐していた。そして、ポーモントに再びスターク名義の作品を執筆するように迫ってくるのだが…。(allcinema ONLINEより引用)

 

感想

古典的ホラーをキングが再解釈

本作の内容は、ざっくりいえば「ジキル博士とハイド氏」の小説家版的な作品です。

主人公のポーモントは、子供の頃に小説を書く面白さに目覚めるも様態が悪化して緊急手術。慰謝が頭蓋骨を外して中身を見ると、そこにはまるで生きているような目玉や鼻、数本の歯が。
どうやらポーモントは元々双子だったのが、彼に吸収されたものの、吸収しきれずに腫瘍として彼を苦しめたのだと、医者は冷静に対処します。

それから25年。
大学の教授と純文学作家として二足のわらじを履いていたポーモンドは、愛する妻と双子の子供に恵まれ幸せで平穏な日々を送っていますが、ある日ファンを名乗る男が合わられ、別のペンネームでバイオレンス小説を書いている事を暴露すると脅されます。
実はポーモンドは純文学小説だけでは食べていけず、ジョージ・スターク名義でバイオレンス小説を執筆、その作品がベストセラーとなっていたわけですね。

結局、ポーモンドは全てを明かし、ジョージ・スタークの名義を封印するんですが、その後、彼の周りで猟奇的な連続殺人が起こり状況証拠からポーモンドが疑われてしまいます。

ここまでが本作の序盤で、観ているこっちは「ははーん。これは二重人格のポーモンドがスタークとして殺人事件を犯しているんだな」と思うわけです。

そういう二重人格ものは前述した「ジキルとハイド」から始まって、星の数ほどありますからね。本作もその中の一本なんだろうと。

ところが、さすがはキング。そんな僕の想像のはるか斜め上を行ってましたw

ここからはネタバレになるので、読む人は注意して欲しいんですが

 

 

なんとジョージ・スタークは実在したんですねー。
どういう事かというと、心の奥底でジョージ・スタークを葬りたくないと思っていたポーモンドの念? がジョージを実体化させちゃった? っていう事らしいんです。
ちなみに、このスタークとポーモンドはティモシー・ハットン一人二役で演じています。

つまりジョージ・スタークは、ポーモンドの半身であり、彼のダークサイド。
「ダーク・ハーフ」なんですね。
ジョージ・スタークは自分を葬るキッカケになった全ての人間を、ポーモンドが書いていた小説のように葬り、ポーモンドに再びスターク名義で小説を書かせようとします。
そうしないと自分が存在出来なくなってしまうらしい。
しかし、スタークに言われるままに小説を書くと、ポーモンドは弱って死んでしまうらしい。
こうして、二人の対決が始めるんですねー。

スズメの存在

本作で重要なモチーフとなるのが、スズメの大群です。

ポーモンドが脳の“腫瘍“を摘出される時に大量のスズメが病院を襲い、またポーモンドとジョージが関わるシーンでは、いつもポーモンドの頭の中にスズメの鳴き声が聞こえます。そしてラストのクライマックスにもスズメの大群が登場するんですね。

劇中で、ポーモンドの大学の同僚の説明によると、スズメは死者を霊界? に案内するという役割があるとされているらしいんですが、これが本当にある何かの伝承なのか、それともキングの創作なのかは、ネットで調べてみたけど分かりませんでした。

ただ、この事と劇中でのいくつかのエポソードから、ジョージ・スタークと幼い頃のポーモンドの脳から取り出された“腫瘍“に深い関係があることが分かります。

多重人格というある意味現代的なモチーフと、伝承や呪いなどの古典的なオカルトをミックスしていくのは、まさにスティーブン・キング印だなーと思いましたねー。

キング自身を投影?

キング作品では度々、小説家が主人公になります。

その中で映画化された有名な作品といえば「シャイニング」「ミザリー」の2本でしょうか。

ミザリー」は狂信的な女性ファンに監禁されてしまう小説家の話で、『物語が読者の与える影響』を描いた作品ですが、本作は『物語が作家本人に与える影響』を描いた作品です。
またキング自身、過去に別名義で作品を発表したことは有名らしく、本作のアイデアはそんなキング自身の経験から生まれたのかもしれませんね。

ジョージ・スタークが、自分名義で作品が発表されないとせっかく実態を得たにも関わらずこの世に存在できないという設定は、どことなく日本的な設定にも感じますが、小説家であるキング自身の恐怖とも言えるかもなんて思ったりもしました。

と、ストーリーやキャラクターの設定は面白いし、最後までドキドキハラハラしながら観ていたんですが、観終わってみればスタークとポーモンドの関係性が多少分かりづらいような気がしましたねー。
その辺のロジックがもう少しハッキリ伝われば、劇中のサスペンスが盛り上がったんじゃないかなと。
あと、スタークの行動原理もイマイチ分からないというか、あんなにガンガン殺人を犯してポーモンドが捕まったら、どうする気だったんだろう? とか。

あと、割と普通にスタークがポーモンドの前に現れるので、若干拍子抜け感もあったりしました。

ただ、冒頭の手術のシーンで脳の中で目が動くところなんかはギョッとしたし、クライマックスで大量のスズメが襲いかかってくるシーンも迫力と怖さがあり、正直”ホラー映画”としては地味ですが、細々した表現も含めて、個人的にはかなり楽しめましたよー!

 

興味のある方は是非!

 

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