今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

あのヒーローが21世紀に蘇る「ターザン:REBORN」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、動物たちに育てられたジャングル王ターザンの後日談(というかリブート作品?)『ターザン:REBORN』ですよー!

観る前は正直「今更感」しかなかったわけですが、観終わってどう思ったかを書きますよー!(含みを持たせた言い方)

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あらすじと概要

映画やアニメなどで度々映像化されてきた冒険小説を、『ハリー・ポッター』シリーズなどのデヴィッド・イェーツ監督が新たに生まれ変わらせた活劇。ジャングル育ちの英国貴族ターザンが、愛する妻と故郷のために過酷な試練に立ち向かう。主人公ターザンを、堂々たる肉体美を誇るアレキサンダー・スカルスガルドが熱演。妻ジェーンに『フォーカス』などのマーゴット・ロビーがふんするほか、サミュエル・L・ジャクソンクリストフ・ヴァルツが脇を固める。

トーリー:生後間もなく国の反乱が原因で、コンゴのジャングルで動物たちに育てられた英国貴族ターザン(アレキサンダー・スカルスガルド)は、美しい妻ジェーン(マーゴット・ロビー)とロンドンで生活していた。ある日、政府の命令で故郷へ戻るがそれは巧妙なわなで、ジャングルを侵略された上に、妻がさらわれてしまう。愛する妻と故郷を取り戻すべく、ターザンは内なる野性を呼び覚まして戦うことを決意する。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

ターザンとは

「ターザン」は、米国の小説家エドガー・ライス・バローズ原作のSF冒険小説のシリーズで、両親と死に別れた赤ん坊がゴリラに育てられてジャングルの王になってジャングルを守る物語。
ちなみに、彼の本名はグレイストークジョン・クレイトン。由緒正しいイギリス貴族。(命名前に両親が亡くなったので名前は父親の名前をそのまま継いでいる)

筋骨隆々の逞しい体で超人的な能力をもち、頭脳明晰で動物たちの言葉が分かるというアメコミスーパーヒーローたちの源流にもなったヒーローです。

ターザンの映画やアニメを知らない人でも、名前を聞けば木の蔦につかまってジャングルを移動し「アーアアー!」と雄叫びをあげる半裸のマッチョな男を思い浮かべるのではないでしょうか。1999年のディズニー映画、2002年・2005年の続編で観た人も多いかもしれません。

本作では、父のポーター教授と共にアフリカのジャングルにゴリラの研究に同行してきたアメリカ人女性ジェーンと出会い、結婚してイギリスで暮らしているところから物語がスタートするんですね。

「リアル」志向のリブート作品

本作は、そんな「ターザン」の原作やドラマ・アニメなどの設定を引き継ぎつつ、アフリカのコンゴを舞台にヨーロッパの植民地政策という史実を絡めながら、現代に合わせて物語を練り直したリブート版で、バットマンの「ダークナイト」シリーズ、スーパーマンのリブート版「マン・オブ・スティール」などなど、アメリカンコミックヒーローやSF作品を「リアル」志向でリブートする系譜の作品と言えるんじゃないかと思います。

正直、観る前は正直「今更ターザン?」って思ってたんですが、いざ見てみると意外とちゃんとしてたし見ごたえもありましたよ。

CG技術の発達もあって、登場する動物たち、特にターザンと縁の深いゴリラの描写は超リアルだし、物語の合間に回想シーンで、ターザンの生い立ちやジェーンとの出会いなどを見せてくれる、ターザンを観た事がない人でも楽しめる親切設計。

ターザンが木の蔦を掴んでジャングルを飛び回るシーンや例の雄叫びのシーンは上がるし、映画序盤で映る、ジャングルで育ったターザンの大きな手をさらっと見せるディテールの細かさも良かったですねー。

武力を持って現地の部族の人々を奴隷にする先進国への文明批判というテーマも盛り込まれているし、時間も110分と丁度いい長さで、これといって欠点のない映画というか、非常に「優等生的な作品」と言えるんじゃないかと思います。

ただねー、だからと言って超面白いというわけでもなく、観ている間は楽しいけど、観終わったらすぐ内容を忘れちゃうような、イマイチ印象に残らない「ごく普通」の作品って感じなんですよねー。(´ε`;)ウーン…

キャスト陣

キャストは良かったです。

ターザン役のアレクサンダー・スカルスガルドは、細面の顔立ちや細マッチョ系の体がディズニーのターザンに近い感じがしたし、マーゴット・ロビーはハッキリした顔立ちと明るくて人懐っこく、それでいて理不尽に屈しない意志の強さを持つジェーン役によく合っていたと思います。

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ターザンの敵となる クリストフ・ヴァルツ演じるレオン・ロムは、それまで彼が演じた「イングロリアス・バスターズ」のハンス・ランダや、007 スペクターのフランツ・オーベルハウザー的な、一見紳士的な態度ながら決して油断出来ない曲者感があって、ターザンというキャラクターの敵役として申し分ない感じ。

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そして、劇中ターザンの理解者、ジョージ・ワシントン・ウィリアムズを演じるサミュエル・L・ジャクソンはコメディーリリーフとしても、また相棒役としてもいい仕事してましたよ。ただ、いつ彼が「あの言葉」を言うのかハラハラしましたがw

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良くなかったところ

じゃぁ、どこが良くなかったのかといえば、まず物語に差し込まれていく回想シーン。
ターザンやジェーンの背景を観客に知らせる大切なシーンではありますが、ちょっと長すぎて弛れる感じがしました。
回想シーンで本編の流れが途切れる事もあるし、説明過剰な感じがしたんですよねー。
逆に、ヒーロー映画として観た場合、上がるシーンが少ない感じも。
もちろん、劇中随所にかっこいいアクションシーンは盛り込まれるんですが、もっとこう、終盤で畳み掛けるようにターザンの強さやカッコ良さみたいのがあると観ているコッチもグッと上がったんじゃないかと思うんですよね。

まぁ、相手は銃を持った大軍だし、ターザン、部族、動物たちのチームプレー的な流れだったので、仕方ないのかもですけどね。

あと、物語に現代性を盛り込んで「リアル」を重視したことで、僕らがイメージするターザン的カッコ良さみたいなものが目減りしたようも思ったりもしました。

少々無理がある設定でも、ターザンの身体性や陽性な部分を全面に出したほうが、全体的に面白くなったんじゃないかなーって思いましたねー。

そこも作品のどこを見るかで評価の変わるところかもしれませんが。

というわけで、個人的には微妙な感想になってしまいましたが、ただ、前述したようにつまらなくはないし、観ている間は楽しい作品でしたよ。

興味のある方は是非!

 

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コーエン兄弟が描く映画愛に満ちたコメディー「ヘイル、シーザー」(2016)

ぷらすです。
今回ご紹介するのはオスカー常連のコーエン兄弟監督作品『ヘイル、シーザー』ですよー!1950年、黄金期から斜陽期に差し掛かるハリウッドの内幕を描いたコメディー映画です。

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あらすじと概要

オスカー常連のジョエル&イーサン・コーエン兄弟によるサスペンスコメディー。ハリウッド黄金期を舞台に、超大作映画の撮影中に誘拐された大スターを奪還すべく、スタジオに雇われた何でも屋による捜査を描く。ジョシュ・ブローリンジョージ・クルーニーチャニング・テイタムスカーレット・ヨハンソンフランシス・マクドーマンドら豪華キャストが出演。さらに、コーエン兄弟が新たに挑戦したスターたちによる華やかなミュージカルシーンも見どころ。

トーリー:1950年代のハリウッド。スタジオの命運を左右する超大作『ヘイル、シーザー!』の撮影中、世界的大スターの主演俳優ウィットロック(ジョージ・クルーニー)が何者かに誘拐されてしまう。事件解決を任されたスタジオの何でも屋(ジョシュ・ブローリン)は、魅力あふれる若手女優(スカーレット・ヨハンソン)や著名なミュージカルスター(チャニング・テイタム)ら個性豊かな俳優たちを巻き込み、ウィットロック奪還に向け奮闘する。(シネマトゥデイ より引用)

 

 

感想

ざっくりストーリー解説

テレビの普及によって、黄金期から斜陽期に差し掛かろうとしているハリウッドが舞台。巨大なスタジオを構える大手映画会社キャピタル・ピクチャーズの敏腕プロデューサー エディ・マニックスジョシュ・ブローリン)は、会社を守るため映画監督や俳優のスキャンダルをもみ消したり、映画の制作がスムーズに進むように早朝から深夜まで働く「何でも屋」

そんなある日、会社が社運をかけて制作していた超大作「ヘイル、シーザー!」の主役スター ベアード・ウィットロック(ジョージ・クルーニー)が何者かに誘拐されてしまう。というストーリー。

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こう書くとミステリー映画っぽいですが、本作はあくまでコメディー映画で、謎解き自体はぶっちゃけどうでもいいんですよね。

むしろ、ミュージカルや水中ショー(巨大プールで撮影されるミュージカル?)、西部劇、文芸作品に関わるキャストやスタッフが次々登場する群像劇と言ったほうがいいと思います。

さらに、本作ではそうしたハリウッド黄金期の作品をオマージュしつつ、撮影の様子やワンシーンを再現してみせたりしているんですね。

物語の時代背景

ただ、本作は観る前にある程度の時代背景や当時の映画業界が置かれた状況を知っていないと、楽しめないんじゃないかと思うんですね。

というわけで、ここで本作を観る前に抑えておいたほうが良いことを書こうと思います。

1・スタジオシステムの崩壊

当時のハリウッドは、大手映画会社がスタッフやキャストと専属契約を結んで映画を作っていたわけですが、1948年米国最高裁判所で10年越しのある判決が下ります。
それは劇場チェーンを映画会社本体から切り離すようにという判決で、つまりメジャー会社が製作・配給・上映を全部やっちゃうと、新規の会社が入れないからダメっていう、独占禁止法ですね。
この判決で、映画スタッフやキャストはひとつのスタジオに縛られることなく、色んな制作会社からオファーを受けることが出来るようになったんですね。

2・赤狩り
そしてこの頃、全米で冷戦による「赤狩り」が行われるわけです。
赤狩り」については先日書いた「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」でも書きましたが、ざっくり言えば米国内の共産党員や共産党シンパをあぶり出す動きですね。

本作でウィットロックを誘拐するのは、この「赤狩り」で仕事を失った10人の脚本家(ハリウッド10)です。
「トランボ~」では英雄的に描かれている彼らですが、この作品では旧ソ連と通じる間抜けな男たちとして描かれているんですねー。

3・テレビの台頭
そんなこんなが重なって、さらにテレビの普及も相まって映画産業は黄金期から急速に斜陽期へと向かっていこうとしている。
本作はそんな時代の、でも、まだまだ元気だったハリウッドメジャースタジオの内幕を描いているわけです。

ちなみに本作に登場するキャラクターには、それぞれモデルになった人物がいるらしいですよ。

豪華キャストによる名シーンの再現

そんな本作には主人公マニックスを演じるジョシュ・ブローリンを始めとして豪華キャストたちが出演し、ハリウッド黄金期の映画製作風景やワンシーンを再現しています。

映画撮影中に誘拐されるウィットロックを演じるのは、テレビや映画で活躍するジョージ・クルーニー
劇中、そんな彼が主演で撮影されている「ヘイル、シーザー」の元ネタになっている映画は「ベン・ハー」です。

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中盤、チャニング・テイタム扮する水夫役男優のミュージカルは、ジーン・ケリー
フランク・シナトラが出演する「錨を上げて」「踊る大紐育」のオマージュらしいです。
ここで、チャニング・テイタムは丸ごと一曲分のシーンでキレッキレのタップダンスを披露しています。当時のミュージカル映画の撮影法が分かるのも嬉しいですね。

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スカーレット・ヨハンソンが人魚の扮装で水中ショーを演じるシーンの元ネタは、当時の人気女優エスターウィリアムズ主演作「水着の女王」と「百萬弗の人魚」からのオマージュだそうです。

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そのシーンで水面を真上から撮影する手法は、バズビー・バークリーという人が開発した技術で、バークレー・ショットと呼ばれているらしいですよ。

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アルデン・エーレンライクが訛りのキツいカーボーイ役で歌う演じるシーンは、ロイ・ロジャースという役者のオマージュで、あの時の歌は「ザ・アリゾナ・キッド」という映画の劇中歌らしいです。

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あと、あのシーンで登場する3人は「トイ・ストーリー2」のウッディ、ジェシー、プロスペクターそっくりなので、「トイ・ストーリー2」の元ネタにもなってるのかもですねー。

思想や宗教をまとめて茶化して笑い飛ばすコーエン兄弟節(*ネタバレ)

本作のタイトルにもなっている「ヘイル、シーザー」は、ローマ兵がキリストに出会って改心するといういわば宗教的な映画。
なので、後々トラブルにならないようにユダヤ教カトリックプロテスタント神学者に脚本を読ませて意見を聞くというシーンがあって、そこで神学者たちがすったもんだ揉めたり、映画序盤で主演のウィットロックがハリウッド10にさらわれたり、後半ではチャニングテイタム演じるミュージカルスターがソ連の潜水艦に乗って亡命したり、「トランボ~」にも登場する、映画興行に強い影響を持つ双子のコラムニストがスターのスキャンダルを嗅ぎまわったり。

「何でも屋」のマニックスはそんな面倒くさい連中を相手に一つ一つ問題を解決していくキレ者なんですね。
で、キレ者ゆえにロッキード社からヘッドハンティングの誘いに悩みながらも結局は映画会社に残ることを決めます。

その裏には思想や宗教に固執して映画作りを邪魔する輩に対して「俺たち映画人にとっての神は映画だ」というコーエン兄弟のメッセージも隠れてるのかなーなんて思ったりしました。

そんな彼らの思いがマニックスというキャラクターに乗っかっていて、彼は一見映画を量産して利益を追求するだけの仕事人間のようですが、実は映画や映画業界を深く愛している男であることがラストで分かるんですね。

ハリウッドの現状を見れば、ネットドラマやテレビの有料チャンネルに押され、確実に“当たる”縛りの多い大作映画しか作れない状況。

そんな背景もあって、コーエン兄弟も含めた有名監督たちも次々にテレビやネットのドラマに活動の場を移していたりするわけですが、本作の映画を取り巻く時代背景は、まさにそんな現代と重なってるように見えるし、「ヘイル、シーザー」はそれでもやっぱり映画が好きなんだという、コーエン兄弟からハリウッドへのラブレターのようにも見えるんですよねー。

まぁ、そんなことはぶっちゃけどうでも良くて(え!?)、要するにハリウッドのスタジオを巡るドタバタの中で、主人公が「やっぱ俺、映画好きだし、面倒くさいけど業界のヤツらが好きだわ」って気づく映画です。

昔の映画のシーンを再現した映像は綺麗で楽しいし、バタバタしてるけど活気があふれている「古き良き」ハリウッドの現場の空気感を体感する「アトラクション的な映画」として楽しんでもいいんじゃないかなーなんて思いましたねー。

興味のある方は是非!!!

 

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ベン・アフレックの新たな当たり役!?「ザ・コンサルタント」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、日本では今年始めに公開され話題を呼んだベン・アフレック主演のアクション映画『ザ・コンサルタント』ですよー!

公開が「ドクター・ストレンジ」と被ってて、結局僕は「ドクター~」の方を選んだんですが、今回DVDで観て「あー、やっぱ劇場で観ればよかったー!」と後悔するくらい面白い映画でしたー!
で、今回は出来るだけネタバレは避けますが、それなりに内容に踏み込んだ感じになると思うので、情報入れたくない! という方は先にDVDを観てから、この感想を読んでくださいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

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あらすじと概要

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』でバットマンを演じたベン・アフレックが、複数の顔を持つアンチヒーローを体当たりで演じるアクション。夜な夜な巨悪に鉄槌を下す片田舎の会計士が、裏社会で壮絶なバトルを繰り広げる様子を映す。『ピッチ・パーフェクト』シリーズなどのアナ・ケンドリックや、『セッション』などのオスカー俳優J・K・シモンズらが共演。複雑なストーリー展開に手に汗握る。

トーリー:小さな町で会計士として働くクリスチャン(ベン・アフレック)のもとに、ある日大手企業からの財務調査のオファーが寄せられる。調査を進めるうちに彼は重大な不正を発見するが依頼は突然取り下げられ、それ以来クリスチャンは身の危険を感じるようになる。実は、彼は闇の社会の会計士として各国の危険人物の裏帳簿を握るすご腕の暗殺者だった。(シネマトゥディより引用)

 

感想

ベン・アフレックの新たな当たり役!? 二つの顔を持つニューヒーロー!

本作では『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』でクリスチャン・ベールに続く3代目バットマンを演じたベン・アフレックが、天才会計士と殺人マシーンという二つの顔を持つニューヒーローを演じています。

主人公クリスチャン・ウルフは先天的な「高機能自閉症」という設定で、両親とともにある施設を訪れます。

ここから続く冒頭のシーンで彼が障害を持っていること、後に会計士として天才的スキルを身に付ける素養があること、そして後に高い戦闘能力を身に付けることになる“原因”などがスマートに描かれていきます。

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そこから、物語は一気にジャンプ。クリスチャンが成長し有能な会計士として活躍する姿、ヒロイン役のディナ( アナ・ケンドリック)との出会いと、彼らが巻き込まれる事になる事件の概要、また同時進行で財務省捜査官のレイモンド・キング(J・Kシモンズ)とメディナ捜査官(シンシア・アダイ=ロビンソン)によって、クリスチャンの正体が徐々に解き明かされていくんですね。

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つまり、本作は現在進行形で事件に巻き込まれ解決に動くクリスチャンのパート、レイモンド&メディナによってクリスチャンの正体を探るパート、クリスチャン自身の回想で彼の過去を描くパートの三部構成が入り混じり、ストーリーが進むうちにクリスチャン・ウルフというキャラクターが立体的に浮かび上がる構成になっているわけです。

『障害』をエンターテイメントに取り込むこと

本作の主人公のクリスチャン・ウルフの高機能自閉症であるという設定については、賛否両論を呼んでいるようです。

確かに、彼の天才的な数学のスキルが自閉症に起因する集中力から来ているという設定は少々テンプレ的にも見えるし、戦闘スキルを習得する流れに対して否定的な意見が出るのもよく分かるんですよね。

軍人である父親は、彼が一人になっても困らないよう社会性を身に付け自分の身を守れるようにと、児童虐待的スパルタ“教育”を強いています。

その名残というか、クリスチャンは毎日のルーティーンとして、自室で点滅するフラッシュライトと大音量のロックを一定時間かけながら、木の棒で脛をゴリゴリするんですね。(多分、光や音のストレスに耐えるため脛に痛みを与えて紛らわしているんでしょう)
これは、激しい光や大きな音が苦手な自閉症の症状を克服するための手段として、父親に幼い頃からやらされていたんだということが分かります。

また、子供の頃の『特訓』も含め、本作では決してこうした父親のスパルタ教育を肯定的には描いていないんじゃないかと思いました。
その一方で、父親がクリスチャンに対し愛情がなかったというわけでもなく、むしろ父親なりの愛情が行き過ぎてしまった結果、親子の関係が歪んでしまったように描かれていて、その辺は個人的に、障害を持つ子と親の関係をフェアに描くことに細心の注意をはらっているんだろうなーって感じました。

事実大人になったクリスチャンは、一見普通に社会に溶け込んでいるようで、でも行動の端々でおかしな部分や異常性が垣間見えるという、父親から受けた恩恵と呪いの両面を体現するような歪んだキャラクターとして描かれていて、その上でそうした彼の歪なキャラクターと、その奥にある彼の人間性をエンターテイメントの中に上手く落とし込んでいるように思いました。

『効率』を求めるアクション

そんなクリスチャンの特徴はアクションシーンでも表現されています。
整理された、もしくは効率的で無駄がない事を好む彼の特性を現すように、アクションコーディネーターが目をつけたのは、インドネシアの格闘技シラット。
攻防一体となった格闘技を身につけたクリスチャンは効率的に敵を倒し、確実にヘッドショットで止めを刺していくんですね。また集中力という部分では、ライフルの名手であることが劇中で描かれています。

そして表の稼業である、映画序盤のほうで描かれている、会計士として彼がいかに優秀であるかの表現も非常に新鮮でしたねー。

本作のテーマ

しかし、そうしたアクションなどのエンターテイメント的要素は、本作ではあくまで観客の興味を持続させる要素であって、本作が本当に描きたかったテーマは多分「障害=不自由って決め付けるのは健常者の驕りじゃね?」っていうことなんじゃないかなって思うんですね。

人それぞれ長所短所の個性があるように、障害と僕ら健常者が決めつけている事は単に彼らの個性であって、そんな彼らの声を僕らは聞こうとしていないだけではないか?

というような事が、ラストの方で、クリスチャンが冒頭で連れてこられた施設の責任者のセリフで言っています。

そこまでの構成を見れば「作品のテーマをセリフで言わせるのはダサい」という事は製作者全員が分かった上で、あえてセリフにした事が分かります。
このシーンを観て僕は、スタッフがただのキャラ付けのために自閉症を扱ってるわけではないと思ったし、作り手としての誠実さを感じました。

ただ、こんな風に書くと、こうしたテーマ的な部分が前面に出た説教臭い映画ではないかと身構えられちゃうかもですが、そんなことは全く無くて、最後の最後、ずっと謎だった部分が気持ちよく解消されて、見ているこっちも「なるほど! そうだったのか!」とスッキリするし、単純に観ている間ハラハラドキドキして、最後には主人公のクリスチャン・ウルフが大好きになる超面白い作品でしたよ!

興味のある方は是非!!!

 

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ヌーヴェルバーグの旗手、ゴダールの長編デビュー作「勝手にしやがれ」(1960)*ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、現在の映画界や名監督たちに大きな影響を与えたヌーベルバーグの旗手、 ジャン=リュック・ゴダールの長編デビュー作勝手にしやがれですよー!

今まで何度となくその名前は聞いてたものの作品は未鑑だったんですが、先日ふと思い立って初めてレンタルしてきましたー!

で、今回は1960年の映画なのでネタバレは一切気にせずに書いていきます。
なので、ネタバレイヤンという方は、先に映画を観てからこの感想を読んでくださいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

 

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あらすじと概要

フランス、ヌーヴェル・ヴァーグの決定打と言わしめたジャン=リュック・ゴダール監督の最高傑作。警官を殺してパリに逃げて来た自転車泥棒のミシェルは、アメリカ人の恋人パトリシアとお互い自由で束縛のない関係を楽しんでいた。そんなある日、彼の元に警察の手が及んでくる。パトリシアはミシェルの愛を確かめる為、彼の居場所を警察に密告、そして彼にも同様に警察が追ってきた事を伝えるが……。(allcinema ONLINEより引用)

 

感想

ヌーベルバーグとは

ざっくり書くと、1950年代末にフランス映画界で起こったムーブメントのことです。助監督などの下積みなしにデビューした若い監督たちの作品で、低予算で映画を作るためにセットは使わずロケ撮影が中心。アフレコなしの同時録音、脚本に頼らない即興演出などなど、それまでの映画製作の常識をひっくり返したことから「新しい波=ヌーベルバーグ」と呼ばれるようになったそうです。

日本、香港、台湾、アメリカ、イギリスなどでも、その自由で革新的な作風に影響を受けた作品が数多く制作されたんだそうですよ。

で、そんなヌーベルバーグの旗手と言われたジャン=リュック・ゴダールも、元々は映画評論家から監督になった人で、本作がその長編デビュー作なんだそうです。

トーリー

本作を一言で言うと、クズ男が恋して裏切られて死ぬ話です。

本作の主人公ミシェル(ジャン=ポール・ベルモンド)は、ハンフリー・ボガードに憧れるプレイボーイの自動車泥棒で、盗んだ自動車でパリに向かう途中に白バイ警官を撃ち殺して指名手配中。

彼がパリに向かったのは、本気で惚れた? アメリカ人のパトリシア(ジーン・セバーグ)とローマに逃げるためですが、結局パトリシアに通報され、絶望して警察に射殺されてしまうというストーリーなんですねー。

で、このミシェル、お金がなくなるとガールフレンドを訪ねて借りようとしたり、断られるとガールフレンドが着替えてる間にお金を盗んだり、パトリシアをストーキングしたり部屋に勝手に忍び込んだりする中々困ったクズ男。

対するパトリシアはマスコミ志望の大学生で、新聞売りのバイトをしながら記者を目指す意識高い系のインテリなベリーショートの可愛い女の子です。

なので、ミシェルと二人でいるときも文学や映画、クラシック音楽の話をするんですが、ミシェルの方は「いいから脱げよ」の一点張りで、まったく話が噛み合わないんですね。

そして、映画の大半がこの二人の噛み合わない会話(というか双方人の話を聞かないで勝手に話してる感じ)のシーンです。
その「会話」の内容も、ポエムチックというか哲学的というかフランス映画っぽいというか(フランス映画ですが)、何か意味深で頭良さげなオシャレ禅問答って感じで、観ていても、まったく頭に入ってこなくってほんっっとぅぅに、つらいw

二回寝オチしては巻き戻してなんとか最後まで観ましたよ(o´Д`)=з

革新的な表現技法

本作は世界中の映画関係者や監督に大きな影響を与えました。
例えば日本ヌーベルバーグだったり、アメリカン・ニューシネマだったり、イギリス・ニューウェーブや香港ニューウェーブなどなど。

クエンティン・タランティーノも、本作(というかゴダール)に強い影響を受けているのは有名ですが、確かにミシェルとパトリシアが延々無駄話をしているシーンなんかは、タランティーノ脚本の「トゥルー・ロマンス」を連想しましたねー。。

また、今では当たり前に使われているジャンプカット、手持ちカメラでの街頭撮影、高感度フィルムを使うことで照明を使わずに撮影、即興演出、唐突なクローズアップ、役者が画面に向かって喋るなど、本作を始めとしたヌーベルバーグ作品から始まった技法も多いようです。

それまでは、スタジオにセットを作って、照明を当てて、据え置きのカメラの前で役者が芝居するのが当たり前だったようなので、初めて本作を観た観客はきっとかなりのショックを受けたんじゃないかと思いますねー。

上記の技法が当たり前になって、さらに洗練された使われ方をしている作品から観始めた僕から今観ると、「なんか大学の映研が作った映画みたい」って思っちゃうんですけどねw

例えるなら、浦沢直樹の「PLUTO/プルートゥ」を読んでから、手塚治虫の「地上最大のロボット」を読むような感じなんでしょうね。多分。

純愛映画

この作品、内容的には決して難解な作品ではないです。
要は、男と女のすれ違いを描いた作品で、アウトローな人生に疲れた男ミシェルが、本気で惚れた女パトリシアと共に生きようとして失恋するという普遍的な悲恋の物語なんですね。

そういうのは頭では理解出来るし、一見全然関係ない無駄話やシーンの中に、本作の確信に触れるワードがいくつも入っているというのは、むしろ現代的だと思いました。

ただ、それと感覚的に面白いかどうかは別の問題ですけどもw

そんな感じで、当時を知らない映画ファンが観るには、正直ちょっとキツい作品かもですが、映画史に興味のある人なら資料的な価値のある作品と言えるかもしれませんし、そうでなくても、案外好きな人は好きな作品なのかもですねー。

興味のある方は是非!

 

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note.mu

“役立たず”たちの逆転劇「バグズ・ライフ」(1999)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ピクサースタジオの長編劇場用アニメ2作目『バグズ・ライフ』ですよー!

僕はディズニーもピクサーもハマるのが遅くて、結構見逃している作品があったりするんですが、本作もまさにそんな一作で、実終わったあとは今まで観なかった事を後悔しましたよー!

 

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あらすじと概要

ホッパー率いるバッタ軍団におさめる食べ物を集めるため、重労働を強いられるアント・アイランドのアリたち。その収穫期の最中、発明家の働きアリ、フリックのミスからバッタ用の食料が川に流される事件が勃発。責任を感じたフリックは、バッタに対抗する助っ人を探しに、ひとり都会へ旅立った。そこで彼がスカウトしたのは、サーカスをクビになった芸人の集団。彼らを英雄と勘違いしたフリックと、新しい余興の仕事にありついたと勘違いしたサーカス虫たちは、意気揚々とアント・アイランドに引き上げてくるのだが……。(allcinema ONLINE より引用)

 

感想

映像クオリティーの進歩がスゴイ!

本作を観て、まず驚いたのが映像のクオリティーでした。
本作が全米公開されたのが1998年。「トイ・ストーリー」公開からわずか3年です。コンピューターやソフトの進歩もあるんでしょうが、草木や風、土など有機物の描写はまるで実写でしたよ!

特に驚いたのは、アリの主人公フリックがタンポポの綿毛に乗って乾季の干上がった川を渡るシーン。
綿毛の質感や軽さまでもほぼ完璧に表現されていて、ピクサー恐るべし! って思いましたねー!

役立たずな負け犬たちの逆転劇

そんな本作のストーリーをざっくり書くと、無法者のバッタから身を守るためバッタのために食べ物を集めて献上するアリたち。
しかし、ドジな発明家フリックが起こしたアクシデントで今まで集めた食べ物を全て失ってしまい、バッタと戦うために用心棒の虫を呼びに行くのだが……というお話。

つまり物語の骨格は西部劇「荒野の七人」です。西部劇好きなジョン・ラセター監督らしいチョイスです。

ところが、ある勘違いから田舎者のフリックが用心棒を頼んだのは売れないサーカス団の芸人たち。つまり偽物の英雄なんですが、彼らはアリたちとの交流を経て本当の英雄になっていくわけですが、こちらの流れはコメディー映画「サボテン・ブラザーズ」かな? まぁ「サボテン・ブラザース」も「荒野の七人」を元に作られたコメディー映画ですしねー。

そしてもちろん本作のモチーフになっているのは、童話の「アリとキリギリス」だし、描かれるテーマは「がんばれベアーズ」や「ロッキー」といった多くの映画で描かれている負け犬たちの逆転劇です。

そうした様々なモチーフをギュッとまとめて、非常に高いクオリティーのストーリーに練り上げたのが本作「バグズ・ライフ」なんですねー。

本作のメインキャラクターたちは、全員「役立たず」「負け犬」「厄介者」と見られ、コンプレックスを抱えています。

アントアイランドの王女・アッタ姫は、もうすぐ王位を継ぐ立場にあるものの、自分には統率力がないことにコンプレックスやプレッシャーを感じているし、羽が生えかけの妹ドット姫はアッタ姫や女王のように空が飛べないことがコンプレックス。

主人公フリックは、みんなの役に立ちたくて様々な発明品を作るものの、いつもドジばかりで厄介者扱いをされています。

そんなフリックが連れてきた用心棒たちは、三流サーカス団の三流芸人で人々の喝采とは程遠い荒れた生活をしていて、ついにはサーカス団から追い出されてしまうし、そもそもアリたちはそもそもバッタ軍団の横暴に立ち向かおうという発想すらなく、奴隷扱いされているんですよね。

本作はそんな虫けらの負け犬たち が、数々の偶然や勘違いと厄介者だけど前向きなフリックの行動力に引っ張られて少しづつ変わっていって、ついに勝利自己実現を手に入れるという、みんな大好きな王道の物語に西部劇のテイストと現代的味付けを加えて、大人も子供も楽しめる極上のエンターテイメント作品に仕上げたのです。
そこには絵や動き以上に、ストーリーありきなピクサーの姿勢があるし、だからこそピクサー作品は世界中の人に愛されているんだと思います。

伏線の上手さ

ピクサーの徹底したストーリー第一主義は有名ですが、それゆえスタッフ全員で練り上げるストーリーはいつも素晴らしく、特に伏線の張り方と回収の仕方はいつも感心させられてしまいます。

本作で言うと、冒頭・クライマックス前・終盤に登場する「石」のシークエンスですかね。冒頭シーンで例え話のために使われた石が、クライマックス前ではフリックを奮い立たせ、終盤では勘違いギャグの道具として上手く使われていて、ネタ振りから回収まで完璧だと思いましたねー。

とまれ、97分という今の映画としては短い時間の中に、色んな要素のギュッと詰まったとても面白い作品でしたよー!

興味のある方は是非!

 

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弾圧と戦い続けた脚本家の物語「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(2016)*ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは米国の脚本家ダルトン・トランボの半生を描いた伝記映画
『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』ですよー!

アメリカの脚本家ダルトン・トランボが、マッカーシズム・いわゆる赤狩りによって逮捕されてから、アカデミー賞で自身の名前を刻んだオスカー像を受け取るまでの28年間を描いた作品です。

本作は事実に基づいた伝記映画なので感想にはネタバレも含まれてしまいます。
なので本作をこれから観る予定の方は、映画のあとに感想を読んで下さいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

ローマの休日』『ジョニーは戦場へ行った』などの名作を手掛けてきた脚本家ダルトン・トランボの半生を描く伝記映画。東西冷戦下のアメリカで起きた赤狩りにより映画界から追放されながらも偽名で執筆を続けたトランボを、テレビドラマ「ブレイキング・バッド」シリーズなどのブライアン・クランストンが演じる。共演は『運命の女』などのダイアン・レイン、『SOMEWHERE』などのエル・ファニング、オスカー女優ヘレン・ミレンら。監督を、『ミート・ザ・ペアレンツ』シリーズなどのジェイ・ローチが務める。

トーリー:『恋愛手帖』で第13回アカデミー賞脚色賞にノミネートされ、着実にキャリアを積んできたダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)。しかし、第2次世界大戦後の冷戦下に起きた赤狩りの標的となり、下院非米活動委員会への協力を拒否したことで投獄されてしまう。釈放後、彼は偽名で執筆を続け、『ローマの休日』をはじめ数々の傑作を世に送り出す。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

マッカーシズム赤狩り)とは

ざっくり言うと、第二次世界大戦後、冷戦初期の1948年頃より1950年代前半にかけて行われたアメリカ保守派による共産党員、および共産党シンパと見られる人々の排除の動きのことです。

下院議員で積極的に「赤狩り」を進めた共和党右派のジョセフ・マッカーシー上院議員の名をとって、この名がつけられました。

ハリウッドでも多くのアメリカ共産党員・共産党シンパが「ブラックリスト」に入れられ、仕事や家族を失うこととなり、中には自殺してしまった人もいたようです。

本作の主人公ダルトン・トランボもアメリカ共産党員で、映画スタッフの賃上げストライキなどのリーダーとして活動していたことから保守派に目をつけられ、反共キャンペーン下院非米活動委員会による第1回聴聞会に仲間らとともに呼ばれます。

この様子はテレビやラジオで中継され、仲間の名前を明かすことを迫られるわけですが、トランボを含む10人の脚本家(ハリウッド10)は仲間の名前を言わず、議会侮辱罪で逮捕され、禁固刑の実刑判決を受けてしまいます。

さらに出所後もジョン・ウェインらを筆頭とする「アメリカの理想を守る映画連盟」という組織の監視を受け、ハリウッドから完全に干されてしまうんですね。

そこでトランボは、『ローマの休日』の脚本を仲間の名前で売り込み、B級専門の映画会社キング・ブラザーズ社で多くの脚本の手直しをするスプリクト・ドクター兼脚本家として偽名を使って仕事をこなす日々を送り、やがて『スパルタカス』『栄光への脱出』で実名でクレジットされていくのです。

有名人が実名で登場

で、そんな本作では色んな有名人が実名で登場します。
「アメリカの理想を守る映画連盟」のジョン・ウェイン( デヴィッド・ジェームズ・エリオット)
元ハリウッド女優で劇中トランボの宿敵となるゴシップ記者のヘッダ・ホッパー( ヘレン・ミレン

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画像出典元URL:http://eiga.com /イヤーなババアヘッダ・ホッパー役の ヘレン・ミレン

スパルタカス』で主役兼制作で、トランボの救世主となったカーク・ダグラス( ディーン・オゴーマン)
などなど。

なので「え、この人にそんな過去が!? とか、この人ってそんな人だったの!?」 と驚くことも。
また、非米活動委員会審問会のテレビ映像や劇中で流れる映画など、当時の映像がふんだんに使われていて、それらの映像から当時のアメリカの空気感が伝わって来るんですよね。

そして、それぞれ実在の人物を演じた役者陣の演技も素晴らしく、とくに主役のトランボを演じたブライアン・クランストンの飄々とした演技や、宿敵ヘッダ・ホッパーを演じたヘレン・ミレンの実に憎々しい演技は素晴らしかったですねー!

思想弾圧という全体的に重いテーマながら、観ていて重苦しい気持ちにならないのは、ブライアン・クランストンの演技が大きいような気がします。

本作の真の主役

本作の主役はタイトル通りダルトン・トランボだし、物語は彼の視線で描かれていくわけですが、実はこの映画は「赤狩り」という潮流の被害者・加害者となってしまった映画関係者たちの群像劇なんですね。

なので、真の主役は「赤狩り」という潮流そのものなのかなーなんて思ったりしました。
アメリカの保守派の人たちは本作に対して、「トランボの(故意に)思想やアメリカ共産党員としての行動を描いていない」的なバッシングをしたそうで、確かに本作ではトランボ自身が英雄的に描かれすぎのようにも見えます。

ただ、前述したように、本作のテーマは思想の違いによるレッテル貼りだったり、冷戦時代の集団ヒステリー状態からくる「赤狩り」という個々人の思想や考えの違いを踏み潰して平らにならしてしまう「大きな流れ」に対する警告だと思うので、左右派閥の思想云々で語るのは筋が違うと思うし、アメリカだけの話ではなく、昨今の日本を含む世界的な問題をトランボという人物を通して描いているんじゃないかと思いました。

ラストシーンで、オスカーを獲ったトランボの演説は、そうした大きな流れに対しての一つの回答で、それまであまり感情的な言動のなかったトランボが、声を震わせながら語る言葉に、思わず胸が熱くなってしまったし、まさに今だから観るべき映画なんじゃないかと思いました。

興味のある方は是非!!!

 

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中二アクションてんこ盛り!「ヒットマン エージェント47 」(2015/日本劇場未公開)*ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、スーツとネクタイにシルバーの二丁拳銃で敵をバンバンやっつける『ヒットマン エージェント47 』ですよー!

設定、ストーリー、アクション全てが中二心満載の、まるでマンガかアニメのような作品でしたよ(´∀`)

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画像出典元URL:http://www.amazon.co.jp/

あらすじと概要

人気ゲーム「ヒットマン」を映画化し、DNA操作により生み出された史上最高の暗殺者、エージェント47の戦いを描いたアクションサスペンス。何の感情も恐怖心も抱かず、与えられたミッションを完璧に遂行する暗殺者のエージェント47は、48時間以内にカティアという女性を見つけるという新しい任務を与えられるが、カティアのもとには別の組織からも男が送り込まれていた。47と男は激しい銃撃戦を繰り広げ、カティアはどちらが敵なのか味方なのかもわからないまま、危険な事態に巻き込まれていく。ブラックスーツで華麗に戦う47を演じたのは、テレビシリーズ「HOMELAND ホームランド」のルパート・フレンド。「スター・トレック」のザッカリー・クイント、イギリスの若手女優ハンナ・ウェアが共演。(映画.comより引用)

 

感想

人気ゲームが原作

この映画、全編通してマンガみたいな設定なんですが、原作となったのは「ヒットマン」という人気ゲームだそうで、そう聞けばバリバリ中二全開設定にも納得でした。

黒のスーツに白ワイシャツ、赤いネクタイにシルバーの二丁拳銃を持ち、坊主頭の後頭部にはバーコードがついた完全無欠の殺し屋、エージェント「47」(ルパート・フレンド)が主人公。

実は一度2007年に一度実写化されていて、本作はその続編ではなくリブート作品になっているんですね。

ざっくりストーリー紹介

ざっくりとストーリーを書くと……あ、*ここからネタバレになるのでこれから本作を観ようかなという方は映画のあとに続きをお読みください。

 

超絶強い改造人間暗殺者のエージェント47は、組織の任務でカティア(ハンナ・ウェア)という女性を探しています。

このカティアは、47の生みの親でDNAを操作した超強い暗殺者軍団を作る計画のリーダー・リトヴェンコの娘で、独自に父親を探しているんですね。

そんな彼女に近づいてきたのが、ジョン・スミス(ザッカリー・クイント)と名乗るで、彼女の命を狙う47から守ると言われ、半信半疑ながらもカティアはスミスと行動を共にすることに。
と、そこに47が現れ……という「ターミネーター」的なスタートなんですが、実はスミスはリトヴェンコの研究を狙う組織のエージェントで、47はスミスの組織のボスを暗殺するのが任務だったんですねー。

さらにカティアも47と同類のスーパー人間で、二人で協力して悪の組織を倒すという物語です。

キャラクターの中二感がスゴイ!

まぁそんな感じでスーパー人間によるスーパーアクションが繰り広げられるわけですが、DNA操作によって超絶強い暗殺者になった47、実は47の後にリトヴェンコよって作られたカティア、そして敵のクローン人間ジョン・スミスはそれぞれに特徴が違っていて、47は身体能力、反射能力、頭脳がそれぞれレベルアップ。

カティアも同じですが、彼女の場合はさらに聴力と視力? のアップで少し先の未来を予測できる? 能力があります。

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そして敵のジョン・スミスは、皮膚と筋肉に間に刃物や弾丸を通さない“何か”が仕込まれているっていうね。

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画像出典元URL:http://eiga.com

もうね、何でもアリですよ!w

また、劇中冒頭では能力を自覚しつつも、まだ目覚めていないカティアを、47が荒療治で目覚めさせ、成長させる師匠的な立ち位置でもあります。

アクションてんこ盛り!

そんなメンバーが揃えば、当然アクションシーンてんこ盛りの映画になるわけで、本作は劇中のほとんどがアクションで構成されています。

それも近年流行りのリアル志向のアクションではなく、一昔前に流行った「マトリックス」やリュック・ベッソン監督的な、中二全開のカッコイイアクションです。

ちなみに、本作を観ながら「リュック・ベッソンの映画みたい」って思ったら、2007年版の方ではベッソンが制作で関わってましたよw

シルバーの二丁拳銃を超絶カッコイイ感じで撃ちまくる47。打撃・投げ・関節技・ナイフや暗器などでサクサク敵を殺しまくる47。カティアと連携しながら敵を殺しまくる47。

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画像出典元URL:http://eiga.com

そんなにもアクション満載なのに、途中で飽きないのはそれぞれのアクションシーンにコーディネーターがしっかりバリエーションをつけて、ワンパターンにならないように気をつけているからだと思いました。また、キャラクターごとに、少しづつ戦い方の特徴があるんですよね。

アクションそのものは一昔前に流行った、スロー・チャカチャカ・スロー・チャカチャカ系アクションなんですが、そんなにダサい感じがしなかったのは、スローの使い所が上手かったからなんじゃないかなと。

カッコイイは正義

そんなクション以外のシーン、例えば47の登場シーンとかアクションの決めのシーンとか、とにかく随所に中二感満載のカコイイ画面がジャンジャン出てくるので、心に中二男子を飼っている僕みたいなボンクラ映画ファンにはたまらない作品なのです。

これが中途半端にリアル志向な部分を入れたりしてたら、鼻持ちならない嫌な感じになってたと思うんですが、リアリティーとかどーでもいいんだよー! という監督やスタッフの声が聞こえてきそうな、カッコよさだけを追求したマンガ的アクションや画面に振り切ったところに、「そんな馬鹿なw」と思うながらも燃えてしまうんですよねー!

あと、一見大味に見えて、案外細かいディテールにも気を配っていて、何が起こっているのか混乱しないようにしてるのも好感が持てましたねー。

その分、ストーリーの方はどこかで見たような新鮮味のない展開が続きますが、誰がカティアの味方なのか分からないようにしている序盤はわりとハラハラして良かったです。

全体的に見れば、決して傑作とは呼べない作品ではありますが、きっと好きな人は好きだと思うし、個人的にはかなり楽しめた作品でしたよー!

興味のある方は是非!!

 

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