今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

香港版“バットマン”「イップ・マン外伝 マスターZ」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ドニー・イェンが伝説の武術家葉門(イップ・マン)演じる“正統”「イップ・マン」シリーズの外伝『イップ・マン外伝/マスターZ』ですよー!

主役は前作「~継承」でイップマンと正統詠春拳を掛けて戦い敗れたチョン・ティンチ(マックス・チャン)です。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90599/photo/a412073a8225cec5.jpg?01549930046

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

『イップ・マン 継承』でイップ・マン相手に激闘を繰り広げたチョン・ティンチを主人公にした、『イップ・マン』シリーズの番外編。武術界を去った彼が、ヘロイン密売に手を染める組織の幹部に立ち向かう。メガホンを取るのは『ドランク・モンキー/酔拳』などのユエン・ウーピン。『ドラゴン×マッハ!』のマックス・チャンとトニー・ジャー、『ブッシュウィック -武装都市-』などのデイヴ・バウティスタらが出演する。(シネマトゥデイより引用)

感想

チョン・ティンチ=バットマン

葉門(イップ・マン)は、ブルース・リーの師匠としても有名な詠春拳の使い手にして実在のカンフーマスター。
そんなイップ・マンを「ローグワン」にも出演したアクションスターのドニー・イェンが演じたのが「イップ・マン」シリーズで、これまで「序章」「葉門」「継承」の3本が公開されています。
その3作目「継承」で、“正統”詠春拳詠春拳にはいくつもの流派があるらしい)の座を掛けてイップ・マンに挑むのが、マックス・チャン演じるチョン・ティンチ。

本作はイップ・マンに敗れたチョン・ティンチの“その後”を描いたスピンオフ作品なんですね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90599/photo/09e8e808cebfc5ae/640.jpg?01547535557

画像出典元URL:http://eiga.com

イップマンに敗れたあと道場を畳んで姿を消した彼は、裏社会で働いていたんですが、そこには「女・子供・善人」ではなく、悪党相手の仕事だけを引き受けるという彼なりのルールがあるんですね。必殺仕事人的な感じですかね。

その後、“普通の暮らし”をするため裏社会から足を洗った彼は、小さな食料品店を開き息子と二人で慎ましい生活を送るんですが、そんなある日、地元のマフィアのキット(ケビン・チェン)からバーの歌手であるジュリアリウ・イエン)とホステスのナナクリッシー・チャウ)を救った事がキッカケで恨みを買い、店(兼自宅)を焼かれてしまいます。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90599/photo/5ddd720cb6d6ec50/640.jpg?01548720052

画像出典元URL:http://eiga.com

 

一方、香港の裏社会を牛耳る地元マフィアの女ボス、ツオ・クワンミシェル・ヨー)は、裏稼業をやめて一般企業へ組織を改善しようとしているんですが、仲間や、香港を支配する英国人バイヤーと組んでヘロインの密売を始める弟のキットに頭を悩ませているんですね。

店を焼かれたチョン・ティンチは、ジュリアの好意で家に住まわせて貰い、彼女の兄フー(シン・ユー)が経営するバーでウェイターの仕事も世話して貰うんですが、最初は中国人に横暴な態度を取る英国人に対して不遜な態度を取ったり、店に火をつけたキットへの報復として彼が経営する阿片窟に火を放ったり。

しかし、その後はジュリアやフーたちとの付き合いを経て、やがて本当の“家族”のようになっていくんですが、そんな彼らの居場所である飲み屋街に、キットの魔の手が迫り――という物語。

カンフーマスターとして、香港の英雄となったイップ・マンは香港の正統派ヒーロー。
いわばスーパーマンで、対するチョン・ティンチは本作で、清濁を併せ持つダークヒーロー、バットマンとして描かれています。

それは劇中、彼が息子の誕生日に送るスーパーヒーロー「ブラック・バット」のオルゴールを見れば一目瞭然で、色味こそ違うものの明らかにバットマンを意識したデザインなんですよね。

これはつまり「彼はバットマン=ダークヒーローですよ」という製作者側の目配せなのです。

負け犬の復活劇

同時に本作は「負け犬の復活劇」でもあります。
イップ・マンとの対決で敗れたチョン・ティンチは、一時は詠春拳を捨てて闇に身を沈めるも、再び陽のあたる生活を夢見て裏社会を辞め、息子と二人慎ましいカタギの生活を送る。けれど、マフィアによって再び“夜の世界”に引き戻されてしまうんですよね。

そして、そこで出会った人々との交流が彼の頑なな心の扉を開き、マフィアや麻薬ディーラーとの戦いを通して、一度は捨てた武術家の魂を取り戻すまでを描いているのです。

前作「イップ・マン/継承」が“最愛の人を失う物語”だった事を考えれば、“失ったものを取り戻す”本作はまさに「~継承」とコインの裏表のような物語と言えるかもしれません。

手技のディテールにこだわった格闘シーン

そんな本作の白眉は、やはり何といってもカンフーアクション。
詠春拳の特徴は圧倒的な手技のバリエーションで、それ自体はこれまでのシリーズでも描かれていますが、本作ではより手技のディテールの描写にこだわった画作りがされているんですね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90599/photo/150ccfd62902f8b7/640.jpg?01550735567

画像出典元URL:http://eiga.com

そして手技のバリエーション描写で、イップ・マンとの流派の違いや、もっと言えばイップ・マンとチョン・ティンチの立ち位置や性格の違いをも表現しているのです。

その分、スローモーションや手のアップが増えて、ややテンポが悪くなった感は否めないし、ドニー・イェンに比べると一連の動きでカットを割るシーンも多いんですけどね。

ただ、冒頭で壊れていた“ブラック・バットのオルゴール”が動き始めると同時に、ラスボス相手にチョン・ティンチがついに封印していた詠春拳を使うという一連のクライマックスは「あざといなー」と思いつつも、やっぱり燃えずにはいられませんよね!!

https://eiga.k-img.com/images/movie/90599/photo/0d495030406d7d0a/640.jpg?01551319407

画像出典元URL:http://eiga.com /  「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のデイブ・バティスタも出演

また、キャストの方も豪華で、「マッハ!!!!」のトニー・ジャーや、「クレイジー・リッチ!」などハリウッドでも活躍しているミシェル・ヨー
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のドラックス役や「ブレードランナー 2049」にも出演している元プロレスラーのデイブ・バティスタなどなど、そうそうたるメンバーが出演していて、個人的には大満足な作品でしたねー!

興味のある方は是非!!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

もっと早く出会いたかった作品「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」(1999)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、1997年公開のドイツ映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』ですよー!

この作品、生涯ベストに挙げる人も多いんですが、実際観たら確かにその気持ちは分かるなーって思いました。
もし僕ももっと早く出会っていたら、「生涯ベスト級の一本」になっていたかもしれない。そんな映画でした。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/81fB6WlUcsL._SL1500_.jpg

画像出典元URL:http://www.amazon.co.jp

概要

本国ドイツで大ヒットとなったアクション・ロード・ムービー。余命わずかと宣告され、たまたま末期病棟の同室に入院させられたマーチンとルディ。二人は死ぬ前に海を見るために病棟を抜け出し、ベンツを盗んで最後の冒険へと出発した。その車がギャングのもので、中に大金が積まれていたことも知らずに……。道中、残り少ない命の彼らに怖いものなどなく、犯罪を繰り返し、ギャングのみならず、警察からも追われる身になるのだが……。(allcinema ONLINEより引用)

感想

ザ・90年代な映画

検査に来た病院で、余命幾ばくもないと宣告されて同室に入院することになったマーチン(ティル・シュヴァイガー)とルディ(ヤン・ヨーゼフ・リーファース)。
まだ海を見たことがないというルディに、マーチンは「天国ではみんな海の話をする」と切り出し、二人で病院を抜け出して海を見に行く事になります。

そのための“足”として盗んだベンツはなんとギャングの車で、トランクにはボスへの上納金が入っていたからさぁ大変。

そんな事とは露知らず、二人はダッシュボードに入っていた拳銃を手にガソリンスタンドと銀行を襲い、その金で豪華な服を買い高級ホテルに泊まり娼館にも行っちゃう。

元より、いつ死んでもおかしくない病気(マーチンは脳に腫瘍、ルディは骨肉腫)の二人には怖いものなどなく、顔も素性も隠すことなく犯罪を続けたため、警察とギャング双方から追われるハメに――というストーリー。

この映画、基本的にはノワールコメディのロードムービーなんですが、二人の余命が残りわずかだという設定が冒頭にで提示されていることで、ある意味でニューシネマ的な味わいも併せ持っています。

また、カットの撮り方や編集のテンポ、ボブ・デュランの同名曲をドイツのバンド「Selig」がカバーした主題歌を始めとした音楽の使い方なんかは、ダニー・ボイルの「トレイン・スポッティング」に近く、いわゆるタランティーノ以降のザ・90年代映画の「悲劇的な物語を笑いを交えてポップに描く」という文脈で作られていて、この作品を感受性の高い10代~20代前半で食らった人が「生涯ベスト!」って言うのも納得でした。

ストーリーの方はイギリスやハリウッド映画ほどドライではなく、どちらかといえばエモーション高めで、その辺も日本人好みなのかなって思ったりしましたねー。

最後の時を誰とどこで迎えるか

冒頭、同じ病室に入院することになったマーチンとルディ。
ヘビースモーカーで不良っぽいマーチンに対してルディは真面目な男で、劇中でハッキリとは描かれないけど、恐らくは対照的な人生を送ってきたであろう事が分かる。
まぁ、普通の状態だったら絶対友達にはならないだろう二人ですが、お互いガンで余命わずかという共通点がお互いの距離を一気に縮めるわけです。

そして、何故かたまたま病室に隠されていたテキーラを見つけた二人は、それを飲んですっかり酔っ払って、その時に前述した「天国の話」になる。

生まれてから一度も海を見たことがないというルディに、マーチンは「それじゃぁ天国の話題についていけない」といい、二人で病院を抜け出して海を見に行こうと誘います。

多分、この話は口からでまかせで、病室のベッドで死んだように最後の時を待つ事が受け入れられなくて逃げ出したかっただけ。

だから本当は海じゃなく山でも川でも良かったんですよね。
それはルディも一緒で、だから二人は(酔いに任せて)病院を抜け出し、盗んだベンツで走り出すわけです。

病院のベッドで死を待つくらいなら、せめて最後くらいは好きなように“生きたい”し、最後をどこで迎えるかも自分で決めたい。

でも一人ぼっちで最後を迎えるのは怖い。最後を看取ってくれる“誰か”と一緒にいたい。

マーチンはそう思ってルディを(強引に)誘ったし、ルディもそんなマーチンの気持ちが分かっているから、マーチンに最後までつきあったのでしょう。

その無鉄砲とも言える彼らの行動はに、間抜けなギャングの二人が絡むことで物語は思いもよらない方向へと転がっていき、マーチンとルディの行き当たりばったりな行動に振り回される警察との三すくみのスラップスティックな物語になっていくんですね。

今の僕が本作にそこまで共鳴出来ないは、年齢的に今の僕の死生観と劇中の二人の死生観との間には深い溝があって、だから最後の瞬間まで“生きよう”と藻掻く彼らを羨ましく思いながらも、どこかで一抹の寂しさとノスタルジーを感じてしまう自分もいるのです。“あの頃の自分”もこんなふうに思っていたなと。

そう考えると、映画にはそれぞれ出会うべき年齢があって、本作に関して言えば、もちろん今観ても良い映画なんだけど、出来ればもっと早く出逢いたかったなーって思った次第です。

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

 

ホブスとショウがバディを組む!?「ワイルド・スピード/スーパーコンボ」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、あの「ワイルド・スピード」シリーズの人気キャラ、ルーク・ホブスとデッカード・ショウが主人公のスピンオフ作品『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』ですよー!

いまやハリウッドを代表するニ大ハゲマッチョ、ロック様ことドウェイン・ジョンソンジェイソン・ステイサムがW主演、しかもバディ映画ですからね!

これはもう、ワイスピファンならずとも注目の作品だと思うし、僕もワクワクしながら観に行ったんですが、結論から言うと正直物足りなさが残る出来でしたねー。

というわけで、今回はまだ公開されたばかりの作品なので、出来るだけネタバレしないように気をつけて書きますけど、これから本作を観る予定の人やネタバレは絶対に嫌!って人は、先に映画の方を観てから、この感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

https://eiga.k-img.com/images/movie/90367/photo/76f925e3119d3e62.jpg?1562920824

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

世界的ヒットを記録してきたアクション『ワイルド・スピード』シリーズの通算9作目。元FBI捜査官のルーク・ホブスと元MI6エージェントのデッカード・ショウが組み、敵に立ち向かう。監督は『デッドプール2』などのデヴィッド・リーチ。ホブス役のドウェイン・ジョンソン、ショウ役のジェイソン・ステイサムのほか、敵役として『マイティ・ソー』シリーズなどのイドリス・エルバらが出演する。(シネマトゥディより引用)

感想

ハリウッドが誇る2大怪獣が共闘!

今やハリウッドを牽引する2大アクションスター、ドウェイン・ジョンソンジェイソン・ステイサム

https://eiga.k-img.com/images/movie/90367/photo/7c49f567e570d3a1/640.jpg?1564706396

画像出典元URL:http://eiga.com

後の作品では、片や巨大ゴリラと組んで怪獣2匹を退治し、片やナイフ1丁で超巨大ザメを屠る。そんな最強の二人が初めて共演を果たしたのが「ワイルド・スピード」シリーズ7作目となる「~ SKY MISSION」です。

あのロック様とステイサムの共演。しかも直接対決ということでそれはもう大興奮したものですよ。

プロレス仕込みのパワーファイトが売りのロック様と、カンフーベースのアクションを繰り出すステイサム。

仮面ライダーで言えば技の1号(ステイサム)、力の2号(ロック様)、怪獣映画で言えばゴジラ(ロック様)対キングギドラ(ステイサム)。

続く前作「~ICE BREAK」ではお互い敵対しながらも共闘してシャーリーズ・セロンの野望を打ち砕き、そして本作で(スピンオフながら)ついに二人がメインを張る事になったんですね。

しかも今回の敵は「ダークタワー」「パシフィック・リム」「マイティー・ソー」シリーズでもお馴染みイドリス・エルバですからね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90367/photo/637b2ebcf2813bd2/640.jpg?1559120892

画像出典元URL:http://eiga.com

アクション映画好きとしては期待せずにはいられない作品というわけです。

荒唐無稽、支離滅裂なストーリー

映画冒頭、MI6女性エージェントのハッティ(ヴァネッサ・カービー)は、任務中に謎の男ブリクストン(イドリス・エルバ)の手に、世界を危機に陥れるウィルスを渡さないため、自分にウィルスを注射して逃走します。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90367/photo/087b99a6cbc5dcd7/640.jpg?1564626965

画像出典元URL:http://eiga.com

一方、ロサンゼルスで娘・サマンサと暮らす元DSS特別捜査官のルーク・ホブスドウェイン・ジョンソン)と、ロンドンで優雅な生活を送る元MI6エージェントのデッカード・ショウジェイソン・ステイサム)は、CIAから“仲間を殺してウィルスを奪ったハッティ”の捜索を以来されるんですね。

互いを嫌っているホブスとショウは、コンビを組む事を断固拒否するも、ウイルス回収を最優先するため、やむなくコンビを組む事に――というストーリー。

ちなみに、MI6のハッティのフルネームはハッティ・ショウ
デッカードの妹です。
そして、ウィルスを手に入れるため3人を執拗に追うブリクストンは、“人類救済”を掲げてウィルスによって弱者や自分たちに逆らう者たちを抹殺しようと企むカルト集団エティオンのメンバーで、エティオンが作り出した“強化人間”(というか実質サイボーグ)なんですね。

………いや、ちょっと色々分からないことだらけで、どこから突っこめばいいのか。

まず、エティオンなる組織が人類を改造し進化させようとしていて、弱者や自分たちに逆らうものを抹殺しようとしている。ここは分かる。

でも、ウィルスを拡散したら人類絶滅しちゃうんだよね?っていう。

さらに、ハッティはウィルスを敵の手から守るため自分の体に注入するわけですが、まぁ、注入から発症拡散まで72時間の猶予があるってのはいいとして、体からウィルスを取り出す方法ってのが、謎の装置で血液からウィルスだけを吸い出すっていう無茶苦茶な設定。何か色々理屈はつけていたものの、いや、何かもう何でもアリかよっていうね。

まぁ、100歩譲ってそこはいいとして、中盤に出てくるエティオンの基地?が超でかいうえに、そのバカでかい基地を使って何をしているのかもよく分からないのです。

しかし、組織としての力はかなりあるようで、情報捜査でハッティやホブズ&ショウをあっという間に犯罪者に仕立てあげたり。

それに対して3人は、謎の技術で別人になりすまして普通に移動したりするし、あれだけ目立つ2人を見ても、だれもホブス&ショウとは気づかない。
なので、3人が指名手配されていてもまったく緊張感が生まれないのです。

なんか小学生男子が思いつきで書いたストーリーみたいなんですよねーw

具体的に敵がどういう組織で何をしようとしているかの詳細はまったく考えてなくて、場当たり的に雰囲気だけで乗り切ろうとしてるというか。

まぁ、それを言い出したら「ワイスピ」全部、そんな感じではあるんですが、ただね、確かに荒唐無稽ではあるけど、最低限のリアリティーラインや理屈、最低限の説得力はあって、だからこそ車で巨大金庫を引っ張り回しても、車でスカイダイビングしても、車で潜水艦に勝っても、(その無茶苦茶さにゲラゲラ笑いながらも)物語に乗れたんですよね。

ところが、本作は最初から最後まで全部雰囲気だけで乗り切ろうとしてるので、上手く物語には乗れないんですよ。

アクションシーン

とはいえ、ドウェイン・ジョンソンジェイソン・ステイサムW主演の映画なんだから、大事なのはアクションでしょ。って話で、じゃぁ肝心のアクションはどうかと言えば、まぁ、ワイスピだなと。

いや、面白いんですよ。

ホブスとデッカードそれぞれのアクションを対比で見せたり、街中や敵の基地での大迫力のカーチェイスとか、クライマックスの車とヘリの綱引きとか。

確かに面白いんだけど、どれもワイスピで見たようなアクションで、そうなると逆にドムたちチームの仲間がいないのが物足りなく感じてしまうというか。

ホブズ&ショウの二人の物語なのだから、むしろワイスピでは観れないような独自のアクションを期待していただけに、ちょっと残念でした。

ホブス家&ショウ家

そんな本作はホブスとショウの“ファミリー”の物語になっています。
この場合の“ファミリー”は、ワイスピシリーズの「擬似家族」的ファミリーではなく、血の繋がった「家族」のこと。

前作でも登場した刑務所に収監されているデッカードのママ、マグダレーン・ショウ(ヘレン・ミラン)と妹のハッティ、対してホブスは愛する娘サムエリアナ・スア)とLAで暮らしているけど、実はある確執から実の家族には長年合っていない事が明らかになります。
そんなホブスたちがピンチに陥った時に頼るのが、サモアに住む実の家族なんですね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90367/photo/85227854c4390364/640.jpg?1564706397

画像出典元URL:http://eiga.com / 鈍器で敵と戦うホブス一族のみなさん

本作の原題は「ホブス&ショウ」
これはそのまま、ルーク・ホブスとデッカード・ショウ二人の物語という意味ですが、もう一つホブス家とショウ家の物語というダブル・ミーニングなのかなと思いました。

ラストで、娘のサムとホブスママ(ロリ・ペレニース・ツイサーノ)が初めて抱き合うシーンは、思わずウルっときてしまいましたよ。

というわけで、個人的には期待通りとはいかず、正直残念な部分も多い作品でしたが、もちろん楽しい部分も沢山あったし、あの俳優もCIA役で登場しドウェイン・ジョンソンと絡んでいたりして、「これはもしかしてワイスピファミリー入り?もしくは“あの映画”にドウェイン・ジョンソンが出る伏線?」なんて今後が楽しみになりましたよ。

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

orera.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

 

 

デイミアン・チャゼル極まれり!「ファースト・マン」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「セッション」「ラ・ラ・ランドデイミアン・チャゼル監督最新作ファースト・マンですよー!

僕のチャゼル監督の印象は「迫っ苦しい映画を作る人」だったんですが、本作はまさにそんなデイミアン・チャゼルが極まった感じの作品でしたねーw

https://eiga.k-img.com/images/movie/88164/photo/a9736c7693483078.jpg?1542068976

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督とライアン・ゴズリングが再び組んだ伝記ドラマ。人類初の月面着陸に成功したアポロ11号の船長ニール・アームストロングの人生を描く。ジェイムズ・R・ハンセンの著書を『スポットライト 世紀のスクープ』などのジョシュ・シンガーが脚色した。共演は『蜘蛛の巣を払う女』などのクレア・フォイ、『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェイソン・クラークカイル・チャンドラーら。(シネマトゥデイより引用)

感想

デイミアン・チャゼル極まれり!

本作の監督デイミアン・チャゼルと言えば「セッション」「ラ・ラ・ランド」と、新作が公開されるたび評論家の菊地成孔さんと町山智浩さんがバトルを始めることでお馴染みの監督。

僕も一応両作とも観ているんですが、どちらかというと苦手な監督だったりします。
その理由としては、どちらも内に内に篭っていく感じというか。

この人、1度に2人しか登場人物が描けないのでは?と思うくらい物語が小さいし、とにかく「迫っ苦しい」んですよね。

そんなチャゼル監督の最新作は、人類で初めて月に降り立った男ニール・アームストロング船長(ライアン・ゴズリング)の伝記映画。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88164/photo/b33069db4d6a2ff8/640.jpg?1548233539

画像出典元URL:http://eiga.com

X-15航空機のコックピットからスタートし、ジェミニ8号、アポロの驚くほど狭いコックピットの映像がこれでもかと観客に圧をかけてくる、まさにデイミアン・チャゼル極まれり!」という作品でしたねー。

しかしそれは決して否定的な意味ではなく、“狭小映画の旗手”であるチャゼル監督が、ついに自分の素質を存分に活かせる作品に出会ったという事でもあるのかなと。

また本作の主人公であるニール・ストロング船長は、これだけの偉業を残しながら映画化されたのは今回が初めてなんだそうで、(世間的には)感情を表に出さない=面白くない人=映画向きではないというイメージがあったのかもしれませんが、むしろそんな人物だからこそ、チャゼル監督作品の主人公としては最高だったのでは思ったりしました。

逆に、ニールとともに月面を歩いたバズ・オルドリン(コリー・ストール)は、空気の読めない嫌なヤツとして描かれていて「チャゼル、バズのこと嫌いすぎだろ」って思いましたねーw

https://eiga.k-img.com/images/movie/88164/photo/31bad5ffb6f0f72a/640.jpg?1538365194

画像出典元URL:http://eiga.com / ニール船長を差し置いて真ん中にいるのがコリー・ストール演じるバズ・オルドリン

行って帰ってくる映画

「ゆきて帰りし物語」は、多く映画で描かれる人気の構造です。
有名どころで言うと「MADMAX-怒りのデスロード」だったり、「ホビット」シリーズ、「スタンド・バイ・ミー」や「千と千尋の神隠し」なんかもこの形式の作品ですよね。

主人公が何らかの理由で国(居場所)を追われるor逃げ出す→数々の試練を乗り越え成長して戻ってくるというストーリーの構造は、世の東西を問わず数々の神話でも描かれているので万人ウケするというのもあるのでしょう。

本作もこの「ゆきて帰りし物語」の構造で描かれていて、アメリカで開発された高高度極超音速実験機X-15のテストパイロットだったニールは、愛する娘の死から逃れるように1960年代、アポロ計画の前進であるジェミニ計画に参加。

ジェミニ8号の船長として無人衛星・アジェナ標的機との軌道上ランデブーとドッキングというミッションに挑み成功させるも、機体トラブルでピンチに陥るも咄嗟の機転でなんとか無事地球に戻ります。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88164/photo/79b388d82b4f18c5/640.jpg?1549008122

画像出典元URL:http://eiga.com / 順調に見えたジェミニ8号だったが、この期大変な事に

その後、アポロ11号の船長として前人未到の月面着陸→地球への帰還を成功させて歴史に名を残すことになるわけですが、本作ではそんなニールの内面や家族の物語にスポットを当てているんですね。

幼い娘の死から始まる本作には、常に死の匂いがつきまといます。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88164/photo/555d0411e6485cc6/640.jpg?1547108092

画像出典元URL:http://eiga.com / 脳腫瘍で愛する娘は幼くして命を失ってしまう

X-15で大気圏を飛び出したものの危なく戻れなくなりそうになったり、アポロ1号の火災事故での仲間の死、ジェミニ8号での壮絶なトラブルからの生還、そしてアポロ11号での月面着陸。

高速で飛ぶ飛行機やロケットのコックピットは驚く程狭く、音速での飛行中や打ち上げの時は薄っぺらいブリキのようにガタガタと揺れ、窓や宇宙服の中から見える宇宙や月面は死後の世界を連想させます。

そんな、自分や仲間につきまとう死の危険やプレッシャーの中でもがきながら、月面でやっと娘に別れを告げて(娘の死を乗り越えて)地球に戻るニール。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88164/photo/40168c1f5a4310e9/640.jpg?1544142637

画像出典元URL:http://eiga.com / 何かいつもむすくれてる妻のジャネット(クレア・フォイ

そんなニールの命懸けのミッションに妻のジェネット(クレア・フォイ)やふたりの息子も、それぞれが(直接口には出さないけど)いつ夫(父)を失か分からない不安と戦っているその内面を、淡々と、でも丁寧に描いているんですね。

閉所恐怖症の人は視聴注意!? リアルすぎる船内描写

そんな本作の白眉は、宇宙飛行や月面着陸をニールの視点で描くことで観客に追体験させる構造。

ジェミニ8号やアポロ11号の狭い船内に取り付けられた小さな窓から見える宇宙空間や地球の姿、狭いコックピットに乗り込み、スタッフによってドアが密封される様子は、亡くなった娘の小さな棺桶を埋葬するシーンと呼応する作りになっていて、観ているだけで息苦しい!

どちらかちえば閉所好きな僕でさえそうなのだから、閉所恐怖症の人にとっては地獄みたいな映画なのではないかと。

棺桶のような船内、そこから出て視界が開けたはずの月面も暗黒と砂や石だけの、ある意味で閉じた空間(しかもヘルメットのバイザー越し)だしね。
いや、分かりますよ? 死を通して逆説的に生を語る「武士道」的な手法なのは。

でも、せめて地球に生還したラストシーンくらいは、海に着水したアポロから出てくるところか、任務を終えて家族の元に戻ってきたシーンで終わらせればいいのに、よりによって隔離部屋(宇宙から病原菌を持ち帰っていないかを調べるため一ヶ月隔離される)でのジェネットとのガラス越しの対面ってお前w

つくづく「デイミアン・チャゼルだなー」と思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

日本版エクソシスト「来る」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、第22回日本ホラー小説大賞に輝いた澤村伊智の小説「ぼぎわんが、来る」を原作に、「乾き。」や「告白」などの中島哲也監督で昨年実写化したホラー映画『来る』ですよー!

僕の大好物である“お祓い映画”ということで、クライマックスの決戦シーンはガン上がりしてしまいましたよー!(*゚∀゚)=3

https://eiga.k-img.com/images/movie/88644/photo/54da039d50f9a6d7.jpg?1543545263

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

第22回日本ホラー小説大賞に輝いた澤村伊智の小説「ぼぎわんが、来る」を、『告白』などの中島哲也監督が映画化。謎の訪問者をきっかけに起こる奇妙な出来事を描く。主演を岡田准一が務めるほか、黒木華小松菜奈松たか子妻夫木聡らが共演。劇作家・岩井秀人が共同脚本、『君の名は。』などの川村元気が企画・プロデュースを担当した。(シネマトゥデイより引用)

感想

ホラーとしてはアレ

実は本作が公開されたとき、ざっくりとした内容は耳に入っていて「これは僕の大好物のやつだ!」って思ったんですが、なんせ超のつくビビリなので劇場で観るのは諦めたんですよね。

で、ようやくDVDレンタルが始まったということで今回レンタルしてきたんですが、これが全っっっ然怖くなかったんですよw

「これなら劇場で観ても平気だったんじゃ…」って思うくらい。

まぁ、それは多分中島監督がそもそも怖がらせようとして本作を作ってないってのもあるんじゃないかなと。

「結局人間が一番怖いよね」的な作品で、むしろ内容的には「乾き。」や「告白」の系譜として作られている気がしましたねー。

その辺は、どうも原作通りの流れではあるみたい(原作未読)なので、中島監督はその部分が気に入って監督を引き受けたんじゃないかな? って思いました。

ざっくり説明すると、本作は田原秀樹という男がメインの第1章、その妻の香奈がメインの第2章、秀樹に依頼されて事件に関わる事になるフリーライターの野崎和浩がメインの第3章からなる、三幕構成になっています。

妻夫木聡演じる田原秀樹はお調子者で“空っぽ”な男で、香菜と結婚後に愛娘の知紗(志田愛珠)を儲けます。

会社仲間や友人たちを新居に読んだり、幸せな家族の様子を書いたブログを毎日アップしイクメンパパぶりをアピールするなど、それなりに幸せにやっていたある日、彼の留守中に地元で伝承されている「ぼぎわん」という化物が妻娘を襲います。

困った秀樹は大学時代からの親友で大学教授の津田大吾(青木崇高)のつてで、オカルト系フリーライターの野崎と、霊能力を持つキャバ嬢の真琴(小松奈々)を紹介されるのだが――というストーリー。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88644/photo/ac35cc8dac5a8dae/640.jpg?1543545320

画像出典元URL:http://eiga.com

まぁ、この第1章は、いわばテンプレ的なホラー映画の流れなんですね。

それから数年後、黒木華演じる香奈がメインの第2章では、第1章の裏側というか秀樹がいかに空っぽで自己中心的な男だったかが暴露されていきます。
もちろん第1章でも秀樹の空っぽさや空回り具合は描かれてるんですが、香菜視点で描かれるこの第2章で、すでに家族は崩壊していた事が分かるわけです。

で、この家族に関わった岡田准一演じる野崎の視点で語られる第3章で、ついに全ての真相が明らかになるという構成。

なるほど、物語としては面白いんですが、ぶっちゃけ「ぼぎわん」絡みの件になるまでが長い!

正直、第1章の中盤くらいまでは「一体、何を観せられているんだ……」ってなっちゃうんですが、それは僕が本作を“ホラー映画”として観ているからで、中島監督的にはホラー部分よりも、秀樹、香菜、野崎と、それを囲む“人間たちの暗部”こそが本作で描きたかった部分なんですよね。多分。

まぁ、そもそも中島監督の作風がホラーと相性が悪いってのもあるかもですし、そんな感じなので“ホラー映画”としては”正直、ちょっとアレな感じになっちゃってる気がしました。

日本版「エクソシスト

以前、書いたかもですが僕は超ビビリだけどホラー映画は結構好きだし、中でも悪霊や悪魔と霊能者が戦う「お祓い映画」は大好物だったりします。

そんな僕の目から観た本作の白眉は、何といっても松たか子演じる最強の霊能力者、比嘉琴子とその妹で小松奈々演じる真琴の霊能者姉妹、かつて心霊番組でも活躍していた霊媒師で柴田理恵演じる逢坂セツ子。

名前からも分かるように、琴子は沖縄のシャーマン「ユタ」出身で、日本全国の霊媒師や警察や政府にもコネクションのあるという、まさに最強の霊能者なんですね。

妹の真琴はそんな姉に憧れ、独学で霊能力を身につけていて、逢坂セツ子は訛りなどから恐らく東北出身の霊能者で、過去、悪霊との戦いがキッカケで表舞台から身を引いたことがその風貌から分かります。

で、セツ子は第1部で「ぼぎわん」に右腕を持って行かれ、真琴は第2部で重症を負わされ、そして第3部。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88644/photo/b01ce0002ca26aea/640.jpg?1543545320

画像出典元URL:http://eiga.com

事態を重く見た最強の霊能者琴子は、警察を動かして田原家が購入したマンションの住人を避難させ、全国の霊能者を招集して「ぼぎわん」退治に挑むんですが、マンション前の広場に巨大な祭壇を拵え、仏教、神道、その他の霊能者がごちゃまぜとなって「ぼぎわん」を迎え撃つという胸熱展開なんですよぉぉ!(*゚∀゚)=3

で、本作を観ると中島監督がやりたかったもう一つの試みが、日本版「エクソシストだった事も分かります。

言わずと知れたホラー映画(&お祓い映画)のクラッシックとも言える名作中の名作。
「ぼぎわん」の使者というか、予兆として出てくるイモムシは、「エクソシスト2」で、悪霊パズズの象徴でもあるバッタを連想させるし、いわゆる宗教的儀式を用いて「ぼぎわん」と対決する展開は、「エクソシスト」でのカラス神父とパズズの最終対決を連想させます。

恐らく、中島監督はいわゆるJホラー的な湿度の高いノリではなく、エクソシスト」や「死霊館」シリーズ的な異能(霊能)対決がやりたかったんじゃないかなと。

その上でカラス神父とカトリックを、ある意味何でもアリな日本の宗教観に置き換えたわけです。

確かに、漫画や小説ではスーパー霊能者が悪霊を祓う作品は多いのものの、実写映画となると(僕の知る限り)人間が悪霊や呪いに打ち勝つ作品は今まで殆どなかったんですよねー。

「ぼぎわん」とは

じゃぁ、その「ぼぎわん」って一体何なのさって話なんですが、原作によると「ぼぎわん」は古文書による言及が存在する三重県に伝わる妖怪とされ、一説には室町時代に宣教師によって伝えられた「ブギーマン」が訛って「ぼぎわん」になったと言われているらしいんですが、実はこれ原作者澤村伊智のオリジナル妖怪&設定なんだそうです。

そう言われてみれば、「悪い子を“お山”に連れて行く」というのはナマハゲや天狗、神隠しっぽくもありますよねw

ちなみに本作の“お山”とはイコール「あの世」のことで、日本に古来から伝わる山岳信仰をベースにしているのでしょう。
また、民俗学者の津田大吾は、江戸時代以前に行われていた、“口減らし”のために行われた子殺しを「ぼぎわん」に攫われたという事にしていたのではないかという説を劇中で話していて、ハッキリとは描かれませんが「ぼぎわん」の正体は、人々の怨嗟や呪いなど、負の感情が招き寄せる“良くないもの”ということみたいです。

ホラー映画で現代社会を斬る

まだ呑気だった80年代~90年代と違って、今や世界のホラー映画のトレンドは現代社会が抱える問題をテーマとして、ホラーのテンプレに乗せる」というもの。

本作もそこをかなり意識的にやっていて、例えば嫌なことからは目を逸らして承認欲求を満たすことしか考えていない秀樹、子育てと仕事に疲弊して育児ノイローゼになり津と浮気をしている香菜。子持ちの主婦に理解がない職場の店長(伊集院光)や、外面はいいけど内に邪悪な思いを抱える津田、失うことを恐れて大切な者を作らず孤独を選ぶ野崎。などなど。

余裕がなく自分のことで精一杯の大人をそれぞれのキャラクターに乗せて、そうさせてしまう現代の日本社会やシステムを、中島監督は本作の中で「告発」しているんですね。

もちろんそこは原作に沿っている部分もあるんでしょうが、中島監督は内容や設定を改変して原作が持つテーマ性をより強く打ち出しているのではないかと思いましたよ。多分。

もちろん、そういうのを抜きにしても「お祓い映画」として超楽しい作品だし、そんなに怖くないのでビビリな人でも安心して観られますよ!

興味のある方は是非!!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

10年ぶりに更新された“遺書”「運び屋」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ご存知、“映画仙人”ことクリント・イーストウッド最新作『運び屋』ですよー!

グラン・トリノ」感想で僕はイーストウッドの遺書”と評したんですが、それから10年後に再びイーストウッド監督・主演で撮られた本作は、10年ぶりに更新された遺書って感じの作品でしたねー。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90319/photo/2e30802b45d3f272.jpg?1543475695

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

The New York Times Magazine」に掲載された実話をベースにしたヒューマンドラマ。麻薬を運ぶ90歳の男に待ち受ける運命を描く。監督と主演を務めるのは『ミリオンダラー・ベイビー』などのクリント・イーストウッドイーストウッド監督作『アメリカン・スナイパー』などのブラッドリー・クーパー、『マトリックス』シリーズなどのローレンス・フィッシュバーンらが共演する。(シネマトゥディより引用)

感想

イーストウッド自身に近いキャラクター

2008年公開の「グラン・トリノ」で俳優業を引退すると言っていたイーストウッド
その内容は、朝鮮戦争で負った心の傷から人を遠ざけるようになり、血を分けた家族からも見捨てられた偏屈な男ウォルト・コワルスキーが、ひょんな事からモン族の隣人たちと交流を持ち、家族のような関係になるも――という物語。

この作品を観たとき僕は、1992年の「許されざる者」に共通する贖罪の物語であり、イーストウッドの遺書的な作品だという旨の感想を書きました。

それから10年後に撮られた本作で再び監督・主演を務めたイーストウッドが演じた老人アールは第二次世界大戦を経験した退役軍人で、退役後は園芸家として名を馳せた90歳の老人。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90319/photo/3737034b1a247d38/640.jpg?1549337022

画像出典元URL:http://eiga.com

家族を顧みず仕事一筋だった彼は家族に捨てられ、人生の全てだった仕事の方もインターネット化の波に押されて失敗。全てを失ってしまいます。

しかし、孫娘の婚前パーティーで知り合ったメキシコ系の男フリオ(イグナシオ・セリッチオ)から、車で荷物を運ぶだけの仕事を持ち掛けられ引き受けます。

ところが、その荷物の中身は大量の麻薬だった――という物語。

この90歳の“運び屋”アルのモデルはレオ・シャープという実在の人物で、本作は実話を元に劇映画として「グラン・トリノ」でも脚本を務めた ニック・シェンクが脚本を担当した作品。

それもあって、イーストウッドは引退宣言を撤回し俳優業に復帰したのかもしれません。

また「グラン・トリノ」のウォルトと本作のアルの境遇は非常によく似ています。
両者とも戦争体験者で、仕事一筋すぎて家族との不和を抱え、その事を悔いている。

その贖罪としてウォルトは擬似家族となったモン族の少年のため自らの命を投げ出し、アールは運び屋で稼いだ大金を仲間や愛する孫娘のために使います。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90319/photo/2270b0263b8c4e55/640.jpg?1546920219

画像出典元URL:http://eiga.com / 「運び屋」の報酬で別れた奥さんや家族との関係を修復していくアール

そんな両者の大きな違いは、ウォルトが戦争のトラウマから人を避けているのに対し、アールの方は非常に外交的で人生を楽しんでいるということ。

鼻歌交じりで麻薬を運び、やがて麻薬カルテルのチンピラとも冗談を交わすようになり、挙句ボスに招かれてメキシコで若い女の子二人とハッスルハッスルする90歳。

その一方で、麻薬を運ぶ途中にパンクして困っているカップルを助けたり、お気に入りの店に寄って食事をしたり、フリオには麻薬カルテルを抜けるように勧め、彼を追う麻薬捜査官のコリン・ベイツ(ブラッドリー・クーパー)を相手に家族の大切さを説いたりもします。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90319/photo/82c630b5392642ac/640.jpg?1549337025

画像出典元URL:http://eiga.com / 麻薬捜査官のベイツに家族の大切さを説くアール

つまり、アールは麻薬の「運び屋」ではあるけど別に悪人というわけではなく、基本的にはお人好しの善人で事の善悪もちゃんと弁えてるんですよね。
その上で、“運び屋”はビジネスと割り切って長距離ドライブを楽しんでいるわけです。

飄々と撮りたい作品をサクッと撮ってサクッと公開しては、どの作品でも高評価をかっさらう映画仙人イーストウッド

一方私生活では、2度の離婚を含め5人の女性との間に7人の子供を儲けた彼なので、ある意味で本作の主人公アールには、イーストウッド自身の人生が反映されているようにも見えるんですよね。(アールの娘を演じてるのも実の娘だし)

 「グラン・トリノ」のウォルトを演じたときは、まだ大スターのクリント・イーストウッドを引きずっていたというか悪く言えばカッコつけていたようにも見えたんですが、本作ではアールとイーストウッドの境界線が曖昧というか、より素のイーストウッドに近い感じがしたりします。

10年ぶりに更新されたイーストウッドの遺書

だからこそ、末期ガンでベットに横たわる妻に告白する言葉にはより重みを感じるし、「グラン・トリノ」では“家族”のために命を差し出した主人公ウォルトに対し、最後まで“生きる”ことを選択した本作のアールに(もちろん実話だからってのもあるけど)この10年でのイーストウッドの心の変化というかある種の達観を見たような気がしました。

つまり、この作品は「グラン・トリノ」から10年ぶりに更新された彼の遺書であると同時に、もうすぐ90歳を迎えるイーストウッドから、これからを生きる全ての人へのエールでもあるんじゃないかと思いました。

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

マイナス部分を逆手にとった実写化作品「がっこうぐらし!」(2018) *ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは海法紀光(ニトロプラス)と千葉サドルの人気コミックが原作でアニメ化もされた『がっこうぐらし!』ですよー!

最初に実写化の話を聞いたときは、正直「またかよ…」と思ったんですが、公開後に良い評判が聞こえてきてたので、今回レンタルしてきました。

結論から言うと、かなり面白かったですよ!

で、この映画ネタバレなしで感想を書くのはかなり難しいので、今回もネタバレありで書いていこうと思います。
なので、これから本作を観る予定の人や、ネタバレは絶対に嫌という人は先に映画を観てから、この感想を読んでくださいね。

先に言っておくと、まだ「がっこうぐらし!」を観たことがない人は、前情報を入れずに観る方が楽しめると思います。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89075/photo/746b84ab983d8aec/640.jpg?1537410594

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

アニメ化もされた海法紀光(ニトロプラス)と千葉サドルのコミックを実写映画化したサバイバルホラー。学校で一緒に生活している女子高校生たちが、生き残りを懸けたバトルを繰り広げる。メインキャストは、秋元康プロデュースのアイドルグループ「ラストアイドル」から、オーディションで選ばれた阿部菜々実長月翠間島和奏、清原梨央。『リアル鬼ごっこ』シリーズなどに携ってきた柴田一成が監督を務める。(シネマトゥデイより引用)

感想

マイナスをプラスに

僕はマンガやアニメの実写化(邦画)作品(特に少女漫画系)ってほとんど観ないんですよね。
なぜかと言うと、そもそも日本のマンガやアニメのキャラクター造形やストーリーテリングが、俳優が演じる実写映画向きではないと思っているから。
(もちろん全部とは言わないけど)実写化の際にそこが分かってない監督は俳優をキャラクター原作に寄せすぎて、結果的に失敗するケースが多いんですよ。

ゾンビパンデミックによって学校に閉じ込められた4人の少女、くるみ(阿部菜々実)、ゆき(長月翠)、ゆり(間島和奏)、みーくん/みき(清原梨央)。
彼女らは過酷な非日常の中で正気を保つため、保健医の佐倉慈 (おのののか)の提案で「自分たちは学校で共同生活をする部活「学園生活部」の部員」であり、サバイバル生活を楽しむ事にする――というかなり突飛なストーリー。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89075/photo/9746942a42815208/640.jpg?1545120232

画像出典元URL:http://eiga.com / 保健医の佐倉慈 を演じるおのののかは思った以上に良かった。

さらにマンガ、アニメ版のキャラクターはいわゆる萌えキャラというヤツで、ゆきは学校の中で猫耳帽子を被っているし、くるみは青髪ツインテール少女だし。

まぁ、どう考えても実写化に向いているとは思えない作品なんですね。

実際、本作の制作が発表されたときは原作マンガやアニメのファンからは大不評(というか炎上状態)でしたしね。

しかし、公開されると評価は一転、多くの人が高評価をつける結果になったのです。

その理由は、マンガ・アニメの実写化で本来マイナスになる部分を上手く反転させてプラスに変えたから

例えば、ゆきは過酷な現状に耐え兼ねて、自分はあくまで「学園生活部」の部員であり、学校の日常は壊れていない(ゾンビパンデミックは起こっていない)という妄想に現実逃避しているキャラクター。

とても女子高生とは思えない子供のような言動をする彼女ですが、そういうのは女の子がキャッキャウフフするマンガやアニメではよくあることで、原作マンガやアニメ版はそこを逆手にとって物語を転がすことでファンを驚かせていたんですね。

この実写版でもその設定は継承していますが、原作キャラに見た目を寄せてキャストに“コスプレ”をさせることはしなかった。

そうすることで、マンガ・アニメ版では十分には引き出せなかった“正気を保つために妄想の世界に逃げ込む狂気”が、より効果的に生々しく際立つんですよね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89075/photo/7e03a870f4aa3859/640.jpg?1545120231

画像出典元URL:http://eiga.com / ゾンビ以上に怖いゆきのこのシーン

そんなゆきの狂気をより際立たせるのが「学園生活部」に“入部”することになるみーくんこと美紀。

彼女はゾンビだらけの学食で一人で生き延びてきた女の子なんですが、途中から3人と合流するんですね。なので、彼女の目線で見たゆきの言動はまさに狂気そのものだったりするわけです。

もちろんこれも原作と同じ設定ではあるんですが、やはり生身の女の子が演じることでより生々しさが際立つんですよね。

ふつう、マンガ・アニメの実写化では、生身のキャストが演じることで生じる“生々しさ”はマイナスになるんですが、本作は原作の設定やそれを活かした実写版の脚色によってプラスに反転させたというわけです。

アニメ版からの改変

そんな本作の原作マンガは“高校編”が5巻、“大学編”が4巻の全9巻。(現在も連載中?)アニメ版の方は、高校編を12話に渡り放映しました。

僕はアニメ版しか観てないんですが、5巻分の原作マンガを12話のアニメにするためエピソードを刈り込んでいるらしいんですね。

で、本作は110分という事もあり、このアニメ版からさらにエピソードを刈り込み、設定や内容を改変して学校の中での物語に集約しています。

例えば、3人とみーくんが出会うのは“遠足”と称した食料調達で向かったショッピングモールの中なんですが、この実写版では前述したように学食で出会うことに改変しています。

また、アニメ版はゆきをメインに物語が構成されているのに対し、本作ではくるみを物語のメインに据えているんですね。

そうすることで、原作マンガやアニメ版の大筋の流れはそのままに、劇場版としてスマートに物語を描けていると思いました。

学園もの+ゾンビ

突如起こったゾンビパンデミックによって日常が破壊された世界で、生存者たちが諍いによって自滅していく様子をメインに描くのがゾンビものの基本的なフォーマット。

しかし、「がっこうぐらし!」はそのフォーマットに学園もののフォーマットをプラスし、ゾンビパンデミックという非日常の中で暮らす、主人公たちの日常と成長を重層的に描くことで、ある意味で日本ならではのゾンビものを作り出したんですね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89075/photo/8aef65fdce2c7b9a/640.jpg?1545120233

画像出典元URL:http://eiga.com / メインの4人も熱演。

さらに本作ではエピソードを刈り込むことで、マンガ版やアニメ版で描かれる叙述トリック的な驚きは減っているものの、原作・アニメ版の流れを整理して再構築することで、実写ならではのダイナミズムや「がっこうぐらし!」の本質的な部分をよりダイレクトに描けていると思います。

特に、彼女たちの“日常”がついに崩壊するクライマックスシーンは、学校という閉ざされた空間を最大限に生かすアイデアが満載だったし、その後、外の世界へ旅立つ彼女らを学校からの卒業と重ねるラストには(原作通りではあるけど)グッときてしまいましたよ。

僕が過去に観た中でも、マンガ・アニメ原作の実写版としては、かなり上位に入るくらい非常に上手いし面白い作品でした。

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング