今日観た映画の感想

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最後に奇跡は起こらず「ランボー・ラスト・ブラッド」(2020)

ぷらすです。

今日は、映画館でS・スタローンの人気シリーズ完結編『ランボーラスト・ブラッド』を観てきましたー!
いやーホント、

超久しぶりに映画館に行きましたけど、やっぱいいですよねー。(*´ω`*)ジーン

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概要

『ロッキー』シリーズと並ぶシルヴェスター・スタローンの代表作『ランボー』シリーズの第5弾にして完結編。ランボーが人身売買カルテルにさらわれた友人の孫娘を救い出そうとする。メガホンを取るのは『キック・オーバー』などのエイドリアン・グランバーグ。『レッド・バレッツ』などのパス・ベガ、『朝食、昼食、そして夕食』などのセルヒオ・ペリス=メンチェータのほか、アドリアナ・バラーサ、イヴェット・モンレアル、オスカル・ハエナダらが出演する。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

スタローンとアメリカン・ニューシネマ

以前も書いたかもしれませんが、S・スタローンは「アメリカン・ニューシネマ」の作家です。
アメリカン・ニューシネマについては過去に何度か説明を書いてるので割愛しますが、無名の貧乏俳優だったスタローンを一躍スターに押し上げた名作「ロッキー」は、「モハメド・アリ対チャック・ウェプナー」戦をテレビで観て感動したスタローンが、たった3日で書き上げた脚本を映画会社に売り込んだのが始まりですが、その脚本のラストシーンは完全にアメリカン・ニューシネマの流れを汲むものでした。

しかし一度は撮影されたそのラストシーンが後に変更され、1976年の公開版では誰もが知るあの「ロッキー」のラストシーンへと差し替えられたことで大ヒット。
アカデミー作品賞&監督賞を受賞し、スタローン自身もアメリカンドリームを掴みますが、皮肉にもこの「ロッキー」と「スター・ウォーズ」の登場で、アメリカン・ニューシネマの時代は完全に幕を閉じます

それから7年後の1982年。

「ロッキー」シリーズと共にスタローンの代表作となる「ランボー」シリーズ第1作が公開されます。

ディヴィッド・マレルの処女出版小説「一人だけの軍隊」の映画化作品である本作は、ベトナム帰還兵のジョン・ランボーと流れ者のランボーを町から排除しようとする保安官の戦いを通して「ベトナム戦争で負ったアメリカの傷」を描いた作品で、その構成はまさにニューシネマそのもの。

映画化権を獲得したワーナーは、名だたる名優たちにオファーを出すも次々に断られ、カロルコ・ピクチャーズに映画化権を売却します。

そんな時、本作の話を聞いたスタローンはギャラを下げてまでも出演を熱望。
ご存じの通り「ランボー」はロッキーと並んで彼の代名詞となるキャラクターになったわけです。

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その後、「ランボー」はシリーズ化しますが、2作目「ランボー/怒りの脱出」3作目「ランボー3/怒りのアフガン」と作品を重ねるごとにプロパガンダ的米国ヒーロー像や荒唐無稽な内容が酷評されるようになりシリーズは一旦終了。
スタローン自身のキャリアも低迷します。

しかし、スタローン自ら監督しロッキーの人生を総括した「ロッキー・ザ・ファイナル」は制作時こそ周囲やファンから冷笑されたものの、2006年に公開されるや評論家やファンから高い評価を得て大ヒット。スタローン復活を世間に印象付けます。

その2年後の2008年、スタローンは「~怒りのアフガン」から20年ぶりとなる「ランボー」シリーズ最新作「ランボー/最後の戦場」を公開。

シリーズを重ねるうちにただの戦争アクションになったシリーズに、これまでにない残酷描写を加えることでランボーのヒーロー性を排除し、戦争の(悲惨な)現実を描くことで、これまでのシリーズの総括、再構築をしてみせたのです。

つまり、老年に差し掛かったスタローンは、自分の分身である2人のキャラクターの人生に決着をつけて見せたわけですね。

少なくとも、この時の僕はそう思っていました。

まさかの続編公開も奇跡は起こらず

それから12年経った今年。

まさかの「ランボー」シリーズ完結編と銘打たれた本作が公開されました。

正直「うそーん(*´Д`)」ですよ。

だって前作で綺麗に終わってたじゃんと。

とはいえ「ロッキー・ザ・ファイナル」の時も「ランボー/最後の聖戦」の時も、ついでに言えばロッキーの親友アポロの息子が主役の「クリード」シリーズ2作でも、まったく同じことを思ったけど、実際観たらどれも大傑作だったわけで。

まぁ、例えそうでなくても、ロッキー・ランボーの名前を冠する作品が公開されたら劇場に足を運ぶのはファンの義務ですからね。

そんな感じで劇場に足を運んだわけですが、結論から言うと、最後のランボーに奇跡は起こりませんでしたよ

前作ラストで、我が家に戻ったランボー
本作はその続きで、多分、実際の時間と同じく12年の月日が流れているのでしょう。

ランボーと一緒に住んでいるのは、旧友でメキシコ人の女性マリア(アドリアナ・バラッザ)とその孫娘ガブリエラ(イヴェット・モンリール)で、ランボーは彼女たちを本当の家族のように大切にしている。

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なるほど、ランボーにもやっと平穏な日々が訪れたんだなーなんて思って観てると、彼は、所有する農場の地下に長いトンネルを掘り、そこで精神安定剤を服用しながら寝泊まりしているという異常行動の描写が。
これはもちろん、ベトコンのアジトを模しているわけで、ランボーベトナムで負った心の傷は全く癒えてない事が分かるわけです。

で、高校を卒業し大学生になるガブリエラは、幼い頃に自分を捨てた父親に会いにメキシコに行きたいと言い始める。

彼女の父親は、母親にDVをした末に家族を捨て家を出ていったクズ野郎で、それを知っているマリアとランボーはガブリエルを止めるけど、「人は変わる」と思っている彼女は以前ランボー農場で働いていたらしい旧友のジゼル(フェネッサ・ピネダ)の伝手で父親の居場所を突き止め、2人に黙ってメキシコに行っちゃうわけですよ。

しかし、メキシコで会った父親はやっぱりクズで、傷ついたガブリエラはジゼルに誘われるままクラブに飲みに行き、そこで人身売買の組織に誘拐されてしまうんですね。

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それを知ったランボーはガブリエラを救うため、単身メキシコに乗り込むのだが――というストーリー。

まぁね、「ランボー」シリーズは、その時々で国際問題となっている国や組織と戦うわけですが、今回は多分メキシコの麻薬カルテル問題を題材にしてるんでしょう。

最近では、麻薬で儲けるより人身売買をメインにしてるという話ですしね。

なので、本作で描かれているような事件も実際に起こっているんだろうとは思うんだけど、それにしても、悪役が恐ろしく薄っぺらいというか、2019年(米国公開)の映画として、このメキシコやメキシコ人の描写はさすがに無神経に感じてしまうという。

いや、言いたい事もやりたい事も分かるけど、さすがに(´ε`;)ウーン……っていう描写が多いんですよね。

あと、恐らく女性差別問題や性被害的な事を描きたいんだろうというのも分かるけど、だとしたらガブリエラの扱いも流石にどうかなーって思うし、物語の方もガブリエラ救出のためにメキシコに乗り込むランボーの行動や、その後の展開があまりにもで飲み込みずらいですしね。

そして、色々あってランボー農場でのクライマックスでは、前作以上に残酷な人体破壊描写のオンパレード。
あまりにやり過ぎてて、もう怖い」を通り越して笑けてくるっていう。

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ラスト・ブラッド」というタイトルが第1作(原題:ファースト・ブラッド)と対になっていて、絵的にも過去作品の韻を踏んでいるのも分かるし、ところどころ「おっ!」って思うシーンもあるから全部がダメではないけど、時代とのズレも含めて擁護しきれないかなーと。

ランボーというキャラクター

ロッキーとランボーは、S・スタローンの分身とも言うべき2大キャラクターですが、ロッキーを光とするならランボーは影。

ロッキーは次世代に自分の生き様や心意気みたいなものを受け継いでいくけど、ランボーは永遠に一人ぼっちで闘い続けてひっそり終わるしかないっていう、ある意味で不幸なキャラクターなんですよね。

それはランボーアメリカン・ニューシネマの流れを背負ったキャラクターだからで、そういう意味で本作のラストには色んな解釈があると思うけど、個人的にはランボーに相応しいラストだったのではないかとは思いました。

90分弱という上映時間も、イマドキの映画にしては短く感じるけど、この尺の短さもある意味「ランボー」シリーズの特徴と言えますしね。

かなり好き嫌いは分かれると思うし、あまり人におススメ出来る作品ではないですが、ロッキーとランボーで育ってきた人は観ておくべき作品だと思いますよ。

興味のある方は是非!!

 

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新海流ニューシネマ「天気の子」(2019)

ぷらすです。

Amazonprimevideoで新海誠監督の『天気の子』をレンタルしました。
それまでの”知る人ぞ知る“カルト的な監督から、前作「君の名は。」の記録的大ヒットで一気にメジャー監督の仲間入りをした新海監督が、あのメガヒット作の後にどんな作品を作るのか、楽しみに観ましたよ。

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概要

秒速5センチメートル』などの新海誠監督が、『君の名は。』以来およそ3年ぶりに発表したアニメーション。天候のバランスが次第に崩れていく現代を舞台に、自らの生き方を選択する少年と少女を映し出す。ボイスキャストは、舞台「『弱虫ペダル』新インターハイ篇」シリーズなどの醍醐虎汰朗とドラマ「イアリー 見えない顔」などの森七菜ら。キャラクターデザインを、『君の名は。』などの田中将賀が担当した。(シネマトゥディより引用)

感想

新海誠監督について

以前も書いた通り、僕は新海作品って実質的なデビュー作「ほしのこえ」と「君の名は。」そして本作の3本しか観たことがありません。
それは(「君の名は。」の感想でも書いたけど)「ほしのこえ」を観た時、彼の描くいわゆるセカイ系が僕には合わないと思ったからなんですね。

で、前作「君の名は。」も最初は観る気なかったんですが、社会現象ともいえるほどの大ヒットや高評価をアチコチで見かるうちに気になって、映画館に足を運んだわけです。

君の名は。」は、新海誠監督と“みんな大好き”(棒)川村元気プロデューサーが初タッグを組んだ作品ですが、なんていうかこう、新海誠監督のセンチメンタルで繊細私小説的世界観は残しつつ、サルでも分かる川村チューニングRADWIMPSの楽曲も相まって、観客が非常に観やすく共感しやすいエンタメになっていたし、まぁ僕も十分に楽しんだわけです。

で、前作同様、新海誠川村元気RADWIMPSという鉄壁の布陣で臨んだ本作。

故郷の神津島に息苦しさを感じ、大都会東京に家出した少年・帆高( 醍醐虎汰朗)は都会の波に揉まれた末に、冒頭フェリーで偶然出会った須賀小栗旬)の事務所

に身を寄せます。

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雑誌に寄稿する記事の取材をするライター見習いとして働きながら、やっと居場所を得た帆高は仕事中、以前マックで食事を恵んでくれた女の子・陽菜(森七菜)と再会。
100%の晴れ女という彼女の特殊能力を知り、生活に困窮する彼女を救うため「晴れ女」ビジネスを立ち上げて仕事を手伝ううち、帆高は彼女に惹かれていくのだが……。というストーリー。

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その背景には、関東地方に長期間雨が降り続くという異常気象があるんですね。

前作君の名は。」では、3.11を物語に取り込んだ新海監督ですが、今回は世界中で実際に起こっている異常気象を物語に組み込んでいるわけです。

新海流ニューシネマ

そんな本作で、新海監督が取り組んだのはニューシネマのオマージュ

アメリカン)ニューシネマとは、1960年代後半から70年代前半にかけてアメリカで作られた映画群のことで、「俺たちに明日はない」「イージーライダー」「タクシードライバー」などが有名。
内容を超ざっくり説明すると、大人や体制に反抗するも負けて死ぬ若者の物語です。(もちろんそれだけじゃないけど)

本作では、そんなニューシネマや70年代ATG(日本アート・シアター・ギルド)作品的なモチーフが随所で登場します。

冒頭、東京に出たものの(年齢的に)仕事も家もなく、困窮し疲弊していく帆高がたまたま拳銃を手に入れたり、クライマックスでの帆高が警察から逃走するのは、いかにもニューシネマ的。

さらに陽菜が空と繋がる事になる神社があるのは、かつて70年代のドラマ「傷だらけの天使」で屋上に萩原健一・水谷豊が住んでいた廃ビルの屋上(エンジェルビル)だし、須賀のキャラ造形や彼の半地下の事務所は、どこか松田優作主演のドラマ「探偵物語」を連想させます。

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ストーリーも、寄る辺なき少年少女が、やっと見つけた彼らの居場所を理不尽に奪おうとする大人たち(体制)に反抗する物語ですしね。

ちなみに、新海作品の特徴でもある「セカイ系」とは、超乱暴に説明すると「自分(と君)・他者・世界」から「他者」を引っこ抜いて、「自分(と君)と世界」を直結させる物語形式で、「新世紀エヴァンゲリオン」がその始まりと言われています。

他者(大人や体制)への反抗を描いたニューシネマと、世界から他者を排除する“セカイ系”は本来、相容れないように思うんですが、新海監督は本作でこの両者を融合させ、(形はどうあれ)主人公を社会と向い合せたという一点において、新海監督の進化みたいなものを感じましたねー。

 

というわけで、ここからネタバレするので、これから本作を観る予定の人や、ネタバレは嫌!という人は、ここから先は映画を観た後に読んでくださいね。

 

映画後半、お尋ね者として警察から逃げることになる帆高・陽菜、そして陽菜の弟・(吉柳咲良)の3人。
大雨や8月なのに降り積もる雪の中で当て所もなく歩く彼らの姿は、冒頭で東京に出てきたばかりの帆高と重なるようになっていて、一度は手に入れた幸せな居場所を失った強い喪失感が伝わる構成になっています。

そして、そんな彼らはラブホテルで“最後”の一夜を明かす事になるんですが、すでに陽菜が天気の巫女で、異常気象を解消するための“人柱”として「彼岸」?に連れ去られる運命が明かされているし、別れを予感させるシーンもあるんですね。
そして、帆高が目覚めると陽菜は消えていて、同時に、ホテルに乗り込んだ警察に帆高と凪は捕まってしまう。

しかし刑事の一瞬の隙をついて逃げ出した帆高は、陽菜を取り戻すため廃ビルの神社に向かって激走するわけです。

恐らくはこのクライマックスがニューシネマとセカイ系の接合点で、帆高は大人(体制・他者)から逃げて神様(体制・ルール)に奪われた陽菜を取り返しに行くのです。

そんな帆高を助けるのは、大人(体制)と子供の中間にいる須賀の妹・夏美(本田翼)であり、子供の凪であり、大人(体制・世界)から外れた須賀であり。

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そして、ようやく陽菜に辿り着いた帆高は、世界と陽菜(君)との2択で、迷わず陽菜を選択するわけですね。

その代償として、以降3年(正確には2年半)降り続いた雨で東京の広範囲が海に沈むことになるわけですけどもw

ラスト問題

そんな本作の評価は、賛否が分かれているようです。

正直に言えば、僕も本作のラストには若干のモヤモヤが残りました。

多分、新海監督が本作でやろうとしたことや言わんとしてることは概ね理解してるつもりだし、個人的には大いに頷けるんですが、それでもどこか腑に落ちないというか。

反対意見の中には、帆高が人に向けて鉄砲を撃つことや、その割に罪が軽いことに違和感や拒否感を感じる人もいたみたいですが、僕はそこはフィクションとして別に気にならなかったし、帆高が世界より陽菜を選択したのも納得できる。

帆高が手に入れた銃を発射するのは、セカイの理不尽(大人・父親・体制・暴力など)に対する怒りの表現で、ニューシネマ的な作劇ではよく使われるし、世界より陽菜を選ぶのも、元より大人たちの勝手で壊した世界の責任を、たった一人の少女(子供たち)に負わせるなんて虫が良すぎるだろうという新海監督のメッセージと受け取りました。

じゃぁ、どこが気になったかというと、冒頭と最後がちょっと言葉足らずなのではないかなと。

冒頭、帆高は「島(田舎)の息苦しさ」に耐えかねて東京に家出をしたと、モノローグで語っています。その顔には絆創膏が貼られているんですね。

原作では、帆高は父親に殴られた事も独白してるらしいですが、監督のインタビューによれば「帆高の家出に、憧れ以外の理由を足したくなかった」(意訳)という理由で絆創膏の理由には触れていません。

でも、だとしたら、帆高が東京に憧れるキッカケや理由をもう少しハッキリさせた方が良かったのでは?と。
前作でもちょっと思ったけど、ネットでどことでも繋がれる現代、理由もなく東京に憧れる若者っていう図式は正直ちょっと古臭い感じがするし、彼の家出に物語をけん引するほどの強い動機が見えないことが、観客が帆高に感情移入しずらい理由の一つではないかと思いました。

で、色々あってのラスト。
陽菜を救った結果3年の保護観察処分を受けてしまに戻された帆高は、晴れて高校を卒業し再び東京に戻るわけですが、彼女を救ったことで海に沈んだ東京の姿に責任を感じている様子。
そんな彼はお天気ビジネスの依頼主だったお婆さんや須賀に、「200年前の姿に戻っただけ」「誰のせいでもなく世界は元々狂ってた」と慰められながら久しぶりに陽菜に会いに行くんですが、空に祈る彼女の姿を見た瞬間「違う!」と叫びます。
あの時、僕たちは確かに世界を変えたんだ!」と。

僕は選んだんだ! あの人を、この世界を、ここで生きていくことを!」と。
そして、彼女の手を取って「僕たちはきっと大丈夫!」と宣言して、本作は幕を閉じるんですね。

うんうん、感動的ないいラストシーンじゃないですか。

帆高は東京の農工大に進み、農業を学ぼうと考えてるらしい。
恐らくは雨で食糧自給がままならない状況を何とかしたいという思いでしょう。
さらに彼が読んでいた雑誌には「アントロポセン」の文字が。
これ日本語だと「人新世」と言って、要は「人類が地球の地質や生態系に重大な影響を与える発端」という意味だそうです。
これは、彼(の選択)が世界を変えてしまったという意味と、温暖化などで世界を変えてしまった人間という二つの意味があるのだと思います。

ラストシーンで陽菜が空に祈っているのは、考察を読むと「晴れを祈ってる」説と「帆高に会えることを祈ってる」説に分かれてるようですが、僕は前者ではないかと思います。

2人がセカイを変えてしまった事は2人しか知らないから、誰にも責められることはないけど、2人はずっとその選択を「これで良かったのか」と悩んでいたんですよね。多分。

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でも、再び陽菜の姿を目にしたとき、帆高は自分の選択が正しかったことを確信。そして、自分たちが選んだこのセカイを背負って生きていく事を宣言するわけです。

いいラストじゃないですか。
ただね………

雨が3年降り続けば、当然色んな被害があるはずで。
浸水で家に住めなくなり避難所暮らしをしてる人もいるだろし、雨で土壌が緩んで土砂崩れが起こり亡くなる人だっていたでしょう。物価は高騰し、職を失った人も当然いるハズ。

というか、僕らは災害のニュースでそういう人達を見てきてますよね。

もちろん、この作品はフィクションなんだからリアルと比べて云々が野暮なのは百も承知だし、本当に雨が3年も降り続くことはありえないので、これは帆高の心象風景としての東京なのでしょう。

でも、作中に描かれていない3年の間、恐らく2人はそうした被害をニュースなどで見て、自分たちの選択が正しかったのかと悩み続けたのではないかと思うし、その結果としての帆高の行動、ラストの結論に達したから感動的なはずで。

なのにそこ(大雨の被害の様子)をまったく描かずに、帆高の目に映る東京は相変わらずキラッキラしっぱなしで、ただ緩やかに水位が上がっただけのユートピアにすら見える……って、

ポニョか!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

いやね、確かに雨による被害を描けば物語のノイズになってしまうのは分かるし、だから映像や言葉の端々でぼんやり伝えるという意図は分かる。

でも、間接的でもいいから1カットでも被害のカットが入ってれば、お婆さんや須賀のセリフの意味、帆高の見え方も全然変わったんじゃないかなって思いましたねー。
個人的には、そこだけが残念でした。

でも、前半で書いたようにニューシネマ的な展開には新海監督の進化を見た気がするし、個人的に「君の名は。」よりも本作の方が断然乗れて、面白かったです!!

興味のある方は是非!!

 

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前作より断然面白かった「アナと雪の女王 2」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは記録的大ヒットとなった前作「アナと雪の女王」から6年ぶりの続編『アナと雪の女王 2』ですよー!!

今回はAmazonビデオでレンタルして観ました。

みちのたびへーーーーーーーー!!(´∀`)ノ

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概要

第86回アカデミー賞で歌曲賞、長編アニメ映画賞を受賞した『アナと雪の女王』の続編。姉エルサの氷と雪を操る力の秘密に迫る。前作に引き続き、監督をクリス・バックジェニファー・リー、エルサ役の声優をイディナ・メンゼル、アナ役をクリステン・ベルが務めた。(シネマトゥデイ より引用)

感想

記録的大ヒット作の続編

2013年に公開された前作「アナと雪の女王」は原作となるアンデルセンの「雪の女王」を大きく改変し、ディズニー史上初のダブルヒロインで女性やマイノリティーの解放を描き、主題歌「レット・イット・ゴー」を始めとしたロバート・ロペスとクリステン・アンダーソン=ロペス夫妻が手掛けたキャッチ―で印象に残る楽曲も相まって、日本だけでなく世界中で記録的大ヒットとなったことはご存じの通り。

で、昨年待望の続編として公開された本作は、前作に引き続きロバート・ロペスとクリステン・アンダーソン=ロペス夫妻がメインテーマを、音楽をクリストフ・ベックがそれぞれ担当し、監督をクリス・バックジェニファー・リーエルサ役のイディナ・メンゼル(日本吹き替えは松たか子)、アナ役にクリステン・ベル(日本吹替は神田沙也加)と、キャスト&スタッフは前作から引き続き続投しています。

ところが、主題歌に前作ほどキャッチ―さが無かった事や、公開時に評価が二分していた事もあって、正直あまり期待せずに観たわけですが……、僕は前作より断然本作の方が好きでしたねー!!

もちろん前作でのエルサ=マイノリティーの解放という前提を踏まえての本作ですが、前作がエルサ視点での「個の開放」をメインに語られていたのに対し、本作は物語の比重をアナ=マジョリティー側に移し、彼女の成長を通してマイノリティーとマジョリティー双方が手を取り合うという、前作のテーマをさらに推し進めた内容になってるんですよね。

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その分、物語に入る要素が増えて若干の消化不良を起こしている部分もあるし、あのラストに納得のいかない人や、前作が好きだからこそ本作に不満が残る人もいるでしょうが、個人的には「アナ雪」の続編として、それぞれのキャラの落としどころはアレしかないのではないかと思いました。

ノーサルドラとサーミ人

本作で登場する森の民「ノーサルドラ」の人々。

そのモデルとなっているのはノルウェー先住民族で、長くトナカイの遊牧や狩猟を行ってきたサーミ人です。

サーミ人は、スカンジナビア半島北部ラップランド及びロシア北部コラ半島に暮らす人々なんですが、過去に差別的な扱いを受けてきた歴史があるそうなんですね。

で、前作ではクリストフや冒頭で氷を切り出している男たちがサーミ人という設定なんですが、前作の中でサーミ人の描写って冒頭の歌(ヴェリィ)以外ほぼありませんよね。

さらに、元々サーミ人の多くはモンゴロイド系の遺伝子が入っているんですが、クリストフはほぼ白人。(サーミ人の中には金髪碧眼の人もいるらしいですけども)

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これに、SNS上では文化盗用・ホワイトウォッシュではないかという批判が上がったという経緯があるそうです。

そこで、続編となる本作ではサーミ人をモデルとした「ノーサルドラ」の人々が登場し、劇中でサーミ人の文化や歴史に敬意を払い、しっかり取材したうえで本作の物語が描かれたわけです。

また本作の主題歌である「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」などの曲には、サーミ人の伝統音楽「ヨイク」のメロディーが用いられているのだとか。

本作で描かれるノーサルドラの人々とアレンデール王国の関係にはそういったデンマークサーミ人の歴史的背景をもとにしているんですね。

そして、それは同時にディズニーが過去作品の中で描いてきた、「差別」や「文化盗用」への反省と、今後の作品作りへの姿勢を明確に打ち出しているとも言えるのではないかと思います。

というわけで、ここからネタバレするので、これから本作を観る予定の人やネタバレは絶対に嫌!という人は、映画を観た後にこの後の文章を読んでくださいね。

 

 

ダム

そんな本作では、エルサとアナの祖父に当たるルナード国王時代に作られたダムが劇中で象徴的な役割りを果たしています。

本作を観た人には言うまでもない事ですが、本作においてのダムは「偏見」「差別」「分断」「搾取」などのメタファーです。

ルナード国王はノーサルドラの人々が魔法を使うと思い込み警戒していて、ダムを餌に彼らを懐柔し支配しようとしていました。

しかし、ノーサルドラの人々は別に魔法が使えるわけではなく、森の精霊と心を交わし守られているわけです。

ところが疑心に囚われたルナード国王はノーサルドラの長を殺害。
ノーサルドラとアレンデール王国は戦争状態になり、争いの中でルナード国王は死亡、当時王子だったエルサとアナの父親は戦闘に巻き込まれ気を失ってしまう。
そんな彼を助けたのが、ノーサルドラの長の娘?(巫女?)だった後の女王(エルサとアナの母親)というわけです。

そしてダムによって傷ついた森を、精霊は森を魔法の霧によって長きに渡って閉じてしまうのです。

これはキリスト教化によって失われた土着信仰や文化、大航海時代の欧米諸国による支配や搾取、マジョリティーのマイノリティーに対する偏見や差別(あと自然破壊)への批判であり。

だからこそダムを破壊するのはマイノリティー側のエルサではなく、マジョリティー側のアナでなくてはいけなかったんですね。
その結果としてアレンデール王国の未来は救われることになる。

差別を”する側“が過去を知り意識を変えなければ未来はせき止められたままだったし、その結果として王国の未来もなくなってしまっていたわけです。

そこにアナ(とエルサ)の精神的な成長も描き、さらにクリストフの恋模様やオラフのエピソードも――と、一つの作品にこれだけ詰め込めば、そりゃぁ多少は消化不良な部分も出てくると思うし、個の物語ゆえにシンプルだった前作のストーリーと比べて、ゴチャゴチャした感じがしてしまうのも致し方ないのかなと。

ただ、個人的にはあれだけの大ヒット作の続編で、ここまで攻めた内容を誠実に描いたスタッフとGOサインを出したディズニーの姿勢には素直に拍手を送りたいです。

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まぁ、それでもあえて言うなら、橋から落ちそうになったアナの手を最初に掴むのは、さすがにクリストフで良くね?とは思いましたかねー。

まぁ、こんなややこしいことばかり書くと「え、そんなに重い話なの?」と警戒されてしまうかもですが、そこはディズニークオリティー

ちゃんとエンターテイメントとして、大人から子供まで楽しめるように作られているので安心してください。

興味のある方は是非!!!

 

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ワンカットという手法に意味と意義がある「アイスと雨音」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは「私たちのハァハァ」「アフロ田中」などの松居大悟監督による2018年公開の青春映画『アイスと雨音』ですよー!

世界21の映画祭が参加し、YouTube上で作品が観られる10日間のデジタル映画祭「We Are One: A Global Film Festival」の、東京国際映画祭のプログラムとして無料公開されてて、ネット上でお世話になってる方が推していたので気になって観てみました!

www.youtube.com

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概要

『私たちのハァハァ』『アズミ・ハルコは行方不明』などの松居大悟監督による青春ドラマ。オーディションを経て舞台の上演に臨みながら中止を言い渡された少年少女たちが、それでも舞台に立とうと奮闘する。『デスフォレスト 恐怖の森3』などの森田想、『デメキン』などの田中偉登、『14の夜』などの青木柚、ベテランの利重剛らが出演。衣装をファッションデザイナーのKEISUKEYOSHIDAが担当している。(シネマトゥデイより引用)

感想

全編ワンカット撮影?という試み

本作は、ある町で上演される舞台演劇のキャストに選出された少年少女たちの青春を描いた、いわゆる“バックヤードもの”なんですが、キャストが上演に向けて練習している劇中劇と、役者たち自身の物語が同時進行で絡み合いながら進んでいくんですね。

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それ自体はバックヤードものではよくある作劇ですが、本作が面白いのは全編ワンカットで撮影しているということ。

74分間カットを切る(割る)ことなく、主役を追い続けながら稽古初日から“本番当日”までの数か月と言う時間を描くというのは、僕の知る限りほとんど例がないと思うし、この試みは演劇を題材にした本作ならではだなーと思いました。

全編ワンカット(風)で演劇を題材にした作品といえば「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」を、バックスヤードものといえば「カメラを止めるな!」を連想する人もいるかと思いますが、本作はこの2本ともまた違う感じ。

ワンカット撮影は、物語の中で起こっている事柄をリアルタイムで見せるために用いられる事が多い(カメ止めはこのパターン)と思うんですが、本作の場合は(説明が難しいんですけど)、例えばカメラが主演の森田想を追って稽古場から別室に移り、再び稽古場に戻るとセットやキャストが変わっていて、テロップで「本番まで〇日」と表示されて数日の時間が経過して(いる事になって)いたり、彼女たち(役者)の物語と劇中劇をシームレスに繋げ、二つの物語を同時進行させながら、物語の切り替えの瞬間に時間が経過しているという体(てい)で物語が進んだりするんですね。

つまり本作では、舞台演劇的な「見立て」の手法を映画の中に取り込んでいるわけです。

その辺は、映画と演劇の世界を行き来する松居大悟監督だからこその発想だと思うし、稽古が佳境に差し掛かったある日、突如上演中止を告げられ――というストーリーも松居監督の実体験を反映しているらしく、それを演劇的「見立て」を使ってワンカット撮影することで、生々しい感情の流れや緊迫感が、ある種のドキュメンタリー的に映像に映し出されているんですよね。

*まぁ、もしかしたら(NGなどの理由で)途中でカットを切って編集で”ワンカット風“に繋げてるかもですが。

それでも、リアルと芝居、現実と虚構を有機的に絡めながら物語を進める本作には、ワンカット撮影という手法にちゃんと意味と意義があるし、それは舞台演劇を題材にした作品という前提があって初めて映画として成立しているわけです。

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また、エピソードの転換では二人組のラップグループ「MOROHA」が劇伴?を”生歌で語る”わけですが、どのナンバーもその場のシチュエーションと歌詞がいろんな形でリンクしていて、まるで歌舞伎の地歌みたいって思ったりもしましたねー。

キャスト

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そんな本作のメインキャストはこの作品の撮影時、多分17才の森田想を筆頭に田中玲子田中偉登青木柚紅甘戸塚丈太郎若杉実森門井一将と殆どが10代の若手で構成され、説明が抽象的過ぎてで何を言ってるのかよく分からない演出家役は松居監督自身が務めています。

メインキャストの8人は、「演技経験の有無を問わず」と募集期間約100時間で集まった400人の中からオーディションによって選ばれたそうで、ほぼ全員が役者としては未熟ですが、そんな彼ら彼女らが74分もの時間、二つの物語・二つの役をぶっ続けで演じ続けることで出てくる演技を超えた剥き出しの感情は、理屈抜きで観ているこっちの感情を揺さぶるし、その盛り上がりが極に達するクライマックスからラストシーンにかけては思わず泣いてしまいましたねー。

綿密な計算と仕掛け

本作を観た人の中には、もしかしたら「舞台演劇をそのまま撮影して映画にしただけ」と思う人もいるかもですが、僕は決してそうではないと思います。

上演の叶わなかった舞台演劇を一本の“映画作品”にするため物語の解体と再構築、ワンカットに違和感を持たせない作劇の綿密な計算と数々の仕掛けが施され、しっかり映画であることに必然性を持った作品に仕上がっていたと思います。

ワンカット撮影は多分、普通に映画を撮るよりずっと手間が掛かって大変なのは想像に難くないし、キャストの苦労・心労も並大抵ではなかったと思いますが、苦労分の価値がこの映画にはあったのではないでしょうか。

興味のある方は是非!!

 

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これぞ本当の”プロレス映画“「ファイティング・ファミリー」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、世界最大のプロレス団体WWEに所属していた女子レスラー・ペイジのサクセスストーリーと家族との絆を描いた『ファイティング・ファミリー』ですよー!

映画の噂を聞いた時からずっと観たかった映画ですが、今回やっと観ることができました。もうね、最☆高でしたよ!!(*゚∀゚)=3

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

女性プロレスラーのペイジことサラヤ・ジェイド・ベヴィスと家族を題材にしたドラマ。レスリングが好きな18歳のサラヤが、夢であるWWE(ワールド・レスリング・エンターテイメント)の試合に出ようと奮闘する。監督はドラマシリーズ「ジ・オフィス」などに携ってきたスティーヴン・マーチャント。主人公をドラマ「リトル・ドラマー・ガール 愛を演じるスパイ」などのフローレンス・ピューが演じ、レナ・ヘディニック・フロストのほか、本作のプロデューサーであるドウェイン・“ザ・ロック”・ジョンソンが本人役で出演している。(シネマトゥディより引用)

感想

WWEとは

WWE(元WWF)は今やアメリカのみならず世界最大のプロレス団体で、世界中に多くのファンを持つプロレス界のメジャーリーク的存在です。

所属するトップレスラーは“スーパースター”と呼ばれ、電飾や花火や音楽で彩られるど派手な演出と毎週3本のテレビ放送と月々のPPV放送、その総決算として年に一度生放送される「レッスルマニア」に向けて、レスラー同士のストーリーが組み立てられるので、一度ハマったファンは中々抜けられないんですよね。

かくゆう僕も過去にWWE沼にハマっていた1人ですw

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画像出展元URL:http://eiga.com / セットは全部本物

で、このWWEが凄いのは、興行だけでなくテレビ放送・レスラーたちの入場テーマなどなど全部自社制作できる部署がある完全独立性の会社だということ。
で、その中にはWWEスタジオというメディア部門もあり、トップレスラーの半生を描いたドキュメント作品なども多数制作しているのです。

本作は、そんなWWEスタジオが制作した女子レスラー・ペイジの半生を描いたドキュメントに感銘を受けたドウェイン・ジョンソンがプロデュースし、WWEが全面協力した伝記映画です。

ドウェイン・ジョンソン企画、”ザ・ロック“出演

イギリス出身のペイジは家族全員がプロレスラーで「WAW」という家族経営のインディー団体に所属。自らも13歳からプロのリングに上がっていたサラブレッド。

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画像出展元URL:http://eiga.com / イギリスのプロレス一家に育ったペイジ

2011年にWWEのトライアウトを受けて合格し、WWE傘下のNXTで活躍後、2014年念願のWWEに初登場でいきなり当時チャンピオンだったAJと対戦、ベルトを奪取して一躍スターダムを駆け上がったんですね。

2018年に怪我が原因で惜しまれながらも引退するまでWWEの女子部門で活躍し続けたスター選手だったそうです。

兄と共にWWEのスーパースターを目指していた彼女ですが、兄弟で受けたトライアウトで彼女だけが受かり、大メジャー団体で生き残るというプレッシャーの中、紆余曲折の末にWWE女子チャンピオンになるまでを劇映画にした本作。

プロデューサーのドウェイン・ジョンソンザ・ロック(ロック様)として活躍した元WWEのトップレスラーであり、彼もまたレスラー一家に生まれ育ったという境遇から、本作に特別な思い入れがあったのかもしれません。

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画像出展元URL:http://eiga.com / 劇中では”ロック様“も降臨!

劇中でも、久しぶりに「ザ・ロック」として登場、あの名ゼリフやロック様口調を大サービスしてくれて、当時を知るファンの一人としては大興奮でしたよ!

また、WWE全面協力ということもあって、試合映像、劇中登場するレスラー、試合会場やバックヤード、観客に至るまですべてが本物。
ペイジとその家族などは俳優が演じてますが、しっかりトレーニングを積んだらしく、試合シーンでちゃんとプロレスしてたのが、ファン的には凄く嬉しかったですねー。(もしかしたら要所要所で本当のレスラーと入れ替わってたかもですが)

これぞ本当の”プロレス映画“

これまで僕は、何本かプロレスが題材の作品も観てきましたけど、試合のシーンになると正直(´ε`;)ウーン…ってなることが殆どでした。

例えばミッキー・ローク主演「レスラー」は、落ちぶれたかつてのスターレスラーの悲哀を描いた名作ですし僕も大好きな1本ですが、こと試合シーンに限ってはプロレス好きにとって物足りないというか、「プロレスになってない」って思っちゃうわけですよね。

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画像出展元URL:http://eiga.com / ちゃんとプロレスしてる!

ところが本作の場合、試合のシーンがちゃんとプロレスになっていて、他の作品で感じるような違和感もないため、途中で冷めることなく物語に没頭出来るし、元トップレスラーのドウェイン・ジョンソンWWEが関わっているからか、プロレスの華やかな部分だけでなく、プロレスへの偏見や、プロレスの抱える影の部分もリアリティーを持って描かれていて、それがプロレスファンだけでなく誰にでも通じる、普遍的なサクセスストーリーになっているのも素晴らしかったです。

生まれ育った団体とWWEの違い、容姿のコンプレックスに悩んで自分を見失ったり、シャイでプレッシャーに弱く、スピーチが大の苦手だった彼女が、ラストで何千人もの観客の前でついに真のプロレスラーになる瞬間は最高だったし、グッときてしまいましたよ!

興味のある方は是非!!!

 

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ガンアクションはいいがツッコミどころは満載「デイライツ・エンド」(2016*日本ではビデオスルー)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「ワイルド・スピード」などに出演しているジョニー・ストロング主演のゾンビ映画デイライツ・エンド』ですよー!

日光が弱点で夜しか活動しない「アイ・アム・レジェンド」型ゾンビを狩るさすらいのゾンビハンターが、たまたま助けたヒロインが所属する生存者グループの脱出を手助けするという、「マッド・マックス」系ゾンビアクションです。

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画像出展元URL:https://www.amazon.co.jp/

概要

謎の疫病によって多くの人間がクリーチャーと化した近未来を舞台に、愛する者をクリーチャーに殺された男の壮絶な復讐を描いたサバイバルアクション。地球上で原因不明の疫病が蔓延し、感染した人々は凶暴なクリーチャーと化した。愛する女性を奪われた一匹狼のロークは、廃墟となった警察署に潜伏中の生存者グループと出会う。クリーチャーへの復讐に燃えるロークと、安全地帯への脱出を望む生存者たちは、手を組んでクリーチャーたちのアジトに攻撃を仕かけるが……。ローク役に「ワイルド・スピード」のジョニー・ストロング。(映画.comより引用)

感想

マッド・マックス+アイ・アム・レジェンド

この作品、映画秘宝復活号の中で紹介されていたのを読んで興味がわいたので、アマプラで鑑賞しましたよ。

いわゆるゾンビサバイバル映画なんですが、本作のゾンビは日光に弱く昼間は暗闇で寝てるけど夜になると元気モリモリで走り回るというアイ・アム・レジェンド」型ゾンビ

昼型が多いゾンビ界隈ではあまり見かけない珍種で、例え噛まれなくても(ゾンビの)血を浴びただけで感染してしまうという設定もかなり珍しい感じでした。

そんな夜型ゾンビと対峙する主人公は、アルファというゾンビに愛する人をゾンビにされて以来、復讐のため一匹狼のゾンビハンターとして放浪しているローク(ジョニー・ストロング)。
道すがら、盗賊に襲われていたヒロインのサムチェルシーエドモンドソン)をたまたま救った事から、なりゆきで彼女の属するコミュニティーが生き残った人間の住居地区があるハバへの脱出する手助けするという「マッド・マックス」的なストーリーなのです。

窓ガラス部分を金網で覆っただけという地味改造の70年式プリムスロードランナーで颯爽と現れ、街はずれのレストラン?で女ゾンビが眠っていた冷蔵庫にチェーンを引っかけて車で屋外に引きずり出して日光で焼き殺す冒頭シーンは、本作のゾンビの特徴を端的に説明しながら同時に主人公のカッコよさも見せるというスマートな演出で、これからの展開を期待させるには十分。

ちなみに、ロークを演じるジョニー・ストロングはアクション俳優、ミュージシャン、格闘家、ナイフ職人という多彩な顔を持っているのだとか。
ただ、射撃・格闘訓練やナイフ作りが忙しくて滅多に映画出演しない、いわゆるガチ勢な人らしいです。(映画秘宝情報)
映画中盤で見せる彼の肉体は、いわゆる筋肉太りのシュワちゃん系モリモリマッチョな体形ではなく、細見の体に針金を巻き付けたようなブルース・リー型の細マッチョ体形でしたよ。

サムを無事アジトに送り届けたロークでしたが、よそ者を信用しないコミュニティーメンバーは彼を牢屋に投獄(アジトは廃墟になった警察署)。
その夜、監視カメラを破壊し建物に侵入したゾンビを脱獄したロークが退治したことで彼は信用を得るんですが、その時、宿敵アルファを発見。

サムが見つけた飛行機でハバへ向かうため、飛行場まで走れる車を見つけて昼間のうちに脱出したいコミュニティーの面々に、リーダーのアルファを倒せば次のリーダー争い?に忙しいゾンビは襲撃してこないと主張するローク。

結果、サム達は車を探し、ロークの意見に同調した数名がアルファ率いるゾンビ軍団が眠るホテルに向かうのだが――という展開になっていくんですね。

劇中のほとんどがガンアクション&戦略的なゾンビ軍団

しかしこの作品、そうしたストーリーや展開はオマケみたいなもので、144分のほとんどが次々襲い掛かるゾンビ軍団を銃で撃ちまくるガンアクションに費やされています

アジトやホテルの限られた空間や高低差を使った本格ガンアクションは中々見ごたえがありますが、あまり画が変わらないので途中で若干飽きちゃうんですよねw

またゾンビの親玉アルファはかなり頭が切れる奴で、撃たれても平気なように防弾チョッキに身を包み、サム達の脱出を妨害するため警察署の出口に廃車でバリケードを作り、ローク達の襲撃を見越して罠を仕掛けるっていう、もはや喋れない&武器を使わない以外は人間とほぼ変わらないんですよね。

ツッコミどころ満載

そんなアルファにまんまとしてやられ、仲間を全員殺されたロークは大量のゾンビ引き連れてバスに乗り込もうとするコミュニティーがいる警察署に向かって逃げてくるんですよ!

お前何してくれとんねん!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッっていうねw

で、結局逃げ込んだアジトで最終決戦となるわけですが、仲間もリーダーも次々殺されて、もう大惨事ですよ。

さらにロークは反省するどころか、仲間の一人(仲間を見捨てようとするやつ)が車で逃げようとするのを見つけたロークは「コイツを囮に使おう(`・ω・´)キリ」とか真顔でクズ発言する始末。

最初にロークを牢屋に閉じ込めたリーダーの判断は正しかったよ!

サム達を逃がす手助けどころか、コイツのせいで被害が拡大しとるがな

まぁ、そんなツッコミどころ満載の展開を、仲間が死ぬ間際のエモい演出と絶え間ない銃撃戦でごまかしながら物語は進んでいくんですよね。

それでも何とか観てられるのは、ウィリアム・カウフマン監督のリアルなガンアクション演出とジョニー・ストロングの身のこなしあればこそですかね。

なので、ガンマニアやアクション映画好きな人なら、結構楽しめるのではないかと思いましたよ。

興味のある方は是非!

 

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深夜ドラマのノリでサクッと観れる「セトウツミ」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2013~2017年まで「別冊少年チャンピオン」に連載された人気漫画の実写映画化作品『セトウツミ』ですよー!

長年TSUTAYAでレンタルして映画を観てきたけど、TSUTAYA閉店に伴って先日ついに観念して加入したアマプラで観た最初の映画です。

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概要

関西の男子高校生2人が放課後に何となく会話するだけという異色さで話題の、此元和津也による人気漫画を実写映画化。タイトルは瀬戸と内海という主人公2人の名前を組み合わせたもので、彼らが交わす嘲笑的でユーモアを織り交ぜた掛け合いが展開していく。クールな内海役には『海を感じる時』などの池松壮亮、天然キャラの瀬戸役に『共喰い』などの菅田将暉。監督は『まほろ駅前多田便利軒』などの大森立嗣が務める。(シネマトゥデイより引用)

感想

菅田将暉池松壮亮の掛け合いを楽しむ映画

本作の物語をざっくり説明すると、菅田将暉池松壮亮が演じる二人の男子高校生が、放課後河原で喋る様子を全7話構成で見せるという、短編連作形式(というか章立て形式?)の脱力系日常コメディーです。

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とある事情でサッカー部を退部した瀬戸菅田将暉)と眼鏡をかけたクールな秀才の内海池松壮亮)が放課後、内海の塾が始まるまでの1時間30分の暇つぶしのため河原で愚にもつかないお喋りをするという内容で、その会話の中で徐々に二人の背景が分かってくるというストーリー。

僕は原作未読だったんですが、観終わったあとググって観たら菅田将暉池松壮亮の両名はかなり原作に近いキャスティングと言う印象で、物語もほぼほぼ原作のエピソードをそのまま映画に落とし込んでいるみたいですねー。

内向的でクールな内海と天然で外交的な瀬戸と言う対照的な二人の、オフビートな笑いを誘う掛け合いのテンポも良くて、中々楽しめました。

また、中盤以降で二人が出会いが描かれた第0話や、瀬戸が憧れているマドンナ的存在である樫村一期中条あやみ)の視点で描かれる第7話(最終話)を入れることで、物語や二人のキャラクターに厚みを持たせる展開も原作を忠実に映像化しているみたいです。

映画サイズに合ってない?

ただ、(これは好みもあると思うけど)個人的にはそれぞれのエピソードが若干長くて正直少し間延びしているような印象を受けました。
多分、1話あたり5分くらいでグッとタイトに絞った方が、二人の掛け合いの面白さが活きたんじゃないかなと。

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っていうか、この章立てという構成がそもそも映画と言う媒体のサイズに合ってなくて、30分くらいのドラマで1話につき3本構成とかでやるほうが物語に合ってるんじゃないかと。

って思ったら、映画の後に別キャストでドラマ化されてました

映画だとやっぱ動きがないと画が持たないし、それを補うためにか回想シーンがわりと頻繁に入れ込まれてるのも観てて若干気が散ってしまう。

例えば冒頭で背景的に出てきた人物が最後のオチ部分で重要な役割を担うなど、脚本で工夫はしてるんだけど、それも似たような展開が続くと途中で飽きちゃうんですよね。

もっと端的に言えば、コッチは映画である理由が欲しいというか、映画でなければ出来ないような映像や物語が観たいわけで、深夜ドラマのノリをそのまま映画にされてもなー(´ε`;)ウーン…っていう。

劇場版の「聖☆おにいさん」でも似たような事を思いましたけども。

まぁ、原作があるものだし多分予算もそんなに多くない小作品なので、言っても仕方ない部分もあるとは思いますけども。

ただ、75分と映画としては短くユルイ物語なので、サクッと何も考えずに観るには丁度いいかもですけどね。

興味のある方は是非!

 

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