今日観た映画の感想

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ひと組の母子が“世界”を受け入れるまでの物語「ルーム」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、第88回アカデミー賞4部門にノミネート、主演女優賞を獲得した他、世界の映画祭でも数多くの賞に輝いた作品『ルーム』ですよー!

重そうな内容だったので中々観る勇気が出なかったんですが、今回意を決して観てみましたー。(´∀`)ノ

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

エマ・ドナヒューの小説「部屋」を、『FRANK -フランク-』などのレニー・アブラハムソン監督が映画化。7年間も密室に監禁された女性が、そこで生まれ育った5歳の息子のため命懸けで脱出に挑み、長い間世間から隔絶されていた彼らが社会に適応していく過程を描く。主演は、『ショート・ターム』などのブリー・ラーソン。生まれて初めて外の世界に触れた息子の戸惑いを、子役のジェイコブ・トレンブレイがみずみずしく演じる。

トーリー:施錠された狭い部屋に暮らす5歳の男の子ジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)と、母親ジョイ(ブリー・ラーソン)。彼女はオールド・ニック(ショーン・ブリジャース)によって7年間も監禁されており、そこで生まれ育った息子にとっては、小さな部屋こそが世界の全てだった。ある日ジョイは、オールド・ニックとの言い争いをきっかけに、この密室しか知らないジャックに外の世界を教えるため、そして自身の奪われた人生を取り戻すため、部屋からの脱出を決心する。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

残酷な世界を少年の瑞々しい視点で描く

本作は公開時から話題になってたし評価も高かったので気にはなってたんですが、理不尽系の映画は苦手なので観るのに少々覚悟が必要かなーなんて思っているうちに、すっかり時間が経ってしまいました。
でも、いざ観てみたら、とてもいい映画でしたよ!

トーリーを超ザックリまとめると、

17歳で誘拐され7年間も納屋に監禁されていたジョイ(ブリー・ラーソン)は、誘拐犯の子供ジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)を身ごもり納屋の中で出産。→

やがて5歳になったジャックとジョイはついに開放される。→

ところがジョイは7年間、ジャックは生まれてからずっと、納屋の中しか知らなかった二人は「外の世界」を受け入れきれずに苦しむが……。
という三部構成になっています。

ね? 重そうでしょ?

実際起こっている事象は非常に重くて残酷で理不尽なんですが、本作ではそうした重い物語を、ジャックの一人称で描くことで「重くなりすぎないように」バランスが取られているんですね。

納屋の中で生まれ育ったジャックにとって、狭い部屋(ルーム)の中だけが「世界の全て」です。

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彼と世界を繋ぐのは映りの悪いテレビと、小さな天窓だけ。
そんな彼が納屋を脱出し初めて外に「世界」があることを“知った”時の恐怖や戸惑いと同時に、瑞々しい驚きと感動を、観客はジャック=少年と同じ視点で追体験するという作りになっていて、それが本作の生々しい重さを中和する役目を担っているんですね。

このジャックというキャラクターはとても重要かつ難しい役柄なんですが、そんなジャック役を当時まだ9歳のジェイコブ・トレンブレイが見事に演じていてビックリしましたねー。

7年という時間

一方、母親のジョイにとって「生きる」ために誘拐犯の言いなりになっていた7年間はまさに地獄の日々。
ジャックという希望を支えに過酷な地獄を生き延び、そしてついに牢獄から開放された彼女はしかし、失った7年という時間の重さを思い知ることになります。

両親の離婚、世間の好奇の目、知ってしまった父親の弱さ、「世界」から取り残された苛立ちと焦り、心無いマスコミの質問。

家に帰れば全ては元通りになると思っていた彼女でしたが、7年という時間は彼女から多くを奪い、「世界」は彼女の知るそれとは別物になってしまっていたわけです。

未知の「世界」にやってきたジャックと、別の「世界」に戻ってきたジョイ。
本作は、このふたりの母子が、それぞれの「世界」を受け入れて一歩を踏み出すまでを描いた作品なんですね。

普遍的なテーマ

一見特殊な設定の本作ですが、そこに描かれているのは、多かれ少なかれ誰もが経験したことのあるだろう「自分と世界」との関わりを寓話的に描いた成長の物語で、だからこそ「可哀想な母子の物語」ではなく、観た人の記憶と共感を呼び覚ます作品として観た人の心を揺さぶるんだと思います。

ついつい敬遠しがちな重い作品だし、好き嫌いは分かれるかもしれませんが、個人的には観て良かった一本になりましたよ。

興味のある方は是非!