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前作を分かりやすく翻訳「ドクター・スリープ」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのはスタンリー・キューブリック監督で1980年に公開された「シャイニング」から39年ぶりに公開された続編『ドクター・スリープ』ですよー!

続編ではあるものの、原作から大幅な改変がされたため分かりにくかった物語を、非常に分かりやすく”翻訳“した作品になってましたねー。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

スティーヴン・キングのホラー小説をスタンリー・キューブリック監督がジャック・ニコルソン主演で映画化した『シャイニング』の続編。一家を襲ったホテルでの恐ろしい出来事から40年後、生き延びた息子ダニーが遭遇する新たな恐怖を描く。『ムーラン・ルージュ』などのユアン・マクレガー、『ミッション:インポッシブル』シリーズなどのレベッカ・ファーガソンらが出演。『オキュラス/怨霊鏡』などのマイク・フラナガンがメガホンを取った。(シネマトゥディより引用)

感想

”シャイニング“とは

前作のタイトルでもあり、主人公ジャック(ジャック・ニコルソン)の幼い息子ダニーが持っている”力“「シャイニング」。
簡単に言えば「超能力」なんですが、オカルト嫌いだったスタンリー・キューブリックによる原作からの改変によって“シャイニング“=超能力の意味がかなり希薄になってしまった感は否めません。

また原作ではかなり重要な要素だった、父と子のエピソードが180度書き換えられた事に怒った原作者キングが、キューブリック版「シャイニング」を事あるごとにバッシングしまくり、しまいには自ら監督してテレビドラマを作ったのは有名な話。

原作版ではアル中の父親ジャックがいわくつきのホテルが持つ“邪悪な意思”にとり憑かれ、妻と子を殺そうとするも寸前で我を取り戻し、自身の身を犠牲に(本作クライマックスと同じ?)妻と子を救うというストーリーだったのに対し、キューブリック版ではアル中と神経衰弱によって狂った父親が妻と息子を殺そうと追い回す物語になっているんですね。

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僕なんかは「シャイニング」を長い間、悪霊に取りつかれた父親が妻子を殺そうとする話だと思っていて、息子のダニーは単に霊感の強い子供(というか子供だから霊感が強い)くらいに思い込んでいたわけです。

で、その続編となる本作では、キューブリック版の設定は引き継ぎつつ、物語に原作の要素を合流させたことで、ボクと同じような誤解をしていた人に、「元々はシャイニングってこういう物語なんですよ」と非常に分かりやすく“翻訳”してくれたんですね。

その感じは、押井守の劇場版「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」の設定や世界観を神山健治がテレビ版「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」で分かりやすく”翻訳“してみせたことで攻殻機動隊」というコンテンツに一般性を持たせ広い層に受け入れられたのに似ているかもしれません。

ただ、この”分かりやすさ“ゆえ、良くも悪くも難解なキューブリック版と違い、「数十年語り継がれる作品にはならないだろう」という印象を受けましたが。

ざっくりストーリー紹介

前作で大きなトラウマを抱えた40才のダン(ダニー: ユアン・マクレガー)は、父親と同じように酒に溺れる生活に明け暮れていました。

しかし、そんな自分を変えようと辿り着いた町でホスピス終末医療)の仕事を得た彼は、自身の能力”シャイニング”を使い、死にゆく老人に安息をもたらす事で“ドクター・スリープ”と呼ばれるようになり、親友の勧めもあり禁酒セラピーにも通ったことで禁酒にも成功するんですね。

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また同時期、ダンは彼よりも非常に強力なシャイニングの能力を持つ少女アブラ・ストーン(カイリー・カラン)とテレパシーでやり取りをするように。

そんなある日アブラは、シャイニングを持つ野球少年ブラッドリー(ジェイコブ・トレンブレイ)を誘拐し拷問死させる「トゥルー・ノット」の犯行を“感じ取り“ます。

ハットを被る怪しい女ローズ・ザ・ハットレベッカ・ファーガソン)率いる「トゥルー・ノット」は、シャイニングを持つ子供に苦痛を与えながら殺害し、彼らの生気を吸い取ることで数百年を生きるヴァンパイヤ集団だったのです。

「トゥルー」の犯行を”目撃“しローズ・ハットに存在を知られてしまったアブラは、ダンの許を訪ねて助けを求めるのだが――と言うストーリー。

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前作とは違い、この続編はメインキャラが自身のシャイニングで闘う「超能力大戦」になってるんですねー。

そして超能力は原作者キングの大好物でもあります。
キングと言えば、超能力とネイティブアメリカンの呪いですから。
長編デビュー作「キャリー」も超能力ものだったし、原作版「シャイニング」なんか、この2つの要素が両方入ってますからねw

お国柄?

そういえば「シャイニング」のストーリーがイマイチ分かりにくい理由として、前述したようにオカルト嫌いのキューブリックが幽霊や超能力の部分をカットしたりぼやかした事の他に、「超能力」と「霊能力」が同じものとして描かれているってのがあって、日本だと「超能力」=SFと「霊能力」=オカルトって具合にハッキリ分けられてるじゃないですか。

ところが、「シャイニング」と本作ではこの2つの能力は同じ「力」として描かれているんですよね。

前作に登場しシャイニングでダニーを救ったオーバールックホテルのシェフ、ディック・ハロラン(カール・ランブリー)の幽霊が、本作でダニーの師匠的な立ち位置で登場するとか、ハロランの教えでダニーがホテルの亡霊たちを封じる術を会得するとか。

そういうのって、日本では「霊能力」に括られると思うんですが、前作&本作ではあくまで「超能力」の一つなんですよね。

それがキング独自の解釈なのか、それともアメリカのお国柄(死生観の違い)ゆえかはよく分からないんですけども。

キューブリックオマージュもふんだんに

そんな本作、前作の舞台でもあるオーバールックホテルがローズ・ザ・ハットとダン&アブラの最終決戦の舞台になるんですが、ダンとアブラがホテルに続く一本道を車で上るところで、前作「シャイニング」のテーマ曲が掛かるという演出は個人的に燃えたし、双子幼女や露出狂おばさんら亡霊たち、エレベーターから溢れる大量の血、ダニーが三輪車で走る例の廊下や、ジャックが通うバーなどなど、キューブリック版シャイニングのオマージュがふんだんに盛り込まれていましたねー。

で、そこでの父子の邂逅を踏まえてダニーの最後の決断などなど、キューブリック版とキングの原作を上手くリミックスしながら、続編としても前作の語り直しとしても、絶妙な着地をしてみせたと僕は思ったし、今の技術なら前作キャラクターの顔をCGで再現することだって出来たハズだけど、あえて違う役者に演じさせたのも個人的には監督の大英断だと思いました

それに加え、シャイニングを持つ者同士の闘いの描写では、キングの持つ中二病感を余すところなく表現してて、同じく中二マインドを持つ僕なんかはグッときましたよ!

興味のある方は是非!!

 

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