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ハリー・ポッターのダニエル・ラドクリフが死体役!?「スイス・アーミー・マン」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、あの「ハリー・ポッター」のダニエル・ラドクリフが、なんと死体役ということで話題になった『スイス・ア-ミー・マン』ですよー!

劇場公開の時からずっと気になっていたんですが、僕の地元では公開されなかったのでDVDレンタルが始まるのを、今か今かと待っていました!

で、今回はDVDレンタルが始まったばかりの作品なので、前半ネタバレなし。後半はネタバレありで僕なりにこの映画の解釈を書いていこうと思います。
なので、これからこの映画を観る予定の方は、後半は映画の後に読んでくださいねー!

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

ハリー・ポッター』シリーズなどのダニエル・ラドクリフが主人公である死体を演じ、『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』などのポール・ダノと共演した異色作。無人島で遭難した青年が、死体と共にサバイバルしてわが家を目指す型破りな冒険を活写する。ヒロインに『スマッシュド ~ケイトのアルコールライフ~』などのメアリー・エリザベス・ウィンステッド。生者と死者という不思議なコンビがたどるシュールな旅のてん末に注目。(シネマトゥデイより引用)

感想

ダニエル・ラドクリフの当たり役(になるかも)!?

ハリー・ポッター」シリーズの主役として、世界的に有名なダニエル・ラドクリフ
しかしながら、「ハリー・ポッター」以降は中々役に恵まれず、主演作もあまり話題になってなかったですよね。
ホーム・アローン」のマコーレー・カーソン・カルキンもそうですが、キャリアを積む前に世界的ヒット作の主役になってしまった事は、必ずしも役者にとっては幸福な事ばかりではないのでしょう。

そんな彼が今回演じるのは、なんと死体役
そこだけ聞くと、迷走極まれりって思うかもですが、どっこい。
もしかしたら、この死体役は将来的にダニエル・ラドクリフにとって代表作と言われるのではないかと、僕は思いしましたねー!

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なにせ彼が演じる死体のメニーはとにかく多機能。

・体内に溜まったガスを噴射(つまりオナラ)して、ジェットスキーのように海上を進み。

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・体内ガスを口から噴射することで球や銛を飛ばしたり、火炎放射器にもなり。

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・研ぎ澄まされた歯は、木の枝やロープを噛み切り・ヒゲソリにも使え。

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・体内に水を溜めて水筒替わり・また時にはシャワー替わりにも使え。

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・死後硬直の反動を利用して、太い木材も真っ二つにし、指パッチンは火打石変わりにも使え。

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・興奮するとナニがコンパスの針のように動いて故郷の方向を示すのです。

 

監督

そんなアホみたいな映画を監督したのは、ミュージック・ビデオ(MV)畑から彗星のごとく現れた、ダニエル・シャイナートダニエル・クワンの通称「ダニエルズ」コンビ。なんと、本作が映画監督デビュー作なんだそうです。

しかしながら、さすがMV畑出身だけあって、こんなにもバカバカしい設定の映画を、美しい映像とセンス溢れる美術で見事に描いているんですねー。

 

ざっくりストーリー紹介

一人ぼっちで無人島に漂着した青年ハンク(ポール・ダノ)が、孤独に耐え切れず自殺を図っているその時、ふと砂浜を見るといつの間にか人影が横たわっています。

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「人いたー!!」と慌てて駆け寄るハンクでしたが、“彼”はすでに死んでいました。
失望するハンクでしたが、その死体、何故かずっとオナラをしているのです。
「体内に腐敗ガスが溜まってるのか…」
なんて思っていると、やがて死体はガクガク動き出し、波にさらわれて海に入るとすごい勢いで沖に向かって進もうとするではないですか。

そんな様子を見たハンクがもしやと思い、急いで死体に跨ると、死体はオナラの勢いで、ハンクを乗せたままジェットスキーのように高速で大海原を進んでいくのです。

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……って、何でやねん!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

と思った人は正常です。が、ツッコむのはまだ早い

だってこの死体、死んでるくせにベラベラ喋り出しますからねw

といっても、幽霊とか妖怪とかゾンビとかではなく、あくまで死体。ただ喋る死体なのです。

そしてこの映画は、そんな死体のメニーとボンクラ青年のハンクが協力? し合いながら故郷に戻るまでのサバイブを描いた、バディームービーでもあるんですねー!

……って、何でやねぇぇぇぇぇぇんっ!!!
(+・д・)つ)3゚)∵

と言いたくなる気持ちは分かる。僕もそう思ったし。
でも、そういう映画なんだから仕方がないw

そして、メニーはまるで十得ナイフ(スイス・アーミー・ナイフ)のような多機能さでハンクのピンチを救い、ハンクは死んで記憶を失ったメニーに“生きる喜び”を思い出させようと奮闘し、やがて二人(一人と一体?)の間には深い友情が芽生えていくのです。

オナラと哲学

こんなふうに書くと「バカバカしいコメディー映画」と思われるかもですし、概ねその認識で合ってるんですが、この映画が、ただバカバカしいだけのコメディー映画と一線を画すのは、その裏で、社会と個人、常識と自由、生きることと死ぬこと。という哲学的なテーマを語っていることです。

死んだように生きているハンクと、死体なのに生き生きしているメニー。
そんな鏡合わせの二人が、共に行動することでほんの少しだけ成長する。
しかも、そこにはオナラが(物語上の)大きな役割を果たすんですね。

というわけでここからネタバレしますよー!

 

 

 

メニーとは何者だったのか

多分、この映画を観た人はそのラストシーンに「え、一体どういうこと??」って思うかもしれません。

僕もこの感想を書く前にいくつかのブログで、この映画の解釈を読んでみたんですが、人によって解釈は様々っていう感じでしたねー。

で、この映画を見た僕の解釈なんですが、この作品は一言で言えば「ハリウッド版・ドラえもん的な感じですかねー。

この映画で描かれることは、恐らく全部ハンクが頭の中で考えている妄想(というか彼の身に起こっているアレコレを劇中で描かれているアレコレに置き換えている)なんじゃないかと思うんですね。

つまり本当の彼は、無人島に漂流もしていないし、もちろんメニーと出会ってもいないんじゃないかと。

本作では中盤以降、ハンクの過去が色々明らかになっていきます。

・早くして亡くなった母との思い出が邪魔して自慰が出来ないこと。
・堅物の父親(リチャード・グロス)との関係が上手く行っていないこと。
・バスで一目惚れしたサラ(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)に声すら掛けられないこと。
・(どうやら)自分に自信が持てずに、社会との折り合いが上手くつけられないこと。

ここからは、完全に僕の妄想ですが

恐らく幼少期から父親との関係が上手く行っていないハンスにとって、母親の存在は大きな救いになっていたんだと思うんですね。

しかし、その母親は若くしてこの世を去り、そのショックもあってハンスは自分に自身が持てなくなり、また、堅物の父親との関係も相まって、社会の目を恐れて自分を抑圧するようになって、いつしか身動きがとれなくなったのだと思います。

そんなある日、バスでたまたま出くわしたサラに一目ぼれしたハンスでしたが、告白はおろか声を掛けることすら出来ず、ますます内に篭るようになります。

そして、孤独に押しつぶされ自殺を考えた(もしくは実行しようとした)彼の妄想が、この映画の内容なんじゃないかと。

ハンスは自分の置かれた、耐え切れないほどの孤独な状況を無人島に準え、自殺を思いとどまるために頭の中に頼れる相棒を作り出す。それが死体のメニーです。

メニーは自分が今まで押し殺してきた心の投影なんじゃないかなと思うんですよね。だから死体という形で現れる。

同時に、彼はハンクの押さえつけてきた幼児性や性の象徴でもあり、だからところかまわずオナラをするし、小学生なみの下ネタを連呼することも平気だし、ケータイの待ち受け画像のサラにも一目惚れする。

無人島から何とか故郷の海岸? にたどり着いた二人でしたが、今度は切り立った崖や深い森など、様々な困難に見舞われます。
しかし、そんな数々のピンチを、ハンスはメニーの便利機能に助けられながら少しづつ故郷に近づいていくのです。

それはつまり、ハンス自身が自分の心の壁を乗り越えて、何とか社会との接点を持とうと足掻き続けている様子を深い森や切り立った断崖絶壁に見立てて描いているということなのでしょう。

もちろん一人ではとても太刀打ち出来ない状況も、メニーと一緒ならなんとか乗り切れるし、彼は挫けそうな自分を励ましてくれる最高の相棒なのです。

それは例えば、ウルトラマン仮面ライダーなどのヒーローだったり、ゴジラガメラなどの怪獣、困ったときに未来の道具で助けてくれるドラえもん、川原に落ちていたエロ本やオナラやウンチやチンコ(の思い出)だったり。

男は大人になっても、心の奥にそういう幼稚さを抱えていて、いざという時に自分を支えてくれるのは、そうした心の奥の幼稚な部分だったりするのです。(Dr・マクガイヤー氏の「ドリーム・キャッチャー」評より/意訳)

そして、本作でハンスを助けてくれたのは、海に打ち上げられた“ドザえもん”のメニーで、だからラストでハンスが社会に向き合った時、彼は冒頭でハンスを助けたときと同じように、オナラジェットで海へと去っていったのでしょう。

つまり、この映画はハンスが社会に向きうという通過儀礼を彼の心象風景で描いた、一風変わった成長譚なのだと思います。(全然違うかもw)

まぁ、僕の解釈はどうでもいいんですが、僕は大好きな作品だったし、前述したように今後、この映画はダニエル・ラドクリフの代表作の一つに数えられる作品になるかもしれない良作だったと思いますねー。

興味のある方は是非!

 

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