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試みとしては面白いけど「小さな英雄―カニとタマゴと透明人間―」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、スタジオジブリの制作部解散によりジブリを退社した西村義明プロデューサーが、米林宏昌の新作映画を作るため設立した制作スタジオ「スタジオポノック」の短編オムニバス作品『小さな英雄―カニとタマゴと透明人間―』ですよー!

米林宏昌、百瀬義行、山下明彦という元ジブリの三人が、「小さな英雄」というお題に沿って、それぞれ約15分の作品を制作しています。

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概要

メアリと魔女の花』を制作したスタジオポノックによるプロジェクトで、ちいさな英雄をテーマにした3本の短編で構成されるオムニバスアニメ。カニの兄弟の冒険『カニーニカニーノ』、母と少年のドラマ『サムライエッグ』、男の孤独な闘いを描く『透明人間』から成る。監督と脚本はそれぞれ、『借りぐらしのアリエッティ』などの米林宏昌スタジオジブリ作品に携ってきた百瀬義行と山下明彦が担当する。ボイスキャストには木村文乃尾野真千子オダギリジョーらが名を連ねる。(シネマトゥデイより引用)

感想

それぞれのストーリー紹介と感想

カニーニカニーノ」:監督 米林宏昌

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サワガニの兄弟・カニーニ木村文乃)とカニーノ(鈴木梨央)は、父親のトトとともに川底でひっそりと暮らしています。
しかし、ある大嵐の日にトトは危険が迫っていたカニーノを助け出すが、自身は濁流に巻き込まれ行方不明に。
カニーニカニーノは父を捜すため旅に出るのでした。

感想

(擬人化した)サワガニの兄弟から見た「世界」を描いた作品で、水面、水中を表現するために大胆にCGを使用するなど、これまでの作品とは違う挑戦をしていましたね。
また、大型魚もCGで描き、無機的な雰囲気、つまり怪獣的な怖さを演出しているのも、これまでの米林作品とは一線を画している感じでした。

ただ、ストーリーは正直凡庸、15分という短さも手伝って印象に残らないんですよね。
あと、父親と3人暮らしの兄弟に母親はいなくて、カニーノの回想で水面に上がっていく様子が描かれるので「あー、お母さんは亡くなってるんだなー」と思って観ていると、最後に子供を抱えて普通に帰ってきて…え? っていう。

サワガニは産卵を地上でするらしく、水面に上がっていった母親は単純に産卵しに行ってただけ……って、紛らわしいんじゃーい!!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

っていうか、だとしたらカニーノが母恋しさに嵐の中家を出て、そのせいで父親が濁流に流されて大型魚に襲われて…って、なにやってんだこのクソガキ! って話になっちゃいますよ。

あと、父親が流されて泣いてるカニーノ(←お前のせいだけどな!)を見つめるサワガニの親子っていうシーンがあるんですが、そいつらは普通のカニなんですよね。
…え、どういうこと? カニーニカニーノはカニじゃないの?? って混乱しました。

映像的に言うと、クライマックスの巨大魚との対決は、(おそらく)怪獣映画的なノリをやろうとしてる(魚がシンゴジラっぽかったし)と思うんですが、だとしたら迫力不足だなーと。

水中だから音を抑えたのかもですが、いやいや、もっと地響き的な音とか、水流を巻き上げる嵐のような音とか入れて迫力を出せばいいし、魚が襲ってくるのを避ける時も大量の砂煙が巻き上がったり、水流に二人が吹っ飛ばされそうになったり、そういうケレン味溢れる絵的なリアクションをもっと入れて、魚の巨大さや怖さを思いっきり出したほうが、対決のオチが引き立つハズですしね。

タヌキを出して高畑勲オマージュとかやる前に、ストーリーや設定をもっとしっかり詰めたほうがいいんじゃないかと思いましたねー。

 

「サムライエッグ」:監督 百瀬義行

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出生時から重い卵アレルギーに悩まされている野球が好きな少年・シュン(篠原湊大)。
両親はそんなシュンが誤って卵を食べないよう注意を払っていましたが、野球の練習から帰ってきたとき、母(尾野真千子)がいない中で誤って卵が含まれたアイスクリームを食べてしまうのです。

感想

食物アレルギーを持つ子への「経口免疫療法」(アレルギーの元になる食べ物を少しずつ接種して体を慣らしていく治療)のシーンからスタート。
時間が戻って、そこに至る母子の物語が描かれる構成です。
さすがベテランだけあってストーリー構成も無理がないし、食物アレルギーの子の生活や大変さがリアルに、そして真摯に描かれている印象。

それでいて、母が仕事でいない中、シュン君が野球の練習帰りにいつも食べているアイスに卵が入っていた(仕様が変わった?)ため、アレルギー症状が出てしまうクライマックスは、彼の焦燥感が痛いほど伝わってきながらも、生命力に溢れた素晴らしいシーンでした。

その前に、シュン君がいかに不便な生活をして、卵を生活から排除するのがいかに大変かを描き、発作を起こしたシュンに母親がエピペン(発作時に打つ簡易注射)を打つシーンや、野球の帰り道でシュン君が鳩の死骸を見つけるシーンなどを入れて、クライマックスでエモーションが高まるように計算されてるんですよね。

ただ、大人が観る分には面白いし感動するけど、子供はどう思うかな? ってのが気になりました。特に冒頭の「経口免疫療法」は、もう少し説明があった方が良かったかも。

 

「透明人間」:監督 山下明彦

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古いアパートに暮らす“彼”(オダギリジョー)は、周囲と何ら変わらないごく普通の青年としての毎日を過ごしています。
しかし、外に出れば、他人も、自動ドアも、ATMも、彼を認識しません。
なぜなら彼は透明人間だから…。

感想

3本の中では、個人的に一番お気に入りの作品です。
主人公の彼が、ただ透明なだけではなく重りがないと宙に浮いてどこまでも飛んでいってしまうという設定も新鮮でしたねー。

それはつまり、影が薄くて目立たない=何者でもなく代用可能な人間。“重り”がなければあっという間にセカイから放り出されてしまう現代の人間のメタファーであり、そんな彼が盲目の男( 田中泯)に存在を見つけてもらうことで、アイデンティティと勇気を得るという物語なんですね。

それだけなら、地味な作品になりそうな感じですが、重りがないと宙に浮いてしまうという設定をストーリーだけでなく、中盤・クライマックスの盛り上げに上手く活かしていたし、ラストでほんの少し自信を取り戻した“彼”が、重りがなくても浮かなくなった事をバイクの乗り方だけで絵的に表現したのも凄く良かったです。

個人的には、このストーリーを長編で観たいって思いましたねー。

まぁ、子供が本作を観てどう思うかはまた別の話ですがw

総評

スタジオとして一本の長編映画を作るのではなく、三人の監督がテーマに沿ってそれぞれ短編を作りオムニバス形式で発表するという試み自体は面白いと思いました。

ただ、一本15分はやはり短く正直物足りなさが残るのと、テーマだけでなく、それぞれの作品に緩やかな繋がりがあったほうがいいような気がしましたねー。

例えば、「カニーニ~」の中にシュンを連想させる何かがチラっと登場→「サムライ~」に透明人間に関連する何かが(同上)→「透明人間」に「カニーニ~」を連想させる何かが~みたいな感じで。

そうすることで、単に15分の物語を3本並べるのではなく、同じ世界観の中でそれぞれの物語が展開されているという、ユニバース的まとまりが出てくるんじゃないかと思いました。

あと、OPと幕間に出てくるCG丸出しのアレは、正直ダサいしいらないって思いましたねーw

興味のある方は是非!!

 

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