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ザック・スナイダー症候群「ヘルボーイ」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2004年公開のギレルモ・デル・トロ監督「ヘルボーイ」をリブートした『ヘルボーイ』ですよー!

僕は原作は未読なんですが、デル・トロ版が大好きなので早速映画館で観てきました。

で、まだ上映中の映画なので出来るだけネタバレしないように感想を書いていくつもりですが、これから本作を観る人やネタバレは絶対イヤ!という人は、先に映画を観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

ドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」などのニール・マーシャルを監督に迎え、マイク・ミニョーラのアメコミシリーズをスタッフやキャストを一新して映画化。異形のヒーローが、世界滅亡をたくらむ悪と戦う。本作では原作者のマイクが監修を担当し、ドラマシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」などのデヴィッド・ハーバーが主演を務める。ミラ・ジョヴォヴィッチが悪役として登場する。(シネマトゥディより引用)

感想

ヘルボーイ”って何者?

感想の前に「そもそもヘルボーイって何者?」っていう人も多いと思うのでザックリと説明しようと思います。

ヘルボーイ」は、ダークホーズコミックから1994年に発刊されたオカルト系アメコミヒーロー。

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画像出典元URL:https://www.amazon.co.jp

主人公ヘルボーイは、第二次世界大戦末期に敗戦の色濃いナチスによって地獄から召喚された悪魔。
しかし、ナチスの企みを知った超常現象専門家であるブルッテンホルム教授他2名の専門家と米特殊部隊はこれを阻止。まだ赤ん坊だった悪魔にヘルボーイと名づけブルッテンホルム教授が父替わりとなって彼を育てるんですね。

そして成長したヘルボーイは、教授が指揮する超常現象捜査局(B.P.R.D.)のトップ・エージェントとなり、現世の理と安寧を守るために世界各地の魑魅魍魎と戦うというストーリー。

作者はアメコミクリエイターのマイク・ミニョーラで、2004年の実写化1作目&2008年の続編「ヘルボーイ/ゴールデンアーミー」ではギレルモ・デル・トロ監督と共に自らがモンスターから背景に至るまで多数のデザインを担当しています。

そして本作では原作者・製作総指揮・監修に脚本も担当したことで、原作の持つダークさを前面に押し出したR-15指定のリブート作品になっているんですね。

日本で言うなら、ビジュアルは「デビルマン」、設定は「ゲゲゲの鬼太郎」が一番近いかもしれません。

デル・トロ版との違い

で、僕は前述したようにデル・トロ版「ヘルボーイ」の大ファンでしてね。
続く「~/ゴールデンアーミー」はアメコミ映画としては低予算ながら、ディテールの変態デル・トロのファンタジー&異形愛とフェチズムが詰まった大傑作だったわけですよ。

1作目でヘルボーイロン・パールマン)、念動発火を操るリズ( セルマ・ブレア)、インテリ半魚人のエイブ(ダグ・ジョーンズ)といったB.P.R.D.チームの関係性や異形との戦いを丁寧に描き、続く2作目ではヘルボーイ(異形)と人間の関わりという物語の核心に迫っていくのです。しかし、大いに期待していたものの3作目は作られず。

11年ぶりにリブート作品として作られた本作では、キャスト・スタッフを一新、ヘルボーイロン・パールマンからデヴィッド・ハーバーに交代、リズとエイブは登場せず、代わりに赤ん坊の頃妖精に攫われたことで強い霊能力を得たアリスサッシャ・レイン)と、日系アメリカ人で特殊部隊M-11のベン・ダイミョウ少佐 (ダニエル・デイ・キム)とチームを組み、ミラ・ジョヴォヴィッチ演じる世界に疫病を撒き散らしアーサー王に封印されるの現代に復活した魔女ニムエと対決するというストーリーで、デル・トロ版よりもダークに、ゴアシーンも増し増しになっていました。

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画像出典元URL:http://eiga.com /左からダイミョウ・ヘルボーイ・アリス

デル・トロ版との違いを打ち出し差別化を図りたいという意図があるのは分かるんですが、それが上手く機能しているかと言うと、個人的には正直、あまり上手くはいってないなーと思いましたねー。(僕がデル・トロ版好きすぎだからかもですが)

ザック・スナイダー症候群

本編を観てまず思ったのは「これ2か3でやるストーリーだろう」と。

リブート作品とはいえ、ぶっちゃけ「ヘルボーイ」ってDCやマーベルのヒーローに比べると明らかにマイナーだし、本作で初めて観るという人も多いと思うんですよ。

なので、第1作となる本作はまずヘルボーイがどんなヒーローなのかを観客に説明しないといけないわけで「皆様ご存知の~」みたいな感じにされても「いや、知らんがな」ってなっちゃうじゃないですか。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 魔女ニムエと覚醒したヘルボーイ。もうどっちが悪役か分からないw

その辺、デル・トロ版は実に上手くやっていて、1作目でヘルボーイの誕生から現在までを手際よく見せていたんですね。
本作でもヘルボーイ誕生については触れているものの、それよりもヘルボーイの出自に関わる「ある秘密」に主軸が置かれているため、登場人物が多く、物語も複雑化して分かりにくくなっいるんですよね。

いやいや、その秘密については続編でやれば良くね?と。

さらに各キャラクター(ヘルボーイ、アリス、ダイミョウ)の過去をいちいち回想シーンで見せているので、その度にストーリーが止まってしまうしダラダラと尺も長くなってしまう

で、本筋とは別件の事件を解決に出向いたヘルボーイが人間に裏切られて命を狙われ人間不信になり、そこにつけ込んだニムエに唆されて人間と魔物との間で悩むエピソードとか、絶対いらないでしょ。

そのくせ、原作読んでないと分からないような超マイナーキャラをフューチャーされてもなー。ファンへの“くすぐり”のつもりかもしれないけど、そんなの極一部のマニアしか喜ばないし、もっと他にやることあるだろっていうね。

あと悪役のニムエの力が強大過ぎて、クライマックスではロンドンの街が文字通りの地獄絵図になるわけですが、1作目でやるには起こる事態があまりに大きすぎて「マン・オブ・スティール」みたいになってるわけですね。

おいおい、いきなりゾッド将軍が敵とか強すぎだろっていう。
スーパーマンとの戦いに巻き込まれて一体何人死んでるんだよ的な。

これ、脚本も担当したマイク・ミニョーラか、それとも監督のニール・マーシャルのアイデアか分かりませんけど、DCEU(DCがマーベルの真似をしたユニバースもの)の初期作品、つまりザック・スナイダーと同じ失敗なんですよね。

観客はまだヘルボーイに感情移入出来てないのに、とんでもない事態に巻き込まれて一般人が死にまくるっていう。
それでもザックは一般人が死ぬ様子を直接は見せてなかったけど、本作では市井の人々が「進撃の巨人」なみに残酷な死に様を見せるので正直ドン引きです。

しかも、そこにヘルボーイは直接関わってなくて、遠く離れた場所でニムエとショボイ戦いの末に何かいい感じの話風にまとめられるんですよね。

なので、いや、お前らのケンカに巻き込まれて死んだ人たちの身にもなってくれよっていう。モヤモヤ感が残ってしまう。

あと、一番の問題はヘルボーイの強さが伝わらない事でして。
基本、ヘルボーイって特殊能力があるわけじゃなくて、ただ超頑丈で腕っ節が強いだけなんですね。
だからこそ余計に、悪者に対して圧倒的な強さを見せないといけないわけですが、本作のヘルボーイは結構序盤から苦戦してるんですよね。

2作目以降とかならともかく、1作目では最初に主人公の強さを見せるのは絶対必要だと思うんですけどね。

魔女がラスボスの映画は…問題

個人的に「ヒーローもので魔女がラスボスの映画は大抵失敗する問題」ってのがあると思うんですね。

スーサイド・スクワッド」しかり「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」しかり「ラスト・ウィッチ・ハンター」しかり「ヘンゼル&グレーテル」しかり。

 一つには、日本人的に魔女=化物という感覚がないっていうのがありますよね。
日本の場合、魔女とか魔女っ子って女児向けアニメのイメージがあるじゃないですか。
なので海外の人に比べて「魔女」に対する恐怖感や嫌悪感がない。

そしてもう一つ、「肉弾戦が見れない問題」があると思うのです。
僕みたいなボンクラがヒーロー映画に期待するのって、最後は正義のヒーローが悪と格闘の末に勝つという展開だと思うんですね。

でも、それを魔女相手にやるとなるとね。

いや、女性が厳ついマッチョをぶん殴って勝つ姿は見ていて爽快だけど、厳ついマッチョが(見た目だけとはいえ)女性をぶん殴る姿とか見てられないじゃないですか。
なので、魔女が悪役の映画って大抵、(魔女の)強力な魔法に苦しみながらヒーローが一瞬の隙をついて勝つor封印する展開になっちゃいますよね。
で、その格闘不足を補うため、厳つい中ボスを出す必要があるので尺が伸びてしまうし、結果的に最終的な決着にカタルシスが生まれづらいような気がするんです。

本作の場合ラスボスは、あの「バイオハザード」のミラ・ジョヴォヴィッチなので、ヘルボーイとの肉弾戦もアリなんじゃないかと思いましたけど。

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あと、ゴア描写に関してもデル・トロ版とは別の世界観を提示したいってのは分かるけど、それだけというか、ゴア描写を見せるためのゴア描写でしかなくて、物語的な必然性はあまり感じられなくて、ただ露悪的に見えちゃうのもどうなのかなと思いました。

まぁ、あまり悪口ばかりでもアレなので良かったところも書くと、ニムエとの決着後のラストシーンで、本当のチームになったヘルボーイ、アリス、ダイミョウが共闘するシーンは爽快感があって良かったし、特にアリスを演じたサッシャ・レインは可愛いしキャラクターとしても印象的で良かったです。

まぁ、本作はアメリカでは大コケしたらしいので続編が作られるかは正直微妙ではありますが(内容的には続編作る気満々でしたけど)、もし続編が作られたら一応劇場に観に行こうかなと思うくらいには楽しめました。

ただ、まだ「ヘルボーイ」を観たことがない人には、まずはギレルモ・デル・トロ監督の「ヘルボーイ」「ヘルボーイ/ゴールデンアーミー」をオススメしますねー。

興味のある方は是非!

 

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