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老境に差し掛かったジャッキーの新境地「ザ・フォーリナー/復讐者」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ジャッキー・チェンと007役者でもあるピアース・ブロスナンという二大スターが共演した『ザ・フォーリナー/復讐者』ですよー!
この映画、公開を超楽しみにしてたんですが僕の地元では上映されず。
今回レンタルが始まっていたので、やっと観ることが出来ました!!

いわゆる“ジャッキー映画”のテイストではないけど、老境の差し掛かったジャッキーだからこハマる役柄で、個人的には大満足でしたねー!!(*゚∀゚)=3

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概要

アジアのアクションスター、ジャッキー・チェンが製作と主演を兼任したサスペンスアクション。元特殊部隊員の男が、テロで亡くなった娘の復讐(ふくしゅう)を果たそうと、事件の裏に隠された真相に近づく。メガホンを取るのは『007』シリーズなどのマーティン・キャンベル。『マンマ・ミーア!』シリーズや、キャンベル監督と組んだ『007/ゴールデンアイ』のピアース・ブロスナンらが共演する。脚本は『エネミー・オブ・アメリカ』などのデヴィッド・マルコーニ。(シネマトゥディより引用)

感想

IRAvs元ベトナム戦士

本作はスティーブン・レザーの小説「チャイナマン」が原作。

ロンドンの爆弾テロに巻き込まれて愛する娘を失った、中華料理店を営む60絡みの男クァン・ノク・ミンジャッキー・チェン)が、復讐のためテロリストを追うというストーリーで、犯人を追うクァンがたどり着いたのは、かつてIRAアイルランド共和軍)の活動家だったが現在は北アイルランド副首相となっているリアム・ヘネシーピアース・ブロスナン)だったんですね。

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*ちなみに、本作でテロを行う組織は、中国版字幕や日本版字幕では「UDI」という架空の組織名になってますが、インターナショナル版ではIRAと表記されています。

最初こそ警察に「犯人を捕まえて罰してください」と言って同情されていたクァンですが、どうやらIRA絡みの事件らしい事は分かっているのに一向に捜査が進展しない事に号を煮やし、「犯人を教えて欲しい」としつこく警察やリアムの事務所を訪ねて回るんですね。
で、警察やリアムを含めた事務所の面々は、相手が小柄で初老の中国人だから当然ナメて掛かるわけですよ。「またチャイナマン(中国人への別称)が来たわ」なんつって。

ところがこのクァンは元々、ベトナム戦争アメリカ側の特殊工作員として戦っていた兵士。手近な材料でサクッと爆弾を作っちゃうような超ヤバイおじさんなのです。

一方のリアムは、今でこそ北アイルランドの副首相ですが、元はIRAの“戦士”(しかもかなりの武闘派)だったという過去の持ち主。

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*このキャラクターには実在のモデルがいて、歴史的にIRA暫定派と関係が深い「シン・フェイン党」のジェリー・アダムスという人らしいです。
IRAが起こしたテロに関わっていたのではと疑われている人でもあるらしく、本作では演じるピアース・ブロスナンも外見などをかなり寄せていています。

で、テロの犯人をリアムが知っていると直感したクァンは、直接リアムの事務所に乗り込むものの、リアムは知らぬ存ぜぬ(いや、本当に知らないんだけど)を決め込むわけですが、帰り際クァンが「考えが変わりますよ」と言い残し、トイレに即席の爆弾を仕掛けてボーン!
事務所の面々が慌てふためいているところに電話が鳴り、リアムが出ると「考えは変わりましたか?」とクァン。

うほほぉーー、怖ぇーーー!!((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタカタカタカタ

映画だけだとよく分からないと思うんですが、このクァンの過去は凄まじく、ベトナム国境近くの広西チワン族自治区出身。本人言うところの少数民族ですね。
最初は北ベトナム軍のベトコンゲリラとしてゲリラ戦を身に付けるも、お父さんが内ゲバというか内輪もめで殺されちゃったのをきっかけに南ベトナム軍に投降。今度はアメリカ軍の特殊部隊で活動します。

米軍からは「戦争が終わったらアメリカに亡命させる」という約束でしたが、アメリカが負けたので約束は保護にされて家族と取り残され。それで北ベトナム軍の捕虜になって拷問され、開放後に家族と亡命しようと乗り込んだボートがタイの海賊に襲われて妻と娘二人が殺されてしまう。

そして、イギリスで奥さんと死別して、3女の成長だけを楽しみに平穏な生活を送っていたのに、その娘は爆破テロで無残に殺されてしまうっていう。

つまり、クァンという男は、人生や家族を国家やイデオロギーによって理不尽に奪われてきた男なのです。そりゃ復讐もするでしょ。(。_。(゚д゚(。_。(゚д゚ )ウンウン

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そんなクァンを、幽鬼のような佇まいや終始死んだ目で演じたジャッキーがホント素晴らしくてですね。

渋いジャッキーに大興奮

これまで、カンフー映画チャップリンバスター・キートンといった無声映画のコミカル要素を盛り込み人気を得る一方、役者としては中々評価して貰えない事に一時はかなり苦しんだ彼ですが、年齢を経て、近年アクション以外の演技も評価されるようになり、そして本作では「ジャッキー・チェン」というパブリックイメージを覆すような、このクァンという老戦士役を見事に演じきっていました。

アクションの方も、いつもの明るく楽しい“ジャッキー印”とは一線を画していて、ジャッキー独特のアクションは残しつつ、あくまでシリアスなアクションを貫いているし、すでに60歳を超えたジャッキーなので、当然全盛期のような動きのキレはないものの、逆にそれが、ロートルながらベテランの凄みを見せるゲリラ戦の達人という役柄にピッタリハマっていたのではないでしょうか。

ただまぁ、日本&中国版で付け足されたというトレーニングシーンは余計かなとは思いましたが。

IRAの内部分裂が物語の推進力に

とはいえ、ここでひたすらジャッキーが復讐するだけなら、単なる小粒なアクション映画で終わるところなんですが、本作ではIRAの内部分裂というストーリーラインがあって、かつてのIRAに戻したい過激な分派が起こした爆破テロによって、リアムの立場はどんどん危うくなっていくのです。

クァンに悩まさられながら、リアムがテロの実行犯と裏で糸を引く“裏切り者”の正体を探るというもう一本のストーリーラインが本作の推進力になっていて、かつては暴力の中心にいた彼が、今度は仲間の暴力によって追い詰められてくわけですね。

この辺のアレコレに関しては、イギリスが複数の国の連合国であり、その歴史の中で様々な諍いがあったという事実を知ってないと、若干混乱してしまうかもしれません。

ただ、このほんの少し「裏切りのサーカス」を思わせる歴史的事実に基づいたストーリーと、ピアース・ブロスナンらの重厚な演技が、クァンのストーリーと絡み合って、本作を一筋縄ではいかない作品に押し上げているのです。

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というか、むしろIRAの内部分裂に翻弄されるリアムの物語こそが本作のメインストーリーであって、そこに“異物”としてのクァンが入り込むことで物語がを面白くしていると言う方が正しいかも。

そんな二人を、アジア随一のアクションスターであるジャッキーと、007役で一世を風靡したピアース・ブロスナンが共に老境に差し掛かった今演じる事に、映画史的な意味があるのかな?なんて思いましたねー。

興味のある方は是非!!!

 

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