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”終活映画“の愛すべき秀作「ラスト・ムービースター」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、一時は一世を風靡した映画スター・バート・レイノルズ最後の主演作『ラスト・ムービースター』ですよー!

バート・レイノルズって僕が子供のころのスターという感じで、顔や名前は知ってるけど個人的には特に深い思い入れはないんですが、TSUTAYAで本作を見つけたのでレンタルしてきました。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

ブギーナイツ』などで知られるバート・レイノルズの主演作。落ちぶれた映画スターがある行動を起こす。バートがセルフパロディーともいえる役どころをユーモアたっぷりに演じ、『ファール・プレイ』などのチェヴィー・チェイス、『6才のボクが、大人になるまで。』などのエラー・コルトレーンらが共演。『デトロイト・ロック・シティ』などのアダム・リフキンがメガホンを取った。(シネマトゥディより引用)

感想

バート・レイノルズって何者?

多分、ご存じない方もいると思うので、映画の感想の前にバート・レイノルズについてざっくり説明します。

バート・レイノルズは、全米屈指のフットボールの強豪フロリダ州立大学で、アメリカンフットボールの選手として活躍し将来を嘱望されましたが、ケガで選手を断念。

その後、1959年にテレビから俳優業をスタート、1961年に映画デビューを果たします。
逞しい肉体にヒゲが似合うタフガイとして人気を博し、米「コスモポリタン」誌ではヌードも披露、セックスシンボルにも選ばれるなど、かつて一世を風靡するほどの世界的人気スターに。

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ところが、「007」のジャームズ・ボンド役や「スター・ウォーズ」のハン・ソロ役を断るなど、作品選びに失敗して1980年代後半から人気が低迷、さらに私生活では離婚、自己破産と不幸が相次ぎ、不遇の時代を迎えます。

デ・ニーロやイーストウッド、レッドフォードなどがスター俳優から演技派にシフトしていったのに対し、レイノルズはそうした流れに上手く乗れなかったようです。

しかし、1997年に「ブギーナイツ」でゴールデングローブ賞では助演男優賞を受賞&アカデミー助演男優賞にノミネートされ、以降は演技派として大作の脇を固めるポジションを得るんですね。

そして、2019年公開の映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に出演する予定でしたが、2018年9月6日、残念ながらフロリダ州の病院で82年の生涯を閉じたのです。

個人的には、ジャッキー・チェンも出演していた「キャノンボール」の印象が強くて、マッチョで浅黒い肌にモジャモジャの胸毛が印象的な、ザ・ハリウッドスターという印象でしたねー。

本作は、そんなバート・レイノルズ”最後の主演作“として、監督・脚本にアダム・リフキン、「ミッドサマー」や「ムーンライト」など話題作を世に送り出しているインディペンデントの映画制作&配給会社「A24」が制作したんですね。

ざっくりストーリー紹介

かつて映画スターとして一時代を築くも、今は落ちぶれたヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)。
すっかり年老いて隠居生活のヴィックは、一緒に暮らしていた老犬の病死ですっかり気落ちしてしまいます。
そんな彼に、クリント・イーストウッドロバート・デ・ニーロも招待されたという「ナッシュビル国際映画祭」から招待状が届くんですね。

あまり気乗りのしないヴィックでしたが友人の勧めもあって参加を決意。
ところが、彼を空港に迎えに来たのはリムジンではなく、オンボロセダンに乗ったぽっちゃりパンク女子のリル(アリエル・ウィンター)。宿は街はずれの安いモーテルで会場はなんと町の小さなパブ。

「国際映画祭」と名乗っているものの、内容は映画オタクの有志が集まって手弁当で運営する、ただのファンイベントだったわけです。

これに怒ったヴィックは、泥酔したうえ悪態をつきまくり翌日の授賞式をボイコット。
リルに空港まで送らせようとしますが、その道すがらにある生まれ故郷のノックスビルに立ち寄り――というストーリー。

そして、二人はヴィックの思い出の地を巡っていくというある種のロードムービー的展開になっていきます。

終活映画

2010年以降、年老いたかつての大スターが主人公を務める、いわゆる「終活映画」が増えているような気がします。

例えば、クリント・イーストウッドの「運び屋」やロバート・レッドフォードの「さらば愛しきアウトロー」。
シルベスター・スタローンの「ロッキー・ザ・ファイナル」もこのジャンルの作品と言っていいと思います。

こうした「終活映画」は、作中の主人公に演者本人の人生を重ね合わせるメタフィクション的な作りが特徴。ある種の遺言状というか半自伝的な物語になっているんですよね。

本作の場合、これらの多作品と比べてもかなり露骨に主人公ヴィックと演じるバート・レイノルズ本人の人生が重ねられていて、ちょっとしたセミドキュメンタリーのような作りになっています。

それは、イーストウッド、レッドフォード、スタローンのように、主役を演じる役者自身が映画を企画制作するのではなく、アダム・リフキンという若い(といっても50代だけど)世代の監督が作ってるからだと思うんですね。

つまり他の「終活映画」と違って、本作はファンムービー的というか、一人称ではなく三人称の作品なのです。

愛おしいキャラクターたち

そんな本作、序盤は誰にも感情移入出来ません。
ヴィックはすっかり落ちぶれて過去の栄光にしがみつき、プライドが高くて気難しく、友達とオープンカフェでヨガをやってる女性のお尻を眺めながら「たまらんなー」なんて言ったり、酔った勢いでコールガールを買おうとするようなエロジジイ

そんなヴィックを迎えに来るリルは、ぽっちゃりというかムッチリボディのパンクガールで、そもそもヴィックに興味も敬意もなく、送迎中もずっとスマホでクズの彼氏と喧嘩するようなメンヘラ女子

映画祭を主催するリルの兄貴ダグ(クラーク・デューク)や、リルに片思いしているシェーン(エラー・コルトレーン)たちや会場に集まる観客たちは、田舎のボンクラ映画オタク
悪気がないのは分かるけど、詐欺まがいの招待状をヴィックに送ります。

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画像出展元URL:http://eiga.com / ボンクラ映画ファンたち

いわば全員が負け犬。そして当然揉めるわけです。

そんな流れが変わるのが、映画祭をブッチして帰ろうとしたヴィックと運転手のリルが生まれ故郷のノックスビルに立ち寄る中盤から。

生家を皮切りに、大学時代活躍したアメフトの会場や地元の名物菓子、スター時代に泊ったであろう高級ホテルなど。

そうした思い出の地を巡るうち、ヴィックの心境やリルとの関係に小さな変化が生まれていくのです。

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画像出展元URL:http://eiga.com / 最初は反発していた二人だが、次第にお爺ちゃんと孫娘のように

ヴィックの“顔”で泊まる事になる豪華ホテルのスイートルームではしゃぐリルと、そんな彼女を目を細めて眺めるヴィックははまるでお爺ちゃんと孫娘のようで、観てるこっちまでホッコリしてしまうし、ホテルのロビーでヴィックに声をかけてきたファンの娘の結婚式で彼が歌とスピーチを披露する姿を見て、リルがヴィックを見直すシーンもとてもいいんですよ。

というか、後に明かされるある事情からヴィックはずっとリルの事を気にかけていて、結構序盤から彼女に色々アドバイスしてるんですよね。

そして全てが丸く収まるラストでは、もう登場人物全員が愛おしく見えてしまうのです。

お爺ちゃんレイノルズvs若きレイノルズ

本作では、バート・レイノルズの過去作品映像がふんだんに使われています。(彼が若い頃のヌード写真まで出てくる)

そして一番の見どころは、年老いたヴィックが夢の中で若い頃の自分と共演するシーンVFXを駆使して、バート・レイノルズの過去作品(「トランザム7000」と「脱出」)に現在のバート・レイノルズを合成し、過去作品に合わせる形でヴィックのセリフを考え、“二人”を会話させているんですね。

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画像出展元URL:http://eiga.com / ジジイレイノルズとイケイケレイノルズ

爺さんヴィックが色々説教するけど、若くてイケイケなヴィックは意にも介さないっていう流れで、映像的にはハッキリ合成って分かるくらいショボいし、構成もそんなに上手くはないですが、でも、一連の流れの中で観ている分には気にならないクオリティーでしたよ。

未来は変えられる

映画祭でヴィックは「(自分は)いくつかの大事な選択を間違えた」と言ってるんですが、これはバート・レイノルズ自身が「007」や「スター・ウォーズ」などの出演を断った事、マーロン・ブランドロバート・デ・ニーロを指導したステラ・アドラーとトラブった?ことや私生活のイザコザを指しているんだと思います。

彼は、自らの選択でデ・ニーロやイーストウッドのように”なれたかもしれない“道を断ってしまったことをずっと悔いている=過去に囚われているわけですね。
しかし、故郷を巡った後で彼は「過去は変えられないが、結末は変えられる」という内容の事を話します。

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画像出展元URL:http://eiga.com

本作のテーマはまさにそれで、それに気づき行動したヴィックの言葉は自分だけでなく、リルやダグたちの未来にも小さな変化をもたらしていくのです。

そしてそれは、ヴィック=バート・レイノルズだけではなく、すべての人に当てはまることなんですよね。

正直、ストーリー的にはベタだし、全体的これと言って目新しいところもない小作品で、決して「傑作」とは言えませんが、個人的にはとても愛おしい愛すべき秀作だと思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

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