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地獄のウルルン滞在記「ミッドサマー」(2020) *ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「ヘレディタリー/継承」で世界中の映画ファンを震え上がらせたアリ・アスタ―監督が、スウェーデン夏至祭をモチーフに描いた『ミッドサマー』ですよー!

僕も「ヘレディタリー/継承」を見て、本作も劇場公開時から気にはなってたんですが、ビビりなので「劇場でホラーはムリ―!」とスルーしてて、先日アマプラの見放題に入ったのでやっと観ることが出来ました。

感想を一言で言うと、劇場で観なくてホントよかったですよ。劇場だったら絶対耐えられなかった。

というわけで、本作は結構前の作品だし、ネタバレしても面白さや怖さが薄れるタイプの映画でもないので、今回はネタバレありで感想を書きたいと思います。
なので、ネタバレは嫌って人は先に映画を観てから、この感想を読んで下さいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

長編デビュー作『へレディタリー/継承』で注目されたアリ・アスターが監督と脚本を務めた異色ミステリー。スウェーデンの奥地を訪れた大学生たちが遭遇する悪夢を映し出す。ヒロインを『ファイティング・ファミリー』などのフローレンス・ピューが演じ、『ローズの秘密の頁(ぺージ)』などのジャック・レイナー、『メイズ・ランナー』シリーズなどのウィル・ポールターらが共演。(シネマトゥディより引用)

感想

新進気鋭の鬼才・アリ・アスタ―

本作の監督、アリ・アスタ―は2011年から7本の短編映画を世に送り出した後、2018年、自身初の長編映画ヘレディタリー/継承」が2018年のサンダンス映画祭で上映されると批評家たちから「今世紀一番怖いホラー」と激賞され世界的にも大ヒットを記録します。

で、その「へレディタリー」を作る前に、スウェーデンのプロデューサーから「夏至祭を舞台にしたホラー映画の監督を務めて欲しい」とのオファーを受けて製作したのが本作「ミッドサマー」なんですね。

監督のインタビューによれば、「ヘレディタリー」も本作も監督の実体験がアイデアの基になっているって言うんですが、どんなひどい体験したらこんな嫌な映画が作れるのかって感じです。

「へレディタリー/継承」と本作の共通点と違い

前作「へレディタリー」と本作「ミッドサマー」を観る限り、主人公、もしくは登場人物がカルト集団に取り込まれ、彼らが暮らす“実世界“から“異世界”へと連れていかれる。精神が不安定なキャラクターの視点で物語が進む。普通なら見せないゴアシーンの顛末を長尺で見せるという共通点があって、その辺にアリ・アスタ―監督の作家性の源となる「何か」があるのかなって思ったり。

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例えば、前作では主人公一家の長男ピーターが悪魔教団に取り込まれるし、本作では主人公ダニーがスウェーデンのカルト的なコミューンに取り込まれていくんですが、両者の違いは、ピーターが教団によって全てを奪われ絶望した状態、本作で言えば主人公ダニーの恋人クリスチャンに近い立ち位置なのに対し、”現実世界“で居場所がなかった本作のダニーにとって、あのコミューンに取り込まれる事はある種の救いであるように描かれているんですよね。

また前作では主人公アニーの、本作では主人公ダニーの視点で物語が進むわけですが、どちらも精神が不安定であることが劇中冒頭で明かされます。

そんな彼女らの目を通して見た世界を、アリ・アスタ―監督はカメラワークやライティングなどを駆使して演出、それによって何が映っているわけじゃなくても、ずっと不穏で怖くて不安感を煽る映像を作り出しているわけですが、陰影が強くいかにもホラー然としていた前作に対し、本作はずっと光に包まれた美しい自然をバックに、陰惨で常軌を逸した狂気が描かれていくんですよね。

あと、この2作に登場するカルトの人たちが信じる信仰には、今も生贄制度が残っているという共通点もありますね。

前作で生贄にされるのはアニーらピーターの家族であり、本作ではコミューンのメンバーとクリスチャンらよそ者の大学生たちでした。

で、ここがアリ・アスタ―監督最大の特徴なんですが、普通なら途中でカットする、もしくは見せないようなゴアシーンの顛末を長尺で延々見せられるわけですよ。

前作「へレディタリー」では食物アレルギーで苦しむピーターの妹が事故による首チョンパで死んでしまうわけですが、(直接的なシーンはハッキリ映してないけど)妹が死んだあと、車を運転していたピーターがそのまま家に帰ってベッドで眠れぬ一夜を明かし、翌朝車の中の死体を発見したアニーが悲鳴を上げるまでをワンカットで見せるんですよ。でも首チョンパされた妹の死体は見せないんだと安心していると、アニーの悲鳴とオーバーラップするように道路に転がってハエにたかられた妹の首が大映しになるっていう。

対して本作では、夏至祭の儀式が始まって男女の老人が高い崖の上から岩に向かって投身自殺する様子をしっかり見せるというのが最初のゴアシーンなんですが、ここで嫌なのが、お婆さんは岩に頭が直撃して即死だったけど、お爺さんは着地に失敗して即死できずに苦しむんですよね。

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そんな一粒で二度美味しい的な演出はいらないから!っていうw

そしてラストのラスト、ダニーの恋人クリスチャンがクマちゃんのされて、生贄に選ばれた村の若者二人と一緒に丸焼きにされるシーンは嫌すぎて、とても最後まで見てられなかったですよ。

アリ・アスタ―とゴアシーン

ぶっちゃけ、アリ・アスタ―作品は他のスラッシャーホラーに比べればゴアシーン自体は極端に少ないし、音や映像でビックリさせられるシーンもほとんどないんですよ。
本作のラストシーンだって、残酷な殺され方ではあるけど、流血や切り株描写があるわけではないし、映像だけ抜き取れば目を背けるほど凄惨なシーンではないんです。

ただ、アリ・アスタ―の嫌なところは、その数少ないゴアシーンやショックシーンを事の起こりから結末までノーカットでず~~~~~~っと見せてくるんですよ。

もうね、とにかくしつこい!

そしてアリ・アスタ―映画の嫌なシーンって、そのゴアシーンを我が事として観客が見てしまうような演出をするので、ずっっっとダメージだ残るというか、映画を観終わった後もボディーブローみたいにずっと効き続けるんですよね。

ぶっちゃけこの感想も映画を観て3日経ってやっと書き始めましたけど、ラストシーンを思い出すだけで軽く気持ち悪くなりますからね。まだダメージが抜けきってないですからね。

「ミッドサマー」≒「アナ雪」

本作は、ホラー映画でコロナ禍の公開にも関わらず異例の大ヒットとなっているらしいです。しかも、何故か女性の評価が高いという。

僕なりにその理由を考えてみると、まずゴアシーンが少なくビックリシーンもないのでホラーが苦手な人も見やすいという事が一つ。
そしてもう一つは、主人公ダニーが居場所を得て救われる物語であるという事ではないかと思うんですね。

アリ・アスタ―監督はインタビューで本作を「変態の為の『オズの魔法使い』」「(ダニーにとって)本作はおとぎ話」と語っていますし、ジャンル的には「失恋(恋愛)映画」だとも話しています。

ダニーにとって、彼女が住むアメリカ(現実世界)はとても窮屈で生きづらいし、セラピストもクリスチャンも同級生たちも、彼女の苦しみや不安に共感してくれません。

そんな彼女が本作の舞台であるホルガ村に入るとき、彼女らの乗る車を追いかけるカメラがぐるりと回転する映像があるんですけど、あれは彼女たちが此岸から彼岸、現実から異世界に入ったという演出なんですよね。

ホルガ村は、端からみれば自由もプライバシーもないとんだカルト村なんだけど、ダニーにとっては彼女がずっと欲していた(彼女の感情に)共感してくれる仲間に囲まれたある種のユートピアなわけで、彼女にとって本当の自分でいられる「居場所」であり、それは彼女にとっての「救い」でもあるんですよね。

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それって、ディズニーのアナと雪の女王」と同じテーマじゃないですか。

しかもダニーに共感しないバカな男どもは全員ひどい死に方をするし、彼女を裏ぎったクリスチャンはクマちゃんにされたうえ丸焼きの刑ですよ。
はいスッキリ☆っていうw

そう言えば、あのクリスチャンをクマちゃんにして丸焼きって、ライナスの毛布というか、幼女期に大事にしてたぬいぐるみを成長してもういらない(邪魔)ので燃えるゴミの日に捨てる的なイメージなのかなーなんて思ったんですけど、どうですかね?

ちなみに、本作には劇場公開版とディレクターズカット版があって、ディレクターズカット版では、クリスチャンたちのクズなシーンがたっぷり入っているので、ラストのクマちゃんシーンがよりスッキリ観られるらしいですよ。

興味のある方は是非!

 

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