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国岡を愛でる映画「最強殺し屋伝説国岡 完全版」(2021)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「ベイビーわるきゅーれ」「グリーンバレッド」に繋がる阪元裕吾ユニバース第一弾?となる『最強殺し屋伝説国岡 完全版』ですよ。

前々から気になっていたので、今回はAmazonレンタルで鑑賞しました。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

『ベイビーわるきゅーれ』などの阪元裕吾監督が、殺し屋の男を描いたドキュメンタリーテイストのアクション。阪元監督が新作映画のシナリオを書くため”関西殺し屋協会”に取材を申し込んだところ、フリー契約の殺し屋を紹介される。ドラマシリーズ「龍虎の理(ことわり)」などの伊能昌幸、『恋するけだもの』などの上のしおり、『ファミリー☆ウォーズ』などの吉井健吾らが出演する。(シネマトゥディより引用)

 

感想

阪元裕吾ユニバース第一弾?

本作の監督・阪元裕吾は、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)在学中に制作した「べー。」 で残酷学生映画祭2016グランプリを受賞。

その後、心に闇を抱えた内気な大学生の青年と、田舎で暴力衝動を発散し続ける最凶不良兄弟を描いた「ハングマンズ・ノット」でカナザワ映画祭2017「期待の新人監督」賞を受賞して注目を集め、続く「ファミリー☆ウォーズ」(2018)で商業映画デビュー。

殺し屋の日常を描いた本作「最強殺し屋伝説国岡」や、ヤクザに暗殺者として育てられた主人公を描いた「ある用務員」、社会に適合できない女子高生殺し屋コンビの青春バイオレンスアクション「ベイビーわるきゅーれ」など、低予算ながら見ごたえのあるアクションやブラックな笑いを内包したバイオレンスで、映画ファンから熱い支持を受ける監督です。

特に、本作から「ベイビーわるきゅーれ」までの3作と、現在公開中の「グリーンバレット」は世界観や登場キャラクターを共有する、いわば”阪元裕吾ユニバース“であり、本作はその第一弾になるんですね。

ざっくりストーリー紹介

そんな本作を一言で言うなら「殺し屋の日常を描いたアクションコメディー」です。

新作「ベイビーわるきゅーれ」の脚本執筆の参考にするため、阪本監督は「関西殺し屋協会」の紹介で京都最強と言われるフリー契約の殺し屋、国岡昌幸を密着取材。
その仕事や日常生活をカメラに収めたドキュメンタリーという体の、フェイクドキュメンタリー作品です。

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阪本監督は新作が公開されるたび僕の耳にも話が入ってくるし、特に話題になった「ベイビーわるきゅーれ」は気になってるものの配信環境が合わずまだ未見でして。
ならばAmazonで見られる本作で阪元裕吾作品初体験となったわけです。

本作についても、「とにかくアクションが凄い」などの噂は聞いていたんですが、実際観てみると、殺し屋であること以外はごく普通の青年である国岡の日常と、我々の日常生活の中に殺し屋がいる世界線というおかしみが秀逸で、ストーリーだけ聞けば「ジョン・ウィック」を思い浮かべる人も多いかもですが、個人的にはタイカ・ワイティティ監督の「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」の雰囲気に近い感じがしましたねー。

目指すべきは週刊少年ジャンプ

というのも本作で描かれる国岡たち殺し屋は、一応裏社会の住人という設定ながら、国岡を取材する阪本監督が拍子抜けするほど我々の日常の中に普通に溶け込んでいるんですよね。

殺し屋たちは協会に属する正規社員と、国岡のようなフリー契約、そして協会に属していない野良に分かれていて、思った以上に殺しという仕事に対してカジュアルに臨んでいて、袋に入れたライフルの飛び出した銃口をビニールとガムテープで縛って持ち歩いたり、やり取りを電話でしたがる協会に対し「全部LINEでいいのに」と愚痴を吐いたり、仕事依頼用のwebページを見つけた子供が勝手に依頼し、仕事が終わった後に親が依頼を取り消して欲しいと言ってきて裁判沙汰になったり。

その一方で私生活では、出会い系サイトで出会った女の子と付き合うことになって国岡がウキウキしたり、殺し屋になりたいという友達に「副業から始めたら?」とアドバイスしたり、飲みの席で酒癖の悪い先輩殺し屋にうんざりしたり。

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職業が殺し屋であること以外、国岡はホントに普通のイマドキのあんちゃんで、僕ら観客はそんな国岡と一癖も二癖もある殺し屋たちとのやりとりを楽しむ。

つまり国岡というキャラクターを愛でる映画になっているわけです。

で、阪本監督本人がインタビューで「目指すべきはハリウッドではなく週刊少年ジャンプ」と言うように、このキャラクターを中心にした作劇法って映画というよりマンガのそれなんですよね。

フェイクドキュメンタリーという性質上

一方で、フェイクドキュメンタリーという性質上、観客は「カメラマン」(本作では阪本監督)の視点を通してこの物語を観るわけだけど、作中でちょいちょい阪本監督以外の「これ誰が撮ってるの?」という視点が入ってきたり、「いやいや、その位置にいたらダメでしょ」という無理のあるカメラ位置が気になるし、手持ちワンカメで引きを多用したアクション撮影ゆえか、せっかくの凄いアクションがショボく観えてしまう――というか「イップマン」オマージュっぽいアクション設計も「相手を倒す(目的を達する)為のアクション」ではなく「アクションを見せる為のアクション」という感じがして個人的には(´ε`;)ウーン…と言う感じ。
正直その辺の僕が感じるような違和感に対して、阪本監督はあまり頓着がない様に見えるんだけど、もし潤沢な予算があったらアクションの撮り方や見せ方は変わるのかな?
と思ったりしました。

とはいえ、その辺の雑さも含めた「ゆるさ」はそのまま、国岡や他の殺し屋たちや作品全体、もっと言えば阪本ユニバース全体に通底するオフビートな空気感にも繋がっているように見えるので、これはこれで「こういうもの」として観るのが正しいのかも。

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いや、他の作品も観てみないと分かりませんけども。

とにかく、本作で阪本監督が一番描きたいのは凄いアクションでも凝ったストーリーでもなく、国岡というキャラクターと彼が過ごす日常の風景だと思うので、そこに乗れる人は楽しめるんじゃないかと思いました。

興味のある方は是非!!