ぷらすです。
ディズニー+の配信でピクサー最新作「マイ・エレメント」を視聴しました。
昨年の公開時、僕は色々都合が合わずに劇場で本作を観られなかったんですが、やっぱ無理してでも劇場で観るべきだったなーと後悔してしまうくらい良い作品でしたねー。
画像出展元URL:http://eiga.com
概要
火・水・土・風といったエレメント(元素)たちが暮らす世界を描く、ディズニー&ピクサーによるアニメ。異なる特性のエレメントとは関われないというルールがある街を舞台に、火のエレメントである少女と、水のエレメントである青年の出会いを描く。『アーロと少年』などのピーター・ソーンが監督を務め、同作にも携わった『カーズ2』などのデニス・リームがプロデューサーを担う。ボイスキャストにはリーア・ルイス、マムドゥ・アチーらが名を連ね、日本版声優として川口春奈、玉森裕太らが参加する。(シネマトゥディより引用)
感想
監督の半自伝的物語
本作の監督であるピーター・ソーンは韓国移民の二世。
ニューヨークで生まれ育った彼はカリフォルニア芸術大学に通いながら、夏のインターンシップでブラッド・バード監督『アイアン・ジャイアント』に携わり、卒業後はウォルト・ディズニー・カンパニーやワーナー・ブラザースを経てピクサーに入社。
「ファインディング・ニモ」にアニメーション・脚本部門として初参加し、その後ピクサーの数々の作品で制作に参加。
「レミーのおいしいレストラン」など数本の作品では声優も担当し、2009年の短編映画「晴れ ときどき くもり」と、2015年の長編作品「アーロと少年」で監督を務めるピクサーのベテランクリエイターです。
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しかしインタビューによれば、多くのアジア系移民がそうであったように監督の両親は最初、息子が芸術の道に進む事には反対で、長男である彼に経営するお店を継いでほしいと思っていたそう。また、ピーター・ソーンはカリフォルニア芸術大学で出会ったアンナ・シャンバースと結婚していますが、異人種間結婚に対して彼のお婆さんは反対していたと話しています。
ピーター・ソーンは自分たちを育てる為に、多くの犠牲を払った両親の期待に応えられなかった事に罪悪感を感じていると言っていて、そうした彼の個人的体験は本作のヒロインである火のエレメント・エンバーとその家族の設定に行かされているんですね。
ざっくりストーリー紹介
そんな本作のストーリーをザックリ紹介すると、両親の反対を押し切って水・土・風のエレメント達が暮らすエレメント・シティにやってきたエンバーの両親バーニー・ルーメンと妻のシンダーは、他のエレメントたちからの差別を受けながらも偶然見つけた古く寂れた建物を改装、娘のエンバーにも恵まれ、雑貨屋「ファイアプレイス」を開店します。
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そうしてバーニーとシンダーの努力もあり、移民してきた多くの火のエレメントの常連客を集めるようになった「ファイアプレイス」は、ファイアタウンの中心になっていくんですね。
やがて、老年に差し掛かかり体の調子も悪いため、引退したらエンバーに店を譲ろうと考えているバーニーですが、エンバーにはすぐに癇癪を起してしまうという問題が。
店の大セールの日、店の切り盛りを任されたエンバーでしたが、客の勢いに圧倒され癇癪を起こしそうになった彼女は地下室に駆け込み、そこで怒りをぶちまけると勢いで水道管に亀裂を入り、地下室は水浸しに。そして、何故か水のエレメントであり市の検査官でもあるウェイド・リップルも地下室に現れ―――という物語。
個人的経験を基にした私小説
このあらすじで分かるように、本作の舞台エレメント・シティは監督が生まれ育ったNY、ファイアタウンはコリアンタウン、エンバーと両親は監督とご両親がそれぞれモデルになっているんですね。
最初は水のエレメントであるウェイドに反発するエンバーですが、ある目的のため行動を共にするうち二人は惹かれ合うようになっていく。
つまり、エンバーとウェイドのラブストーリーは監督と奥さんの恋愛経験がモデルになっていて、この作品はある意味で、ピーター・ソーン監督の半自伝的な物語でもあるのです。
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例えばウェイドの実家に招かれたエンバーは歓迎されますが、ウェイドの親族の一人が全く悪気なく「言葉が上手だ」と言うんですね。エンバーが自分はエレメント・シティの生まれだからと言うと、彼は自分の発言の間違いに気づいて気まずい顔をする。という短いシーンがあるのですが、これも監督自身の体験が乗っているのかもしれません。
で、こんな風に書くと「あー、またポリコレか」って思う人もいると思います。
でも、ちょっと待って欲しい。
確かに「多様性」は本作の重要なテーマの一つではあるけれど、この作品のメインテーマはあくまでウェイドとエンバー、事なる境遇に育った2人が互いを知り、様々な問題を解決しながら恋心を育てていくラブストーリーです。
そして、他のピクサー作品もそうであるように、本作はピーター・ソーン監督の体験を基にした私小説的な作品だからこそ、観ているこっちも物語に乗ることが出来るわけですね。
実際、公開当初はディズニー&ピクサー作品歴代ワースト2位と伸び悩んだ興行成績も口コミで評判が上がり、公開から2ヶ月弱の間TOP10にランクインし続けるロングランヒットになったんだそうです。
で、オープニングの興行成績が悪かった背景には、全米映画俳優組合のストライキで宣伝がしずらい状況だったことや、「フラッシュ」や「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」など大作との競争に負けた。ピクサーブランドの失墜、作品をDisney+で配信の配信で観る流れが出来ていることなど、複数の要因があると思いますが、その中の大きな要因の一つとして、親会社のディズニーによる行き過ぎたポリコレの大波にピクサーも巻き込まれ、ピクサー制作の本作も十把一絡げに思われているというのがあったと思います。
ディズニーとピクサーの違い
ただ、ディズニーとピクサーの「それ」は個人的な感覚ではかなり違うと思っていて、ディズニーが作品の物語や完成度よりもポリコレを語ることに熱心なのに対し、ピクサーはポリコレには配慮はしつつも、前述したようにあくまで私小説的な個人の経験を物語に落とし込んでいる作品が多いんですよね。
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そして、本作では差別や無理解を加害者と被害者に分けて、対決や分断で終わらせるのではなく、それぞれ育った境遇も立場も違う相手との相互理解や共存までしっかり踏み込んで描いているところが良かったと思います。
本作を観た人の多くは絶賛しているようですし、僕も個人的にとても好きな作品だったので、もし観るのを躊躇している人は配信などで観る事をおススメしますよ。
興味のある方は是非!!