今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

ボンクラとマヌケが織りなすノワールコメディー「ビッグ・リボウスキ」(1998)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、今やハリウッドのヒットメーカーとなったコーエン兄弟
1998年製作のコメディ作品、『ビッグ・リボウスキ』ですよー!

ヒッピー崩れのお気楽男、“デュード“ことジャフ・リボウスキが、同姓同名の富豪と間違われて騒動に巻き込まれていく顛末を描いたドタバタノワールほんのりハードボイルドコメディー(なんだそりゃw)です。

 

 

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あらすじと概要

鬼才コーエン兄弟が放つ、奇妙で可笑しい人間ドラマ。同姓同名の人物と間違われた男が巻き込まれる事件の顛末を、多彩なキャラクターを交えながらユーモラスに描く。『ファーゴ』で見せた人間の滑稽さをクローズ・アップコーエン兄弟お得意の不条理な可笑しさに満ちた傑作。ジェフ・ブリッジズ、ジョン・グッドマンスティーヴ・ブシェーミ共演。無職で気ままに暮らす“デュード”こと、ジャフ・リボウスキ。彼の家に突然、2人のチンピラがやって来る。女房の借金を返せと怒鳴るチンピラに、全く身に覚えがなく呆然とするリボウスキ。その後彼は、同姓同名の大金持ちと間違えられたと気づくが・・・。(allcinema ONLINEより引用)

 

感想

コーエン兄弟とは

ジョエル・コーエンイーサン・コーエンは、監督、脚本家、プロデューサーなど二人三脚で映画製作を行っている兄弟。
1984年に初監督作「ブラッド・シンプル」を発表以降、「赤ちゃん泥棒」「ファーゴ」「ノーカントリー」など数々のヒット作を手がけ、2014年からはテレビドラマ版「FARGO/ファーゴ」をスタートするなど、ハリウッドの大ヒットメーカーです。

作風は世相を皮肉ったブラックコメディーが得意で、ボンクラ男が犯罪や事件に巻き込まれたり、本の出来心でやった事が周囲を巻き込む大事件に発展していく物語が多い印象ですかねー。

本作では、ヒッピー崩れのお気楽ボンクラおじさん“デュード“ことジャフ・リボウスキが、同姓同名の大富豪に間違われて非道い目にあったのを皮切りに、その富豪との嫁の誘拐事件に巻き込まれ、誘拐犯、ポルノ王、中学生、保安官、ボーリング仲間の意識高い系ベトナム退役軍人に振り回されていきます。

オフビートな笑いと巻き込まれ型ボンクラ主人公

本作の舞台はジョージ・H・W・ブッシュ政権下、湾岸戦争のころのロサンゼルス。
そんな事とは無関係に、友達でベトナム退役軍人のウォルター(ジョン・グッドマン)、ドニー(スティーヴ・ブシェミ)とボーリング大会目指して練習している“デュード“ことジャフ・リボウスキ(ジェフ・ブリッジス)はある日、同姓同名の大富豪、通称“ビッグ・リボウスキ“と間違われて、借金取りに暴行された上に部屋の敷物におしっこをかけられます。
このビッグ・リボウスキの若い嫁がアチコチに借金を作っていたというんですね。

デュードは敷物の弁償をしてもらおうとビッグ・リボウスキの邸宅に行きますが、罵られ馬鹿にされ、けんもほろろに追い返されてしまいます。
そしてデュードは、この一件をキッカケに、次から次へと厄介に巻き込まれていくというストーリーなのです。

デュードは完全巻き込まれ型主人公で、どういうわけか家にやってきた暴漢に殴られ、蹴られ、トイレの便器に顔を突っ込まれ、敷物におしっこをかけられ、運び屋をやれば戦争ノイローゼの友人に邪魔をされ、車は盗まれ燃やされてと、もう散々w

しかも、この映画でデュードに関わるやつらは、誰一人として人の話を聞かない奴ばっか。
主人公がこれだけ非道い目に遭えば、少しは陰惨な内容になりそうなものですが、基本登場するのは(デュードも含めて)全員バカか間抜けなので、観ていて思わず笑っちゃうんですよね。
あと、嫌な感じにならないのは、デュード自身のノンキなキャラクターもあるんでしょうけど。

ポッコリお腹のいいオッサンなのに、短パン半袖、上からナイトガウンみたいなロングニットのカーディガンにサンダルで歩き回り、元ヒッピーらしく長髪にヒゲモジャ。
無職でボンクラ仲間とボーリングチームを組んでいて、楽しみは“葉っぱ“とボーリングとサビサビのポンコツ車でドライブっていう典型的なダメ人間ですが、「友達だったら、頼りにはならないけどきっといいヤツ感」が出てて、非道い目に合わされても何か飄々としてるんですよね。

ちなみにデュード(伊達男とか大将というニュアンスらしい)という名前は「カッコイイ」からと勝手に名乗ってるだけで、本名とは何の関係もありません。(中二病かw)

コーエン兄弟版「ロング・グッドバイ

1973年公開の「ロング・グッドバイ」という映画があります。
「ロング~」はレイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説『長いお別れ』の映画化ですが、原作を大きくアレンジしていて、主人公探偵フィリップ・マーロウは完全巻き込まれ型のダメ探偵なんですよね。
いつもヨレヨレのスーツにボサボサ頭で飄々としたマーロウは、本作の主人公デュードそのもの。

つまり本作はコーエン兄弟版「ロング・グッドバイ」なんです。
なので、こんなにゆるい作品なのに、全体の構造はハードボイルド作品だったりします。本格ミステリー的な安楽椅子探偵じゃなくて、足で調査して真実のピースを見つけ、事件を解決していく物語ですね。

そういえば、2015年公開の『インヒアレント・ヴァイス』も本作と同じで「ロング・グッドバイ」系譜の作品ですが、むしろ雰囲気は本作に近いかもしれません。

そして、この3本に共通するのは、主人公は何らかの事件に巻き込まれて右往左往した挙句に、何かを「得る」んじゃなくて「失う」けれど、それでも日常は続いていくという物語なんですねー。

個性豊かなキャラクターを楽しむ映画

本作に登場するキャラクターは、主役のデュードを筆頭に、みんな個性豊かです。
大富豪ビッグリボウスキ、苦労話と自慢話が大好きで、いつも虚勢をはっているし、その娘はよく分からない現代美術? をやってるフェミニスト? 
友達のウォルターはいわゆる「意識高い系」アメリカ人で、別れた奥さんに未練があり、他にもポルノ王やら、間抜けな誘拐犯やら、車泥棒の中学生やら、全員どうかしてる奴ばっかなんですが、でもみんな何処か憎めないんですよねw

本作は、そういう憎めないバカたちを愛でて楽しむ映画なんじゃないかと思います。
そういう意味では、ちょっと落語っぽい雰囲気もあるかな。

あと、デュードのもうひとりの友人で、多分一番まともっぽいドニーを演じてるのは、みんな大好きスティーヴ・ブシェミですよー!
個人的に、スティーヴ・ブジェミが出てる映画にハズレなしって思ってるんですが、本作もやっぱり面白い映画でした。

興味のある方は是非!!!

 

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不器用で欠点だらけな男がどん底から立ち上がる「サウスポー」(2016) *ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ボクシングの元世界チャンピオンがどん底からの再起を図る物語
『サウスポー』ですよー!

出演は「ナイトクローラー」の怪演でファンの注目を浴びるジェイク・ギレンホールなど名優揃い。
「負け犬の復活劇」という何百回、何千回と描かれてきたテーマですが、それゆえ普遍的で力強い作品でしたー!

で、今回ある程度のネタバレは本作の魅力には差し支えないと思うので、そこそこネタバレありの感想になります。
なので「何も知らずに観たい!」っていう方は、先にDVDで本作を観てから、この感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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あらすじと概要

愛する妻がこの世を去り、娘とも引き離され全てをなくしたボクシングの元世界チャンピオンが、再び頂点を目指し娘との絆を取り戻すため奮闘するドラマ。どん底からの再起を図る主人公を、『ナイトクローラー』などのジェイク・ギレンホールが体当たりで演じる。共演にはオスカー俳優フォレスト・ウィテカー、『007』シリーズなどのナオミ・ハリス、『スポットライト 世紀のスクープ』などのレイチェル・マクアダムスら実力派が集結。監督を、『トレーニング デイ』などのアントワーン・フークアが務める。

ストーリー:怒りを力に変える過激な戦闘スタイルのボクサー、ビリー・ホープ(ジェイク・ギレンホール)は、試合にまつわるいざこざが原因で妻を亡くす。生きる気力をなくした彼は世界チャンピオンの座から転落し、まな娘とも離れ離れになってしまう。全てをなくしたビリーはアマチュアボクサーのトレーナーを務めるティック(フォレスト・ウィテカー)の協力を得て、栄光と娘の信頼を取り返すため再起を図る。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

ベタでシンプルで力強いストーリー!

本作をざっくり一言で言うと「負け犬ボクサーが再起をかけて立ち上がる」というロッキー的なストーリーなんですが、主人公のビリー・ホープは最強の世界チャンピオンからスタートするので、実質「ロッキー3」的な物語って言ったほうがしっくりくるかも。

世界チャンピオンのホープは怒りをパワーに変えて戦う、ゴリゴリのインファイターとしてチャンピオンの座を守ってきたわけですが、敵ボクサーとのトラブルから最愛の奥さんが死亡。
悲しみに暮れるホープに追い打ちをかけるように支払いは滞り、失意のうちに防衛戦に臨むもボロ負け、挙句レフリーへの暴行で1年間のライセンス剥奪。
自殺を図り、財産を失い、愛する一人娘からも引き離され、ホープはまさにどん底まで落ちていくんですね。

本作はそんな彼が名トレーナーとの出会いで生まれ変わり、仲間の協力を得て再び王座に返り咲くまでを描いた、手を返し名を変えて何百回と作られてきたベタベタなストーリーなのです。

しかし、何百回と描かれてきたということは、逆に言えばそれだけ魅力的な題材なわけで、本作もストーリー自体に目新しさは微塵もないものの、“男の子“が観ればしっかり感動してしまう、ある意味王道のストーリーなんですねー。

魅力的なキャラ設定

本作の主人公、ジェイク・ギレンホールが演じるビリー・ホープと奥さんのモーリーンは施設育ちで、これまで二人三脚でボクシングビジネスで成功を収めてきたわけですが、ホープは防御はせずに打たれたら倍打ち返すという完全攻撃型のボクサーで、しかも自分の怒りをコントロール出来ない超短気な男。

奥さんはそんな彼を心配し、ファイトスタイルを変えて我慢を覚えるよう再三注意しますが、当のホープはバカなので聞く耳を持ちません

ボクシングで成功、愛する奥さんと一人娘のレイラもいて、幸せの絶頂にある彼ですが、彼自身の正確が幸せを破壊する時限爆弾である事が、冒頭の試合や会話から分かるようになっています。

超短気でバカなホープ、賢くて優しい奥さん、奥さん似でちょっと生意気な愛娘、ホープから奥さんの仇(かたき)のボクサーミゲルと手を組むプロモーター、貧しい子供たちにボクシングを教えホープを鍛える名トレーナーと、本作に登場するキャラクターは限りなくボクシング物語のテンプレ通りだけど、とても魅力的なキャラクターばかりで、しかも、そんな魅力的なキャラクターを演じるのは、フォレスト・ウィテカーレイチェル・マクアダムスなど実力派ぞろい。
もう、絶対面白くなる要素満載なわけですよ。

確かに面白かったし感動したんだけど……。

というわけで、観ている間はとても面白かったし、感動したし、興奮しました。
全てを失ったホープを救う丹下段平的トレーナーのティックの指導で、今まで攻撃一辺倒だったホープがディフェンスを学び、人間的にも成長していくシーンはアガるし、世界チャンプになったミゲル相手に、最初は劣勢だったホープがティックに教わったディフェンス技術で持ち直し、必殺パンチで勝利するシーンは大興奮でした。
一度は嫌われた娘レイラとのラストのシーンも、グッときちゃいましたしねー。

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ただね、観終わってみると何かこう物足りなさが残るんですよねー。
何ていうか、喉ごしが良すぎる感じなのです。

一つ一つのエピソードがサラッと流れすぎて心に残らない感じで、脚本に描かれたシーンを義務的に映像に起こしているような、っていうか脚本自体、一つ一つのエピソードがストーリーを進めるためのピースにしかなっていないというか。

ホープの絶望を描いた前半までは、わりといい感じでコチラもググッと引き込まれるんですが、そこから復活していくエピソードの一個一個があっさり描かれすぎな印象なんですよね。

特に気になったのが、トレーナーのティックのジムに通う黒人少年 ホッピーの件(くだり)。
本作の中でもかなり重要なシーンだと思うんですけど、ティックのキャラクターを引き立てるためのエピソードみたいに見えちゃうんですよね。

あと、最後の試合のクライマックスで、劣勢のホープがディフェンスを使って徐々にミゲルを追い詰めていくシークエンスも、必殺のパンチを繰り出してミゲルを倒すシーンも、全部トレーナーのティックの指示がキッカケなんですよ。
いや、そこはホープが自分で変わるキッカケがあって、そこから反撃→必殺パンチっていう流れにしてこそ盛り上がるんじゃん! っていうね。

リアルなファイトシーンにこだわったのかもしれませんが、フィクションなんだしテーマ的にも、ホープが自ら気づいて変わるっていう流れにして欲しかったんですよねー。

それと、個人的に凄く引っかかったのは、奥さんのモーリーンが亡くなるキッカケの発砲シーン。
多分、ミゲルの関係者のせいでモーリーンが亡くなったんだと思うんですよね。
ただ、このシーンがゴチャゴチャしててちょっと分かりづらいし、犯人が判明したのか、その後どうなったのかの決着が描かれてないんですよ。(ですよね?) 

ホープの仲間が相手の銃に気づき、自らも銃を取り出したために警官に押さえ込まれるシーンもあったんですが、まさか、そのまま誤認逮捕ってことはないよね?
で、その件はそのまま放りっぱなしなので、そこが引っかかってモヤモヤしちゃうんですよね。
ミゲルの身内が犯人で捕まったなら、ボクシングの観客はミゲルのことをもっとバッシングするんじゃないかと思うのですが……。うーん。

結局、ここのモヤモヤが晴れないので、個人的にその後の展開に入り込めませんでした。
どこか見逃したのかなー??

ホッピーのシーンもそうですが、僕はわりと各エピソードに決着をつけない投げっぱなし感が多いような気がして、キャスト陣の演技は良かっただけに残念な感じがしました。

とはいえ、ボクシングシーンは迫力満点だし、奥さんは美人で娘も可愛いし、「ナイトクローラー」のジェイク・ギレンホールしか観たことのない人は、本作を観たらビックリするんじゃないかと思いますよ。

興味のある方は是非!

 

 ▼ジェイク・ギレンホール主演作!

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韓国版レオン!? 「アジョシ」(2011)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2010年韓国ナンバー1の大ヒットヒットとなった映画
『アジョシ』ですよー!
母なる証明』のウォンビンと『冬の小鳥』で絶賛された子役キム・セロンが共演する、一言で言うなら「韓国版レオン」的な映画でしたー!

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あらすじと概要

2010年に韓国で公開され、その年のナンバーワンヒット作となり、韓国のアカデミー賞ともいうべき大鐘賞主演男優賞を受賞したほか、計8部門にノミネートされたアクションムービー。心に闇を抱えながら生きる男と、彼と心を通わせる少女のドラマが展開する。主演は『母なる証明』のウォンビン。『冬の小鳥』で絶賛された子役キム・セロンが少女を演じる。ウォンビンが鍛え上げられた肉体で披露する本格アクションも見どころだ。

ストーリー:過去の出来事が原因で心に闇を抱え、街の片隅で質屋を営んで生きる男テシク(ウォンビン)。隣に住む孤独な少女ソミ(キム・セロン)は、テシクをただ一人の友達として慕っていたが、ある日、ソミが麻薬中毒の母親共々犯罪に巻き込まれ、組織に誘拐されてしまう。ソミを救い出すため、立ち上がったテシクは……。(シネマトゥデイより引用)

 

 

感想

僕はそんなに頻繁に韓国映画って観ないんですが、観るときは大抵日本の映画ファンの間でも評判のいい作品を観るので、今まで韓国映画で「これは外れ」という作品には当たったことがないんですよね。
本作もネットの評判通り、面白かったですよー!

コリアノワール特有の痛みと、孤独な魂が触れ合う美しさ

本作は、簡単に言うと「質屋のおじさんが隣人の少女を助けるために巨悪に挑む」物語です。
そんな、質屋のおじさん(アジョシ)テシク役に韓流四天王? の一人、ウォンビン
隣人の不憫な少女役ソミは、『冬の小鳥』という韓国映画で絶賛された天才子役、キム・セロンが演じています。

いや、ウォンビンにおじさん感はないだろう! と思われる方もいるかもですが、これはあくまでソミ視点ですからね。10歳位の子から見ればウォンビンもおじさん枠なんでしょうね。
そしてこのテシク、ただの質屋のおじさんではなくて、いわゆる「ナメてた相手は殺人マシーン」系譜の謎多き男。

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“ある過去“が原因で、世間との関わりを絶ち質屋として生きる孤独な男(実は殺人マシーン)と、ヤク中の母親と二人暮らしで周囲から忌み嫌われる孤独な少女。
地獄のような劣悪な環境で、似た者同士の孤独な二人にとって互いの存在だけが互いの支えになっているんですね。

で、このソミ役のキム・セロンちゃんの演技が実に良くて、もうね、おじさん号泣ですよ!

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小汚い路地の隅に膝を抱えてちょこんと座ってる所在なさげな佇まいとか、母親がドラッグでラリって変な声を出してる時にフードの上から耳をふさいで地面を眺めてるトコとか……もう、誰か助けてあげてー!・゜・(ノД`)・゜・と。

そんな彼女が唯一懐いているのが、隣の質屋テシク。
野良猫のようにチョッカイをかけてくるソミに、優しい言葉とか一切かけない(関わらないようにしてる)んですが、それでもご飯を食べさせてあげたりソミママがラリってる時は家に泊めてあげたりするんですね。
ここで、テシクもまたソミを憎からず思っている事が分かるのです。

と、ここまで読んでくれた方は、なんとなく既視感があるんじゃないかと思います。
そう、この物語はいわば「韓国版 レオン」みたいな物語なんですね。

で、この二人の交流と同時進行で、もう一つの流れが進行していきます。
韓国のギャングと臓器売買に手を染めるマンソク兄弟が、麻薬の取引をしているんですが、なんとソミママがこの麻薬を盗んでしまうんですね。

って、何してんだこのバカっ母がー! (´・ω・)つ)3゚)∵ゴッ!

そして案の定、ソミ母子はマンソク兄弟にさらわれ、テシクも犯罪に巻き込まれていくというストーリー。

ここから、コリアンノワール特有の「痛い描写」が随所に入っていきます。
ソミママが、ドライヤーを肌にギューっと押し付けられる、地味だけどイヤンな描写あり、斧で頭をカチ割られるオッサンがいたり、生きたまま臓器を抜かれた死体が登場したり、電動釘打ち機で太ももを貫かれたりと、実にバリエーション豊か。
ただ、以前見た韓国作品に比べればグロ度は幾分少なめかなーと思いましたねー。
R-18じゃなくR-15指定ですしね。

ストーリー的に、観客がドン引きするような極端に痛い描写は控えたのかもしれません。

ウォンビンの肉体美とコリアンアクション

で、今回観て思ったのは、やっぱ韓国の俳優さんは演技の幅が広いなーと。
いや、正直に言えばウォンビンという人をまともに観たのは本作が初めてなんですけど、体脂肪何%だよ! という細マッチョな肉体美で、アクションもキレッキレでした。

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そのアクションも、米映画のヘビー級なアクションではなく、かといって香港や日本とも違う、韓国独特の軽量級のスピードと痛みが伝わる殺陣なんですよね。
特にクライマックスのナイフを使ったアクションは、スピードと痛さが伝わってきて、ドキドキですよ。

でも、本作の白眉はキレッキレなアクションではなくて、ウォンビンの表情なんですよね。
ある瞬間を境に彼が見せる幽鬼のような表情は、なまじ整った顔立ちなだけにゾッとするような絶望を感じさせるわけです。

あと、今回の悪役キム・ソンオとキム・ヒウォンは、少々オーバーアクトな感じなんですが、これは多分映画の色に合わせて、わざとデフォルメしてるんだろうなーって思いました。
で、この二人がラスボスな割に小物感がすごいのも、逆にリアルな感じがしましたね。
俗っぽくて身も蓋もない感じっていうか、こいつらに殺されたら浮かばれないなー感っていうか。

100点満点ではない

と、ここまで褒めてきたわけですが、個人的に決して100点満点の傑作というわけではありません。
やりたいことはよく分かるものの、やっぱり若干マンガ的な感じがあり、それがテーマ的に若干マイナス方向に働いてるし、作品としての底が浅さに繋がってる感じがしました。

ラストシーンも、気持ちはよく分かるけど、個人的には蛇足かなーと。
もちろん、テーマ的にも映画のオチとして必要なシーンなのは分かるし、着地点としても良い感じんですけど、ちょっとエモーショナルすぎというか。

とはいえ、アクションシーンは超カッコイイし、キム・セロンちゃんもいいし、約2時間の作品ですが、観ている間退屈はなかったです。

興味のある方は是非!

 

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オープニングシーンを見逃すな!「ラ・ラ・ランド」(2017)

ぷらすです。

観てきましたよー! 『ラ・ラ・ランド』
正直、デイミアン・チャゼル監督の前作「セッション」が個人的にあまり肌に合わなくて、ミュージカルもあまり積極的に観ることがないので、果たして乗れるだろうかと不安もあったんですが、実際観てみたら超良かったですよ!

というわけで、まだ公開中の作品なので、出来るだけネタバレしないよう気をつけて書きますが、これから観に行く予定のある人は、映画を観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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あらすじと概要

『セッション』などのデイミアン・チャゼルが監督と脚本を務めたラブストーリー。女優の卵とジャズピアニストの恋のてん末を、華麗な音楽とダンスで表現する。『ブルーバレンタイン』などのライアン・ゴズリングと『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』などのエマ・ストーンをはじめ、『セッション』でチャゼル監督とタッグを組んで鬼教師を怪演したJ・K・シモンズが出演。クラシカルかつロマンチックな物語にうっとりする。

ストーリー:何度もオーディションに落ちてすっかりへこんでいた女優志望の卵ミア(エマ・ストーン)は、ピアノの音色に導かれるようにジャズバーに入る。そこでピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と出会うが、そのいきさつは最悪なものだった。ある日、ミアはプールサイドで不機嫌そうに1980年代のポップスを演奏をするセバスチャンと再会し……。(シネマトゥディより引用)

 

 

感想

ミュージカルって2パターンあって、セリフや心情を歌と踊りで表現しちゃうパターン(「ウエスト・サイド物語」や、「雨に唄えば」など)と、芝居と歌や踊りが分かれてるパターン(「コーラスライン」や「天使にラブソングを…」など)に分かれますよね。
本作は、どちらかといえば前者のタイプ。
ただ、「レ・ミゼラブル」みたいにセリフがほぼ全部歌というわけではなく、芝居のパートの割合も結構多かったので、両者の中間(前者寄り)って感じだった気がします。

なのでミュージカルがあまり得意じゃない僕でも、楽しめたんじゃないかなーと思うんですよね。(´∀`)

映画冒頭、高速道路のシーンを見逃すな!

本作はミュージカルパートからスタートします。
予告編でも出てますが、渋滞の高速道路を舞台に華やかな歌とダンスでの幕開け。
このシーンが、古き良きハリウッドのザ・ミュージカルって感じで、
もう最高にアガるわけですよ!

長回しとカメラワークで、曲終わりまでワンカットで撮影したように見せているので、舞台のミュージカルを観ているような気持ちになります。
そして、曲終わりに合わせてタイトルがドン!

完璧すぎる! 超カッコイイ!☆拍手!!(゚∇゚ノノ\☆(゚∇゚ノノ\☆(゚∇゚ノノ\喝采!!☆

ぶっちゃけ、僕は本作でこのシーンが一番好きだし、このシーンだけで本作を映画館で見る価値があるって思いましたよ!

実は、数人のお客さんがこのシーンが終わってから入場してきてたんですね。
もちろん他の映画でも本編が始まる前に入場するのがマナーですが、特にこの映画では、このシーンは絶対見逃したらダメ! 本作の楽しみが半減しますよ!

キャッチーで耳に残る音楽

こうして物語は幕を開けるわけですが、その後も随所で歌やダンスがストーリーを盛り上げて行きます。
そんなキャッチーで耳に残る音楽やミュージカル・ナンバーを担当したのが、「セッション」でもデイミアン・チャゼル監督と組んだジャスティン・ハーウィッツ。

彼のシンプルだけどキャッチーで耳に残るメロディーが、主演のライアン・ゴズリングエマ・ストーン演じる夢を追う二人の、甘く切なくロマンチックな恋を盛り上げて行きます。

ライアン・ゴズリングエマ・ストーンのアンサンブル

カフェに勤めながら、何度もオーディションを受けては落ちている女優の卵ミヤを演じるのが、「アメイジングスパイダーマン」でヒロイン グウェン・ステイシーを演じたエマ・ストーン

そんな彼女と最初は反目しながらも、次第に恋に落ちていく売れないジャズピアニストのセブ(セバスチャン)を演じるのが、「ドライヴ」のライアン・ゴズリングです。

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セブは、ジャズオタクで時代遅れのビバップ(コード進行に沿った形でありながらも自由な即興演奏を順番に行う形式)にこだわり(映画評論家の町山智浩さん談)、いつか自分の好きなジャズを聞ける店をもつのが夢という売れないピアニストなんですが、そんなセブを演じるためにライアン・ゴズリングはピアノを猛特訓。
劇中のピアノのシーンは、全部自分で弾いているそうですね。
あと、ライアン・ゴブリングのちょっとニヤケた表情が、セブの軽さを醸し出してるのも良かったと思います。

最後に臨んだオーディションで独白シーンを歌い上げるエマ・ストーンのシーンも凄く良かったですねー!
それまでエマが自分を守るために身につけていた色んな鎧を脱ぎ捨てて、原点に戻った彼女の「核」みたいな物が初めて顕になる名シーンだったと思います。

そんな二人が、恋に落ちて盛り上がるシーンを、舞台演劇のような映像で、時にロマンチックに時に切なく、時に息のあったダンスで魅せていくシーンの数々はまさにザ・ミュージカル! 細かいことはすっ飛ばして生理的に気持ちがいいなーと思いました。

夢を追う呪い

前作「セッション」で夢の追う「呪い」の部分を描いたデイミアン・チャゼル監督ですが、本作では別の形で、その部分を描いていると思いました。

それが本作をただのハッピーエンドではなく、ほろ苦い後味を残す結末に導いているわけで、ラスト間近の“あるシーン“は多分、誰もが一度は考えた事があるんじゃないかなと。

そういう意味では、本作は「セッション」の続編と言えなくもないんじゃないかなーなんて思ったりしましたねー。
ネタバレになっちゃうので詳しくは書けませんがw

残念ポイント

そんな感じで、絶対に映画館で観たほうが良い映画なのは間違いない素敵な映画なんですが、あえて、残念ポイントを挙げるなら、セブとジャズの関わりみたいなものをもう少し入れ込んで欲しかったなと。
僕みたいな音楽音痴でも分かるように、セブがそこまでのめり込むジャズの魅力や楽しさを表現してくれていたら、もう、サイコー!!(*゚∀゚)=3 ってなったのになーと。

でもまぁ、そんなのは無いものねだりの重箱の隅ツツキだし、多分、監督自身分かっていて、「ミュージカル」としてのエンターテイメント性や魅力を優先したんだと思いますけどね。

っていうか、僕的には前述したように冒頭の高速道路でのオープニングシーンだけでも劇場に行った価値は十分にありましたよ!
ライムスター宇多丸師匠風に言うなら、このシーンだけで5億点出てますから!w

興味のある方は(劇場で)是非!!

 

▼予告編▼

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ラスベガスを舞台にスコセッシが描くギャング映画「カジノ」(1996)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「沈黙」のマーティン・スコセッシ監督のギャング映画、
『カジノ』ですよー!

スコセッシxデ・ニーロxジョー・ペシのギャング映画ですからね!
もう、面白くないわけがないのです!(;゚∀゚)=3ハァハァ
その割には初見)

 

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概要とあらすじ

ある天才賭博師を通じて、まだマフィアの支配下にあった1970年代から80年代のラスベガスを描いたニコラス・ピレッジ原作の同名書籍を、「沈黙」「タクシードライバー」「グッドフェローズ」のマーティン・スコセッシが映画化。
主演はスコセッシの盟友ロバート・デ・ニーロ

ストーリー:賭博の才を買われてヴェガスのカジノの経営をまかされる事になるサム・ロススティーン。カジノは売り上げを伸ばし、バックについている組織への上納金も増えていく。美しい女ハスラー、ジンジャーを見初めたサムは彼女と結婚し、生活は順風満帆のように見えた。しかしサムの長年の盟友ニッキーがヴェガスに乗り込んで来た事から事態は急変する。暴力的で破壊衝動の強いニッキーは次々とトラブルを引き起こし、それはカジノの経営にも少なからず影響を及ぼしはじめていた……。(allcinema ONLINEより引用)

 

感想

ギャング映画の名手マーティン・スコセッシ

本作の監督は、現在公開中の話題作「沈黙-サイレンス-」の巨匠マーティン・スコセッシ
タクシードライバー」「ヒューゴの不思議な発明」「 ウルフ・オブ・ウォールストリート」など、多作・多彩な監督ですが、アメリカのイタリア系マフィアの実態を描いた『グッドフェローズ』『ギャング・オブ・ニューヨーク』『ディパーテッド』などなど、彼の真骨頂といえば何と言ってもギャング映画ですね。

フランシ・スフォード・コッポラの「ゴッドファーザー」はイタリアシチリア地方のマフィア一代記を荘厳に描いたマフィア映画の傑作ですが、対するスコセッシはアメリカに住むギャングの俗っぽい実態を生々しい描写でリアルに描く名手。
日本で言えば「仁義なき戦い」の深作欣二的な感じですかね。

本作では、まだギャングに支配されていた頃の金と欲望と暴力が支配していたラスベガスを鮮烈な色彩で描いています。

 

盟友デ・ニーロとジョー・ペシ

本作の主人公、天才ギャンブラー エースことサム・ロススティーンを演じるのは、数々の作品でスコセッシと組んできた盟友、ロバート・デ・ニーロ
冷静沈着で慎重な男サムが成り上がり、人生の絶頂から転落していくまでを見事に演じきっています。

そして、そんなサムとは対照的な、凶暴で感情的、一度キレたら止められない男ニッキを『グッドフェローズ』でも二人と組んだ “近づきたくない男ナンバー1“ のジョー・ペシが演じています。

もうね、スコセッシが監督するギャング映画で、デ・ニーロとジョー・ペシが出演してるんだから面白くならないわけがないんですよ。

ちなみに、本作は実話に基づいたストーリーで、登場するキャラクターにはそれぞれモデルがいます。
主人公のモデルとなったフランク・"レフティ"・ローゼンタールという人は、最初原作者の取材に応じなかったらしいですが、スコセッシが監督でデ・ニーロが自分の役を演じて映画化されると知って、取材に応じたそうです。

また、ニッキのモデルとなったのはアンソニー・"トニー"・スピロトロという、こちらも実在の人物ですが、ジョー・ペシを見たスタッフが本人と間違えたという噂があるくらい、そっくりだったんだとか。

そして、本作でサムが一目惚れて結婚するジンジャー。
感情の起伏が激しい難しい役を『氷の微笑』のシャロン・ストーンが体当たりで演じています。

3時間近い長尺な作品だけど超面白い

本作の内容を一言で言うなら「友達と奥さんはよく選ばないとヒドイ目に遭う」という物語。
徹底的にデーターを集めて分析することでギャンブルに勝ち続け、予想屋として財を成すエースことサムは、その腕を見込まれてシカゴのボスからベガスのカジノ経営を任され大成功。
順風満帆なサムですが、ある日、男を食い物にして荒稼ぎするハスラーのジンジャーに一目惚れ。時を同じくしてシカゴから用心棒として、超短気で凶暴なニッキがベガスにやってきたことがサムの人生の歯車を狂わせていくのです。

このジンジャー、とにかく金遣いが荒くて、ダメンズなヒモに惚れてて、アル中で、メンヘラっていうとんでもない女性で、もうね、観てるこっちがイライライライラしちゃいます。
特に、サムにヒモとの交際がバレてからは、酒浸りの薬浸りで湯水のように金を使いまくわ、ニッキーと浮気するわ、しまいには夜遊びのために幼い娘をベッドに縛り付けて外出するわシッチャカメッチャカで、サムのことも1ミリも愛してないんですよね。

しかし、それはサムも承知だったわけで、それでも最初は十分な金と贅沢な暮らしが彼女の気持ちを変えていくと思っていたんです。
ところが、サムの理詰めな考え方が自由を愛する彼女を次第に追い詰め、事態はどんどん悪化していきます。
結局、二人はまったく別種の人間で、サムの計算違いはそんな彼女を理解、コントロール出来るという勘違いから既に始まっているわけです。

一方のニッキーも、恐喝、強盗、ゆすり、たかりとやりたい放題。
そんな行いが祟って、FBIに目をつけられてカジノに出禁になったりボスに睨まれたり。おまけに一度キレると簡単に人殺しもしちゃうっていう荒くれ者で、そんなニッキーと付き合いがあるサムまでFBIに目をつけられていく。

そんな理解も予測も不可能な二人と関わることで、サムの計算はどんどん狂わされていくという物語。

約3時間もある長尺な作品ですが、本当にテンポが良くて話の展開も早いので、観ていて長いとは感じなかったですねー。

当時のラスベガスの『空気』を写し取る

デ・ニーロとジョー・ペシが交互にナレーションしながら、物語は進んでいくんですが、早い展開とスマートな語り口、そして光と影と色彩を意識した映像が、当時のラスベガスの危険で雑多で勢いに溢れた空気感を見事に写し取っているんですよね。
さすが巨匠スコセッシ。

特にサムの衣装はど派手な原色で、まるでコメディアンみたい。
普通の人が着たら絶対ダサくなる原色のスーツもデ・ニーロが着ると何故か格好良く見えます。
そのくせ彼はズボンにシワが付くのが嫌で、オフィスで一人の時は、ズボンを脱いでネクタイシャツにパンツで仕事する神経質な一面も。

これは、いかにも成金趣味で見栄っ張りで毒々しい派手さで自分を飾り立てる一方で、ズボンのシワさえ気になる神経質で慎重なサムというキャラクターを、衣装の色と行動で観客に分からせるというスコセッシの演出意図だし、服装一つで物語の流れを映像的に表現しているわけですね。

あと、本作でもやっぱジョー・ペシが怖かったですw
特に、敵対勢力ヒットマンの頭を万力で挟んで……のシーンなんか、もうね、
(;Д;)ギャー! ですよw

背が低くて、声も高く、一見人懐っこくて陽気なオッサンに見える彼ですが、それゆえキレて凄んだり暴力を振るいだす瞬間の怖さが際立つんですよねー。
まさに怪優です。

ロバート・デ・ニーロジョー・ペシシャロン・ストーンが織り成すスコセッシのギャング映画。長尺だけど超面白いですよ。

興味のある方は是非!!!

 

人間&吸血鬼&ゾンビの青春ストーリー「フリークス・シティ」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「未体験ゾーンの映画たち2017」上映されたホラーコメディ、
『フリークス・シティ』ですよー!

いかにもB級映画な超バカバカしい設定山盛りなのに、途中で破綻することなく笑いどころも満載。
しかも最後には何か良いもの観た気になれる映画でした!

http://img.eiga.k-img.com/images/movie/86114/photo/85eadda521168488.jpg?1481188624

画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

人間とゾンビとバンパイアが共存する街を舞台に、突如として襲来したエイリアンから街を守るべく立ち上がった高校生3人組の戦いを描いた青春ホラーコメディ。

ストーリー:アメリカの田舎町ディルフォードでは、バンパイアが上位カースト、人間が中位、ゾンビが下位という制度のもと、住民たちの秩序が保たれていた。ところがある日、上空に無数のUFOが襲来したことによって3種族の共存関係が破綻し、街は壊滅状態に陥ってしまう。人間のダグ、バンパイアのペトラ、ゾンビのネッドら3人の高校生は、手を組んで凶暴なエイリアンたちに立ち向かうが……。

主人公ダグ役に「ウォールフラワー」のニコラス・ブラウン。共演にテレビドラマ「ゴシップガール」のエド・ウェストウィック、「スプリング・ブレイカーズ」「ハイスクール・ミュージカル」のバネッサ・ハジェンズ。「22ジャンプストリート」のオーレン・ウジエルが脚本を手がけた。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2017」上映作品。(映画.comより引用)

 

 

感想

2010年、“最も好きな脚本”に選ばれた話題作

本作の内容を一言で言うと、人間と吸血鬼とゾンビが宇宙人と戦う青春映画です。
何を言ってるか分からないと思いますが、本当にそういう映画なんだから仕方ないw

本作の脚本は、2010年のブラック・リスト(映画化されてない脚本リスト)にて“最も好きな脚本”に選ばれた話題作。
「22ジャンプストリート」のオーレン・ウジエルが脚本を手がけ、ジョナ・ヒルの初監督作品になる予定でしたが諸々の事情で一度は中止になり、4年越しでついに完成したというファン待望の話題作だそうです。

確かに本作のストーリーは素晴らしいんですよね。

吸血鬼、人間、ゾンビ、宇宙人、格差、差別、青春、友情、恋愛、スピルバーグビリー・ジョエルなどなど、色んな設定をこれでもかと全部乗っけて、それなのに途中で破綻することなく、テンポよく無駄のない語り口と序盤に散りばめた伏線を大胆に回収しつつ、(多少の無理はあるけど)華麗に着地してみせるという離れ業をやってのけてるのです。

魅力的なキャスト

そんな本作に登場すのは全員一癖も二癖もあるキャラクターばかり。

野球だけが取り柄の主人公、ボンクラ童貞高校生ダグ(ニコラス・ブラウン)。
吸血鬼に恋するも弄ばれて吸血鬼にされた挙句ポイ捨てされる女の子ペトラ(マッケンジー・デイビス)。

天才なのに親父が脳筋バカすぎて理解されず、絶望して自らゾンビになっちゃうネッド(ジョッシュ・ファデム)。

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画像出典元URL:http://eiga.com /左からダグ、ペトラ、ネッド

この三人を軸に、巨乳で色っぽいけどいつも大麻でラリパッパの女の子、成績優秀なネッドが気に入らなくて無理やり落第させようとする吸血鬼の先生、ブリーフ一丁なダグのパパ、優しいけどおバカなゾンビの女の子などなど、脇役も全員個性的。

あと、ゾンビは毎日配給される「脳みそ」を食べるとどんどんバカになっていくっていう設定も斬新でしたねー。

そんな中、僕が特に気になったのが、自らゾンビになっちゃうネッド役のジョッシュ・ファデム。
天才だけど気が弱く、田舎独特の閉塞感と話の通じない家族に絶望して、自らゾンビになっちゃうオタク少年役がハマってて、何か目を引くんですよね。
どの紹介サイトでも名前が載ってないのは日本では無名だからなのかな?

ダグ役のニコラス・ブラウンは背が高くて二枚目なんだけど、本作では野球しか取り柄のない役に立たないボンクラ役がハマってたし、それがちゃんと最後への伏線になってるのも良かったです。

世相を皮肉った実は深い作品!?

前半、約30分かけて、本作の舞台の田舎町ディルフォードの現状が紹介されていきます。異種族が共存し一見平和に見える町ですが、上記したようにバンパイア、人間、ゾンビの順に序列があり、最下層のゾンビは他の住人から差別を受けてるんですね。(本人たちはあまり気にしてないようですがw)

そして田舎町の主な産業は、ご当地グルメ「リブレット」くらいで、その工場の社長が実質町のリーダー的存在で、ダグが所属するチームのオーナーでもあります。
貧乏な田舎町なので住民のIQ(?)は低く、天才児ネッドは家族には理解されず、野球で活躍する脳筋バカの兄貴の方が大事にされる始末だし、高校の教師(バンパイア)は優秀な人間が気に入らないのでネッドを嫌がらせで落第させようとします。

そうした町のカーストは、そのままスクールカーストになり、バンパイアたちはやりたい放題。

そんな、多分アメリカ国内や世界中に根強くある所得や人種間の格差や差別を、「もし世界が100人の村だったら」的なメタファーとして、本作では「一見平和な田舎町」を舞台に描いているんじゃないかなーなんて思いました。

そして、宇宙人の襲来という一大事件に、彼らは一致団結して立ち向かうのではなく、他種族への疑心暗鬼から、それまでギリギリ表面化しなかった不満が一気に吹き出してバトルロワイヤル状態になるわけですが、これも今の世相や巨大な敵に世界が一致団結するブロックバスター映画(予算のでかい映画)を「そんなわけ無いだろう」と皮肉ってコケにしてるんですよね。

http://img.eiga.k-img.com/images/movie/86114/photo/d1ecdd24cc4bfeec/640.jpg?1481188689

画像出典元URL:http://eiga.com /宇宙人襲来で平和な町は大騒ぎに

そういうワンクッションを入れてからの「USA! USA!」の大合唱はもう最高でしたw

あと、劇中登場する嫌な奴らが概ねぶっ殺されたりひどい目に会うのもスカっとしましたねー!

本作がどのくらいの規模の作品なのかはよく分かりませんが、少なくとも映画としてのルックは豪華だったし、ストーリーは良く出来てるし、それでいてバカバカしくて面白くて爽快な作品なので、誰でも楽しめるんじゃないかと思いますよ!

興味のある方は是非!!

 

 ▼関連作品感想▼

note.mu

 

まんま女の子版テッドだった 「ベラ」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「未体験ゾーンの映画たち 2016」上映作品のドイツ映画
『ベラ』ですよー!

本作を一言で言うと命を持ったテディベアのドタバタコメディー映画『テッド』の女性版です。
孤児院育ちのヤナが唯一父親から貰った、命を持った人形ベラが騒動を巻き起こすブラックコメディー? です。

http://img.eiga.k-img.com/images/movie/83666/poster2.jpg?1451266973

画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

ドイツ版「テッド」とも言える異色のロマンティックコメディで、命を宿した女の子のぬいぐるみ・ベラが巻き起こす騒動を過激なブラックユーモアたっぷりに描いた。
ストーリー:結婚を目前に控えた幸せなカップルの前に、突如として現われた赤いおさげ髪の人形ベラ。可愛らしいルックスとは裏腹に毒舌で下ネタが大好きなベラは、酒やタバコ、時にはドラッグまでたしなむトラブルメーカーだった。そんなベラの存在がカップルの関係に波乱を巻き起こし、彼らは婚約解消の危機に陥ってしまう。

監督はドイツのテレビ界で活躍するジョッシュ・ブロエッカー。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち 2016」上映作品。(映画.comより引用)

 

 

感想

まんま女の子版『テッド』だった

本作は「もし、テッドが女性だったら?」っていう発想で作られた作品で、内容はほぼそのままテッドでしたw
噂には聞いてたけど、正直ここまでとは思いませんでしたよ。

ただ、ベラがぬいぐるみじゃなく「人形」であること以外にも、いくつか変更点があります。

まず、ベラの親友ヤナ(ローラ・ベルリン)は孤児院育ちの女の子。
ヤナは幼少の頃に孤児院に預けられていますが、彼女を捨てた父親の唯一のプレゼントが命を持った人形のベラだったという設定。
しかし大人になったベラはスターを目指し孤児院を出て行き、ずっと音信不通なんですね。

一方のヤナは、同じ孤児院で育ったウォルフガング(トム・ペック)と婚約。
二人の新居も購入予約し順風満帆に思えた彼女のもとに、破産したベラが転がり込み、ふたりの仲をぶち壊そうとするんですね。

で、ベラの性格も破天荒でタバコは吸うし、麻薬も吸うし、乱交パーティーもするしと、まぁ、まんまテッドなわけです。

設定を変えた事でかなり無理のある展開に

じゃぁ面白いのかというと、これが個人的には正直うーん……っていう。
テッドの場合、中年のボンクラ男とボンクラテディーベアがずっと一緒に育ってきたってのが一つポイントだったと思うんですが、本作の場合、前述したようにヤナとベラはかなり前に別々の生活を送っているんですね。

で、このヤナは非常に奥手というか真面目で、今まで付き合ったのはウォルフガングだけ。しかも母親は亡くなり父親は彼女を捨てて音信不通なので、ヤナは愛される事を渇望しつつ自分に自信がもてないっていう、かなり重い設定なんですね。

もちろんコメディーなので、あまり重くは描かれてないものの、この設定を中心に物語が展開していくので、テッド的なバカバカしさを求めて観ると、肩透かしを食らう事になるかもしれません。

展開的にも、冒頭から好き勝手に暮らして破産するベラと、ヤナとウォルフガングのラブラブな生活を交互に見せて、ウォルフガングが新居でヤナにプロポーズするところで、ベラと合流するんですが、このプロローグが長くて少々かったるく感じるんですよね。

あと、ウォルフガングとベラ、ウォルフガングとヤナ、ヤナとベラの関係性もセリフで説明されるだけなのも、感情移入しにくいかなと。
その辺の関係性は映像でも見せて欲しかったなーと思いました。

もちろん面白いシーンもあるけど

思わず笑っちゃう面白いシーンももちろんあるんです。
例えば、酔ったヤナにゲロをかけられたベラがコインランドリーでグルグル洗われたり、部屋干しされたり、車に轢かれたり、車に飛び込んだら窓に張り付いちゃったりと、テッド同様ぬいぐるみ設定の面白ギャグも沢山入ってるんですが、ただ、ベラの弱点や命のルール(例えばどうなったら死んじゃうとか)が曖昧なので、その後の色々な展開にもドキドキもハラハラもないし、そもそもベラが何をどうしたいのかイマイチ分かりづらいんですよね。

下品なギャグに引く

で、ベラの性格はほぼテッドと同じハチャメチャなんですが、例えばベラが男を連れ込んでHしたり、下品なジョークを連発したり、タバコや麻薬を吸ったり、ゲップやオナラをしたりすると、正直ちょっと引いちゃうんですよね。
これが人間の大人の女性なら(多分)平気なんですが、見た目は女の子の人形なだけになんかこう、より下品さが際立っちゃうってうか。

テッドの場合は男(オス?)で、しかもオッサンでクマっていうワンクッション入ってるので、下品さもある程度緩和されて面白さに変わるんですが、人型で見た目女の子の人形だと人間(というか少女)に近い分、下品さが際立っちゃう気がしました。

僕が男だからそう思っちゃうのかなー?

振り切れてない

で、本作の一番の問題は笑いと物語のどちらにも振り切れてないって事じゃないかなーって思います。
テッドを意識して作るなら、いっそ設定からまるっとパクって、幼馴染のダメダメ中年女性コンビの片方に彼氏が出来て…っていうドタバタにしたほうが良かったんじゃないかなと。その上で、男女の友情の違いを描いていく的な。

本作でヤナ役を演じる、ローラ・ベルリンが上品で美人でいい子すぎるので、ダメ要素や下品要素を全部ベラに背負わせる形になっちゃって、ベラの面白さより嫌な感じが前面に出ちゃってるなーと。
監督やスタッフはまさにそんな二人のギャップと友情物語を狙ってたのかもですが、ある種バディもの特有のコンビならではの相乗効果的な面白さが削がれちゃってる感じだし、二人の友情もイマイチ描ききれてなかったように感じました。

という感じで、個人的にはあまり合わない作品でしたが、面白いシーンは沢山あるし、僕も声を出して笑っちゃったシーンもあります。
人によってはテッドより、本作の方が楽しめるかもですしれませんね。

興味のある方は是非。