ぷらすです。
今回ご紹介するのは、新作を公開する度にネットをざわつかせるでお馴染みの細田守監督の新作劇場アニメ『未来のミライ』ですよー!
公開時、わりとネットレビューが酷評だらけだったので、覚悟を決めて観たんですが……「あれ? そこまで悪くはなくね?」って思いました。
画像出典元URL:http://eiga.com
概要
『サマーウォーズ』『バケモノの子』などの細田守が監督を務めたアニメーション。小さな妹への両親の愛情に戸惑う男の子と、未来からやってきた妹との不思議な体験をつづる。企画・制作は、細田監督らが設立したアニメーションスタジオ「スタジオ地図」が担当し、細田監督作に携わってきたスタッフが集結している。声の出演は、上白石萌歌、黒木華、星野源、役所広司ら。(シネマトゥディより引用)
感想
細田作品のとの出会いと思い出
アニメ監督 細田守を、僕が最初に認識したのは2006年公開「時をかける少女」からでした。
発表当初は全国で21館のみの公開からスタートした「時かけ」は、ネットなどの口コミ効果で連日立ち見がでるほどの大ヒット。
配給の角川ヘラルド映画が慌てて上映館を増やすなど異例の対策を取る事になった名作アニメだし、あの作品で僕は細田作品にハマって、以降のアニメは全作観てるんですね。
続く「サマーウォーズ」(09)は、田舎の大家族とネット世界の融合が個人的には新鮮で面白かった(後に「劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」の焼き直し的内容だった事を知る)んですが、サマーウォーズ的な感じを期待して観た2012年公開の「おおかみこどもの雨と雪」は個人的にどうも合わず、前作「バケモノの子」(15)では「いや…駄作とまでは言わないけど(´ε`;)ウーン…」となり。
その後、遡って「ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島」(05)も観たりしました。
そして昨年夏に公開された本作「未来のミライ」は、公開とほぼ同時にネットがざわつき酷評も多かったので、今回、個人的にかなりハードルが下がった状態で鑑賞したんですが……。
「ん?? そこまで悪くはないんじゃない??」ってなったんですよね。
いや、「超面白かったー!(*゚∀゚)=3」っていうほどのテンションではないし、確かに言いたいことも色々ある。けど、あるシーンを除けば全体的にはまぁまぁ面白いんじゃない?と。
少なくとも監督の人格が否定されるほど酷い内容ではないって思いましたねー。
くんちゃんの空想の物語
本作は、4歳の男の子くんちゃん(上白石萌歌)が赤ちゃん期から幼児期へと成長する過程で、彼の頭の中で起こっている事を描いた物語だと思います。
画像出典元URL:http://eiga.com / 4歳児にして鉄道マニアなくんちゃん
それまで、両親の愛を独り占めしていたくんちゃんの元に、妹のミライちゃんが生まれ、自分をかまって貰えないくんちゃんはヤキモチを焼いて赤ちゃん返りしたり、拗ねたり、ダダをこねたり。
画像出典元URL:http://eiga.com / 擬人化した飼い犬のゆっこ(♂)
そんなくんちゃんの前に現れるのは、擬人化した飼い犬ゆっこ(吉原光夫)であり、中学生になった未来のミライちゃん(黒木華)であり、幼き日のくんちゃんのお母さんや、亡くなったくんちゃんの曾祖父さん(福山雅治)であり、未来の自分(畠中祐)なのです。
そんな彼ら・彼女らは、恐らく全てくんちゃんの空想の産物で、何気なく見聞きしていた両親・祖父母の話や過去の写真などを題材に、また、「もし、ゆっこやお母さんが人間、もしくは子供だったら」という、くんちゃん自身の想像や願望から生まれた、イマジナリーフレンド的なキャラクターなのでしょう。
そんな彼ら・彼女らとの冒険を通して、くんちゃんは少しずつ成長し、“お兄ちゃん”というアイデンティティを受け入れていくという物語なんですね。多分。
「突如現れた弟や妹に両親を奪われるのでは…」という不安や寂しさは、年の近い弟・妹を持つ人なら多かれ少なかれ経験があると思うし、逆に親の目から見れば、4歳くらいの子供って、今まで出来なかった事が突然出来るようになったり、突然お兄ちゃん、お姉ちゃんらしくなったりしてビックリ! なんて経験があるんじゃないでしょうか。
本作は、そんなどこの家庭にもあることを、5つの小さなエピソードをくんちゃん視点で描いているんです。
ホームドラマ
本作の批判を読むと、その枕詞として「一見、理想の家庭だが――」と書かれている事が多いんですが、いやいやいや、全然理想の家庭ではないですよね?
恐らく、どちらかの両親から受け継いだであろう、ごく普通の一軒家だった家を、設計氏のお父さんは増築・リフォームします。
出来上がったのは、これから赤ちゃんが生まれるってのに、ステップフロア式で無駄に段差の多く、階段には手すりもついてないようなお洒落ハウス。
多分、家をリフォームしたのは、くんちゃんをお腹に授かる前のタイミングだと思うんですが、その時点で二人は「赤ちゃんができる事」を想像出来てないんじゃないかと思うんですよ。(まぁ、あの家の構造が、物語上の仕掛けでもあるわけですが)
画像出典元URL:http://eiga.com / ミライちゃんの世話でてんてこ舞いの両親と、段差だらけの家
いや、“頭では”理解していて、子供部屋とか中庭とかも作ってるんですが、まだ赤ちゃんや幼児がいる「家」を実感として分かってないっていうかね。
さらにお父さんは、くうちゃんが赤ちゃんの時はまだ設計事務所に所属していて、くうちゃんの面倒は実質お母さん(麻生久美子)一人でみていたし、ミライちゃんが出来たタイミングでフリーになったので、働くお母さんの代わりに家で仕事をしながら子供ふたりの面倒をみようなんて、気楽に考えていて、実感として子どもを育てる大変さなんかまるで分かってないのです。
劇中でも、そんなお父さんにお母さんが釘を刺すシーンがありますよね。
で、実際やってみると、お父さんも想像以上に大変な子育てにてんてこ舞いで失敗ばかり。
一方のお母さんは、そんなお父さんに子育てや家事指南をしながら仕事もしていて、自身の理想の母親像とは裏腹に、言うことを聞かないくんちゃんについ怒ってしまう日々。
全然理想の家庭じゃないし、お父さんもお母さんも親としてはまだまだ半人前で、失敗を繰り返しながら親になっていく途中なのです。
本作ではそんな「家族」が成長する様子を描いているホームドラマなんですね。
あと、多かったのは「婚期が遅れるからと雛人形を仕舞いにくる」未来のミライちゃんに対して、「今時(っていうか未来だけど)の女子中学生がそんなの気にしない」的な批判。
それは確かにその通りですけど、でもあれは、前日のお母さんとお祖母ちゃんの話を聞いていた くんちゃんの想像だと思えば不思議でも不自然でもないし、雛人形は、仕事の事を考えながらお父さんが仕舞ったのを忘れていたで説明がつんじゃないでしょうか。
っていうか、ファンタジー(空想)と現実の境目をシームレスに描くというのは昔からある手法だし、僕は雛人形を巡るドタバタは普通に楽しいシーンだと思いましたけどねー。
画像出典元URL:http://eiga.com / 兄の性癖を開発してしまう未来のミライちゃん
まぁ、未来のミライちゃんがくんちゃんの性癖を開発してしまう件は、細田監督の業のような物を感じたりしましたけどw
問題は最後のクライマックス
そんな感じで、全体的には楽しく見られたわけですが、あの、ラストのエピソードのクライマックスは流石に蛇足じゃないかと思いました。
いや、途中まではいいんですよ。ミライちゃんの為にくんちゃんが遂に自分の口から、例の言葉を叫ぶシーン。サイコーじゃないですか。
でも、その後未来のミライちゃんが再度登場するシーンから後の、あの取って付けたようなクライマックスはまるっと全部いらないと思いましたねー。
画像出典元URL:http://eiga.com / ここから先のシーンは蛇足だと思うなー
細田監督(なのか、もしくはその上の誰か)は、オチの前に最後にもう一山作って盛り上げたいと考えたんでしょうね。多分。
でも、あのシーンをいれたことで、それまでの積み上げてきた5つのエピソードが全部台無しになってしまったと思うし、本作が酷評され、細田監督の人格否定にまで繋がった最大の原因が、最後に未来のミライちゃんを登場させた、あのラストへと繋がるクライマックスのシーンだと、僕は思うんですよね。
くんちゃんが叫んで、戻って、終わり。で十分物語は成立してたし、そこで終ってくれれば「あー面白かった」って思ったのに、なんで余計なことをしちゃったかなーと。
そもそも、あのクライマックスで未来のミライちゃんが口で説明してることは、その前のエピソードで十分語られてたしね。(´ε`;)ウーン…
とはいえ、そこはさすがの細田アニメクオリティーで、くんちゃんやミライちゃんほか、キャラの動きは全部素晴らしかったし、個人的には酷評するほど酷い作品だとは思いませんでしたよ。
まぁ、くんちゃんに感情移入できるかどうかで、評価は分かれそうだとは思いましたけども。
興味のある方は是非!!
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