ぷらすです。
先日、やっと観てきましたよ。MCU28作目『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』をね!
いやもうね、MCUというよりサム・ライミの新作という感じでありつつ、でもしっかりドクター・ストレンジしてて、「さすが俺たちのサム・ライミ!」と心の中で拍手喝采してしまいましたねー。
画像出展元URL:http://eiga.com
概要
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』などのベネディクト・カンバーバッチが、元天才外科医の魔術師を演じた『ドクター・ストレンジ』の続編。マルチバースと呼ばれる狂気の扉が開いた世界を映し出す。メガホンを取るのは『スパイダーマン』シリーズなどのサム・ライミ。前作同様ベネディクト・ウォン、レイチェル・マクアダムス、キウェテル・イジョフォーが続投するほか、『アベンジャーズ』シリーズなどでスカーレット・ウィッチを演じたエリザベス・オルセンらが出演する。(シネマトゥディより引用)
感想
マルチバースを描くお手本のような作品
ご存じの方も多いと思いますが、MCUはフェーズ4に入ってから「マルチバース」という設定が多用されるようになりまして。
さすがにもう大丈夫だと思うので書きますが、「スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム」では、トビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールドというソニー版スパイダーマン2人と、両作のヴィラン役の面々がオリジナルキャストで登場するという大サプライズが。
2002年公開のトビー・マグワイア版「スパイダーマン」からずっと、スパイダーマンを見続けてきた僕にとっては大興奮・大感動の展開でしたが、その一方で「マルチバース」(多次元宇宙)設定さえ使えば何でもありになってしまうという問題点も露呈してしまったんですよね。
例えば、過去作で死んだキャラクターを生き返らせたり、過去作で起こった事を無かったことにしたり、過去作やキャラクターの設定や筋書きを変えてしまったり。
つまり、製作者の都合で過去作をいくらでも改変出来てしまうわけで、それはファンにとっては良い面悪い面もあって、例えば今後の作品で別次元設定でロバート・ダウニー・Jrのトニースターク/アイアンマンが再登場すれば嬉しいかもと思う一方、「/エンドゲーム」の時の涙を返せ!みたいな。
そんな「マルチバース」設定という危険物の取扱いにある種の手本を見せてくれたのが、本作の監督であり2002年~のソニー版「スパイダーマン」三部作を手掛けた御大、サム・ライミだったんですね。
MCU初のホラー映画
そんな本作のあらすじをざっくりご紹介すると、
元恋人の結婚式に出席中、怪物に追われる少女アメリカ・チャベス(ソーチー・ゴメス)を助けた魔術師ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)。
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彼女はあらゆるユニバースを行き来出来る能力を持ち、その能力を欲する何者かに狙われているんですね。
敵の正体も分からず、自分だけではアメリカ・チャベスを守れないと思ったストレンジは、マルチバースに関する知識を持つアベンジャーズメンバー、ワンダ・マキシモフ(エリザベス・オルセン)に協力を求めるのだが――というストーリー。
しかし、今回の敵の力はあまりに強大で、チャベスを匿った魔術師の聖地カマー・タージは壊滅。チャベスの力でマルチバースを跨いで敵から逃げるストレンジは、別アースの自分や元恋人と向き合う羽目になるんですね。
そんな二人が敵に追われ逃げ回る様子をMCU初のホラー映画として撮ったサム・ライミ。
サム・ライミと言えば何と言っても「死霊のはらわた」シリーズや「スペル」などで知られるホラー界の大御所であり、また、ホラーにドタバタコメディーを融合させた先駆者でもあります。
本作ではMCU(ディズニー)の限界を超えた、ホラー演出や残酷描写をギャグにする悪趣味なサム・ライミ節を全開で展開しつつ、ワンダという鏡像関係にあるキャラクターと対比させながら、ドクター・ストレンジというキャラクターの本質を捉え、その成長をしっかり描き切ってみせたんですね。
また、マルチバースというややこしい設定を「夢で見る世界」という誰もが馴染みのある説明で端的に語り、ショットとカットとシーンの的確な取捨選択によって、わずか2時間6分の物語に過不足なくまとめあげた手腕はお見事としか言いようがありませんでしたよ。
観る前は、「たった2時間6分でドクストの複雑な設定や物語を語り切れるの?」と心配しましたが、そんなのは全くの杞憂。
サム・ライミは端的な状況説明とシンプルなテーマ、そしてワンシーン・ワンカットに必要な情報を無駄なく詰め込むという昔ながらの職人技で物語の強度をあげ、本作をMCUシリーズの1作品でありながら、単体としても楽しめる“一本の独立した映画”として完結させて見せたのです。
というわけで、ここから先は色々ネタバレしていくので、映画未見の方はご注意ください。
MCUドラマ「ワンダヴィジョン」との関連性
この作品がMCUドラマ「ワンダヴィジョン」と直接的な繋がりがあるという噂は事前に聞こえていたし、公開後も方々から「『ワンダヴィジョン』を見ないと楽しめないのでは?」という懸念も聞こえていました。
で、結論から言えば本作は、「ドクター・ストレンジ2」というよりも「ワンダヴィジョン2」と言っても過言ではないストーリーだったんですよね。
実は、本作のヴィランはワンダその人。
幼い頃に国の内戦で両親を失い、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」では唯一の肉親で双子の弟ピエトロを失い。
「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」で心を通わせていた人造人間ヴィジョンが目の前で死ぬところを2度も見せられるんですね。
しかもそれは、1400万605通りの未来を見たストレンジが唯一サノスに勝利できると選択した未来だったわけで、いわばストレンジはワンダにとっては愛する人の(間接的な)敵でもあるわけですよ。
さらに、ドラマ「ワンダヴィジョン」では、全てを失った悲しみに耐えきれず”現実改変能力(カオス・マジック)“という最強の能力を発動させてしまった彼女が、愛するヴィジョンを復活させ、彼との間に(想像の)二人の子供を生み出し、一時は幸せを手にするも長くは続かず。結局、また愛する家族を失い孤独になってしまうんですよね。
そんな彼女が偶然手に入れた「ダークホールド」という呪われた禁書で、他のユニバースでは自分は愛する息子たちと幸せに暮らしている事を知ってしまい、同時に次元を自由に行き来出来る少女の存在も知る。
それでその少女の力(=命)を奪ってでも、愛する息子のいる世界で幸せに暮らしたいと願う彼女を誰が責められるでしょう。
そんな彼女の元にノコノコ現れ無神経に「協力してくれ」とか言うストレンジ。
そりゃ、ワンダもキレるでしょ。
アメリカン・チャベスと2人のストレンジ
本作冒頭。
一つ目のタコ型怪物に襲われるアメリカ・チャベスと別ユニバースのストレンジ(ディフェンダー・ストレンジ)。
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しかし、怪物に追い詰められて進退極まると、世界を守るためチャベスの能力を魔術で奪おうとしたところを怪物に殺されます。(チャベスはその能力を自分の意思では使えない)
ストレンジにとって、世界(ユニバース)を守る事は最優先事項で、なので「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」と「~エンドゲーム」では、世界を守るためヴィジョン、ブラックウィドウ、トニー・スターク(アイアンマン)が犠牲になると知りながらその未来を選択したし、「スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム」では、マルチバースを閉じる為にピーターを犠牲にする選択をします。(ピーターは死んでないけどね)
なので、チャベスを犠牲にしてでもユニバースを守るというディフェンダーストレンジの選択は、「ドクター・ストレンジ」としては理に適った行動なんですよね。
もちろん、それが最適解であれば自身を犠牲にするのも厭わない。ストレンジはそういう意味で合理主義者なのです。
しかし、こっちのストレンジは決してチャベスを見捨てません。
実は、彼は子供のころに事故で妹を失っていて、その後悔から医師を目指したことが本作で明かされ、だからストレンジは自身の妹とチャベスを重ねて、どんな窮地に陥っても決して彼女の事を見捨てないのです。
チャベスを救うため、「ダークホールド」の力を使いディフェンダーストレンジの死体を操ってストレンジがワンダと闘うクライマックスは、なんとも悪趣味だし皮肉が効いててサム・ライミらしい展開ですが、同時にチャベスを見捨てようとしたディフェンダーストレンジの贖罪をこんな形で実現させるとか、もう、サイコーかよ!って思いましたねー!
ライミのホラー演出
そんな二人を次元を超えて執拗に追いかけるワンダ。
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彼女はアメリカ・チャベスとは違ってユニバースを超える能力は持っていませんが、「別ユニバース=夢で見る世界」という設定を使って、精神だけを別ユニバースに飛ばす「ドリームウォーク」という魔術で、その世界のワンダに乗り移って二人を追いつめていくんですね。
別次元の世界を守るヒーローチーム「イルミナティ」のメンバーをサクっと惨殺。彼らの基地の中を逃げるチャベスとストレンジを圧倒的パワと魔術で追い詰めるワンダの描写がどんどん貞子チックになっていく様子がメッチャ怖いんですよねー!(((((( ;゚Д゚)))))ガクガクブルブル
また、冒頭の一つ目の怪物を倒す時、ストレンジと盟友ウォン(ベネディクト・ウォン)は怪物の大きな目を狙うんですが、武器を目に突き刺し引っ張ると、怪物の目玉が抜けるという描写では「ポンッ!」という効果音をつけたり、カマ―タージでワンダに黒焦げにされた魔術師たちを執拗に写したり、イルミナティのメンバーを殺す時も、何ならちょっと面白い感じに殺したりと、まさにライミ節全開。
さらにクライマックスでは前述したように、ストレンジがアメリカ・チャベスを見捨てようとしたディフェンダー・ストレンジの死体を操って、高笑いしながらワンダの前に登場。「いくら殺してもこの体は死なんぞー!」とか言っちゃって、もう、どっちが悪者だか分からないんですよねw
まぁ、そんなことしても違和感がない異色のヒーロー・ストレンジだから、サム・ライミも監督を引き受けたんでしょうけどね。
驚くほどシンプルなテーマ
そして多次元宇宙を跨いだ壮大な鬼ごっこを通して、本作で語られたのは「幸せ」というビックリするくらいシンプルなテーマ。
ワンダは愛する家族が欲しいというその一点で、全ユニバースを巻き込んだ大虐殺を行うし、ストレンジはそんなワンダから一人の少女を守る冒険の中で、自身の幸せを見つけるんですね。
このあまりにもシンプル過ぎるテーマは、それゆえ普遍性を持っていて、それが物語の強度を上げているんだと思いました。
不満点
そんな感じで、個人的にはもうサイコー!以外の感想はないくらい面白かったんですが、一点だけ不満点を挙げるなら…………
ワンダ可哀そうすぎやろー!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ と。
「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」以来、ずっとワンダを見続けてきた身としては、本作のワンダがあまりにも不憫すぎて素直に喜べないんですよ。
彼女はMCUの中で、ずっと失い続けてきたキャラクターですからね。
嘘でもいいからもうちょっと幸せにしてあげてよー。って思っちゃうんですよねー。
まぁ、今後も続くMCU作品のどこかで、いつか、僕たちのワンダが幸せになる未来が来ると信じていますけどね。
興味のある方は是非!!!
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