今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

衝撃の前作から4年、待望の続編「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは2012年に公開されたアクション映画「アウトロー」の続編、
ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』ですよー!
中々時間が合わなくて映画館で観られなかったんですが、やっとTSUTAYAでレンタルしてきましたー!

 

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

リー・チャイルドの小説を実写化したアクション『アウトロー』の続編。かつてアメリカ軍の優秀な秘密捜査官だったが、今は放浪生活を送る男ジャック・リーチャーが、巨大な陰謀に挑む。監督は、『ラスト サムライ』などのエドワード・ズウィック。前作に引き続いてトム・クルーズが主演を務め、『アベンジャーズ』シリーズなどのコビー・スマルダーズやテレビドラマ「プリズン・ブレイク」シリーズなどのロバート・ネッパーらが脇を固める。ド派手な見せ場の数々や、トムのアクションも痛快。

トーリーアメリカ軍の優秀な秘密捜査官だったものの、今では街から街へとあてもなくさまよう生活を送っているジャック・リーチャー(トム・クルーズ)。ある店でトラブルに見舞われた上に保安官に連行されそうになった彼は、自分をめぐる何かしらの陰謀が動きだしているのを察知する。やがて彼は、元同僚であったターナー少佐(コビー・スマルダーズ)を訪ねるが、彼女がスパイ容疑を掛けられて逮捕されたことを知る。ターナーを救い出して共に事態の真相を追ううちに、軍内部に不穏な動きのあることをつかむが……。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

前作「アウトロー」をザックリとおさらい

ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」は、2012年公開の前作「アウトロー」(原題:Jack Reacher)の続編です。

前作がどんな映画だったかというと、元米軍の腕利き秘密捜査官で今は風来坊のジャック・リーチャーが、事件の謎を解きつつ悪者軍団をやっつけるという、英国の人気作家リー・チャイルドハードボイルド小説シリーズが原作をトム・クルーズ主演で実写映画化。

トム・クルーズ主演の米国アクション映画としては、かなり低予算(トム・クルーズの意向でわざと規模を小さくしたらしい)な作品ながら、数少ない証拠を頼りに謎を解き、スペイン発の「キーシ・ファイティング・メソッド」という攻守一体となった戦闘法を駆使して悪者をバッタバッタと倒していくという、イマドキのアクション映画とは真逆の、70年代のアクション映画に回帰したようなキレのいい作品で、映画ファンの間では高評価を得たんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 前作「アウトロー」を彷彿させる冒頭のシーン

そして本作に

そんな前作のヒットを受けて本作の制作が決まるわけですが、監督がクリストファー・マッカリーから、「ラストサムライ」のエドワード・ズウィックに交代。
前作のヒットはクリストファー・マッカリー監督の功績も大きかっただけに、監督交代のニュースにファンからは不安の声も聞こえていました。

そして公開後、「普通のアクション映画」「こんなのアウトローじゃない」といった批判もあり、今回僕もDVDをレンタルするときに正直、多少不安な気持でした。

で、実際観てみると、「あー、確かに否定的な意見が出るのも分かるなー」とw

ジャック・リーチャーの切れ者感、映像やストーリーのキレ味の良さといった前作の面白さは影をひそめ、その分二人の女性キャラの投入で、エモーション多めの「普通のアクション映画」になちゃった感じ。
「アクション映画」としては面白いけど「ジャック・リーチャー」としては物足りないといった印象でしたねー。

擬似家族のロードムービー

本作では二人の女性キャラが登場します。

一人は、今回ジャックの相棒役となる、コビー・スマルダーズ演じるターナー少佐。

もう一人は、「ジャックの娘」でダニカ・ヤロシュ演じるサマンサ(サム)

ハッキリ経緯は語られないものの、劇中でターナー少佐とリーチャーは以前からやりとりがあったらしく「あれ? 前作でこんな人出てたんだっけ??」と混乱したんですが、どうやら本作の原作となった本の前の巻で、事件解決のため協力しあったということらしいです。

で、リーチャーが食事に誘おうとワシントンにある彼女の勤務先に行ってみると、ターナー少佐はスパイ容疑で捕まっていて、不信に思ったリーチャーが密かに調べを進めている途中、自分に娘がいるらしい事が発覚。そこからアレコレあって3人は、一緒に敵組織から逃げつつ真相を探っていく事になるわけです。

最初はギクシャクしていた3人が、共に困難を切り抜けていくうちに次第に擬似家族的な関係になっていき、これまで一匹狼だったジャック・リーチャーの心にも変化が訪れるという部分が本作の主軸になってるんですね。

その分、ターナー少佐とサムに振り回され、前作では常に先手を取って敵を翻弄していたリーチャーの切れ者感は消え、前作の魅力の一つだった謎解きよりもサスペンスやアクション重視で、アクションの方もターナーとのコンビネーションを見せるためか、前作で見せた衝撃はなくなり。

前作で作品を牽引していた要素が、擬似家族のロードムービーというドラマパートに置き換わってしまった感じなんですよね。

仁義なき戦い 広島市島編」だと思って見に行ったら「トラック野郎」だったみたいな。(ちょっと違うか)

もちろんシリーズが続けばそういう展開もアリだけど、「2」でやるのは早くね? っていうw

とはいえ、僕は本作はそれほど嫌いではなかったりします。

アクションも短調にならないよう、シチュエーションやバリエーションを考えて配分されてるし、女性二人とのドラマパートを通してジャック・リーチャーの人間性を掘り下げているのは良かったんじゃないかと。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 今回もノースタントで頑張るトム・クルーズ(54)

オフビートな笑いのシーンは健在だったし、美少女とは言い難いダニカ・ヤロシュ演じるサマンサが、物語が進む事に可愛く見えてくるのは、彼女の演技の上手さかなと。

特にリーチャーとサムのラストシーンは個人的にとても良かったし好きなシーンでした。本作ではこれみよがしであまり上手くない伏線も多かったけど、このラストシーンは、サムのキャラクターという伏線を綺麗に回収していて、ジャック・リーチャーらしい良い終わり方だったんじゃないかって思いましたねー。

 トータルで観れば、前作のような驚きはないけど、全体的に丁寧に作られてる印象を受けましたよ。

興味のある方は是非!

 

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ゲームのような戦争の世界「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」(2008)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、人気作家の森博嗣原作の同名小説シリーズを「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」の押井守監督がアニメ映画化した映画『スカイ・クロラ』ですよー!

僕は原作の方は未読なので、この映画がどの位原作に忠実に作られてるのかは分からないんですが、「あー、押井作品っぽいなー」って思いましたねー。

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画像酒店元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

キルドレ”と呼ばれる永遠に歳を取らない子どもたちの戦いと、切ない愛のドラマを描くアニメーション大作。世界中に影響を与え続ける押井守がアニメーション映画としては4年ぶりに監督を務め、森博嗣による全5巻完結の大人気シリーズの第1巻を映画化した。主人公のパイロットたちを菊地凛子加瀬亮が担当するほか、栗山千明谷原章介が声優として参加。“真実の希望”をテーマにした押井哲学が、圧倒的な説得力で観る者に迫る。

トーリー:永遠に生きることを宿命づけられた“キルドレ”と呼ばれる子どもたちが暮らす、もう一つの現代で、彼らは“ショーとしての戦争”で戦闘機に乗って戦っていた。戦うことで生を実感する日々を送る中、元エースパイロットの女性指揮官・草薙水素菊地凛子)と基地に赴任してきたエースパイロット・函南優一(加瀬亮)が出会う。(シネマトゥディより引用)

 

感想

押井守監督について

本作の監督を勤める押井守といえば、「パトレイバー」シリーズや、「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」「イノセンス」など、日本を代表するアニメ監督です。
特にGHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」は、アメリカではビルボード誌のビデオ週間売上げ1位となるなど、日本のみならずハリウッドの名だたる監督に影響を与えたとも言われています。

アニメだけでなく実写映画も多く手がけていて、オシイストと呼ばれる熱狂的なファンも多い一方、作家性が強く、好き嫌いの分かれる監督でもあると思います。

僕はといえばどちらかというと後者で、これまで押井作品は何作か観ているんですが、どうも相性が悪いんですよねーw
なので、この感想もそういう感じになるので、本作が好きという人には申し訳ない感じになってしまうと思います。m(_ _)m

ゲームの中の戦争

本作の内容をざっくり書くと、平和な世界でショーとしての戦争を企業が代行、キルドレという”永遠に生き続ける事を宿命づけられた『子供たち』”によって行われている。
という物語。(合ってるよね?)

この主人公たちは戦闘機で戦う空軍なんですが、海軍や陸軍のキルドレもいるのかな?

で、一般市民である“大人たち”はそんな「戦争」の様子をバーのテレビで観てるわけです。

つまりこの戦争は、映画やゲーム、スポーツ観戦といった“大人”の娯楽のような戦争で、それ自体に意味はなく、キルドレたちは大人たちのために終わりのない戦争を続けているわけですね。

つまり本作で描かれる“大人たち”とは、テレビやゲームなどフィクションの中でしか戦争を感じられない、日本を始めとした平和な国の人々のことなんでしょう。多分。

対してキルドレというのは、大きな目標もなく生きざるを得ない現代の若者たちを表しているんだと思います。

本作のテーマは大きく分けて2つあって、上記の平和な国の“大人たち”への諦観めいた皮肉と、そんな国で生きざるを得ない若者たちへの押井さんなりの応援歌的メッセージじゃないかなーと思いました。

ルールがあやふや?

本作の物語そのものは、アニメを見慣れた人なら「あーなるほど、こういうヤツねー」と飲み込みやすいんじゃないかなーって思いました。
逆に、アニメのお約束みたいなのに慣れていない人には、設定や世界観が分かりづらいというか、色々「??」ってなっちゃうんじゃないかなと。

いくつか例を上げると、

キルドレは年を取らない?
キルドレは死なない? でも物理的ダメージを受けると死ぬ?(その辺の真相は後半で分かるけど)
・みんな普段は日本語なのに戦闘機に乗ると英語。
・基地の外は外国で、住人の“大人”も外国人?

とまぁ、こんな感じ。

本作の舞台はちょっと昔の外国(イギリス?)のようになっていて、劇中で基地に見学にくる人は英語だし、基地のある町の住人も基本英語で話してるんですが、何人か日本語で喋る“大人”もいるんですね。(明らかに西洋人顔なのに)
アニメの場合、外国人キャラが英語を話している体で日本語で話すってのは良くある事なので、それなのかなー? とも思ったんですが、だったら日本語と英語を混在する意味が分からない。

本作の基本構造はミステリー仕立てになっていて、物語が進んでいくと徐々に真相が分かってくる作りになってるわけですが、そこで明かされる「設定」以外の世界観やルールがぼんやりあやふやで、個人的にはそれがノイズになって中々物語に入っていけませんでした。
原作を読んでいれば、分かったのかもですが。

まぁ、「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」だって最初は原作を知らず観たので何が何だか分からなかったし、一見さんお断り的な、観客が原作を知ってる前提の映画作りは押井作品の「仕様」と言えるのかもしれませんが。

頭の中の戦争と若者像

本作を観た僕の感想としては宇多丸師匠の評論とほぼ同じで、「ありもしない問題を作って勝手に悩む話」だったなーと。
もちろんフィクションなんだからそれでもいいんですけど、物語そのものがテーマと上手くリンクしていないというか、そもそも二つのテーマ自体の噛み合早生が悪いと思いました。

代わり映えのしない閉塞した日常を生きる若者と、延々戦争を続ける死ねない“子供”キルドレは、そもそも違う感じがするし、なんていうか例えになってない例え話を延々聞かされてるような感じ。

あと全体的にのっぺりしてて見せ場もなく、肝心の戦闘シーンもイマイチ、主人公が積極的に謎を解いていくわけでもなく、何処を見せたいのか、何を訴えようとしてるのかがイマイチ分からないんですよね。

映画ラストのモノローグは、押井監督から若い人たちへのメッセージなんでしょうし、それ自体が物語の一筋の希望として描かれているわけですが、そこに至る2時間の物語とは本質的にやっぱりズレてる感じがしました。

 

結局、きっと僕は押井監督とは相性が悪いんでしょうねw

ただ、映像は綺麗だし、好きな人は好きなタイプの映画だと思いますよ。

興味のある方は是非!

 

宇多丸師匠の評論

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3年ぶりに奴らが帰ってきた!!「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」 (2017)

ぷらすです。

行ってきましたよー!
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス !!

 

2014年、第一弾の公開から約3年の時を経て「奴ら」が再び帰ってきましたよ!
前作で身を呈して仲間を救ったグルートは超絶可愛いベイビー・グルートとして。
ロケットは前作以上に悪乗りし。
ピーターとガモーラはほんの少し距離が縮まり。
ドラックスは相変わらず。

そこに前作でも登場したガモーラの妹ネビュラやヨンドゥーなどお馴染みのメンバーも加わり、さらにカート・ラッセルやシルベスタ・スタローンといった大物俳優も合流。

もうね、朝一の回で観て良かったー! (≧∇≦)ノ

って思いましたよー!

というわけで、今回公開したばかりの作品なのでネタバレはしないように気をつけますが、先に書いておくととにかく面白いから先に映画館で観て!! 
ってことですよ!!

いいですね? 注意しましたよ!

 

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あらすじと概要

1970年代を中心にヒットした数々のナンバーに乗せ、異色ヒーロー集団が大暴れする『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の第2弾となるSFアクション。銀河の平和に尽力する個性派チームの活躍を描き出す。リーダーのトレジャーハンターを、前作同様『マグニフィセント・セブン』などのクリス・プラットが好演。激しいアクション、つぶらな瞳の“ベビー・グルート”の活躍に注目。

トーリー:ピーター(クリス・プラット)は“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー”のまとめ役として、刑務所で出会ったくせ者たちを率いている。宇宙一荒っぽいアライグマのロケットは、ブツブツ文句を言いながらも小さな相棒ベビー・グルートと共に銀河の平和を守るために奮闘。緑色の肌を持つ美しい暗殺者ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)らと共に行動し……。(シネマトゥディより引用)

 

感想

前作をより掘り下げた王道の続編

冒頭からいきなり、ELOの名曲「ミスター・ブルー・スカイ」に合わせ、ノリノリで踊るベビー・グルートと、後ろでは、予告編で登場している巨大モンスターにボコボコに蹴散らされてるメンバーたちの平常運転ぶりに、続編の出来に多少の不安を持っていただろうファン(僕)もまずは一安心。

っていうか、モンスターに四苦八苦しているメンバーの間をノリノリダンスでウロチョロしてるベイビー・グルート超カワイイんですけどーー!!(;//́Д/̀/)'`ァ'`ァ

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で、ロケットの悪ふざけが過ぎて金色の人たちに狙われたり、メンヘラ妹のネビュラたんにガモーラが狙われたり、ピーターパパが現れたり(予告編で言ってるからネタバレじゃないですよ?)と、相変わらずシッチャカメッチャカの大騒動になっていくというお話です。

で、前作と違って本作では最初からメンバーの絆は出来上がってるので、前作では描かれなかった登場キャラたちの出自や葛藤を掘り下げる正統派な続編となってます。

ただ、そこはガーディアン・オブ・ギャラクシーですから、その合間にもオフビートなギャグシーンをしっかり挟み込んで、深刻になりすぎないバランスになってます。

家族(ファミリー)の物語

そんな本作で大活躍するのが、宇宙盗賊「ラヴェジャーズ」のボス ヨンドゥ(マイケル・ルーカー
ピーターの出自と共に、前作でもほんのり明かされていたピーターとの擬似家族関係や、ヨンドゥ自身の過去などが、本作ではしっかり描かれています。

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ヨンドゥ! あんたカッコイイよ! ヨンドゥ!

さらにネビューラとガモーラの関係や、メンバー同士の絆なども掘り下げられ、さらにファミリー感が強くなってるんですねー!

続編の宿命で、初登場の前作に比べると当然インパクトは弱いし、メンバーのバカっぷりや物語も若干小ぶりになった印象を受ける人もいるかもですが、その分キャラクターの物語を掘り下げていく大ヒット作の続編としては100点満点の出来だと思います!

やっぱ、ジェームズ・ガン監督は信用出来る男だぜ!

そして、本作は絶対に映画感の大きなスクリーンで見て欲しい作品ですし、もし前作を観てない人は今すぐレンタル→視聴して、それから本作を映画感に観に行って欲しいと思いますよー!

ホントはもっと色々書きたいけど、これ以上はネタバレになりそうなので自粛!!o(TヘTo)

なので、本作のポイントを二つだけ挙げるなら、

ベイビー・グルートは超絶カワイイ!
ヨンドゥーは超絶カッコイイ!!

そして前作以上に笑って、ワクワクして、泣ける作品です!

興味のある方は是非!!!!!!

 

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伝説的ヒップホップ・グループの伝記的映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」 (2015)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アメリカ西海岸出身の伝説的ヒップホップグループ「N.W.A.」の結成から成功、脱退、再結成までを描いた伝記的映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』ですよー!

ラップはよく分からない僕ですが、この作品は一本の映画としてとても面白かったです!

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

アイス・キューブドクター・ドレーら、大物ラップアーティストが結成していた伝説的グループN.W.A.の軌跡に迫る実録音楽ドラマ。カリフォルニアの中でも犯罪発生率の高いコンプトンで、彼らがラップで成功をつかんでいく姿を追い掛ける。メガホンを取るのは、『完全なる報復』などのF・ゲイリー・グレイアイス・キューブの息子のオシェア・ジャクソン・Jrやポール・ジアマッティらが結集する。波瀾(はらん)万丈を極めたドラマはもちろん、全編に響き渡るストリートの苛酷さを訴えたラップにも心を奪われる。

トーリー1986年、カリフォルニアのコンプトン。アメリカ屈指の犯罪多発地域として知られる同地に暮らす、アイス・キューブ(オシェア・ジャクソン・Jr)、ドクター・ドレー(コーリー・ホーキンズ)ら5人の若者はヒップホップグループN.W.A.を結成する。危険と隣り合わせで、先の見えない毎日を強いられている不満や怒りをビートとリリックに乗せて吐き出す彼らのサウンドは、瞬く間に絶大な人気と支持を集める。しかし、名声を得た彼らに社会からの偏見や仲間の裏切りといった苦難が降り掛かる。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

カリフォルニア コンプトンの若者たちのサクセスストーリー

本作は、カリフォルニア州のコンプトンという街で結成された伝説的ヒップホップ・グループ、「N.W.A.(Niggaz Wit Attitudes)」の伝記映画です。

「N.W.A.(Niggaz Wit Attitudes)」とは日本語だと「主張する黒人たち」という意味らしく、その名の通りメンバーは全員黒人のラップグループです。(「叫ぶ詩人の会」みたいな名前って思ったのは内緒w)

犯罪率がアメリカで最も高い都市の1つとして知られ、ギャング犯罪で悪名高い街コンプトン。
そんな街で生まれ育った彼らは、ロス警察による黒人への不当な暴力やギャングの実態など、彼ら日常で目の当たりにしてきた様々な思いを過激な詞に乗せてラップするギャングスタラップというスタイルで、デビューアルバム「ストレイト・アウタ・コンプトン」が大ヒット。一躍スターダムを駆け上っていきます。

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画像出典元URL:http://eiga.com /みんなで最初のアルバムを作る様子は見ててワクワクします。

反面、その過激な詞は「暴力を煽っている」と問題視され、特に警察官の横暴を詞にした「ファック・ザ・ポリス」はFBIから警告が届いたほど。

やがて売上金の着服疑惑などメンバー同士の確執から、アイスキューブ、ドクター・ドレーが離脱し、N.W.A.は分裂・解散へと至るのです。

本作は、まだ何者でもなかった彼らが「自分たちの言葉で世界を変えよう」とグループを組み、その成功と挫折を追った物語。

ちなみに劇中でアイスキューブを演じるのは、アイスキューブの実子であるオシェア・ジャクソン・Jrです。

米国の暗部と普遍的な若者たちの青春と成長を描いた普遍的な作品

と、ここまで読んだ人は「ラップとかよく分からないし…」と思うかもですが、心配はいりません。
本作はヒップホップグループの物語ですが、劇中で描かれるのは若者たちの青春と成長、挫折、和解、別れなど、大人であれば必ずが経験する普遍的な物語です。

そして、本作でもう一つ描かれているのは、アメリカが抱える人種差別問題。
一時、ロス警察による無抵抗の黒人への暴行がネットにアップされて大問題になりましたよね。

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画像出典元URL:http://eiga.com /道端で集まってるだけで警官に目をつけられちゃうのです。

本作ではそんな当時の空気感や、N.W.A.への批判なども当時の実録映像を交えて映し出されています。

もちろんこれは実話をもとにした劇映画だし、N.W.A.側の視点で描かれているので、公平とは言えないかもですが、ライブで「ファック・ザ・ポリス」を歌っただけで逮捕されたとか、脚色はあるにせよ事実に基づいて作られているようで、長く燻り続けるアメリカの暗部にも光を当てていると言えます。

それらも含めて本作は一本の映画としてよく出来た素晴らしい作品だし、ヒップホップやラップの好きな人はもちろん、音楽に興味のない人でもきっと楽しめると思います。

興味のある方は是非!!

 

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あの不条理ホラー「パラドクス」監督の新作!「ダークレイン」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、以前このブログでもご紹介したメキシコの不条理ホラー「パラドクス」の鬼才 イサーク・エスバン監督の新作、『ダークレイン』ですよー!!

なんていうかこう……とにかくスゴイ映画でした!!

何がどうスゴイを書くとネタバレになっちゃうので書けないし、それ以外でも出来る限りネタバレしないよう気をつけますが、出来れば事前情報なしで観て頂きたい作品なので、もし近々本作を観る予定の方は、先に映画を観て、それからこの感想を読んでください。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

雨により感染する伝染病の恐怖を描き、シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭などで話題となったメキシコ発のパニックホラー。世界中を襲う豪雨によって外見も内面も変貌する伝染病が発生、雨の中に潜む何かを恐れ、理性を失っていく人々の姿を映し出す。監督は、『パラドクス』などのイサーク・エスバン。ルイス・アルベルティ、『キック・オーバー』などのフェルナンド・ベセリルなどが出演。レトロな雰囲気や狂気じみた映像が恐怖をあおる。

トーリー:世界各地を豪雨が襲ったある夜。人里離れた場所にあるバス停に、8人の男女が居合わせていた。その中にいたローザが体調に異常をきたし、さらに見た目が恐ろしく変化してしまう。この雨によって感染する原因不明の伝染病は、ほかの場所でもまん延しており……。(シネマトゥデイ より引用)

感想

OPとEDがスゴイ!

本作でまずグッときたのは、殆ど白黒映画のような色彩の抜けた豪雨の中、オーケストラのおどろおどろしい音楽+白黒時代の怪奇映画を思わせるフォントで始まるオープニング。
もう、このシーンだけでイサーク分かってんなー! と期待度が上がります。

そして、映画が終わってエンディングの方は、ヒッチコック映画で数々の名オープニングを手がけたグラフィックデザイナーのソール・バスを思わせる映像とヒッチコック映画感漂う音楽。

映画好きな人は、このOPとEDで思わずニヤリとしちゃうんじゃないでしょうか。
劇中、(多分)ヒッチコックのサイコオマージュなんかもあったし、全体的に本作は50~60年代(よりもっと前かも?)の「怪奇映画」や「パニックSF」のテイストで作られています。

舞台は1968年のメキシコ

本作の舞台は、1968年のメキシコの田舎町にあるバスステーション。
なぜ時代がわかるかというと、劇中「トラテロルコ・学生運動」の話が出てくるからです。
これは、1968年オリンピックの誘致のために1.5億ドルの大規模な投資を行い、労働組合、農民を抑圧し、反乱鎮圧政策を行っていた当時のメキシコ政府に不信を募らせた学生たちが民主化デモを行い、軍や警察によって鎮圧され多くの死者が出たという、実際に起こった事件です。

この事件は、後の物語やテーマに深く関わっているんですねー。

バスステーションの中だけで物語が進む、ワンシチュエーションスリラー

本作のストーリーをザックリ言うと、大きな嵐がメキシコ全土を襲う中、バスステーションに偶然居合わせた8人の男女が謎の「ウィルス」によって一人、また一人と異常をきたしていくという密室劇。

妻の出産のため一刻も早く病院に行きたい男、DV夫から逃げてきた妊婦、シャーマンのお婆さん、トラテロルコに行きたい医学生、もうすぐ定年の職員と住み込みで働く若い女、病気の息子とその母親。

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そんな彼ら、彼女らがバスステーションで中々こないバスに苛立ち、対立し、「感染」し……そして”驚愕の状況”に陥るという不条理スリラーで、ある場所に閉じ込められ、その中だけで物語が進むワンシチュエーションスリラーという点では、前作『パラドックス』に近いかもしれません。

が、

本作は前作『パラドックス』をはるかに超える驚きが待ち構えているのです!!

先の読めない嫌な展開から中盤で起こる「あること」を目撃した観客は、目を見張ること請け合いです!

そして、そこからの怒涛の展開に、僕は思わずひっくり返りましたよ!
イサーク・エスバン監督は天才か!

作品テーマ

本作を一言で言うと「アイデンティティ」についての物語だと思います。
劇中で起こる驚愕の展開や、ナレーションで語られる「アリの話」
トラテロルコ事件の話などを通して寓話的に語られた物語は、ラストシーンでアイデンティティの崩壊が招く未来を暗示している、ある意味非常にイマドキなテーマの作品なんじゃないかと思います。

でも、そんなのは本作を観たあとに考えればいいことで、とにかくまずは本作を観て欲しいし、驚いて欲しいんですよ!

僕は、本作を観てイサーク・エスバン監督の次回作も絶対観たいって思いましたよー!

興味のある方は是非!!!

 

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モダンホラーの王キングとゾンビ映画の父ロメロがタッグを組んだサスペンスホラー「ダーク・ハーフ」(1993/日本未公開)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、モダンホラーの王様スティーブン・キングの同名原作を、ゾンビ映画の父ジョージ・A・ロメロが監督し実写映画化したサスペンスホラー『ダーク・ハーフ』ですよー!

どうやら日本未公開作品らしく僕は本作を知らなかったんですが、ネットのお友達に教えて貰ったので早速、TSUTAYAでレンタルしてきましたー!

 

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あらすじと概要

バイオレンス小説用のペンネームを葬り去った作家の周囲で次々と起こる猟奇殺人。犯人はもともと存在するはずの無い別名義の自分なのか……。自身もリチャード・バックマン名義で作品を発表していた事があるスティーヴン・キングのホラー小説をG・A・ロメロが映画化。“ペンネームの復讐”という非常に観念的な物語を、細かいディティールと印象的な画面でうまくビジュアル化しており、キング=ロメロの蜜月関係を再確認できる。

トーリー:売れない純文学作家のポーモント。彼は一方で、バイオレンス小説用にジョージ・スタークというペンネームを持っていた。しかし、ある時、そのペンネームを葬ってしまう。するとやがて、ポーモントの周囲で猟奇殺人事件が次々と発生。犯人はなんと、もともと存在するはずのないスタークだった。彼は自分を葬った人間たちに復讐していた。そして、ポーモントに再びスターク名義の作品を執筆するように迫ってくるのだが…。(allcinema ONLINEより引用)

 

感想

古典的ホラーをキングが再解釈

本作の内容は、ざっくりいえば「ジキル博士とハイド氏」の小説家版的な作品です。

主人公のポーモントは、子供の頃に小説を書く面白さに目覚めるも様態が悪化して緊急手術。慰謝が頭蓋骨を外して中身を見ると、そこにはまるで生きているような目玉や鼻、数本の歯が。
どうやらポーモントは元々双子だったのが、彼に吸収されたものの、吸収しきれずに腫瘍として彼を苦しめたのだと、医者は冷静に対処します。

それから25年。
大学の教授と純文学作家として二足のわらじを履いていたポーモンドは、愛する妻と双子の子供に恵まれ幸せで平穏な日々を送っていますが、ある日ファンを名乗る男が合わられ、別のペンネームでバイオレンス小説を書いている事を暴露すると脅されます。
実はポーモンドは純文学小説だけでは食べていけず、ジョージ・スターク名義でバイオレンス小説を執筆、その作品がベストセラーとなっていたわけですね。

結局、ポーモンドは全てを明かし、ジョージ・スタークの名義を封印するんですが、その後、彼の周りで猟奇的な連続殺人が起こり状況証拠からポーモンドが疑われてしまいます。

ここまでが本作の序盤で、観ているこっちは「ははーん。これは二重人格のポーモンドがスタークとして殺人事件を犯しているんだな」と思うわけです。

そういう二重人格ものは前述した「ジキルとハイド」から始まって、星の数ほどありますからね。本作もその中の一本なんだろうと。

ところが、さすがはキング。そんな僕の想像のはるか斜め上を行ってましたw

ここからはネタバレになるので、読む人は注意して欲しいんですが

 

 

なんとジョージ・スタークは実在したんですねー。
どういう事かというと、心の奥底でジョージ・スタークを葬りたくないと思っていたポーモンドの念? がジョージを実体化させちゃった? っていう事らしいんです。
ちなみに、このスタークとポーモンドはティモシー・ハットン一人二役で演じています。

つまりジョージ・スタークは、ポーモンドの半身であり、彼のダークサイド。
「ダーク・ハーフ」なんですね。
ジョージ・スタークは自分を葬るキッカケになった全ての人間を、ポーモンドが書いていた小説のように葬り、ポーモンドに再びスターク名義で小説を書かせようとします。
そうしないと自分が存在出来なくなってしまうらしい。
しかし、スタークに言われるままに小説を書くと、ポーモンドは弱って死んでしまうらしい。
こうして、二人の対決が始めるんですねー。

スズメの存在

本作で重要なモチーフとなるのが、スズメの大群です。

ポーモンドが脳の“腫瘍“を摘出される時に大量のスズメが病院を襲い、またポーモンドとジョージが関わるシーンでは、いつもポーモンドの頭の中にスズメの鳴き声が聞こえます。そしてラストのクライマックスにもスズメの大群が登場するんですね。

劇中で、ポーモンドの大学の同僚の説明によると、スズメは死者を霊界? に案内するという役割があるとされているらしいんですが、これが本当にある何かの伝承なのか、それともキングの創作なのかは、ネットで調べてみたけど分かりませんでした。

ただ、この事と劇中でのいくつかのエポソードから、ジョージ・スタークと幼い頃のポーモンドの脳から取り出された“腫瘍“に深い関係があることが分かります。

多重人格というある意味現代的なモチーフと、伝承や呪いなどの古典的なオカルトをミックスしていくのは、まさにスティーブン・キング印だなーと思いましたねー。

キング自身を投影?

キング作品では度々、小説家が主人公になります。

その中で映画化された有名な作品といえば「シャイニング」「ミザリー」の2本でしょうか。

ミザリー」は狂信的な女性ファンに監禁されてしまう小説家の話で、『物語が読者の与える影響』を描いた作品ですが、本作は『物語が作家本人に与える影響』を描いた作品です。
またキング自身、過去に別名義で作品を発表したことは有名らしく、本作のアイデアはそんなキング自身の経験から生まれたのかもしれませんね。

ジョージ・スタークが、自分名義で作品が発表されないとせっかく実態を得たにも関わらずこの世に存在できないという設定は、どことなく日本的な設定にも感じますが、小説家であるキング自身の恐怖とも言えるかもなんて思ったりもしました。

と、ストーリーやキャラクターの設定は面白いし、最後までドキドキハラハラしながら観ていたんですが、観終わってみればスタークとポーモンドの関係性が多少分かりづらいような気がしましたねー。
その辺のロジックがもう少しハッキリ伝われば、劇中のサスペンスが盛り上がったんじゃないかなと。
あと、スタークの行動原理もイマイチ分からないというか、あんなにガンガン殺人を犯してポーモンドが捕まったら、どうする気だったんだろう? とか。

あと、割と普通にスタークがポーモンドの前に現れるので、若干拍子抜け感もあったりしました。

ただ、冒頭の手術のシーンで脳の中で目が動くところなんかはギョッとしたし、クライマックスで大量のスズメが襲いかかってくるシーンも迫力と怖さがあり、正直”ホラー映画”としては地味ですが、細々した表現も含めて、個人的にはかなり楽しめましたよー!

 

興味のある方は是非!

 

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早世した天才棋士の生涯を描いた伝記作品「聖の青春」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、29歳の若さでこの世を去った天才棋士村山聖の生涯を描いた伝記映画『聖の青春』ですよー!
体重の増量や外見だけでなく、徹底した役づくりで鬼気迫る演技の松山ケンイチと、羽生名人の細かいクセまでほぼ完コピした東出昌大の徹底した役づくりは本当に素晴らしかったですよー!

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

29歳の若さでこの世を去った天才棋士村山聖の生涯をつづる大崎善生のノンフィクションを、松山ケンイチ主演で映画化。幼いころより患う難病と闘いながら将棋の道を突き進んだ村山の壮絶な人生を、羽生善治をはじめとする同世代の棋士との死闘や、彼を支える師匠や両親たちの愛を通して描く。『宇宙兄弟』などの森義隆がメガホンを取り、『マイ・バック・ページ』などの向井康介が脚本を担当。大幅な体重増量など徹底した役作りに挑んだ松山の熱演が光る。

トーリー幼少期から難病を患う村山聖は、入退院を繰り返す中で将棋と出会い、15歳で森信雄に師事する。10年後、名人になる夢をかなえるべく上京した聖(松山ケンイチ)は周囲に支えられながら将棋に全力を注ぎ、七段に昇段したころ、同世代で名人のタイトルを獲得した羽生善治に激しいライバル心を抱く。さらに将棋に没頭する聖だったが、がんが彼の体をむしばんでおり……。(シネマトゥディより引用)

 

感想

難病を患いながらも29年の生涯を駆け抜けた天才棋士の物語。

本作の主人公、村山聖(むらやま さとし)は、幼少時に「ネフローゼ」という腎臓の難病を患い、無理のきかない自らの重い身体と闘いながら、将棋界最高峰のタイトル「名人」を目指して快進撃を続け「東の羽生、西の村山」と言われた若き天才棋士でしたが、膀胱がんのため29歳という若さで亡くなったそうです。
「三月のライオン」の二階堂のモデルも確かこの人だったと思います。

本作は生前の村山聖と交流のあった作家・大崎善生の渾身のデビュー作となったノンフィクション小説を原作に、村山の最後四年間にフォーカスを当てた“フィクション”になっています。

松山ケンイチ東出昌大の徹底した役作りと鬼気迫る演技

まず、本作で驚くのは何といっても主役の村山聖を演じた松山ケンイチの見た目じゃないかと思います。

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もう、ぷっくぷくですよ。

というのも、村山聖がそもそもそういう体型だからなんですが、松ケンは役づくりのために体重を大幅に増量。
さらに、村山氏の対局中の細かいクセなどを研究して役に望んだようです。
それは羽生善治名人を演じた東出昌大も同じで、対局中の細かい仕草や相手を刺すように睨みつける視線など、ほぼ完コピに近い見事な役づくりをしているんだそうですよ。(僕は将棋を見ないので分かりませんけど、ネットで調べたところ将棋ファンの人が褒めてました)

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画像出典元URL:http://eiga.com

もちろん、ただの物マネではなくて、クライマックスになる両者の対局では表情や視線、一手一手の緊張感など、将棋を全く知らない僕でも息を呑むような演技を見せていました。

両者の対局シーンでは(例えば両者の思考をビジュアルで見せるような)派手な演出はなく、あくまで松ケンと東出昌大の演技だけで淡々と見せていくんですが、その分、二人の鬼気迫る演技のぶつかり合いが際立っていましたねー!

また、脇を固める役者陣も実力派揃いで、非常に見ごたえがありました。

原作からの改変

本作の原作はノンフィクション小説なので、あくまで事実に忠実に書かれているようなのですが、本作では村山聖羽生善治の二人に物語を絞っています。
例えば村山が生涯で唯一タイトル戦に挑戦することが出来たのは、1992年の谷川浩司との王将戦だけらしいんですが、劇中では羽生名人とのタイトル戦に変えられていたりするようで、個人的は約2時間の物語に収めることや、将棋を知らない一般の人の分かりやすさを考えれば致し方ないのかなーと思うんですが、その辺は将棋ファンや原作ファンにとっては不満に感じてしまう点かもです。

将棋が分からない人でも楽しめる

将棋に限りませんが、特殊な世界を題材にした作品だと「その世界を知らない人は面白さが分からないのでは?」 と不安になったりしますよね。
僕も将棋はコマの並べ方も知らないので、観る前は少し不安だったんですが、実際観てみたらまったく問題ありませんでした。

どちらが優勢か劣勢みたいな状況はサブキャラクターが説明してくれるし、本作の本題は将棋ではなく、あくまで村山聖という人の生き様と、彼と周囲の人との関わりを描いた人間ドラマがメインですからね。

なので、本作でも将棋の内容について観客が理解させるような説明は一切ありません。
控え室などで、他の棋士の人たちが将棋の内容について語るシーンも、将棋を知らない人にはまったく理解出来ないですが、それでいいという作り方なんです。
シンゴジラ」で言えば、会議室での会話シーンみたいなものですねw

気になったところ

ただ気になるところもあって、多分、本作は時系列を入れ替えてるシーンがいくつかあると思うんですが、その演出は正直あまり意味がないし、そのせいでストーリー(というか状況?)が分かりずらくなってるように思いました。

特に冒頭のシーンは、村山聖という人物を説明したいという意図は分かるけど、その後のストーリー展開に繋がってるわけではないですしね。
むしろ幼少期から順を追って見せていった方が、観客もすんなり物語に入れるし感情移入もしやすかったのではないかなって思いました。

逆に、前述したように対局シーンで過剰な演出をせず、役者の演技に任せて淡々と描いたのは個人的にはとても好印象でした。
例えばマンガ原作みたいな完全フィクションなら、派手さのある映像で盛り上げたほうがいいかもですが、実在の人物が主人公のいわば伝記映画ですからね。

ともあれ、全体的は地味で静かな映画ですし傑作とまでは言いませんが、見れば面白いし、人によっては心に刺さる秀作だったと思います。
それに、しつこいようですが松ケン&東出昌大の演技だけでも、本作を観る価値アリだと思いますよー!

興味のある方は是非!