今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

これはヒーロー映画だ!「タクシー運転手 約束は海を越えて」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、1980年に韓国で実際に起こった光州事件を元に劇映画化した『タクシー運転手 約束は海を越えて』ですよー!

韓国最高の俳優と言われているソン・ガンホ演じるタクシーの運ちゃんが、光州事件に巻き込まれ、色々あって使命に目覚めるという胸熱な映画でしたよ!

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

1980年に韓国で起きた光州事件でのドイツ人記者と韓国人タクシー運転手の実話を、『JSA』『密偵』などのソン・ガンホらの出演で映画化したドラマ。光州へ取材に向かうドイツ人ジャーナリストと彼をタクシーに乗せた運転手とのやり取りを、コミカルかつシリアスに描く。監督は『映画は映画だ』『高地戦』などのチャン・フン。『ヒトラー ~最期の12日間~』などのトーマス・クレッチマンのほか、ユ・ヘジン、リュ・ジュンヨルが共演する。(シネマトゥディより引用)

感想

光州事件とは

本作で取り上げられている「光州事件」を、恥ずかしながら僕はほとんど知らなかったんですが、これがどんな事件だったかというと、

朴正煕大統領の暗殺後、「ソウルの春」と呼ばれる民主化ムードが続いていた韓国では(済州島を除く)全国に非常戒厳令が宣布されていました。

そんな1979年12月、クーデターによって全斗煥保安司令官が韓国軍を掌握。
マスコミにも箝口令を敷き、海外のマスコミも完全にシャットアウトするわけです。

そんな軍事独裁政権に反発した労働者と学生による民主化要求デモが激しさを増す中、光州市では学生によるデモ鎮圧のため機動隊と空挺部隊を投入。
機動隊や軍隊の暴行によって逮捕者400人、負傷者は80人にも上り、これに怒った市民が角材、鉄パイプ、火炎瓶などを使用して軍部に対抗。
陸軍部隊と市民の衝突は市街戦の様相を呈していき、市民は武器庫を襲撃して武装蜂起し、内戦状態となった光州市では多くの死傷者を出した。という事件らしいです。(詳しくはこちら

軍部の情報統制と操作によって、この事件は当時、韓国国内でも殆ど知られていなかったらしいんですね。

ざっくりストーリー紹介

そんな、戒厳令最中のソウル市内。
個人タクシーの運転手キム・マンソプ(ソン・ガンホ)は、すっかり客足が減って生活に困っているシングルファーザー。

完全ノンポリな小市民の彼はデモを起こす学生に批判的なんですが、ある日、外国人ビジネスマンを光州市に送迎するだけで10万ウォンもの大金が貰える事を盗み聞きし、先回りしてドイツ人記者ピーター(トーマス・クレッチマン)を乗せ、光州市に向かう。という物語です。

最初はただの呑気なオッサンのキムさんが、光州での地獄のような体験と、仲良くなった人々が傷つく様子を見て義憤に駆られ、(身の安全と使命感の狭間で葛藤しながらも)渦中に飛び込んでいくという物語なんですね。

名優ソン・ガンホの演技に涙

そんな呑気なタクシー運転手のキムさんを演じるのは、韓国最高の俳優と言われているソン・ガンホ

劇中、彼は終始ただの気の弱いタクシー運転手、つまり普通の人です。
病気で奥さんを亡くした彼は、11歳になる一人娘と二人暮らしなんですが、戒厳令やデモのせいで儲けがなく、娘に新しい靴も買ってあげられないし、家賃を4ヶ月も滞納している。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ちょっと頼りないけど良きパパなのです。

その家賃を稼ぐため、外国人記者のピーターを乗せて光州市に行こうとしたら、道路は全て封鎖されていて、ただならぬ雰囲気。
彼は、ピーターに運賃先払いを要求して払う払わないで揉めたり、まるで戦場のような光州市の有様に、ピーターを置いてひとりで逃げ出そうとしたり、一度は本当に逃げ出したりするんですよね。

しかし、一人娘をソウルに残している彼の気持ちを察して、責めることなく送り出してくれた光州市のタクシー運転手ファン・テスル(ユ・ヘジン)の優しさや、仲良くなった大学生ジェシ(リュ・ジュンヨル)、おにぎりを振舞ってくれた名も知らぬお姉さんや、気のいい町の人々を思うと、いてもたってもいられず。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 左からファン・テスル(ユ・ヘジン)、キム・マンソプ(ソン・ガンホ)、ピーター(トーマス・クレッチマン)、ジェシク(リュ・ジュンヨル)

しかし、もし自分が死んだり捕まったりしたら、一人娘が孤児になってしまう。でも、ピーターが韓国を無事脱出して事件の全容を明るみにしなければ、光州市の惨劇は止まらないという葛藤に……。っていうシーンでのソン・ガンホの演技はホント素晴らしくて、もう号泣ですよ!・゜・(ノД`)・゜・アニキ-!

ヒーローとは

僕の好きなアメコミヒーローが、ヒーロー足りうる定義っていうのは、能力や武器の強さではなく、例え何の力もなくても、理不尽や巨悪に立ち向かうため、自分のなすべきことをする意思や精神の強さだと思うんですね。

だから、バットマンは超人のスーパーマン以上の人気を博しているわけです。

その根底に有るのは、理不尽な暴力から自分たちの権利を自らの手で守るというビジランテ(自警団)精神なのです。

本作は、まさにそうした人々を描いた物語であり、そういう意味で本作はまさにヒーロー映画なのです。

 もちろん、劇映画としてかなり盛ってる部分や変更を加えている部分も多々あるようだし、正直、最後の逃走劇は流石にちょっと蛇足では? とも思うんですが、ドイツ人記者と成り行きで彼を乗せたタクシー運転手のキムさんは実在し、この二人のおかげで光州事件が世界に知られることになったのは紛れもない事実ですからね。

 あと、ソン・ガンホ演じるキムさんが、途中から急にヒーロー然と振舞うのではなく、あくまでもタクシー運転手として、一市民として、なけなしの勇気を振り絞って使命を果たすという描き方も好感が持てたし、軍部の中にも上層部のやり方に疑問を持っている人がちゃんといるという描き方のバランスもいいなって思いました。もちろん劇映画としても超面白かったですよ!

 

興味のある方は是非!!

 

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“ポリス・ストーリー”ではないが大満足「ポリス・ストーリー/REBORN」(2018)

ぷらすです。

観てきましたよー!
ジャッキー最新作『ポリス・ストーリー/REBORN

まぁ、事前に「ポリス・ストーリー」シリースではないというのは耳に入ってたんですが、それを知ってても、度肝を抜かれる超展開だったし、近年のジャッキー作品の中では、一番満足度の高い作品でしたねー!

というわけで、今回は公開直後の映画なので、出来るだけネタバレは避けるように書きますが、内容的にある程度踏み込む部分もあると思うので、これから観に行く予定の方や、ネタバレは嫌!って人は、映画を観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

ジャッキー・チェンが主演を務めたアクション。香港の国際捜査官、犯罪組織、ハッカーらが因縁のバトルを展開する。『人魚姫』などのショウ・ルオ、チェリストとしても活動しているオーヤン・ナナ、エリカ・シアホウらが共演。ジャッキーは、オペラハウスの屋上で撮影された危険なスタントや、カーチェイスなどを披露している。(シネマトゥディより引用)

感想

「ポリス・ストーリー」ではない

まず、この映画は邦題では「ポリス・ストーリー」になってますが、原題は「机器之血/機器之血 英題:BLEEDING STEEL」で、ポリス・ストーリーシリーズではないんですね。

ポリス・ストーリーのオリジンシリーズは、

『ポリス・ストーリー/香港国際警察【警察故事】(1985)

『ポリス・ストーリー2/九龍の眼』【警察故事 續集】(1988)

『ポリス・ストーリー3』【警察故事III/超級警察】(1992)

『ファイナル・プロジェクト』【警察故事4之簡單任務】(1996)

の4本で、この4本とは別設定、別世界だけど、ポリス・ストーリー(警察故事)のタイトルがついてるのが、

香港国際警察/NEW POLICE STORY』【新警察故事】(2004)

『ポリス・ストーリー/レジェンド』【警察故事2013】(2013)

の2本。別作品だけど邦題に「ポリス・ストーリー」がついてるのが、

『新・ポリス・ストーリー/Pom Pom』【神勇雙響炮】(1984

『新ポリス・ストーリー』【重案組】(1993)

そして本作『ポリス・ストーリー/REBORN』【机器之血/機器之血】(2017)の3本で、本作の場合、日本では『ポリス・ストーリー』ユニバース10本目を飾る記念作という形で公開されているんだそうです。

まぁ、まったく関係のない海外作品が、邦題ではシリーズものにされるのはよくある事(「サスペリア」と「サスペリア2」や、サモ・ハン主演だと全部「デブゴン」にされるとか)だし、ぶっちゃけコッチも慣れっこなんですが……

なんと、本作はまさかのSF!

これには流石に度肝を抜かれましたねー!ww

いや、確かにCMでもそれっぽい人出てきてたけどさw

あと、本作ではジャッキー自ら収録し直した「英雄故事」(ポリスストーリーのテーマソング)を主題歌にしてるのも、色々とややこしさに拍車をかけてるんですよねw

ここ数年で一番ジャッキーらしいアクションが楽しめる作品

でもね、そんな事はどーでもいいんですよ!
ジャッキーが刑事を演じてれば、それはもう「ポリス・ストーリー」でいいのです。

で、ここ数年。具体的に言うと『ポリス・ストーリー/レジェンド』以降のジャッキー出演映画の中で、本作は一番“ジャッキーアクション”を堪能出来る作品になってます!

冒頭、敵に狙われる証人を保護するシークエンスでの、ド派手な銃撃戦&爆発シーンや、女幹部率いる敵軍団とオペラハウスの舞台での格闘シーン。

そしてCMでも使われているオペラハウス屋上からのスタントなどなど。

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基本シリアスな内容ながら、アクションの中にしっかりコメディー要素を入れたり、お得意のアクションをセルフパロディーしたり、カーチェイスまで。

もちろん老齢に差し掛かっているジャッキーなので、スタントダブルやCGは使ってるし、ワイヤーなどを使用して安全面も考慮されてるけど、爆発シーンなんかはセットの中で実際に爆発させたりしててグッとリッチな映像になってるし、ハリウッドのやり方を取り入れたアクション+ジャッキーのアクションって感じで、見応えは充分。もう、大・満・足!

でしたよー!!

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「英雄故事」の流れるエンドロールではちゃんとNG集も入っていて、何かちょっと泣きそうになりましたねー。

近年のジャッキーは、若手俳優と組んで、自分は一歩引いた感じの役柄も多かったんですが、本作ではジャッキー全開って感じで、そういう意味では久しぶりにジャッキー映画観てるなーって感じがしました!

そりゃぁ全盛期のジャッキーに比べれば、動きは重いしキレだってあまり良くないんですけど、足りない部分はハリウッド式のやり方やCGなどを柔軟に取り入れてカバーしつつ、今現在の全力アクションを観せてくれるジャッキーはやっぱり映画人として凄いって思いましたねー。

興味のある方は是非!

 

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東映“実録ヤクザ映画”の流れを汲む新作「孤狼の血」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「凶悪」や「日本で一番悪い奴ら」を手がけた白石和彌監督の最新作『孤狼の血』ですよー!

仁義なき戦い」を始めとした、東映が得意とする“実録ヤクザ映画”の流れを汲むバイオレンス映画です。

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概要

『凶悪』などの白石和彌監督がメガホンを取り、柚月裕子の小説を映画化。暴力団対策法施行以前の広島県を舞台に、すさまじい抗争を起こしている暴力団と彼らを追う刑事たちのバトルを活写する。役所広司が主演を務め、松坂桃李真木よう子滝藤賢一田口トモロヲ石橋蓮司江口洋介らが共演。昭和の男たちが躍動する。(シネマトゥディより引用)

感想

東映お家芸とも言うべき“実録ヤクザ映画”

元祖 実録ヤクザ映画にして日本ノアール映画の金字塔「仁義なき戦い
「仁義なき~」を観たことがない人でも、♪チャララ~チャララ~という、あの印象的なテーマソングを聞いたことがないという人は少ないのではないでしょうか。

www.youtube.com

仁義なき戦い」は、菅原文太松方弘樹千葉真一北大路欣也などなど、当時の二枚目スターたちが一堂に介して、戦後広島で起こった暴力団同士の抗争を描いた大人気シリーズでした。

テレビの普及や社会情勢の悪化、不景気などなど、様々な要因から系映画苦しくなってきた映画会社は、それぞれの方針で生き残りを模索するわけですが、元々華やかな時代劇を得意としていた東映は、その後、高倉健らスターを主演に据えた任侠シリーズを経て、美能幸三が網走刑務所で書き綴った手記をベースに、飯干晃一が連載したノンフィクションを映画化。

当時若手だったスターたちが広島のヤクザに扮し、まだ若手監督だった深作欣二が手がけた、暴力団が血で血を洗う抗争を描いたこのシリーズは異例の大ヒットを飛ばし、以降東映は実録ヤクザ路線に舵を切り、レンタルビデオが始まるとVシネマに舞台を移し、「実録ヤクザ映画」は現在まで綿々と続いているんですね。

そんな東映実録ヤクザ映画をスクリーンに復活させたのが、本作「孤狼の血」なのです。

ヤクザ映画といえば、近年だと北野武監督の「アウトレイジ」シリーズを思い出す人もいるかと思いますが、アウトレイジの大ヒットが、本作の制作に繋がったといえるかもしれません。

日本を代表する「いい顔」のオッサンが大集合

そんな本作でマル暴の刑事 大上を演じるのは名実ともに実力派俳優の役所広司
その大上と組む大卒キャリアの新米刑事 日岡役を松坂桃李が務めるんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com  / 主演の二人。

まさに、日本版「トレーニングデイ」ですよ!

他にも、名脇役 石橋蓮司、「凶悪」以降白石組常連のピエール瀧など、“いい顔のオッサン”たちが大集合でしたねー。

ざっくりストーリー紹介

昭和63年。暴力団対策法成立前夜の広島呉原市では、地元暴力団の尾谷組と五十子会傘下の加古村組の因縁が高まり、いつ抗争に発展してもおかしくない状況だった。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 安心の石橋蓮司

そんな呉原市のマル暴刑事になった大学出のキャリア日岡は、ベテランながら法律無視の刑事 大上と組まされ、両暴力団の間を行き来するはめに。

暴力・賄賂・恐喝・放火と、捜査のためならやりたい放題の大上に反発しながらも、日岡は次第に、大上に惹かれていくのだが…。という内容です。

呉原市は架空の町なんですが、全編モデルとなった呉市でオールロケを敢行したというから、その本気度が伝わりますね。

ディテールへのこだわり

例えば、警察車両が白のマークⅡだったり、まだ携帯がなくて日岡がポケベルを持ってたりというディテールだけでなく、当時のザ・昭和な風景を残す呉市で撮影を行ったのは大正解だと思いました。

また、一連の事件の発端となる、冒頭の豚小屋での拷問シーン。
しっかり痛い&グロいシーンで嫌な感じを見せる演出で、その後も要所要所で痛グロいシーンをしっかり見せていくのは、さすが白石監督だなーと思いましたねー。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 道産子の星 音尾琢真も熱演

原作ではなかったという、クライマックスからのラストシーンを付け加えたことで、大筋は変わってなくても、映画のカタルシスはかなり上がってるんじゃないでしょうか。

あと、随所に東映実録ヤクザ映画のオマージュが入っているのも、「仁義なき~」とかを観ている人たちなら思わずニヤリとしてしまうんじゃないでしょうか。

全編に漂う物足りなさ

ただ、作品としては文句なしに面白い要素が揃っているハズなのに、観終わってみると何故か、物足りなさを感じてしまうんですよねー。

その理由が何なのかと考えてみた結果、全体的にゲス味が足りないんじゃないかなーって思いました。

例えば、冒頭豚小屋で拷問され殺害されたサラ金経理担当の妹が捜索願を出して、大上と話すシーン。
大上は日岡を部屋から追い出してその妹とエッチするんですけど、そのシーンは一切描かれてないんですよ。
事後に部屋から出てきた大上が、ズボンのチャックを上げる描写に留めてるんですね。

で、その間は、日岡と他の刑事の会話で、大上は女性の取り調べは必ず二人きりでするみたいな説明を入れるんですけど、何か物足りないんですよねー!

いや、別に役所広司がエッチしてる様子を映し出さなくてもいいんだけど、例えば刑事と日岡の会話の最中に女性の喘ぎ声やテーブルが軋む音が聞こえて、刑事たちが┐(´д`)┌ヤレヤレみたいな顔をするとか。

そういう描写が一個はいるだけで、主人公大上のゲス感が出るじゃないですか。

日岡の目に映る大上は、とんでもないゲス野郎かつ悪徳警官でないといけなくて、その割には彼のゲスさが出ていないというか、役所さんのいい人感が出ちゃってるというか。

本来、観客は日岡と同じ視線のハズなのに、役所さんのいい声で言われると、なんか納得しちゃうのですよw

それは役所さんの演技がまずいのではなくて、多分、ちょっとした演出が足りてないんじゃないかな? って思うんですよね。

それは他の役者さんにも言えて、なんていうか、脚本通りっていうか、やらされてる感言わされてる感みたいのを感じてしまって、ハラハラしないのです。

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画像出典元URL:http://eiga.com / クライマックスの江口洋介は怖くて良かった。

まぁ、「仁義なき~」と比べてしまっているからそう思うのかもですが、でも、実録ヤクザ映画を謳って、東映映画として公開してるんだから、それは比べるなっていう方が無理ってもんでしょ。

もしかしたら、時世的に女性客が引かないようにっていう配慮なのかもですが。

あと、これだけは言いたいんですけど、“ある事”が起こって、その調査をしてる松坂桃李が、“ある物”を見つけて、「うあぁぁぁ!!」と叫びながら犯人に殴りかかるシーンがあるんですけど……

だから、叫ばせるなと何度言えば…。

物語的エモーションが欲しかったのかもだけど、俳優に叫ばせる演出は心底ダサいから!

例えば、犯人は証拠が出るはずがないとタカをくくっていて、そこで“ある物”を見つけた松坂桃李がそれを握り締めながら犯人に歩いていく後ろ姿をカメラで追うっていう方が、より彼の怒りが伝わるんじゃないですかねー?

ほんと、(特に若手俳優に)叫ばせると映画が安くなるから、いい加減やめた方がいいと思いますよ。

とはいえ、今の日本で作られたノワール映画がヒットするのは、やはりそれだけ需要があるからだろうし、個人的にもこれだけ尖った内容の作品がヒットするのは素直に嬉しいです。

すでに続編の制作も決まってるらしいので、今から楽しみですよー!

興味のある方は是非!!!

 

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“NYウロウロ映画”かと思ったら…「さよなら、僕のマンハッタン 」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「アメージング・スパイダーマン」や「gifted/ギフテッド」のマーク・ウェブ監督作『さよなら、僕のマンハッタン』ですよー!

観る前は「どうせアレだろ? 主人公がNYをウロウロする映画なんだろ?」と、若干ナメてたんですが、実際観てみたら結構好みな映画でしたよー。

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概要

(500)日のサマー』などのマーク・ウェブ監督が、サイモン&ガーファンクルの名曲「The Only Living Boy In New York」に乗せてつづるラブストーリー。ニューヨークを舞台に、親元を離れた青年が隣人との交流や恋愛、父親の不倫を経て成長していく姿を描く。『クィーン アンド カントリー』などのカラム・ターナーが主人公を演じ、『アンダーワールド』シリーズなどのケイト・ベッキンセイル、『007』シリーズなどのピアース・ブロスナン、オスカー俳優ジェフ・ブリッジスらが脇を固める。(シネマトゥデイより引用)

感想

僕は何となく、ニューヨークの映画というとミニシアター系の私小説映画っていう勝手なイメージがありまして。

一時期、ミニシアター系の映画ばっか観ていた時期があって、その時の印象が強かったのかもしれません。

で、ニューヨークを舞台にしたミニシアター系映画で言うと、「主人公がNYをウロウロする系映画」っていう系譜があるような気がするんですよね。

売れないミュージシャンが猫とニューヨークをウロウロする「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」(2014)とか……うーん、あとはちょっと思い出せないですけど。

で、最初この映画もそういう「NYウロウロ映画」だと思ってたわけですよ。

特に大きな事件は起こらないけど、夢も目的もない青年がNYをウロウロして、小さな出会いを繰り返すうちに少しだけ成長する的なヤツかと。

で、実際観たら、全然違う映画でしたねー。(いや、当たらずとも遠からずなのかな?w)

ざっくりストーリー紹介

大学を卒業して一人暮らしを始めた青年トーマス・ウェブ(カラム・ターナー)は、一夜を共にしたガールフレンドのミミ(カーシー・クレモンズ)にご執心だけど、ミミの方には遠距離恋愛の彼氏がいて、近々夢を叶えるためニューヨークを離れるのでつれない様子。

そんなトーマスは、彼の暮らすアパートに引っ越してきたW.F.ジェラルド(ジェフ・ブリッジス )というオッサンと仲良くなり、色々アドバイスを貰うようになり、次第に仲良くなっていきます。

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そんなある日、トーマスは偶然、父親のイーサン(ピアース・ブロスナン)の浮気現場を目撃してしまい……。という内容。

で、確執のある父親の浮気相手を探るうち、トーマスは自分の出生の秘密を知るわけですね。

マーク・ウェブの半自叙伝?

この作品は、 “ブラックリスト”(映画化が実現していない優秀脚本リスト)の中から、監督のマーク・ウェブが「いつか映画化したい」と、長編デビュー作「(500)日のサマー」より前から温めていた作品だそうで、今回ついに念願叶ったんだそうですね。

また、「(500)日のサマー」で一躍脚光を浴び、「アメージング・スパイダーマン」で失意のどん底まで落ち、「gifted/ギフテッド」で初心に帰って、本作でアメスパの本拠地であるNYに舞い戻ったマーク・ウェブが、主人公トーマス・ウェブに自身を投影した半自叙伝的な物語と言えるのかもしれません。

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物書きの道を父親(編集者)の一言で諦め、自分は父親に嫌われてると思い込んでたけど、実はそうじゃなかったっていう内容ですしね。

とはいえ、本作の評価はあまり高いわけじゃないみたいですが。

まぁ、物語自体は結構ベタなメロドラマでもあり、よくある話っちゃあよくある話で、それ以上でもそれ以下でもないって感じですし、僕も「この映画サイコー!」ってほどのテンションではないんですが、でも、そこまで悪くはないっていうか、好き嫌いで言えば、じんわり好きな映画だったりします。

父親のイーサン視点で観れば、結構グッときてしまう感じでしたしねー。

主役のカラム・ターナーを脇で支えるピアース・ブロスナンジェフ・ブリッジスが、個人的には良かったですねー。

90分弱という上映時間も、この物語のサイズ感としては丁度いい感じでしたよ。

興味のある方は是非!

 

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伝説のバンド クイーンに出会う「ボヘミアン・ラプソディ」(2018)*完全ネタバレ

ぷらすです。

巷で話題の『ボヘミアン・ラプソディ』を観てきました!!

最初は「DVDでもいいかなー」なんて思ってたんですが、熱量の高いツイートを度々目にしたり、リアル友人からも熱くオススメされたりして、「これは、映画館で観るべき映画なのかも…」と思い直したんですよねー。

で、実際観たら……

うぉぉ!!(ノT△T)ノ フレディぃぃ!!!

ってなりましたねー!!

クライマックスの「ライブエイド」のシーンでは、全僕が、\(T△T\)ういーあーざちゃーーんぴおん(/T△T)/ういーあーざちゃーーんぴおん大合唱でしたよー!!(心の中でね!)

というわけで、今回は伝記映画なので、ネタバレとか(基本)気にしないで書きます。
っていうか、完全にネタバレしてます
なので、ネタバレは嫌!! って人は先に映画を観てからこの感想を読んでください。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

「伝説のチャンピオン」「ウィ・ウィル・ロック・ユー」といった数々の名曲で知られるロックバンド、クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーの伝記ドラマ。華々しい軌跡の裏の知られざる真実を映す。『X-MEN』シリーズなどのブライアン・シンガーが監督を務めた。ドラマシリーズ「MR. ROBOT/ミスター・ロボット」などのラミ・マレック、『ジュラシック・パーク』シリーズなどのジョー・マッゼロらが出演。フレディにふんしたラミが熱演を見せる。(シネマトゥディより引用)

感想

クイーンって、個人的感覚で言うと僕より上の世代が直撃していた印象で、だから僕自身は今までほとんど触れてきてないんですよね。

もちろんテレビやラジオで曲は聴いてるし、フレディ・マーキュリーの名前やビジュアルも分かるんですけど……。
うーん、何ていうか、ビートルズジョン・レノンと一緒で、バンドっていうより歴史上の人物みたいな感じなんですよねw

なので、そんなクイーンに興味がない僕が観に行って楽しめるんだろうか…? という不安を抱えながら映画館に行ったわけですが…。

蓋を開けたらそんなのまっったくカンケーなかったです!

本作は、“往年のファンが昔を懐かしむ映画”というより、“クイーンを知らない人達がクイーンやフレディに出会う映画”という風にチューニングされているんですね。

とはいえ、往年のファンは楽しめないのかといえば、多分そんなことはなくて、まず、20世紀フォックスのオープニングファンファーレを、ブライアン・メイロジャー・テイラー(本人)が新録したクイーン・バージョンでスタートっていう、ファン感涙モノの大サービスでスタートしますからねー!

つまり、昔馴染みも初めましても、みんな一緒に楽しんでくれよな! っていうマインドの、映画というよりライブに近い作品なのです。

ざっくりストーリー紹介

1970年のロンドン。インド系移民という出自と自分の容姿に強いコンプレックスを持つフレディ(ラミ・マレック)は、ボーカルが脱退したブライアン・メイ(グウィリム・リー)とロジャー・テイラーベン・ハーディ)のバンド「スマイル」に自分を売り込む。

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フレディの歌声に魅了された二人は彼をバンドに迎え、さらにベーシストのジョン・ディーコン(ジョゼフ・マゼロ)も加わり「クイーン」と名前を変えて活動開始。

やがて「キラー・クイーン」のヒットによって彼らはスターダムにのし上がるが、フレディは自らのセクシャリティーから孤独に苛まれ……。というストーリー。

ご存知の方も多いと思いますが、フレディは精神的には恋人メアリーを愛しながらも、肉体的には男性を求めてしまうバイセクシャルで、音楽で成功しメンバーを“家族”と呼びながらも、フレディ自身の孤独は深まり、酒やドラッグに溺れ、やがてメンバーの承諾を得ずにソロ活動の契約をしてしまいます。

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画像出典元URL:http://eiga.com / クイーンが揉めたのは大体コイツのせい。

それでメンバーとフレディは大喧嘩になり、クイーンは実質的に解散寸前でしたが、フレディがエイズに侵されたこと、20世紀最大のチャリティーコンサート「ライヴエイド」に参加を決めたことで、再び “ファミリー” の絆を取り戻すのです。

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そして訪れるクライマックスのライブシーン。
7万5000人の観衆に埋め尽くされたスタジアムで、ほぼ完全再現されたクイーン伝説のパフォーマンスは、まさに映画館がライブ会場に変わった21分でしたねー!

もうね、それまでの流れを観ているだけに、このライブシーンで僕はずっと泣きっぱなしでしたよ!!゚(´;ω;`)

キャスト陣

そんな本作でフレディ・マーキュリーを演じたのは、「ナイトミュージアム」シリーズで若きエジプト国王アクメンラー役を演じたラミ・マレック

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フレディ本人と比べると、やや線が細い感じがしましたが、義歯でフレディの出っ歯を再現し、言葉のアクセントやライブパフォーマンスの振りなどを完全再現しただけでなく、ブライアン・メイロジャー・テイラーに生前のフレディについてインタビューして、内面までしっかり役作りしてフレディ役に臨んだんだそうです。

ただ歌声だけは、フレディのアーカイブ音声を合成したものと、フレディと歌声がそっくりと話題になったカナダ人アーティストのマーク・マーテルさんの歌声を使っているんだそうですね。

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あと、イギリス人俳優のグウィリム・リーが演じた、クイーンギタリストのブライアン・メイも、ファンの間で本人ソックリと話題になりましたよねー。

 あの名曲・名盤の誕生秘話も

もう一つの楽しみは、本作を彩る数々の名曲ですが、そんな名曲やアルバムの誕生秘話も、劇中で描かれます。

バンドの移動に使っていたバンを売り払い、そのお金で作ったファーストアルバム『戦慄の王女』では、ドラムやピアノの上にコインをばら撒いてそれが跳ねる音を収録したり、音を左右に振るなど斬新な方法を試し、映画タイトルにもなっている『ボヘミアンラプソディー』は、バラードからオペラ、そしてグラムロックが融合した約6分もある曲で、この曲をシングルカットするしないでプロデューサーと揉めに揉めたり。

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最初は違う意図で作られたハズのこの「ボヘミアン~」が、クライマックスのライブのオープニング曲として出だしのバラード部分だけ歌われ、まったく同じ歌詞なのにも関わらず、紆余曲折あったフレディ自身の心情を素直に表しているのが、もう、泣けて泣けて。

そしてブライアン作曲の「レディオガガ」からお得意のコール&レスポンスを挟んで、ロジャー作曲の「ハマー・トゥ・フォール」をノリノリで歌い上げ、最後は「伝説のチャンピオン」を7万5000人の観客とともに大合唱

サイコーかよ!!(ノT△T)ノ ウォォォー! 

こんなに感動するのには、映画的に重要な曲にちゃんと字幕がついていて、今まで漠然と聞いていたクイーンの歌詞の意味が分かったのも、かなり大きかったと思います。

ボヘミアン~」「伝説のチャンピオン」寄る辺なき者たちや負け犬たちの歌だったんですねー!!

そしてライブの最後でフレディが、「バイバイ、愛してる!」と言って、メンバーを振り向いたところでこの映画は終わります。 

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 それはきっと、その後エイズによる肺炎で亡くなるフレディの最後を暗示しつつ、彼の人生で最も満ち足りた瞬間を最終カットに選んだんだと思いましたねー。

そしてエンドロールでは、フレディ本人が歌う「ドント・ストップ・ミー・ナウ」(映像付き)と「ショー・マスト・ゴー・オン」が流れます。

ドント・ストップ・ミー・ナウは「俺は今最高に楽しいから止めないでくれ」という内容で、ショー・マスト・ゴー・オンは1991年の死の淵にいたフレディが「それでも命ある限り舞台に立つんだ」という内容だそうです。

フレディ・マーキュリーの半生を描いた本作のエンディングに、こんな相応しい2曲はないんじゃないでしょうか。

 

煩さ型のファンの人達にしてみれば、ここが違うとかあそこは時系列が云々とか、色々言いたい事もあるでしょうが、前述したようにこの映画は、往年のファンと昔を懐かしむための映画ではなく、クイーンに初めて出会う“ファン”のための映画なんだと思うんですね。

だから、事実と違う部分もあるだろうし、クイーンやフレディのドロドロしすぎてる部分はあえて描かないチューニングをしながら、スト20分にクイーンの魅力の全てを集約させているんだと思います。

きっと、この映画を観て、初めてクイーンやフレディを知って、ファンになった若者も沢山いるんじゃないかな。

僕も家に帰ってすぐに、YouTubeで「ライヴエイド」の動画を観ちゃいましたよw

事ほど左様に、この映画は観る映画というより、ライブ体験に近い作品です。
なので、出来るだけ音響の良い劇場の大画面で観るのがオススメ!!

興味のある方は是非!!!!

 

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原作のダイジェスト版っぽい?「いぬやしき」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アニメ化もされた奥浩哉の同名マンガの実写映画化『いぬやしき』ですよー!
先に書いておくと、僕は原作もアニメも観ていなくて、この映画で初めて「いぬやしき」を観たので、もし先に原作かアニメを観ていれば印象は違ったかもしれません。

あと、出来るだけ結末などには触れないように書くつもりですが、ある程度、後半部分の展開にも触れていくので、これからこの映画を観る予定の人や、ネタバレは嫌って人は、先に映画を観てから、この感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

映画にもなった「GANTZ」などで知られる奥浩哉の人気漫画を、『GANTZ』シリーズなどの佐藤信介監督が実写映画化。突然の事故をきっかけに、超人的な能力を得た初老のサラリーマンと高校生が、それぞれの目的で強大な力を行使するさまを描く。自分の力を人助けのために生かす主人公を木梨憲武、同じ能力を手に入れるも悪用する大量殺人鬼を、『るろうに剣心』シリーズなどの佐藤健が熱演。本郷奏多二階堂ふみ伊勢谷友介らが脇を固める。(シネマトゥデイより引用)

感想

本作の監督は、同じ奥浩哉の大ヒットマンガ「GANTZ」の実写版も務めた佐藤信介。
GANTZ」の感想でも書きましたけど、アクションやCG描写には力を入れる割に、ストーリーテリングやキャラの描写には、興味がないのかなーっていう印象です。(脚本は別の人なので、そちらに問題があるのかもしれませんけども)

では、本作はというと(読んでないけど)原作マンガのダイジェスト版っぽいなーっていう印象でしたねー。

全10巻の原作を、約2時間にまとめるんだから致し方ないのかもですが、キャラや関係性の描写が足りないので、彼ら(というか主に獅子神)の行動原理が飲み込みずらいし、感情移入も出来ないんですよね。

ざっくりストーリー紹介

うだつが上がらないサラリーマン犬屋敷壱郎 (木梨憲武)は、念願のマイホームを購入したものの、会社や家族から蔑まれ、おまけに末期ガンであることが発覚。

途方にくれて夜の公園でしょぼくれていると、近くのベンチで座っていた獅子神皓 (佐藤健)と共に謎の爆発に巻き込まれ、宇宙人のテクノロジーで兵器ユニットを搭載した機械人間になってしまう。

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犬屋敷はその能力で、医者に見放された病人の命を救うことに生き甲斐を見出すが、獅子神は人類に絶望し抹殺する道を選択。やがて相容れない両者の死闘が始まる。

という物語。

序盤は延々と犬屋敷のしょぼくれた日常が続き、機械人間になってからは獅子神の人生の歯車が狂っていく様子を描き、クライマックスでは同じ力を持ちながら相容れない二人の決戦を描いていく構成になっているんですね。

ダイジェスト版っぽい

ただ、観ていると「あー、これ多分(原作を)かなり端折てるんだろうなー」ってのが、原作を知らない僕でも分かるくらいキャラ(特に獅子神)の描写が足りてなくて、なので犬屋敷以外のキャラにまったく感情移入が出来ないんですよね。

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例えば犬屋敷の家族は、ただただ嫌な部分だけが強調されて、犬屋敷が何故この家族をそこまで大事にするのかって思うし、獅子神が最初に起こす(後に彼自身が追い詰められるキッカケになる)ある事件も、「え、なんで?」って、あまりに唐突に感じてしまうので、後に起こる悲劇に対しての獅子神の怒りに対しても「いや、全部お前の自業自得だし、ただの八つ当たりじゃん」としか思えないわけです。

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ウィキペディアを読むと、獅子神が最初の事件を起こすに至るまでを、段階的に描いているようだし、後半では犬屋敷の家族の再生も描かれているらしいんですが、そこを端折っているので、気は弱いけど善人な犬屋敷と、心に闇を抱える少年 獅子神という、記号的なキャラクターになっているんですよね。

獅子神の親友でいじめられっ子のチョッコーも、犬屋敷をナビゲートするだけの便利キャラぽくなってるし、犬屋敷の息子がカツアゲされてる問題なんか、最後まで放置したままですしね。

アクションシーンについて

で、二人が対決するアクションシーン。
「ハリウッドに比べてCGがショボイ」とか、そういうのは正直どうでもいいんですよ。っていうか、今やCG技術も上がってきてある程度の水準は担保されてますからね。

実際、劇中でも犬屋敷と獅子神の空中でのチェイスなんかは見ごたえがあったし、体のアチコチが開いて武器が出てくるシーンも、個人的にはちょっと上がりました。

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ただ、基本的にどういう機能がついてるのかの説明がなくて(セリフで、じゃなく自分で機能を発見していく描写を入れるとか)、なので例えば、単純に物理攻撃だと思ってた指鉄砲が、ネットワークを通してモニター越しの人間を打ち抜くシーンとか「え、どういうこと?」と困惑したし、「それが出来たら、もう何でもアリじゃん」と、鼻白むというか。

あと、クライマックスで犬屋敷が必死で瀕死の娘を救うシーンを2回やるとか、構成的にも上手くないし、タイムリミットサスペンスもまったく機能していない。

そもそも二人にどういう能力(機能)があって、どういう弱点があるのかっていうルールがぼんやりしてて最後の決着もロジックがないので、同じ機能のハズなのにどうしてそうなったか分からないんですよね。(多分こういう事だろうなーってのは何となく分かるけどさ)

っていうか、その前のシーンで死んだと思った獅子神がしれっと復活したので、あれ? こいつ自己修復機能がついてるの? って思って混乱しましたよ。

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なので結局、どっかで見たようなテンプレの上っ面をただ真似てるだけに見えちゃうのです。

テンプレといえば、獅子神による大量虐殺の引き金になるネット民が引きこもりのデブだったり、サイトも書き込みの言葉使いもあからさまに2ちゃんなのが、(原作通りなのかもですが)まだそれやってるの? って感じでしたねー。

君塚良一かよ! っていう。

むしろ今はTwitterとかフェイスブックなどのSNSや、YouTubeみたいな動画投稿系サイトの方が主流なんじゃないかなーって思ったりしましたねー。

ちなみに、一部で酷評されてる木梨憲武の演技は、個人的に言うほど悪くないって思いました。
演技自体はそんなに上手くないのかもだけど、木梨さんが長年芸能界で培ってきた年輪の重みが犬屋敷に乗っかっていて、説得力のある存在感を出していたように思いましたねー。

興味のある方は是非!

 

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ほぼ完璧な三部作完結編「ちはやふるー結びー」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、実写版「ちはやふる」三部作完結編『ちはやふるー結びー』ですよー!

素晴らしいアイドル映画であり、ほぼ完璧と言っていいシリーズ完結編だと思いましたねー!!

で、今回の感想は、出来るだけネタバレしないように気をつけてはいますが、わりと内容の確信部分に触れてるところもあるので、これから本作を観る予定の人、ネタバレは嫌! という人は、先に映画を観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

末次由紀のヒットコミックを原作にした青春ドラマの続編。全国大会での激闘から2年後を舞台にして、競技かるたに打ち込む高校生たちのさらなる戦いを活写する。監督の小泉徳宏広瀬すず野村周平新田真剣佑上白石萌音矢本悠馬森永悠希ら前作のスタッフ、キャストが結集。新たなキャストとして、NHK連続テレビ小説あまちゃん」などの優希美青、『くちびるに歌を』などの佐野勇斗、『森山中教習所』などの賀来賢人らが参加する。(シネマトゥディより引用)

感想

まず、「ちはやふる」を知らない人にざっくりとどんな物語かを説明すると、かるたバカの残念美少女 千早広瀬すず)、かるたの天才 新田真剣佑)、二人の幼馴染で才能の差に苦しみながら片思いしている“千早のため”に部長として かるた部を引っ張っていく 太一野村周平)三人の恋の行方と、競技かるたに青春をぶつける高校生たちを描いた大ヒット少女マンガ「ちはやふる」の実写映画です。

第一作となる「~上の句」では、高校で再開した千早と太一が仲間を集めて競技かるた部を作り、全国大会団体戦で優勝するまでを。

続編の「~下の句」では、個人戦に焦点を当て、最年少クイーンの若宮詩暢(松岡茉優)と千早との対戦をクライマックスに、千早、新田の2人が抱える悩みや苦悩を乗り越えていく姿を描いているんですねー。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 出番は少なかったものの、それぞれにちゃんと見せ場があってよかった。

そして、本作「~結び」はそれから2年後の高校生競技かるた大会を舞台に、高校3年生になった千早や新、そして太一の、青春の終わりと3人の恋の行方にも(一応の)決着をつけるシリーズ完結編なんですねー。

青春映画でありアイドル映画でもある

本シリーズは、競技かるたに情熱をかける若者たちの青春映画であり、同時に広瀬すずを始めとした10代・20代、つまり劇中のキャラとほぼ同世代の若手俳優たちの「今」を切り取るアイドル映画でもあります。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 1年生二人を加えて7人になった瑞沢高校かるた部

上の句・下の句が一気に撮影、ひと月の間をあけて順次公開されてから2年、完結編となる本作が制作・公開されていて、この2年間での劇中のキャラと俳優たちの成長がリンクしているんですね。

劇中ではクイーン戦準決勝で敗れた千早が、クイーンの詩暢と中学3年生の我妻の対戦と、千早・太一・新の師匠である原田先生(國村隼)と、4連覇中の名人周防(賀来賢人)の名人戦勝戦のシーンからスタート。

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画像出典元URL:http://eiga.com / コメディーリリーフ的なシーンも多かったけど、決めるところはビシっと決める松岡茉優

この冒頭のシーンで、原作の名人・クイーン戦の件を10分ほどサクッと終わらせ、上の句と同じように高校最後の団体戦を物語の中心に絞ると同時に、クイーン・準クイーンの戦いとネット中継の解説で、人物紹介や競技かるたなど、本作に関する基本的な情報を説明しているんですよ。

この辺の手際の良さは素晴らしいと思ったし、同時に、前作・前々作同様、競技かるたの激しさや迫力、動きの美しさをスローモーションを交えながら伝えているのも良かったですねー。

説明ゼリフの上手さ

その後、千早たちが新入生の部活説明会で新1年生に説明するという体で、観客に対して競技かるたのルールを説明し、古典が大好きな奏(上白石萌音)が物語のキーとなる和歌の内容を解説させるなど、観客が説明ゼリフを説明くさく感じさせないよう、物語に織り込んでいく脚本の上手さを感じました。

逆に、それぞれのキャラクターの心情を表すシーンではセリフを極力排して、映像や構図、カットで、観客に「レンズの外」を想像させる演出をしているんですよね。

例えば、太一に一目惚れしてかるた部に入った花野薫(優希美青)が、女子更衣室で盗み聞きした千早と奏の話を太一に告げ口するシーンでは、太一の顔は一切撮さず背中だけを見せることで、太一の表情を観客に想像させるとか。

セリフに頼らない映画的演出と、説明セリフを違和感なく伝える演出のバランスが、ほんとよく考えられていると関心しました。
前2作でも同じことはやってるけど、本作の脚本と演出のクオリティーは桁違いだと思いましたねー。

和歌の意味が物語のキーになる

上の句・下の句では、どちらかといえば和歌の意味よりも競技としての「かるた」に重心が置かれていた本シリーズ。
しかし、本作では、かるたに書かれた和歌の内容が物語の重要なキーになってきます。

それが、

『ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば
   ただ有明の 月ぞ残れる』

『しのぶれど 色に出でにけり わが恋は
     ものや思ふと 人の問ふまで』

『恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり
    人知れずこそ 思ひそめしか』

という、3枚のかるたに書かれた和歌です。

『ほととぎす~』は、色々あって太一が退部したあと、千早が部室の畳の隙間から見つける札で、ほととぎすの鳴き声が聞こえたような気がして振り向いたら、まだ明け方の月が残っていた。という内容。

『しのぶれど~』は、心に秘めた恋心を隠してたつもりが、「恋してるの?」と人に聞かれちゃうくらい、顔や表情に出ていたらしい。という意味で、

『恋すてふ~』は、秘密にしてた恋がバレて噂になっちゃった。という意味らしいです。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 仲間とかるた部を組んで、大会に出場する新

「しのぶれど〜」が太一、「恋すてふ〜」が新の状況をそれぞれ表しているんですが、クライマックスの団体決勝戦、新が率いる福井の藤岡東高校と太一たち都立瑞沢高校の対戦のクライマックスで、この2枚の札は大事な意味を持っているんですね。

しかも、この2枚の札の件では勝敗を左右するロジックだけでなく、新と太一の現状や、千早と詩暢の未来への予感などなど、何重ものメタ的な意味も内包しているのです。

前作から引き続き、青春をかけた競技かるたへの熱量はそのままに、かるたに書かれた和歌の意味を物語に深く絡ませることで、千年前の和歌と現代の若者たちのを“繋ぐ”ことに成功しているのではないかと思ったりしましたねー。

果たして3人の恋の行方は

ネットで「新・太一・千早の恋の決着が曖昧なまま終わった」事が不満だったというレビューをいくつか見かけました。

まぁ、確かに「え?」という感じではあったんですが、個人的には、三人の恋の決着は観客にそれとなく予感させるように、劇中でちゃんと描かれていると思うんですよね。

あえて劇中で白黒ハッキリつけずに、劇中でヒントを見せながら未来を予感させるのもまた、かるたや和歌の世界観とリンクしてる美しい終わり方で、もう最高かよ! って思いました!

本作は、遡って「上の句」「下の句」を再評価してしまうほど三部作完結編としてほぼ完璧で見事な青春映画だし、同時に約2年間に渡る出演俳優たちの成長を切り取ったアイドル映画としても、もちろんマンガ原作の実写作品としても、っていうか近年の邦画の中でも1・2を争う大・傑・作だったと思いますよー!!

興味のある方は是非!!!

 

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