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「ブラック・スキャンダル」(2016) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、あのジョニー・デップがボストンの犯罪王を演じて話題になった『ブラック・スキャンダル』ですよー!

久しぶりの悪ジョニデ降✩臨! 的な映画でしたー。

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画像出典元URL:http://eiga.com/

あらすじと概要

米国では昨年秋に公開された実録犯罪映画。
ディック・レイアとジェラード・オニールのノンフィクション『Black Mass: The True Story of an Unholy Alliance Between the FBI and the Irish Mob』を原作に、ボストン南部を牛耳るギャングのボス ジェームズ・“ホワイティー“・バルジャーの半生を描く。

1970年代、ボストン南部で育ったアイルランド系アメリカ人で、地元を縄張りにするギャングのボス  ジェームズ・“ホワイティー“・バルジャー(ジョニー・デップ)は、冷酷で多くの犯罪に手を染める一方、同じアイルランド系アメリカ人の集う地元の人間を大事にする顔役的な一面も。
そんな時、FBI捜査官になったジェームズの幼馴染みジョン・コノリー(ジョエル・エドガートン)が、ジェームズの犯罪を見逃す代わりに、ボストンで勢力を広げるイタリアン・マフィアの情報提供を持ちかけ、ジェームズはその話を受ける。

出演はジョニデ、ベネディクト・カンバーバッチケヴィン・ベーコン
監督はスコット・クーパー

 

感想

ジョニデが残忍なギャングのボスを演じるということで話題になった本作。
実在のギャングをモデルにした実録犯罪映画ということで、「グッドフェローズ」や「スカーフェイス」的な感じなのかなーと、勝手に期待を膨らませていたんですが、実際観てみると、それらとは全然違う原作に忠実(らしい)な『真実』を淡々と描いた映画でした。

アイルランド系アメリカ人

本作を観る上でちょこっと知っておいた方がいいのは、ジョニデ演じる主人公ジェームズ・バルジャーを含むアイルランド系アメリカ人の米国内での立ち位置です。
アイルランドは歴史的にアメリカ人の圧倒的多数であるイングランド人のルーツであるイングランドに支配されていたことや、プロテスタントの多い米国でカトリック教徒であること、また米国への入植が遅かったことなどから、不当な差別を受けていたらしいです。

そして、本作の主人公ジェームズ・バルジャーを始めとした登場人物の多くは、このアイルランド系アメリカ人の多いボストン南部という『閉じたコミュニティー』出身であるということが、本作のバックグラウンドになっています。

イタリアン・マフィアとの抗争

そんなジェームズたちは、ボストン北部を中心に勢力を拡大しているイタリアン・マフィアと揉めています。
そんな折、幼馴染みでFBIボストン支局に赴任してきたジョン・コノリーに“協定“を求められるジェームズ。
つまり、ジェームズたちギャングの犯罪を見逃す代わりに、共通の敵であるイタリアン・マフィア撲滅のために情報を提供するというもの。
ジェームズはこの申し出を受け、やがて、ボストンに名を轟かせる犯罪王となっていくのです。

被り物俳優ジョニデの面目躍如

主演のジョニデことジョニー・デップといえば、「シザーハンズ」「パイレーツ・オブ・カリビアン」「アリス・イン・ワンダーランド」などなど、奇抜なメイクや衣装などで外見からキャラクターに成りきる、いわば被り物俳優として有名ですが、本作ではジェームズ・バルジャーに似せるため、禿げ上がった金髪にサングラス、老けメイクなどを駆使して、本人に成りきって演じています。

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僕の勝手なイメージですが、ジョニデは素顔で演技するときより、外見を変えて「キャラクター」として映画に出るときのほうが光ってる感じがするんですよね。
というかキャラもののイメージが強すぎて、素顔だと影が薄い感じがするっていうか。

本作では、実在の犯罪王という“キャラクター“と、それまでのデフォルメされたキャラクターとは違う、素顔のジョニデの芝居とのハイブリットというか、これまでの素顔のジョニデとキャラものを演じる彼の丁度中間くらいの感じが映画の中での実在感を伴って、ある意味で被り物俳優の面目躍如といった感じでしたよ。

『真実』を追い求めた監督の意図と、コレジャナイ感

今回、僕はブルーレイで鑑賞したんですが、特典映像で監督のインタビューなども入ってたんですね。
そこでの監督のスタンスは、原作に忠実に『真実』を描くことで人間としてのジェームズ・バルジャーや彼に近しい人たちとを描きたいということのようでした。

だからなのか、本作では狡猾で冷酷な犯罪者としてのジェームズ・バルジャーと、家族や仲間を大事にする彼の二面性、イタリアン・マフィアがいなくなり、敵なしになった彼の行動がどんどんエスカレートしていく様子などを淡々と描き出していきます。

ただ、物語スタート時にはバルジャーはすでにギャングのボスであり、ギャングとして成り上がっていく過程がないし、フィクションとして盛り上がるエモーショナルな描写もなく、彼らのエスカレートしていく行動を“淡々“と観せられるんですよね。

その割に「痛さが伝わる暴力」の描写はなく、バルジャーの「ヤバイ奴感」はなく、ただの嫌な奴っぽくなっちゃってるかなと。

「痛みの伝わる暴力」だったり、相手を「理不尽な理屈」で追い込んでいくヒャッハー感が、ある種ギャング映画や暴力映画のカタルシスだと思うんですが、本作ではその描写が薄いままどんどん人が死んでいくので、ただただ陰惨なだけになってしまうんですよね。

それがアイルランド系ウィンター・ヒル・ギャング気質なのかもですが、カタルシスの一切ない2時間は正直しんどかったです。

まぁ(勝手に)期待してたのと違ったからって文句言うのはお門違いなのは承知で言わせてもらうなら、コレジャナイ感がハンパなかったんですよねー。

そんな感じで、僕にはイマイチ合わない映画でしたが。

興味のある方は是非!