ぷらすです。
今回ご紹介するのは、チェスの天才プレイヤー ボビー・フィッシャーの半生を描いた伝記映画『完全なるチェックメイト』ですよー!
正直、チェスについてもボビー・フィッシャーについても、まったく無知な僕が観て楽しめるのか不安でしたが、実際観てみると地味ながら中々面白い作品でしたー。
画像出典元URL:http://eiga.com/
あらすじと概要
2014年に制作され、翌2015年に公開された伝記映画。
米国生まれの天才チェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーの半生を描く。
共産党員で毎日のように男を連れ込むフィッシャーの母親は、さらに常にFBIに見張られていた。
そんな環境で育った幼いフィッシャーの心の拠り所はチェスだった。
幼少期より非凡な才能を開花させて15歳でグランドマスターとなった彼は、一躍時代の寵児となっていく。
そんなフィッシャーの目標は、当時のチェス大国ソ連の世界チャンピオン、ボリス・スポスキー(リーヴ・シュライバー)を倒すこと。
しかし、その道のりは厳しく、更に冷戦下の代理戦争というプレッシャーや横槍、極限まで頭脳を酷使し続けるフィッシャーは次第に精神を病み、奇行がエスカレートするようになっていく。
そんな1972年、世界チャンピオン決定戦の開催地アイスランドで、米ソ二人の天才の戦いが始まる。
主役のボビー・フィッシャー役に『スパイダーマン』のトビー・マグワイア。
監督は『ラストサムライ』のエドワード・ズウィック。
感想
2002年に公開されたサムライミ版『スパイダーマン』は僕にとって特別な映画です。そんな『スパイダーマン』の主役だったトビー・マグワイアが主演ということで公開時から密かに気になっていたんですが、チェスについてはサッパリ分からない僕が果たして本作を観て楽しめるのかと、正直観るのを躊躇していたんですね。
しかし、今回思い切ってレンタルしてみることにしましたよ!
実話ベースだった
本作は実話をベースにした、ボビー・フィッシャーの伝記映画です。
ボビー・フィッシャーという名前自体は、何となく聞き覚えがあったんですが、この人チェス名人だったんですねー。
本作では1972年に行われた、フィッシャーと、当時世界チェスのチャンピオンだったボリス・スポスキーの伝説の対決をメインに、ボビー・フィッシャーの半生を描いています。
ボビー・フィッシャーという男
さて、このボビー・フィッシャーの人生はまさに波乱万丈で、本人もかなりパンクな男です。
気に入らないことがあると、重要な対戦もドタキャンするし、対局の途中でも試合放棄し、運営には(ギャラも含め)無理難題な条件を吹っかけ、おまけに陰謀論者っていう困ったちゃん。
そんな彼の行動のルーツは幼少期に遡るんですね。
ボビー・フィッシャーの母親は共産党員で、毎日の様に男を連れ込む自由人。
当時は冷戦の最中なので、フィッシャー家はいつもFBIが監視しているような状態だったようです。そんな幼少期の体験が、後に彼を悩ませる陰謀論に結びついていくんですね。
そんな彼が熱中していたのがチェスで、精神科のお医者さんの紹介で彼は最初の師匠?と出会い、その後メキメキと頭角をあらわして、たった15歳にしてグランドマスター(将棋で言えば名人みたいなことなのかな?)になります。
そうして、ますますチェスにのめり込む彼は、“雑音“で集中できないと母親を家から追い出してしまいます。
この時すでに、精神のバランスを欠き始めている様子が描かれてるんですね。
そんな彼が目標にしたのが、当時米国のチェスプレイヤーが誰も成し遂げられなかった、ソ連の世界チャンピオン、ボリス・スポスキーを倒すことでした。
そして1962年、フィッシャーはブルガリアで開かれたチェスオリンピアードに臨むも、試合結果と組み合わせを見て、ソ連のプレイヤーが、共謀しドロー(引き分け)を繰返している事を見抜き、このままではスポスキーとの対決は出来ない事を悟った彼は、怒りのままに試合を棄権。そのままチェスを辞めると宣言してしまいます。
その後、色々あって宿敵スポスキーを倒すため、フィッシャーはアイスランドで行われる世界チャンピオン決定戦に望むわけですね。
しかし、この頃には彼の精神はすっかり病んでいて、公衆の面前で陰謀論を口走り、法外なギャラや無茶苦茶な条件を主催者側に突きつけ、何通もの意味不明な手紙を姉に送るようになってしまうわけです。
しかも、時代は折しも米ソ冷戦の真っ最中。
フィッシャーvsスポスキーの対決は、単にチェスの試合に留まらず、米ソの代理戦争になってしまうというわけです。
狂っているのはフィッシャーか、それとも……
本作では随所に当時の記録フィルムが差し込みながら、フィッシャーが本人の気持ちとは裏腹に、敵国ソ連と戦う“英雄“として祭り上げられていく様子が描かれていきます。
もちろんフィッシャー本人のエキセントリックとも言える言動が、民衆を煽っている部分もあるわけですが、その背景にはやはり米ソ冷戦という時代の流れが大きく作用していると思わざるを得ません。
時代が違えば、フィッシャーとスポスキーの対決の意味合いはもっとシンプルになっていただろうし、フィッシャーもあんな風にはならなかったんじゃないかなと。
そして、一見精神を病んでいるように見える彼の言動も、実は一プレイヤーとして最強の王者と戦いたいという純粋な要求が根っこにあるのだと分かる作りになっているんですね。
本作の原題は「Pawn Sacrifice(ポーンサクリファイス)」
ポーンは将棋で言えば「歩」のような駒で、サクリファイスはチェスの戦略の一つで自分の駒を犠牲にして、よりよい状態に持っていくことだそうです。
これは、本作山場の対決でのフィッシャーの戦略でもあるんですが、同時に、フィッシャーやスポスキー自身が冷戦の捨て駒として扱われていた――みたいな皮肉にもなってるのかなーなんて思いました。
トビー・マグアイアの演技
本作の見所は、次第に追い詰められいくフィッシャーを演じる、主演のトビー・マグワイアの演技です。
狂気の中に繊細さを感じさせる演技は、さすがトビー・マグアイアだなーと。
元々、デリケートな印象のある彼なので、そういう意味でボビー・フィッシャーという人物はトビー・マグアイアにとって相性のいいキャラクターと言えるかもしれません。
ただ……
本作での山場はもちろん、ふたりの天才によるチェス対決。
一応、周囲のリアクションを通じて、何か凄いことが起こっているのは分かる作りにはなっています。
なので、チェスが分からなくてもそれなりには楽しめるんじゃないかと思うんですが、ただ、基本淡々と進むので、画で見て納得するというより周囲の説明セリフで、凄い手なんだなーと理解する感じなんですよね。
無いものねだりを承知で言うなら、出来ればこの山場の対決は、何かインパクトがある映像になってると良かったんじゃないかなって思ったりしました。
もちろん、やりすぎると台無しなんでしょうけど、フィッシャーの頭の中を映像として観せるような演出があると、その場その瞬間の空気みたいなものが感じられたんじゃないかなーと。
あと、実話ベースだから仕方ないのは分かりますが、全体的に淡々と進みすぎて若干退屈に感じてしまったのは少し残念だったかも。
とはいえ、2016年の今だからこそ、見る価値のある映画なんじゃないかなと思ったりしましたよ!
興味のある方は是非!