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全体に漂う不穏なムードは◎、 だけど…「クリーピー 偽りの隣人」(2016) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、昨年公開のサスペンススリラー『クリーピー 偽りの隣人』ですよー! 映画ファンにカルト的人気を誇る黒沢清監督がエンターテイメントに振り切った作品です!

ただ今回は割と文句多めになると思うので、本作が好きな方はスルーして下さいね。

 

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あらすじと概要

アカルイミライ』などの黒沢清監督がメガホンを取り、第15回日本ミステリー文学大賞新人賞に輝いた前川裕の小説を映画化。隣人に抱いた疑念をきっかけに、とある夫婦の平穏な日常が悪夢になっていく恐怖を描く。黒沢監督とは『LOFT ロフト』に続いて4度目のタッグとなる西島秀俊が主演を務め、彼の妻を竹内結子が好演。そのほか川口春奈東出昌大香川照之ら豪華キャストが集結している。

ストーリー:刑事から犯罪心理学者に転身した高倉(西島秀俊)はある日、以前の同僚野上(東出昌大)から6年前の一家失踪事件の分析を頼まれる。だが、たった一人の生存者である長女の早紀(川口春奈)の記憶の糸をたぐっても、依然事件の真相は謎に包まれていた。一方、高倉が妻(竹内結子)と一緒に転居した先の隣人は、どこか捉えどころがなく……。(シネマトゥディより引用)

 

 

感想

僕は黒沢清監督の作品って「スイートホーム」と「回路」くらいしか観ていないので、あまり偉そうな事は言えませんが、周囲のファン人たちの反応を見ていると「一般ウケはしないけど、監督の世界観にハマった人はファンになってしまう」的な作家性の強い監督というイメージがあります。

本作でも、画作りとか音の使い方とかは、僕がイメージする黒沢清映画って感じだったんですが、内容的にはかなりエンタメに振り切っている感じがしましたねー。

常に漂う不穏な空気感

本作のストーリーをざっくり書くと、元刑事で心理学者の西島秀俊竹内結子夫婦の新居の隣人は、超サイコな香川照之だったからさぁ大変。
幸せで穏やかだった二人の結婚生活に徐々に香川照之が侵食して……。という物語。

全体的に暗い色調の映像と、不協和音のような不安を掻き立てる音響、どこか箱庭的で演劇的な演出。そこに香川照之の怪演が相まって、観ている間ずっと胸の奥がザワザワしてましたねー。
圧縮袋の使い方なんかは、派手さはないけどかなりショッキングでしたしねー。

っていうか、香川照之の使い方としては100点満点だなーと。
香川照之のオーバーアクト(でも、普段よりはグッと抑えてた)も、このエキセントリック役柄にはハマってて、西島秀俊と共演した例のアクション大作の時よりずっと光ってるなーって思いました。

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役者陣の熱演

本作では香川照之だけじゃなく、ほかの役者さんも良かったですねー!
特に奥さん役の竹内結子と、香川照之の『娘』役の藤野 涼子は、本当に熱演! って感じで、藤野 涼子の壊れっぷりや、竹内結子の慟哭は観ていて胸をギュッと掴まれる感じがしました。

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画像出典元URL:http://eiga.com/ 藤野 涼子(左)

西島秀俊はまぁ……いつも通りの「熱演」でしたけども。

さて、と。

というわけで、ここから文句タイム

そんな感じで、画面や音響、役者さんは全体的に良かったし、悪魔のいけにえオマージュ(ですよね?)の分厚い扉、ラスト付近の作り物然とした車の走行シーンなんかはジャンル映画的エンタメ感があって個人的には好印象だったんですが、肝心のストーリーの方にツッコミどころが多すぎて、それがノイズで、ストーリーに集中できないっていうか、いい感じのところでツッコミポイントが入るので、イチイチ冷めちゃうというんですよ。

っていうか、いくらなんでも警察無能すぎね?

いや、ストーリーの展開上そうせざるを得ないってのは分かるし、本作で大事なのはそこじゃないのも重々承知してますよ?
ジャンル映画だし、多少の無理(例えば香川照之の家の構造とか)は100歩譲ってまだ飲み込めますよ。

ただ、警察があまりにもアレすぎてイライライライライライラするし、リアリティーラインがあやふやすぎてストーリーに全然集中出来ないんですよ。
これが、外国映画なら「そういうもの」として飲み込めるんでしょうけど、邦画ですからね。どうにも気になってしまうのです。(地元が舞台のドラマとか観てると嘘の部分が気になっちゃう気持ちに似てる)

フィクションだから嘘が入るのは当然なんですが、せめてノイズにならない程度に登上
人物の行動に物語内説得力を持たせてくれないと、雰囲気だけの「サイコホラー(げ)」な映画止まりになっちゃうし、それは正直勿体無いなーと思いました。

原作がある以上、好き勝手に内容や設定は変えられないだろうし、本作がどのくらい原作に忠実なのかは読んでいないので分かりませんが、少なくとも本作劇中のノイズになっている部分の殆どが、警察の存在と西島秀俊が元警官という設定に起因していると思うんですよね。

これが、犯罪心理学者の西島秀俊vsサイコパス香川照之という図式に集約して、異変に気がついた西島秀俊が警察に頼るも、狡猾な香川照之の計略の前に取り合って貰えず……みたいなシンプル構図だったら、その後の展開の違和感もなかったのかなーと思ったり。
その分、香川照之竹内結子を取り込んでいく様子や、竹内結子が抱えていた西島秀俊への不満? も、もう詳細に描いていくとかね。

 

評価が高かっただけに、観ているこっちのハードルが上がりすぎてたのかもしれないし、決してつまらない映画ではなかったんですが、個人的には画作り満点、でもストーリーで減点って感じでした。

とはいえ、ネットレビューを読むと褒めている人も多いし、確かに不満もあるけど良いところも多い作品だと思いましたよ(´∀`)ノ

興味のある方は是非!